八雲の相棒   作:陽灯

33 / 56
さとりん視点


古明地さとりと添い寝 その2

(・・・あったかい・・・)

 

まだうとうととする意識の中で、体が暖かく包み込まれているような感覚を覚える。毛布に包まっているときに感じるものとは違う暖かさのように思えるそれは、妙な心地良さがある。

 

その暖かさには覚えがある、それは時々忍び込んだお燐やお空を私が抱きしめて寝てしまっている時の暖かさに近い。だがそれらとは少し違うものがあった。

 

(ちょっとかたい・・・おもい・・・)

 

うつ伏せに眠る私の体を支えるベッドが妙に固く感じる。普段のふかふかのベッドではない、明らかに違う感触。

 

もしかして寝相が悪くて床に落ちてしまったのか、そう思うがならこの暖かさは一体?・・・むしろその暖かさは下から伝わってくるような・・・

 

加えて背中に感じる重さ、簡単に身動きがとれないも息苦しくない程度の重さにも不思議さがある。

 

だんだんと現状に対する疑問が増えてきて、少しずつ眠気が晴れていく。

 

(・・・いったいなにが・・・)

 

ゆっくりと目を開ける。ぼやける視界の中で顔を少し起き上がらせると目の前に肌色が見え、それは顔なのだということが徐々に認識する。

 

(・・・?なんで、か、おが・・・)

 

・・・すぅ・・・すぅ・・・

 

(~~~~~!!??!!??)

 

少し残っていた眠気が全てふき飛ぶ。咄嗟に大声を上げないだけ偉いと思えるほどの驚愕が体を駆け巡る。

 

(エイジ!?エイジナンデ!?)

 

とりあえず距離を取ろうと、私の背中に回っていた詠知の腕からくぐり抜けようとし・・・

 

ガシッ

 

(!?)

 

腰を掴まれ身動きがとれないようにされる。絶対に逃さないという強い意志を感じる。

 

(落ち着けさとり・・・考えるのよ。まずは状況整理よ。)

 

今の私の状況は私がうつ伏せの状態で詠知の胸の上に寝ており、詠知に抱きしめられている。完全に抱き枕のような状態である。

 

次に詠知がなぜここにいるのかを考える。

 

(これは直近の記憶を辿れば良いわね・・・)

 

寝ている詠知に対しサードアイを向け、直近に残る記憶を見てみることにした・・・

 


 

『『にゃ~ん♪』』

 

『2人とも可愛いなぁ!』

 


 

(?????)

 

見間違いだろうか・・・お燐はともかく博麗の巫女がすごいことになってた気が・・・

 

(も、もう一回よ。)

 


 

猫車に乗って地霊殿に行こうとする詠知

 

泣いている勇儀を慰めている詠知

 

勇儀に抱きつかれる詠知と囃し立てる周りの住人達

 

お燐に誘われ寝る詠知

 


 

(・・・突っ込みどころはあるけど、詠知じゃなさそうね。)

 

霊夢や勇儀の意外(霊夢は意外すぎるが)な姿が見れてちょっと面白かったから心を読む意味はあったが、本来の目的はこの状況になったことの解明である。

 

とりあえずお燐に誘われて地霊殿に来たことは分かったが何故この状況にまでなっているのかは分からない。

 

(じゃあ次は・・・お燐にしてみましょうか。)

 


 

あたいが整頓した客室のベッドに寝転ぶ詠知、数分後にそっと中を見ると眠っている姿が見えた。

 

(そもそも来客がないからここの客室も昔詠知が使って以来使われてなかったし・・・もう詠知の私室にすればいいかも?そしたら地霊殿に来てくれる回数も増えそうだし、こいし様も釣られて戻ってくる回数が増えてさとり様も嬉しい・・・名案じゃないこれ?)

 

そんなことを考えてると廊下の向こうから羽をパタパタさせながら走ってくる親友が見える。

 

『詠知が来たってほんとお燐!!』

 

『しーっ、お空。調節お疲れ様。でもちょっと遅かったね。詠知は寝ちゃったから挨拶は起きてからだよ。』

 

『うにゅ・・・』

 

途端にパタパタ動いていた背中の羽がシュンとなるお空。・・・ちょっと可哀想だね・・・そうだ!

 

『・・・こっそり忍び込んであたいと一緒に寝ない?お昼ではないけどお昼寝さ。』

『めいあーん!』

客室のベッドはかなり大きいサイズだし、あたいとお空がこの状態で寝ても入りきれる。動物化したなら楽勝だろう。

 

『じゃあさとり様も誘おうよ!みんなで寝た方が楽しいよ!』

『面白そう!』

『さとり様は今寝てるんだよね、だから誘えないんだ・・・』

 

話している途中でふと思いつく。

 

『ねえお空、起きたら隣に詠知がいたらさとり様がどんな反応するか気にならない?』

『気になる!』

『うにゅ?後でさとり様に怒られそう・・・でも気になる。』

 

『でしょ?こっそりさとり様連れてきちゃおうよ。怒られるときはあたいと一緒さ。』

『私も一緒に寝よー!』


 

(・・・なるほどね。)

 

どうやらお燐とお空の悪戯らしい。私と詠知はただの被害者というわけか。

 

(全く・・・私か詠知の反応を見たいのに2人揃って寝てたら意味ないじゃない。)

 

とりあえず現状は理解出来た。お燐とお空の悪戯で私は詠知の寝る客室に運ばれ、詠知の寝相によって抱きかかえられているわけだ。

 

(さて、ここからどうするかね。)

 

無理矢理振りほどいて脱出することはできるが・・・起こしてしまうのは少し申し訳ない。

 

詠知には少なからず感謝の念があるのだ。

 


 

元々地霊殿の主という立場から地上の管理者の一人としての詠知と会話をする機会が何度かあったものが、特別仲が良いといったわけではなかった。

 

ただ少し不思議な存在であったことは覚えている。初対面の際覚妖怪であることを告げたのだが、そのときの反応が"ほ~、覚妖怪か。てことは今心読まれてるんだな。"である。

 

心を読まれることに嫌悪感を示す者が大半の中、随分と軽い反応に呆気に取られてしまった。

 

何故そんな反応が軽いのか聞いてみたところ、詠知曰く

 

『心の中読まれるなんてのはいつものことだからなぁ・・・頭良い人多すぎないか幻想郷。紫とか幽々子とか永琳とか映姫とか隠岐奈とか・・・ま、今更心読まれる程度で何も思わないからな。』

 

らしい。心の中に浮かぶ面々を見ると、かなり愉快な交友関係を持っているようで普段他者と関わりを持たない私から見ると随分と魅力的に写ったものだ。

 

その後も、鬼との約束なるものを果たすために旧地獄を訪れた際地霊殿にも寄ることがありペット(特にお燐とお空あたり)と仲良くなった。・・・人型以外のペットには嫌われているらしいが。

 

私もやって来た際には気付いたら挨拶くらいはするものの、あまり多く関わることはなかった。いくら心を読む覚妖怪に嫌悪感を示さない人間だとしても、常に読まれ続ければ気が変わってしまう可能性もある。それでペットが懐いている人間が来なくなるのはペット達に悪いと思ったからだ。

 

しばらくはそんな関係性だったのだが、ある日・・・

 

『妹さん連れてきたぞー』

 

・・・そう言いながら、こいしを抱きかかえてやって来た詠知にはさすがに話しかけない選択肢はなかった。

 

無意識を操り私の能力も通用しない、認識できないはずのこいしをどうやって捕まえてきたのか。

 

詠知曰く『人間の里に何か見えないが居るという噂を聞いたから、雨の後に足跡による地面の凹みを確認して何か居ないかを調査し捕まえた』らしい。

 

かなり苦労したようで何度も逃げられながら最終的に捕まえて、話をするうちに私の妹であることを知りそのまま連れてきたそうだ。確かに足が泥で汚れていた。

 

地上やあちこちを放浪しているこいしを捕まえられる存在、つまりこいしの安否確認ができる可能性がある人間と関わらない理由はない。

 

地上でのこいしの行動について分かる範囲で調べてもらう約束を取り付けたり、私自ら地上にこいしを探しに出た際には詠知の家を宿泊場所として貸してもらったり捜索を手伝ってもらったりした。こいしも詠知の事が気に入っているのか詠知と行動すると出現率が上がる気がする。

 

そんなこんなでこいし繋がりでコミュニケーションを取ることが増えていったが、結局最後まで詠知の覚妖怪への認識は変わらなかった。今でも心を読まれることを全く気にしていないままだ。

 

今はお互いに良き友人として接している。むしろこいしに加えて地上を訪れるお燐(たまにお空)の面倒もたまに見てくれているため、地霊殿の主としては恩があると言える。

 


 

(・・・そういえば、こいしを捕まえるときって今の私みたいな感じよね。)

 

"がっちりと掴み、完全に動けないようにする"というのが詠知流のこいしの捕まえ方らしい。妹の捕まえ方が、そんな危ない動物の捕まえ方みたいでなんとも言えない気持ちになるが実際に効果があるので何も言えない。詠知の体格あってこその方法なのでこいしと体格の変わらない私では難しい方法だ。

 

(・・・ちょっとこいしの気持ちが分かるかも・・・)

 

正直寝心地はあまり良くない。胸板は硬く、腕も筋肉でゴツゴツしているためちょっと痛い。・・・でも体を包み込むように伝わってくる体温の心地よさがそれを上回っているように感じさせる。加えてその力強さが妙な安心感を与えてくる。

 

こいしも気に入っているのだろう、実際にその間は無意識の能力が発動しないことを見れば明らかだ。

 

(もう少しこのままでも・・・)

 

「・・・んん・・・」

 

(!?)

 

詠知が身じろぎをしたことで起きる予兆を感じ取り、離れる時間も無いことを悟った私は顔を詠知の胸板に押しつけるように寝たふりをし始める。

 

「・・・結構寝たな。」

 

(まずいわ・・・このままだと私が客室に忍び込んだみたいじゃない・・・)

 

私が起きている状態で目覚めた詠知と顔を合わせるとまるで私がこの状況を許容している、つまり進んで私がここに来たかのように思われる。そう思い寝たふりを始めたが・・・

 

(詠知、気付いて!・・・悪いのはお燐、そうお燐なの!)

 

・・・私が出来ることは詠知が誤解しないことを祈るだけなのであった。




次話は詠知くんが起きた後のさとりん視点です。
特殊タグ使って色々遊んでいるので、番外編としてそういうの(特殊タグ使いまくり)をあげるかもしれません。

想起スペルで過去のトラウマを読めるっぽいので、まぁ直近の記憶くらい読めるんじゃ?と思ってます。お燐の方が鮮明なのは心を読み慣れているから、みたいな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。