八雲の相棒   作:陽灯

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その1の詠知くんが起きた場面からのさとり視点です。


古明地さとりと添い寝 その3

『・・・さとり?』

 

起きた詠知が、私の存在に気付いたようで心の中が疑問符で支配されているのが見える。

 

その状態で数分間の時が経過していく。

 

(お、降ろさないのね・・・)

 

落ちないようにという理由で抱きしめ続ける選択肢を取ったようだが、正直起きている状態で抱きしめられるのは恥ずかしい・・・。

 

『まずさとりが何故ここにいるかだが・・・』

 

(!!私の意志じゃないの!お燐!あとちょっとお空の仕業よ!)

 

詠知の心の中で様々な選択肢が提示される。私がここに自らの意志で来たという考えは早急に棄却されたようで一安心だ。

 

『・・・多分お燐かお空あたりの悪戯だな。』

 

(そう!正解よ!・・・良かった。)

 

とりあえず安心した。そう、私がここにいるのは不可抗力で決して私のせいではない。変な誤解は生まなそうで良かった。

 

さて、これで最初の問題は解決した。・・・次は詠知が部屋を出るのがいつになるかだ、誤解が無い今なら目覚めたふりをするのも良いがその後気まずくなってしまうだろう、なら私は知らないふりをして、後々詠知の心を読んで「こんなことがあったのね・・・ごめんなさい、詠知。お燐、お説教よ。」という流れに持って行った方が平和的だ。

 

『それにしても随分軽いな。』

 

軽い?どうやら私の体重の話をしているようだ。・・・そういえば、詠知と会話するときに私への印象みたいなものはあまり聞いたことがない気がする。

 

(・・・ちょっと気になるわね。)

 

私が読めるのは基本的にその場で考えていること、つまり表層意識とある程度の記憶くらいだ。つまり、心を読む対象が特定の相手に抱く印象のようなより深い部分にあるものはあまり読み取れない。

 

・・・ここで詠知が私に対して考えを巡らすなら、どんな印象を私に持っているかを知れる可能性がある。純粋に数少ない友人が私をどう思っているのかを知りたい。・・・これであれだけ親切にしてくれる詠知にうざがられたり実は嫌われていたりしたらその場で泣き出しそうなほど悲しいが、好奇心には逆らえない。

 

(確かに私はかなり体が小さいから詠知にとっては苦にならない重さ・・・!?)

 

「・・・ふふ。」

 

詠知の心の中のイメージ図で急に詠知の体に10人ほどの私が乗っている光景が広げられ、唐突なシュールな光景に軽く笑ってしまう。・・・1人こいしだったのも面白さに拍車を掛けてくる。

 

『・・・ん?・・・気のせいか。』

 

(・・・危ない危ない。・・・いきなりは卑怯よもう・・・)

 

『こんな小さな体で、旧地獄の主なんだもんなぁ・・・ま、見た目なんて何の意味も無いのは今更か。』

 

吸血鬼の姉妹、元四天王の鬼、お空に力を授けた二柱の内1人が思い浮かべられる。

 

(改めて思うけど、交友関係が広いのよね本当に。)

 

度々旧地獄の状況を見に来る閻魔様と知り合いなのは当然で、噂では地獄を統べる女神や後戸の神、月に住まう人々とも面識あるいは交友関係があるらしい。・・・何をどうしたらそんなことになるのか。幻想郷の管理者の一人として他者と関わる機会が多かったため必然的に交友関係は広くなるのだろうが、明らかにその範疇を逸脱している。実際、私との関わりも旧都に越した鬼を訪ねたついでに地霊殿にやって来たという所から始まったため本来は関わることもなかったはずである。

 

(まあなんとなく理由は分かるけどね・・・)

 

管理者としてある程度人間の里や幻想郷に対しての損得を考える打算的な面はあるが、自らの身を削って解決できることであれば見ず知らずの相手にでも人妖関係なく無償で手を差し伸べるお人好しな性格だ。それでいて鬼に気に入られる程度には強いなら惹かれる者も多いだろう。

 

『・・・可愛いな。』

 

(!?)

 

・・・ちょっと面食らう。ペットたちから愛情表現として「可愛い」「綺麗」のような表現を向けられることはあったが、家族以外からこう直球に感情を向けられると少し気恥ずかしいものがある。

 

(・・・ま、まあ私はかわいいかわいいこいしの姉だからね、可愛いのはとうぜ『・・・今みたいな機会はないな。』・・・?)

 

詠知のこいしを捕まえるときのコツは、"こいしから絶対に意識を外さない"こと。少しでも意識を外すと無意識の力を働かせてしまうから、全ての行動に対して"こいしのため"という前提で動き、捕まえた後は動けないように抱きしめえる。そして持つ感情全てをこいしにぶつけるという随分と強引な方法で無意識の力を一時的に無効化してみせた。

 

その際にこいしへぶつける感情は容姿、性格、能力、交友関係等ありとあらゆる要素を片っ端から褒めまくるというやり方であり、端から見て胸焼けしそうな光景だ。だがそんな方法を取れるほど詠知がこいしの魅力を理解しているということなので悪い気はしない。

 

こいしと私で類似する点は当然姉妹なのである程度ある。私の容姿を可愛いと思うのは至極当然のことなのだ。

 

そう自分に言い聞かせている途中で、詠知の心の声がそれを遮る。

 

(・・・一体な『さとりは凄いな。多くのペットに好かれてて、それだけ皆のことを慮る優しさがあるんだろうな。(!?)こいしを心配して、地上にまでやって来て探すくらい家族愛に溢れてる。(え、ちょっとま)考えていることに対しての答えを出す速度も速くて頭の良さが抜きん出てる。(や、やめ)文章力に優れているからお燐から聞いたが本も執筆してるらしいじゃないか、ぜひ読んでみたい。思考を読んでからかってくるところもお茶目で良い。』・・・・・・)

 

詠知の心の声に、完全に私の頭がパンクする。ゆっくり頭を撫でられながら、怒濤のように心の声がなだれ込んでくる。寝たふりをしているためろくに身動きできず、詠知の心の中だけを読んでいる状況でのそれは、詠知の私への純粋な敬意の感情を知れた幸福感と共に耐えきれないほどの照れを私にもたらしてくる。

 

「ん・・・」

 

耐えきれず少し声を漏らしてしまう。

 

頭がパンクして、詠知が何を今考えているのか全く処理できない。だが詠知は私を横に仰向けに寝かし、ベッドから降り部屋を出て行った。・・・どうやら私が漏らした声で、もうすぐ起きると思い部屋を出て行った。

 

ドアが閉められた瞬間、すぐに跳ねるように起き上がり周囲を見渡す。どうやらお燐とお空は詠知に連れて行かれたようだ。

 

それを確認すると、部屋の枕を引き寄せ顔を押しつけ・・・

 

「うあああぁぁぁぁ!!!!」

 

恥ずかしさを誤魔化すように、力一杯叫ぶのだった。

 


 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

その後も足をジタバタしたり、ベッドの上を転げ回った末・・・息も絶え絶えになりながら少し落ち着きを取り戻す。

 

「・・・何よあれ!私を殺す気なのかしら!」

 

ぽこぽこと枕を叩きながら、詠知への恨み言を言う私。普段ペット以外とあまり交流のない私にとってあれは凶悪すぎる。褒め殺すという意味を物理的に教えられた気がする。

 

「いくら私が寝ていると思っていたからってあれはやりすぎよもう!覚妖怪への理解が足りないわ!お燐も何私が本書いてるって教えてるの!」

 

・・・詠知は何も悪くないことは頭では分かっているが、恥ずかしさのやり場がなく八つ当たりのように詠知に責任を押しつける。・・・お燐は説教の量が増えた。

 

「・・・」

 

枕を抱きかかえ再度横になる。・・・そう言えば、ずっと抱きしめている枕は詠知の使っていたものだったような・・・

 

「・・・ふふ・・・」

 

頬が緩む。結局詠知の私への想いを知れたのが嬉しい、というのが1番の私の感情だった。

 

"こいしの姉"や"ペットたちの飼い主"として抱く私の印象ではなく、友人の"さとり"を見てくれていた。それが何より嬉しかったのだ。

 

思考を読めるという覚妖怪の誇りを多くの人妖が忌み嫌う中、しっかり長所として心の底から尊重してくれているのがあまりにも嬉しすぎる。

 

今後も良き友人としてやっていける、そう確信ができる結果となった。

 

「でも・・・」

 

だが今後に関して1つ問題があった、それは・・・

 

「・・・これからどうやって接すればいいのよー!」

 

きっとこれから先、顔を会わせる度に意識してしまうだろう。(詠知は私のこういうところが好きなんだ・・・)と意識しながら話すのはあまりにも恥ずかしい。

 

詠知が何でも長所と捉えるような人間だということは最初から分かってはいる。こいしの無意識を無邪気で終わらせ、お空の鳥頭を伸びしろがあると褒めるような男だ。

 

だが、それで私の心に刻み込まれた詠知の心の声が簡単に消えるはずがない。今後暫く消えることはなく度々私に喜びや恥ずかしさの感情を芽生えさせるだろう。

 

「・・・心を読む私が、心奪われてどうするのよ・・・もー!

 

今後に頭を悩ませる中でまた芽生えてきた喜びと恥ずかしさを誤魔化すべく、再度枕に顔を埋め身悶えだす私であった・・・




さとり様を赤面させ隊。

次は多分お空。

最近は書き溜めなしで書いてるので、急に更新が遅れたりするかもしれないです。
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