八雲の相棒   作:陽灯

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霊烏路空とお燐と温泉 その4

 

バスローブを着ている詠知が温泉部屋前の廊下、私の前で正座している。・・・お空の成長を見越して準備しておいた大きめのサイズのバスローブがこれで役に立つとはね・・・

 

元々着ていた服がびしょ濡れになっていたので、お燐とお空に乾燥機(旧灼熱地獄の熱波を利用したもの)に持って行かせた。頭を冷やす時間も兼ねている。

 

「全く、ペットたちの面倒を見たり甘やかすのは結構だけど節度を持ちなさい。」

 

「申し訳ない・・・」

 

"動物たちに懐かれるのが嬉しくて許容しすぎてしまった。"ね・・・

 

あそこまでされておいて、"懐かれる"だけだと思っているあたり本当にある意味鈍感ね・・・お空はまだしもお燐なんてそれ以上の感情だってことくらい覚妖怪じゃなくても誰がどう見ても分かるのに。

 

まあお燐はいいとして、問題はお空ね・・・今回ので詠知への恋心が完全に芽生えた。状況が状況だけに情欲もあったみたいだけど・・・そっちはまあいいわ、動物の本能だし。

 

お空自身はまだちゃんと自覚はできていないようだけど、将来的に詠知に依存するようにでもなったらお空自身にも旧地獄にとっても良くない。

 

かといって詠知と会わせないという選択肢は、すでに懐いているお空にとってはただストレスを与える行為にしかならないから取れないし、詠知も詠知で次もその次も同じ事をするなんて言質をお空に取らせちゃったし・・・。

 

とりあえずお空が変な方向にいかないようにある程度手綱は握っておかないと・・・

 

「はぁ・・・」

 

「・・・?」

 

溜息を吐きながらジトッと詠知を見つめると、詠知が心の中に疑問符を浮かべなから見つめ返してくる。今が説教の時間だから自重しているが、普段だったら「どうした?」と聞き返してくるでしょうね。

 

・・・詠知にお空やお燐を甘やかすのを止めるようにしてもらうという選択肢もあるけど・・・100%無理でしょうね。

 

詠知の性格は変わらないでしょう。本人はただただ馬鹿正直でお人好しな性格だけど、こうやって何の自覚もないままそれぞれにとっての甘い蜜を与えて依存させていく。お燐だったら"いつでも構ってくれる優しさ"、お空だったら・・・"優しくて強い雄"でしょうね、基本本能に従ってるし。そしてその対価として約束を取り付けるという方法で、今まで人間の里の平和を保ち続けた。

 

きっと昔からそんな性格だったからこそ、多くの人妖と交友関係があったのでしょう、今更変わることはない。直接の害が一切無く得しかない分1番厄介な性格かもしれないわ・・・

 

・・・こんなこと考えておいて、私が詠知の"心の底からの善意"という甘い蜜に虜になりそうというのが笑い話だけどね・・・

 

詠知とどんな顔して会えばいいか分からないと思ってたけど、お燐とお空を見てそんなこと言ってられないって少し落ち着けたから2人にはある意味感謝してはいる。だからあんまり強く言えない。

 

さて、とりあえずこれで一応区切りがついた。もう1つの問題に移りましょうか。

 

「話は変わるけど・・・こいし、いたんでしょ?」

 

"こいしがいた気がする。"と、私の説教中に詠知が思案していたためそちらも解決しないといけない。

 

「!ああ、多分だがいると思う。今は周りにいないみたいだが・・・」

 

"温泉の中の水紋が乱れたから"・・・それでこいしがいると考えるあたり、随分無意識慣れ?してきてるわね。

 

私は能力も通じないし、細かい形跡を見つけられるほどの目ざとさがないからそうやってこいしを見つけられる詠知が羨ましい。

 

・・・でもなんか嫉妬しちゃうわね。詠知じゃなくてこいしに。私もこいしくらい自由にすればもっと構ってもらえるのかしら・・・

 

「そう、なら探しにいってあげて。お燐とお空には私から伝えておくから。」

 

「ありがとう、すまないな・・・」

 

「・・・待って、最後に1つ。」

 

立ち上がり目的の場所へ向かおうとする詠知を呼び止める。・・・今なら誰も見ていない。なら、私の抱いた感情を、我が儘を少しぶつけるくらいいいのではないか。

 

「何かあったか?」

 

「私を抱きしめて随分好き勝手してくれたじゃない?」

 

「!?申し訳ない、あれは・・・」

 

「詠知に責任はないから怒ってはないけど・・・私はその場に放置してペットたちとイチャイチャしてるってのはずるいじゃない。納得いかないわ。」

 

詠知から私を置いて行ったことへの罪悪感の感情と共に、私の嫉妬に困惑する感情が読み取れ自然と口角が上がっていってしまう。そうよね、あなたにとっては私は"ペットたちに頼られる主人"だもんね、ペットに嫉妬している姿なんかイメージとかけ離れているわね。

 

「・・・なら何か埋め合わせをするよ。」

 

・・・そうよね、詠知ならそう言ってくれると思った♪

 

「なら・・・これからお燐とお空、それからこいしを甘やかした分、私も甘やかしなさい♪隠し事は無駄よ?私は"さとり"、心を読むのは得意なんだから・・・」

 


 

「ふふ・・・」

 

結果として約束を取り付けることができた。・・・"さとりも誰かに甘えたくなる時があるんだな"ですぐに納得されたのはちょっと気に食わないけど・・・今更ね。

 

・・・こいしにどころか、お燐とお空にまで嫉妬していたとはさっきまで私でも思ってなかった。

 

最初はお空が久しぶりに詠知に会えて楽しそうだったから、温泉からあがるまでは待とうかなと思っていた。だがずっと抱きついているお空や、詠知に手招きされて抱き寄せられるお燐の姿を見て色々と不穏な雰囲気を感じ割り込みにいったが、思い返してみると「私にはしてくれないのに・・・」という大人げない嫉妬の感情もあったのだろう。

 

「さとり様!乾かし終わりました!」「・・・」

 

お燐とお空が戻ってくる。お燐はいつも通りだけど・・・お空は詠知のことを探してるわね。

 

「お帰りなさい2人とも・・・詠知は所用で席を外してるわ、少ししたら戻ってくるから待ってなさい。いいわねお空?」

 

「うにゅ・・・分かりました。」

 

お空の心の中を見ると、詠知がいないことへの落胆に加えて自分の抱いた感情への疑問が混ざってかなり複雑な思いをしていることが分かる。・・・このままにしておくのは良くないわね。

 

お空にとっては初めて抱く感情、恋心なのだ。ペットの精神的な成長は素直に手助けしたい気持ちはある。

 

「お空、詠知に抱きついてどう思ったの?ゆっくりでいいから言ってみなさい?」

 

「・・・なにかぽかぽかするような、あったかくてうれしい気持ちになりました。でも、普段さとり様に褒められた時のうれしい気持ちとはなにか違うような・・・。すごくもやもやします・・・」

 

「それは何もおかしいことじゃないわ、皆が抱くことのある気持ちよ。お燐も同じ気持ちをお空の比にならないくらい持ってるわ。」

 

「にゃっ!?」

 

「そうなんですか?・・・さとり様もこの気持ちを持ったことがあるんですか?」

 

「・・・そうよ。でもすぐに分かるものじゃないし、その気持ちは自分でしっかりと見つけないとダメなものなの。」

 

「うにゅ・・・」

 

「詠知に沢山お話ししたり遊んでもらいなさい、そうしたらいずれ必ず分かる日が来るわ。・・・そうね、また今度一緒に詠知の家にでも行きましょう。」

 

地上で生活を営む詠知が旧地獄の地霊殿に来られるペースなどたかが知れている。だったらこちらから行けば良い、別に遠慮する必要なんてもう無い。

 

「さとり様と詠知のお家にお出かけできるんですか!?やったー!!」

 

ぴょんぴょん跳ねるように嬉しがるお空。相変わらず単純ね。・・・そんなお空に恋心を芽生えさせた詠知には責任を取ってもらわないといけないわね。

 

「・・・あの、さとり様・・・あたいも・・・」

 

「お燐はいつも地上に出てるでしょうに・・・でもそうね、皆でお出かけしましょうか。」

 

「やった!!」

 

「みんなでお出かけー!」

 

手を取り合って喜ぶお燐とお空。さっきまでの遺恨が残ってはいないようで安心ね。

 

「・・・さて、そろそろ本題に入ろうじゃない。」

 

「「・・・?」」

 

揃って首を傾げるお燐とお空。・・・忘れてるのね。

 

「私が寝てるときに随分な悪戯をしてくれたわね・・・」

 

「「・・・!?」」

 

「さ、そこに正座なさい、お説教の時間よ。大丈夫、詠知が戻ってくるまでだから。」

 

それはそれ、これはこれ。悪戯へのお仕置きと躾はしっかりしないとね?




さとりさまのあとしまつ。いずれ地霊殿勢が詠知の家ではちゃめちゃやる話とかも書きたい。

誤字報告ありがとうございます・・・毎話のように何かしらミスってる節穴チェックなので本当にありがたいです・・・

こいし編→旧都の宴会→間の何か→次の場所みたいな流れになるはず
番外編とか過去編とかを途中でしれっとあげるかもしれません。
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