まさか自分のサードアイが開くなんて微塵も思ってなかった。
もともと感情を取り戻すにつれて開いてほしいって想いは強くなっていたけど、心の中で無意識に諦めていたのかも。こんなちょっとしたきっかけで開くものなんだね・・・
でも、今はそんなこと考えている暇は無く・・・
「あわわわわわ、どうしよ!開いちゃった!開いちゃった!!」
サードアイを手に持ってわたわたする私と、同じくわたわたして椅子を持ってその場を右往左往する詠知という混沌を極める状況だった。開いた私のサードアイは、まるで閉じられていた今までのことが無かったことのように元気にギョロギョロと動いている。・・・私はこんなに慌てて悩んでるのに暢気ね、随分!
どうしよう・・・いつかは開いて欲しいとは思ってたけど、今は心の準備が全く出来てなかった。
お姉ちゃんと違って、私は嫌われることが嫌だった。心を読めることが嫌でしょうがなかった。心を読まれる事を嫌がる人に、そうやって嫌われていることを知りたくも無いのに心を読めるせいで知ってしまう私。どっちも損してる、ルーズルーズな関係。
色んな人とお話したかった、色んな所に行きたかった。でもどこに行っても誰からも嫌な顔、嫌な気持ち・・・
そして最後には地上に居られなくなって、今の地霊殿に移住した。そこから沢山のペットをお姉ちゃんが飼うようになって、私はどこにも行けない寂しさをペットたちと遊んだりして過ごしていた。
そんな生活が数百年。少しずつ地上に居た日々を忘れてきた時・・・地上で嫌われている妖怪達も地底に移住し始めた。私と同じ境遇の妖怪達。きっと仲良くなれると思って、地上では出来なかった友達ができると思って話かけに行ったんだけれど・・・
『嫌なやつ』『帰ってくれ』『卑怯者』
ダメだった。結局覚は嫌われ者の中の嫌われ者だったみたい。地上の頃の辛かった思い出もフラッシュバックしてしまったことも加わって、私を絶望させるには十分過ぎた。
本当に誰からも愛されない。ペット達からは嫌われてはいなかったけど、まだ妖怪化したペットもいなかったことでお姉ちゃん以外誰ともちゃんと喋ることができなかった。
ならもうこんな能力いらない。覚妖怪として生きてる意味なんて無い・・・そうやって私はサードアイを閉じることを選んだ。
心まで閉じるつもりは全くなかった。今思えば心を読むサードアイを閉じるということは、私自身の心にも何かの影響があるくらいは普通に考えれば思いつくはずだった。
そんなことを考えられないくらい当時の私は、この能力を憎んで恨んで絶望してた。心を読めなくなれば、皆と友達になれるんじゃないか、好かれるようになれるのかも。それが何よりの魅力だった。
結果代わりに得た無意識の能力でまた私は違う意味で寂しい思いばかりするようになっちゃったけど・・・詠知と出会って、色んな人に出会えて、出不精なお姉ちゃんが私のために地上にまで来てくれたり、沢山の感情に触れて心も大分戻って、欲しかった友達も沢山出来て幸せな毎日を送れるようになった。
それと同時にまたサードアイを開きたいという気持ちが芽生えてきた・・・出会ってきた人達が心の底からどんな感情を持っているのを知りたい、知的好奇心が止まらない。
・・・でも怖い。また心を読めるようになったことで皆に嫌われてしまうのではないか。仲良くしてくれた人達が実は心の中で私を嫌って憎んでいたりしたらどうしよう。
だからもしサードアイが開けるのなら、もし嫌われていてもそれを受け入れられるくらい私自身が精神的に大人になったらでいいかなと楽観的というか現実逃避気味に考えていた。
・・・つまるところ、今は全くその時では無いってこと。どうしよう・・・
悩んでいると私の心の中に何か感情が流れ込んでくる。一瞬私が今焦っているからだと錯覚したが、この感覚は間違いない。サードアイが心を読んでいる時の感覚。
その対象は?・・・もちろん私以外にこの部屋にいる1人しかいない。
椅子を持ってその場を右往左往・・・持つ物が毛布になってる!?それは置いといて、詠知の感情に間違いない。
・・・今は詠知の心も読めるんだよね。読みたかった詠知の心・・・ちょっとくらいならいいかな?
サードアイを詠知にこっそり向けてみる。
『どうする?どうする?サードアイが開いたって事は心が読めるのか?なら外に出た方がこいしの刺激にならないのか?・・・覚妖怪のサードアイが開いたときの対処法なんて知らんぞ!?』
すごい焦ってる!?・・・そりゃ焦ってなかったらあんな私と同じようにわたわたしないか・・・
でも、そんな詠知の姿と心の中を見て私の心が少しずつ落ち着いていく。
本人以上に周りが慌てると、かえって本人が落ち着くというのは聞いたことあるけどそんな感じ。
それに普段は大人しい雰囲気な詠知が心の底からわたわたと慌ててる姿が面白くて、それだけ本心から私を心配してくれてるのが嬉しくて・・・私の焦りも一時的に吹き飛んだ。
「あははっ!詠知焦りすぎだよ~!」
さっきまでのことを棚に上げて、自分の不安も一緒に笑い飛ばすようにお腹を抱えて笑う。
「え?・・・大丈夫なのか?」
詠知が持っていた毛布を置き、サードアイと私の顔を交互に見る。
「うん、今は大丈夫。また心を読めるようになったけど特に悪いことは起きてないよ、詠知がいるのも刺激になってない。」
「本当に心読めるようになったんだな・・・」
『とりあえず・・・さとりを呼んできた方がいいか。』
「む・・・何でお姉ちゃんの名前出すの?」
「えっ、ほらやっぱり家族を呼んでくるのが1番いいだろう?」
『同じ覚妖怪だし、こいしの状態をより正確に判断してくれそうだし・・・こいしも会いたいと思ったんだが・・・』
「・・・むー」
勿論お姉ちゃんにも会いたいのは事実だけど、まだ詠知の本心を見てない。"私をどう思ってるか"をちゃんと見てない。
ついて行っている時に聞いたけど、詠知は今日の夜には旧都の宴会に行ってしまうらしい。今このチャンスを逃したら、お姉ちゃんやお燐やお空に意識が向いて確かめる時間が取れなくなってしまう。詠知とまたいつ会えるのかも分からないから、ここで絶対に詠知の本心を見たい。
「ね!いつも私を捕まえる時みたいにしてみてよ!ほら、無意識だった時と何か変わってるかもしれないし!」
「なるほど?まあ構わんぞ。」
『でも心を読まれている状態でするのはちょっと恥ずかしいな・・・』
「気にせずいつも通りしてくれていいよ!何を思ってても気にしない!もし私が嫌いだとか、うざいとか、めんどくさいとか、思ってても気にしないし・・・気にしないし・・・」
「気にしそうじゃないか!?大丈夫、そんなこと思ってないから!」
詠知がそんなこと思わないのは分かっているけど、詠知に心の奥で嫌われている想像をすると涙が溢れそうになってくる。なんだかサードアイが開いたことで感情がやけに表に出やすくなってる気がする。
詠知が椅子に座り、泣きそうな私を膝上に乗せ頭を撫で始める。背丈に大きく差があるから、私の顔が詠知の胸に埋められるような形になってゆっくりと頭を撫でられる。普段無意識の能力を使わないように詠知が取るやり方。
思い返すと、この状態で里の真ん中で捕まえられて地霊殿に運ばれたり、色んな人達に見られてたんだよね。・・・当然私の存在は広まるに決まってる。しかも幻想郷じゃ名の知れた詠知相手にだったし。
そう考えると今更だけど凄い恥ずかしくなってきた・・・赤くなっていく顔を見せないように、よりぐっと詠知の胸に顔を押しつける。
『さて、どうしようか・・・』
詠知の心の声が聞こえてくる。私の耳が詠知の心臓の鼓動を聞き取れるほどの距離にあることで、なんだか直接私の中に声が流れ込んでくるような感覚がして、すごく心地良い。
・・・これで私をどう思ってるか知れる。普段沢山褒めてくれるけど・・・半分くらいは本当だったらいいな・・・
「『能力関係なくあちこちに積極的に向かう行動力に好奇心旺盛さと、無邪気さが合わさって沢山友達を作れるようになって本当に偉い。辛い過去を乗り越えて、今こんなに心の底から楽しそうにしている姿を見ると私もすごく嬉しくて誇らしさを覚えるよ。加えて悪戯っ子な部分もあるのがこいしの可愛さに拍車をかけている。服装もまずスカートのラナンキュラスの柄が良い、花言葉は「あなたは魅力に溢れている」。まさに魅力しかないこいしにふさわしい花だ。それにコードがハートの形を作っているのも、キュートを極めに極めていて・・・』」
「待って!?ストップ!ストーーップ!!!」
まさかのさとり登場前に3000文字超えるという・・・計画性のなさよ。