地霊殿編一応ラスト
「だ、大丈夫か・・・?」
「・・・」
こいしの静止に応えて、こいしを降ろすと背を向けて顔を抑えてしゃがみ込んだ。小声でブツブツと何か呟いていて、やってしまった感がある。
(そりゃ心を読めるようになってすぐに連続して心を読ませたら、混乱くらいするよな・・・)
馬鹿正直に褒めたが、サードアイが開きたてで心を読むのにまだ慣れてない状態であれだけ連続して心の声を読ませたら具合の一つも悪くなってしまうだろう。配慮が足りなかった。
(こういう時どうすればいいんだ・・・?)
心読み酔い?した覚妖怪への対処方法が全くもって分からない。今はとりあえず背中をさすっている・・・冷たい水でも飲ませるのが良いのか?・・・果たして乗り物酔いと一緒で良いのか。
そんなことを思案していると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。
「随分と時間が経っているけど大丈夫?」
ドアの向こうからさとりの声が聞こえてくる。確かに結構時間が経ってしまった、心配して呼びに来てくれたのだろう。
さとりなら、同じ覚として、姉妹として今のこいしへの的確な対応方法が分かるかもしれない。少なくとも私よりは知っているはずだ。
そう考えた私はドアを開ける。
「えっ・・・こいし?何で心が・・・」
さとりが部屋の中を見た瞬間に、その表情が困惑したものに変わる。さとりの反応を見るに、今まで心が読めなかったこいしの心が読めるようになったのだろう。
「・・・どういうことか説明してくれる?詠知?」
この部屋にやって来た後に起こったことを説明し終えると、さとりが1つ小さく息を吐く。
「なるほどね・・・こいしのサードアイが開いて、今のこいしの状態は心を読ませすぎたことで起こってしまったと。」
「ああ・・・配慮が足りなかった、申し訳ない。」
「・・・原因がそうには見えないけど。・・・とりあえず、ちゃんとこいしからの話を聞くためにまず心を落ち着かせないといけないわ。その間、あんまり刺激を与えたくない。それまでは外に出て待っててもらっていいかしら。」
「分かった、頼む。」
2人を残して廊下に出る。部屋の近くで待っていようと考えていると、廊下の奥からお空がやってくるのが見えた。
「詠知、服乾いたから持ってきたよー!」
「お、ありがとうお空。なら後でどこかで着替えるか。ちなみにお燐はどうしたんだ?」
「お燐はご飯作ってる!私とお燐で作ってたんだ!お腹すいてるでしょ、詠知の分もできたから一緒に食べようよ!」
「確かに朝から何も食べてないな・・・」
思えば起きてからしばらく時間が経っている。見える所に時計がないため詳しい時間は分からないが、おそらく昼前辺りになるだろう。いろいろとあったため完全に忘れていたが、言われると確かに空腹だ。
「でも、私はここで待たないといけないんだ。だから一緒には食べられないな、先に食べていてくれ。」
お空には申し訳ないが、さとりとこいしが部屋から出てくるのを待つのが最優先だ。
「え・・・一緒に食べるの嫌なの?」
「嫌では無いんだが、中に居るさとりの用事が終わるまでここで待つ約束をしたんだ。だからその後頂くよ。」
「さとり様との約束・・・ならしょうがないね・・・」
お空にとっては主であるさとりとの約束の方が優先される。お空には申し訳ないが、我慢して貰う他ない。
「私とお燐の作りたてを食べて欲しい・・・」
「・・・」
「でもさとり様との約束なら、しょうがないよね・・・」
「・・・」
「じゃあ、待ってるね・・・」
「ちょっと待て。・・・分かった、一緒に食べよう。ただすぐに食べて戻るからな。」
とぼとぼと寂しそうに来た道を戻っていこうとするお空の背中に、心が耐えきれなかった。・・・いや無理だろう、あんな寂しそうにされたら誰だってなんとかしたいと思うはずだ。私は悪くない・・・悪いか。
「ほんと!?いこいこ!!」
振り返ったお空の顔がぱあっと明るくなり、私の手を取って引っ張ってくる。
(すぐに食べて戻れば大丈夫だろう・・・)
万が一私が食事を取っている途中で2人のやり取りが終わったとしてもそこまで問題はないだろうが、早く戻るに越したことはない。
食事を摂るだけならそこまで時間はかからない。なら多少はいいか。そう考えてお空に手を引かれていくのだった・・・
「「で、置いていったと。」」
「はい・・・」
そんな考えが甘すぎると気付いたのはすぐであった。食卓があった大広間に着いた私を出迎えたのは、今まで見た中で1.2番を争うほどの豪勢な料理。
昔、レミリアが気まぐれで私に「テーブルマナーを教えるわよ!」と言って出してきたフルコースくらいレパートリーがあった。教えてくれたのはほぼ咲夜だったが。
量も質も空腹の私にとってあまりにも嬉しすぎる内容だったのだが、こうなると食べるのに相応の時間がかかってしまう。
加えてお燐とお空が戯れついてきたのも、時間が長引く要因となった。両側に座った2人が箸やスプーンでとった料理を私の口に運ぶ、いわゆる"あーん"なるものをしたりさせてきたりとしている内にさとりとこいしがやって来てしまった。
最初は状況に特に言及も無く「私たちも食べようかしら。」と言い皆で食卓を囲み、和やか?な雰囲気で食事をしていった。
そしてそのまま全員が食事を終え、食器の片付けをしようとしたタイミングでさとりとこいしの「「正座」」という見事なシンクロ発言に従い正座中である。今朝の風呂場に続いて本日2度目。ちなみにお燐とお空は食器を片付け、そのまま皿洗い中である。
「1度ならず2度までもお燐とお空を侍らせて、良い身分ね。新しい地霊殿の主にでもなるつもりかしら?」
「~~~!!」(てことは詠知がお姉ちゃんの旦那さんになるの!?)
「・・・」(・・・そう言う話ではないわよ。分かってるでしょうこいし・・・)
「~~♪」(でもちょっと考えてるじゃん♪)
「!?・・・!!」(こいし!?変なこと考えずに静かにしてなさい!)
「~~♪」(やだねー♪私も当事者だからすきにするもん♪)
さっぱり分からん、だが楽しそう?で何よりである。だけどジェスチャーでなんとなくさとりがこいしにからかわれていそうな感じがする。
こいしもあの状態から回復したようで良かった。さとりは一体どんなことをしたのだろうか。
「「で、詠知?」」
「はい・・・誠に申し訳ありませんでした・・・」
(・・・ここまで発言が揃うのは、やっぱり姉妹だからかな?)
「「・・・反省してない(わ)よね?」」
(ほらこんな感じで・・・・・・あっ)
性格が真逆なように思っていた2人も、やっぱり姉妹なだけあって似ている部分があるんだな・・・とのほほんと思っていると、その心を読まれてしまった。
さとりとこいしの目つきがより鋭くなり、その状態で正座している私を上から見つめてくる。・・・一回りどころか四回りくらい小さい少女2人に睨まれているこの状態は相当情けない状況だろう。
(でも、そうやって姉妹揃って何かしている姿を見るのは嬉しいものだ。)
鬼が旧都に越してからの知り合いであり、さとりとの関わりは数百年。こいしを人間の里で見つけたのも、少なくとも百年以上前の話だ。かなり長い付き合いだと言えるだろう。
そのため2人揃って何かしている姿は、私から見てもかなり喜ばしいことなのだ。・・・まあその対象が"私への説教"だというのはなんとも言えないが、自業自得だろう。
そんな事を考えている詠知の心を読み、再度こいしと目を合わせる。最初は詠知の心のせいで思考が止まっていたが、割とすぐに戻った。切り替えの早い性格は変わっていないようである。
『なんか詠知がこんな感じなの、すごい安心したよ。』
(本心からこんな感じだから、信頼してこいしを探すときにも協力して貰ったりしてたのよ。まさかここまで影響を与えるとは思ってなかったけど。・・・はぁ・・・)
『お姉ちゃん、疲れてるね。』
(詠知のせいで1日で色々起きすぎなのよ本当に。お燐はいつも通りだけど、お空にこいしに私に・・・)
『でも結局全部悪いことではなかったんじゃないの?』
(まあ・・・そうね。お空にとっては成長になるだろうし、こいしのサードアイは言わずもがな。私は・・・)
『詠知とイチャイチャできる権利でしょ?』
(ちょ!言い方があるでしょう!?言い方が!)
『でも事実じゃん♪ペットに嫉妬したお姉ちゃん♪』
(~~!!・・・しょうがないじゃないの、あんな光景見せられたら嫉妬の1つや2つするわよ!)
こいしが再度心を読めるようになったのは素直に嬉しいけど、タイミングが悪すぎる・・・今の私にはからかわれる要素が多過ぎるわ。
・・・でも、こんなやり取りが出来るのも久しぶりで・・・ちょっと楽しい。
「ね!詠知ー!お姉ちゃんが嫉妬してるから相手してあげて!」
「ん?嫉妬?」(そんな橋姫みたいなことをあのさとりが?)
「お燐とお空みたいに詠知とイチャイチャしたいんだって♪」
「イチャ・・・何だって?」
「こいし!?」
「約束したんだから、お姉ちゃんの願いを叶えてあげて♪お燐とお空みたいに抱きしめられたいし、お風呂に入りたいし、食事の時にあーんしてほしいし・・・」
「こいし!?」
古明地姉妹にジト目で見られたい人生だった。一応地霊殿編はラストですがいずれ再登場します(多分)。
旧都の宴会→魔理沙→幽香→誰かしら→守矢神社みたいな流れになる・・・はず。過去編番外編は気が向いたら書きます。第一次月面戦争書きたい。