八雲の相棒   作:陽灯

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地霊殿から旧都への道

地霊殿から旧都へ向かう道。昨晩に勇儀と一緒に来た道を戻るように歩く。

 

あの後楽しそうなこいしとそれに振り回された結果吹っ切れたさとり、それに自由なお燐とお空が加わり色々と遊んだ。それはもう本当に色々だったが・・・

 

こいしは"覚妖怪"として再度慣れるために暫く地霊殿に留まることになった。ペットたちやさとりの心を読んでいくことで、こいし自身で前までのように地上を中心とするか、地霊殿を中心とするか、行く末を考えていくという事だ。まあ早速さとりの心を読んでからかっていたし、遠い未来の話では無い気がする。

 

勿論協力はしたいという事で、定期的に地霊殿に来る事と地上で活動する場合に一時的な拠点として私の家にて一部屋貸し出す約束をした。少なからず私がこいしの開眼の一端となったことは間違いないためこのくらいは普通だろう。後、他の地霊殿メンバーもいつでも遊びに来て良いという話をした。こっちはただ友人としての話だが。

 

(そういえば、こいしはもう無意識の能力は無くなったのか?)

 

サードアイが閉じた際に得た能力なら、サードアイが開いたら無くなると考えるのが妥当だが・・・同じ人間の体の仕組みですら知らないことが山のようにあるのだ、ましてや種族のまるっきり違う覚妖怪の仕組みがどうとかなど分からない。

 

(次来た際に見て考えれば良いか・・・)

 

分からないことは分かるときに分かれば良い。次に知る機会が来たらそこで考えれば良いという考えは、不可思議だらけの幻想郷で個人的な生きる術だと思っている。

 

それに加え私よりもよっぽどさとりの方が頭が良いしこいしの事をよく知っている。当然こいし自身も無意識の能力について考えているはずだし、次に会う機会で聞いてみれば良いか。

 

・・・と言っても、その考えには1つ問題がある。

 

(紫への報告どうしよう・・・)

 

殆ど機能していない気もするが、一応監査なる名目もあって色々な勢力を訪れているわけである。・・・まあ殆ど元気かどうかや、生活に不便がないかを聞いているだけだから大したことではないのだが。

 

最終的に、訪れた際に起こったことや所感を報告書に簡潔にまとめて紫に提出する作業を毎回やっている。

 

といっても、例えばパチュリーだったら最後に"いつも通り研究に熱心で元気そうだった"みたいな寺子屋の子ども達が夏休みにやる一言日記レベルのことで締めるくらい書くことがないないのだが・・・

 

今回は流石にある程度書く内容を考えなければならない、持っている能力が変化したという事実はできる限り早めに伝えておくべきだろう。

 

(なんて書くべきか・・・)

 

だが、それに際し問題となるのは"原因"である。

 

幻想郷で唐突に能力が変化したり、新しい能力を得ることはそう珍しくない。つい最近でも里の少女がいきなり"あらゆる文字が読める"能力を得たりしていた*1。お空も八咫烏の力を与えられた結果あんな強大な能力を得たわけだ。

 

また能力の名称が変わることはしょっちゅうである。これには大きく2通りのパターンがある。

 

1つは純粋に"能力が進化もしくは変化した結果"。こいしが"心を読む"能力からサードアイを閉じた際に"無意識を操る"能力に変化したのが身近な例だろう。

 

もう1つは"ただ能力の一端を見せていただけ"のパターンである。能力名とは"~~する程度の能力"と幻想郷縁起にて記載されているが、あくまでもその本人に直接能力を聞きに行ったのでは無く阿求の主観と里の住人やそれに近しい人物を中心とした第三者視点での評価によって名前が付けられている。最近阿求がアグレッシブな影響か本人に直接聞きに行くパターンも増えているが。

1番の例は鈴仙だろう。元々"狂気を操る程度の能力"であった鈴仙は、後々により強大な"波長を操る程度の能力"に名称が変化している。狂気を操れるのは、波長を操って相手の感情を乱した結果狂気状態に変化させていただけ。つまるところ能力の一端でしかなかったわけだ。

ていうか何だ波長操って分身したり消えたりバリアはったりって。

 

それはさておき今回の件は明らかに前者であり、その場合は"原因の究明"が大切となる。

 

(単純に考えたら、"心が開いたからサードアイも連動して開いた"なんだが・・・何故あのタイミングで?)

 

あんな私の一言で開くのであれば、もっと早くに開いているのではないか?もっと何か違う原因があってこいしのサードアイが開いたのではないか?そもそも開眼してすぐに心を読むことが出来る物なのか?開眼したとて能力に一時的に何かしらの制限が起きるのではないか?

 

考え始めると、原因以外の疑問が湧き出てきて頭の中をぐるぐると回り始める。宴の後明日まで旧都にいるなら、もう1回地霊殿を訪問してみようか。・・・報告書を書くのは難航しそうだ。

 

(でも1番の問題は・・・)

 

ちょうど旧都の町並みが見え始めたタイミングで、足を止め旧地獄の赤みがかった空を見上げる。

 

(()()()()()()()()()ことだよなぁ・・・)

 

あまり相手の過去や深いところを追及しすぎないように普段から心がけている。人の辛いところを掘り起こすのは、相手にとって何の得もない辛いことでありなおかつ私自身がそういった過去を受け止めてどうにかできる自信が一切無い。

 

これは幻想郷の住人としては異質な方だと思う。基本お構いなしにずかずか踏み込んでいって当然という態度であり、相手側もそうされるのも当然という受け止め方をする。そういう生き方の方が楽なのだろう。私だって人のことをからかったり怒ったりすることはあるが、一定のラインを超えた先の"地雷"を踏みたくないという恐れがそれ以上の追及の足踏みをさせる。

 

(やっぱりリーダーには向いてないな・・・)

 

必要に応じて命に関わる判断をあっさり下せるような心の強さと冷静さ、頭の良さ等があるのがリーダーとしてふさわしい存在だろう。私には何も無い。

 

里の発展に携わっていた際にはある程度割り切って取り組んでこれたが、その役割を離れ改めて実感した。

 

(でも、『八雲の相棒』の名前には泥を塗りたくない。)

 

正直私自身『相棒』なんて大層な称号を貰うような存在だとは思っていない。リーダーとしての資質も戦闘能力も頭の良さも何もかも紫と雲泥の差がある。式神の藍にも全て劣るだろう。

 

ただ紫と交友関係が長く、近しい夢を持っていたからその恩恵を受けただけ。決して実力で呼ばれるようになったわけではないと思っている。

 

その状況に甘んじたくはない。やれる範疇で幻想郷、紫に貢献していきたい。当然有事の際も貢献したいと普段から鍛錬は重ねている。

 

加えて私が周りと関係を築ければ、紫が動きやすくなる・・・。が、そんな打算的な面を考えてもすぐに見抜かれるだろう。嘘が嫌いな鬼なんて特にそうだ。

 

(とりあえず、いつも通りでいれば良いか。・・・ん?)

 

再び歩き始め、旧都に近付いていくと・・・鬼達が慌ただしく動いているのが見える。宴の準備をしているのなら手伝った方が良いか。そう思っていると・・・

 

(・・・え、あれ酒樽?あれ宴で飲むの?)

 

鬼達が酒屋から酒樽を台車に乗せ旧都の中央方面に運んでいく姿が見える。が、その量が尋常では無い。おそらく4斗*2の酒樽が少なくとも20以上運ばれている。

 

年がら年中喧嘩と酒を好む鬼の酒豪っぷりを再確認させられるが、それと同時に・・・

 

「・・・酔い潰れないと良いなぁ。」

 

自分の酒の弱さを思いだし、弱々しい足取りで旧都へ向かっていくのであった。

*1
本居小鈴

*2
縦、横、高さ各65cm程度




詠知くんの内面のお話。
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