八雲の相棒   作:陽灯

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酔っ払い詠知くんのお話
藍と妖夢もほんのちょっとだけ出る。


紫と幽々子と泥酔

キュォーン

 

「いきなりだなっ!?

 

時間帯は夕食時。そろそろ夕食でも作ろうか、そう思い立ち上がった瞬間に下に開いたスキマに飲み込まれる。

 

強制的な連行は今に始まったことではないが、毎度ビックリする。大体は昼間に紫のストレス解消のために呼び出されるのがほとんどだったが、夕方の時間帯に唐突に呼び出されたことで虚を突かれた形だ。

 

スキマ空間を抵抗なく落ちる。どこに出るのか不明だが、とりあえず着地の用意をしつつ到着を待つ。

 

それにしてもスキマの時点で十分すぎるほど強力な能力だが、これが能力のほんの一端に過ぎないという点が本当に恐ろしい。

 

"境界を操る程度の能力"。この能力における境界とは、本当に何でもありなのだ。例えば「昼と夜の境界をいじり永遠に夜のままにする」だとか「能力の境界をいじり対象の持つ能力を無効化」だとかあまりにも汎用性が高すぎる。

 

紫と始めて出会った時には能力の将来性に期待したものだが、想像の遙か上を飛び越えられてしまった。

 

そう考えている内に落ちる先のスキマが開く。着地の用意をしつつスキマから移動先に到着し・・・

 

もふっ

 

「ん!?」

 

もふもふとしたものに受け止められ、体が埋もれる。だが、この感触には覚えがある。

 

「大丈夫ですか?詠知様。」

 

「藍。すまないな受け止めてくれて。」

 

「いえいえ。」

 

私を受け止めたのは藍の尻尾であった。九本の尻尾によって衝撃無く綺麗に受け止められたのだった。

 

「・・・あの、降ろしてくれないか?」

 

「・・・」

 

受け止めてもらったのはいいのだが、降りようとしても尻尾で挟み込まれて身動きが取れない。ふかふかした尻尾に囲まれて気持ちは良いが、今の目的は紫が私を連れてきた理由を知るのが先だ。

 

「ふふ、藍。後で好きなだけやらせてあげるから、今は降ろしてあげなさい。」

 

「かしこまりました。」

 

紫の声が聞こえ、藍の尻尾から解放される。

 

立ち上がり周りを見ると藍はもちろんだが、紫と・・・幽々子が座っているのが見える。食卓を囲んでいたようで机には食事や酒が並ぶ。

 

そして、八雲亭ではないことにも気付く。・・・少し嫌な予感がする。

 

「紫に幽々子?で、ここは・・・白玉楼か。」

 

「正解、いらっしゃい詠知~♪」

 

「お邪魔するよ幽々子、紫と一緒に夕食中か?・・・なるほど、料理を作って欲しいから呼んだんだな?待ってろ今作りに行くから。」

 

「不正解、そのために詠知を呼ぶわけないわよ。さあ一緒にお酒を飲みましょう。」

 

「・・・本当に飲まなきゃダメか?」

 

私は酒に弱い。・・・いや、人並みくらいには飲めるのだが周りが酒豪すぎるのだ。文字通り基本人じゃないので当然かもしれないが・・・

 

先にダウンしたあげく、前日の記憶がないという状況が情けなさ過ぎるので基本誰かと酒を飲むことはないのだ。

 

「ふ~ん。萃香とは飲んでたのに、私たちとは飲まないのね。ふ~ん。」

 

「あら、そんなことしてたのね。ふ~ん。」

 

「うっ・・・、見てたのか紫。いやあれは萃香が後から来たから状況がだな。」

 

「「ふ~~ん」」

 

「・・・節度を持ってくれよ?」

 

「よろしい♪」

 

・・・まあ、そこまで酔わない程度に飲めば大丈夫か。

 

 

 

私の記憶はここで途切れている。

 


 

「ようむー、ようむー。」(わしゃわしゃ)

 

「きゅぅ・・・」

 

「・・・飲ませすぎたわね。」

 

「・・・そうね。」

 

妖夢が甘やかされすぎて頭がパンクしダウンしたのを横目に、幽々子と話す。

 

「詠知が酔った姿を見たい。」という思いつきで連れてきたのだが、正直ここまで酔わせる気は無かった。

 

普段1人酒しかしない詠知がやって来た萃香と晩酌した挙げ句甘やかしているのに少し嫉妬してしまったのもあったのと、幽々子がここまで酔った姿の詠知を見たことなかったことで興味本位で飲ませすぎたこともあり詠知は現在完全に泥酔している。

 

「らんのしっぽはふかふかしてていいな。」

 

「ふふ、でしょう?もっと触っても(にぎっ)きゃっ!詠知様、そこは根元です!敏感な所なのでもっとやさし(ぎゅむぎゅむ)ひうっ!!」

 

「・・・藍もダメそうね。」

 

「・・・そうね。」

 

藍も陥落するのも時間の問題だろう。

 

「幽々子、今取れる選択肢は3択よ。」

 

「・・・1つは2人を犠牲にして退散すること、1つはどうにかしてもっと飲ませて眠らせること・・・最後のは何かしら。」

 

「全て諦める。」

 

「それは選択肢なのかしら・・・」

 

「ひぅぅ・・・」

 

「藍がやられた・・・」

 

腰を抜かれた藍が地面に伏すのを見て、次は我々のどちらかだということを実感する。ゆっくりとこちらに近付いてきて・・・幽々子の前に立つ。

 

「ゆゆこ。」

 

「あら詠知、ずいぶん酔ってるみたいだし少し横になっても(がしっ)きゃっ!」

 

「おひめさまにはこれがよくにあう。」

 

幽々子を抱き上げ、お姫様抱っこをし始める。

 

「新鮮な気分になるわねこれ。・・・私がお姫様なら詠知が王子様かしら?」

 

「・・・」

 

「あら?」

 

幽々子を降ろし立たせた詠知が、幽々子の手を取り・・・手の甲にキスをした。

 

「・・・」

 

「けいあいしてますおひめさま、なんて。」

 

「・・・私も愛しているわよ詠知。」

 

「ストップストップ!」

 

詠知の顔に手を添えキスしようとする幽々子を静止する。

 

「あら、ドラマチックな場面で止めるなんて意地悪ね紫。」

 

「このままだとあなた本当にキスしてたじゃない、さすがに目の前でそれはダメよ。」

 

目の前で想い人と友人がキスをするのを眺めているほど、私は優しくはない。止めるのは当然だ。

 

・・・なんとなく分かっていたがやっぱり幽々子も詠知の毒牙(?)にかかっているらしい。

 

だが冥界の主という者が酔った状態の男一人に心動かされているのはあまりよろしくない。ここは1つ言わなければ。

 

「全く・・・詠知が好きなのは分かったけど今の詠知は泥酔してる状態、そんな詠知を相手にしているのだから、自分の感情くらい押さえ込みなさい。それで後々後悔してもおそ「ゆかり」・・・どうしたの詠知?」

 

「・・・おおきくなったな。」

 

「・・・でしょう?出会った頃と比べて私は比にならないほどの力をつけた、それは詠知のおかげよ。感謝してる。」

 

当時はまだ弱妖ほどに過ぎなかった私を拾って育ててくれた存在、恩人であり感謝の心を忘れたことはない。

 

「わたしもうれしい。でもちょっとさびしい。」

 

「さびしい?」

 

「ゆかりがりっぱになって、わたしがいらなくなることをかんがえるとさびしい。」

 

「そんなことない!」

 

詠知の言葉を聞いて咄嗟に抱きしめる。

 

「詠知がそんなことを思っていてくれたなんて知らなかったわ。それだけ心配してくれているなんて本当に嬉しい。安心して、絶対に離れないから。」

 

泥酔した状態とはいえ、詠知が私に弱い部分を見せてくれたことがすごく嬉しい。

 

「あんしんした、ありがとう。」

 

「ふふ・・・大好きよ詠知。」

 

「・・・私に言える立場ではないじゃないの、紫。」

 

幽々子が呆れた表情でこちらを見てくるのに苦笑いで返す。

 

「ごめんなさい、嬉しくなっちゃって。」

 

「全く・・・で、詠知はどうするの?この状態の詠知をそのまま家に帰すつもり?」

 

「そんなことしないわ、もちろん介抱するわよ。」

 

「じゃあここに泊めていいわよ。紫と藍も泊まっていきなさい。」

 

「あら、いいの?」

 

「いいわよ、詠知の右隣は私だけど♪」

 

「・・・やっぱり詠知と居たいからじゃない。・・・左隣は私ね。」

 

「ふふ、じゃあまずお風呂に行きましょうか?さ、詠知も行きましょう。」

 

「え?いやそれは・・・」

 

「・・・紫。」

 

「ええ、幽々子。」

 

左腕を私が、右腕を幽々子を掴み引きずっていく。詠知は抵抗するが為す術無く引きずられていく。

 

「やめろー。」

 

「ふふ、夜は長いわよー♪」

 


 

「ん・・・?」

 

目を覚ますと知らない天井・・・いや、白玉楼の天井だった。

 

「なぜここに・・・?頭痛いし・・・」

 

昨日酒を飲んだことは覚えてるが・・・全くその後の記憶がない。

 

「んぅ・・・」

 

「ん?・・・は?」

 

横から声が聞こえた気がする・・・というか掴まれて完全に身動きが取れていないことに気付き・・・右を見ると幽々子、左を紫に挟まれていることに気付く。

 

「・・・」

 

昨日私が何をしたのか、頭をフル回転させて考える。そして検索結果がないことに気づき・・・

 

「・・・すぅ・・・」

 

起きたときの私がなんとかしてくれる。そう考え二度寝を選択するのであった。




酔っ払い詠知くんは多分この先何回か出る気がする。

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