八雲の相棒   作:陽灯

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狐の妖怪の尻尾もふもふしたい
10/10加筆修正


八雲藍(やくもらん)とお出かけ

「詠知様、どちらの首飾りが似合うでしょうか?」

 

「この赤色のが服装にあっていいんじゃないか。」

 

私は今日、八雲藍と一緒に人里に来ている。

 

紫に招待され*1一緒に八雲の屋敷で時間を過ごしている時、最近藍の姿を全く見ていなかったことがふと気に掛かった。

 

紫に藍が仕事をしている時間と場所を聞き会いに行ってみれば意識があるのかないのか分からないような顔で仕事をしている藍を見て即座に寝かせつけた。

 

これでも私はある程度幻想郷で地位があり、彼女の主である紫と仲の良い。そんな私の命令はある程度聞いてくれるため主の友人権限を活用した。ちなみにこれは幽々子も使える。大体は妖夢が不在の際にどうしてもと料理を作らされるようだが・・・

 

藍は非常に優秀な式神であるが、忠誠心が非常に高くワーカーホリックな気質がある。ワーカーホリック気味なのは紫曰く私も同様らしいが。普段は紫に対してあきれるような態度を取ったりはするが、主の有能さを誰よりも信じ誰よりも主に貢献しようとする。

 

そこまでの忠誠心を持つが故に主に疲れを見せたくないという思いからか、有智高才を極めたような紫に仕事結果を報告するときに妖術や化粧をフル活用し疲れを一切見せないように工作してくる。実際にそれで紫をだまくらかせるのでたいしたものだ。紫には"合間合間にしっかり休息は取っている"と伝えていたらしい。

 

今回の突発的な私の訪問は完全に想定外だったようで、呆然とした顔でこちらを見つめ立ち尽くす藍を即座に抱きかかえ屋敷に連行したわけだ。式神という立場で疲れを感じにくいとはいえ流石に無理をしすぎている。ちなみにこれで5度目である。

 

たっぷり半日寝かせた後、起きた藍に外出を命令し、息抜きとして共に人里にやってきた。

 

今は装飾品店を見て回っている最中で、首飾りを見てどれが1番似合うかを2人で吟味している。藍は白と青を基調とした服装に、背には金色の尾。色合いで考えると赤が加えられることでバランスが取れるのではないかと考え、赤色の石がはまこまれた首飾りを勧めている。

 

「ではこちらを買いますね。」

 

「お、そうか。」

 

丁度釣り銭も要らないキリの良い値段であったため、ぴったり払える。そう考えながら財布を開け店主の方に向かおうとすると・・・

 

「待ってください。」

 

「ん?」

 

「何故自然に詠知様が払おうとしてるんですか?」

 

「藍へのプレゼントにするからだが。」

 

「・・・え?」

 

「・・・ん?」

 


 

「むう・・・」

 

ちょっぴり不満そうな藍と一緒に次の店へ向かう。

 

「命令はずるいです・・・」

 

どちらが代金を支払うか論争は私の"紫の友人権限"を使ったごり押しで勝利した。弁論で藍に勝つのは無理なのでしょうがないのだ。

 

「ははは、普段訪ねたときにもてなされている分、今日は私がもてなす番だ。」

 

「でも詠知様にお金を払わせるなんて・・・」

 

「元を正せば紫からの給金だ。金庫の中に残っていたものを使っているだけ、何も気にする必要もない。」

 

幻想郷にやって来て自らの役割を全うしている内に、いつの間にか紫から感謝の意として毎月給金が出るようになっていた。月を暮らすには十分過ぎる量の貨幣や金品。

 

だが私は金銭を受け取ることで紫との協力関係が崩れるのではないかという恐れ、力及ばずとも協力関係にありたいという小さなプライドから大半を手を付けず我が家の地下金庫にて保管している。当初は受け取り自体を拒むつもりでいたが、紫が贈ってくれる物を拒むのは失礼に当たると思い受け取っている。

 

普段手を付けていないが使わないのも申し訳ないという気持ちから、宴会の開催費用や周辺勢力との交友での出費の際に使ったりと有効活用できるようにはしている。

 

「まあ、普段紫の世話をしてくれている礼も込みなんだ。何も気にせず楽しんでくれると嬉しい。」

 

「・・・はい。」

 

「さ、次は玩具屋にでも行こうか。」

 

そう言って藍の手を握り玩具店に向かう。こうでもしないと仕事に関して考え始めるため無理矢理こちらに意識を向けさせる。

 

ちなみに玩具店では最近入荷された黒髭の男が入っている樽に短剣を刺していく玩具を買った。また代金を払おうとしたときに止められたが、「これは橙の分だから」と言って押し切った。

 

そうこうして色々な店を回っていたら日の沈む時間となった。

 

「どうだった?息抜き程度にはなったか?」

 

「はい、前に橙と一緒に来たときと比べて新しいものが沢山あって新鮮で楽しかったです。今日は本当にありがとうございました。」

 

「おっと、まだ一つ忘れていることがあるぞ?」

 

「・・・?すみません、それは何でしょうか?」

 

「うどん屋、行こうか。」

 

「・・・!!」

 

息抜きによって死んでいた目が普通程度に戻ったが、うどん屋と言った瞬間藍の目が明らかにキラキラし始めた。

 

何を隠そう、藍は九尾の狐。狐と言えば油揚げ好き・・・多分。まあその例に反さず藍も油揚げが大好きである。

 

ウキウキ気分の藍に逆に引きずられるようにうどん屋に向かい、二人揃って油揚げうどんを注文する。

 

その際にお手洗いへ行きつつ、先に店主に代金を払っておき藍のうどんの油揚げを増量してもらうように頼む。前の二つは理由付けができたが、さすがに3回目は絶対に拒否されてしまうだろうから今から払っておくに限る。

 

そうやって届いたうどんを見て、明らかに大きい油揚げを見て不思議そうな顔をしていたが油揚げの魔力には逆らえずすぐに食べ始めた。

 

「~~~~♪♪」

 

幸せそうな顔で油揚げを頬張る藍を見てこちらの頬も緩む。友人の式神である藍のことはなんだかんだで気に掛かる存在であったため藍にも幸せになってほしいのだ。

 

それと同時に彼女が式神となったことを紫に聞かされたときはひっくり返りそうなほど驚いたことを思い出した。九尾の狐という高位な妖怪を式神とするほどに紫の実力がとんでもないものに跳ね上がっていたのは嬉しい反面、そんな紫の理想のために自分がどんな風に貢献できるか不安になったものだ。

 

藍も当初は一人間に過ぎない私が紫と対等に話すことに不満を抱いていたらしい。大妖怪である紫と一人間に過ぎない私が対等に話すのを紫の従者がよく思わないのは普通だろう。

 

だが次第に私の働きを評価していってくれたらしく、今では紫の友人としての対応をしてくれるようになった。

 

お互いに食べ終わり食器を片して店を出る際に、代金を払おうとして店主に「もう詠知のあんちゃんにもらったよ」と言われ、こちらを振り返り「またやりましたね?」と言わんばかりのジト目でこちらを見ている藍に苦笑で返す。

 

村の外れまで見送ることにし、そこで藍が再度頭を下げる。

 

「本日は本当にありがとうございました。この首飾りは生涯大切にします。なんとお礼をしたらいいか・・・」

 

「こちらが勝手に命令して連れてきたんだ、何も気にすることもない。」

 

「・・・いえ是非お礼をさせてください!」

 

そう言って背中の9本の尻尾をあっちこっちに動かしてみせる。

 

「私の尻尾、すごく毛並みが良いと紫様や橙に評判なんですよ?ぜひ次屋敷に来た際はご奉仕させてください。」

 

夜道の中こちらを見る藍の瞳からなんとも言えない艶めかしさを感じ、言葉に詰まる。

 

「ふふ・・・紫様と一緒です。幻想郷のために尽力してくださる貴方のことを、私はお慕いしているんですよ?絶対に虜にしてみせます。」

 

・・・さすが「傾国の美女」。次に屋敷を訪れる時のことを考え少し不安になるのであった。

*1
ほぼ拉致




主の恩人で親友という嫌でも尊敬の念を抱かざるを得ない人が、プラスでこちらの体調とかを心配して気遣ってくれるとかそりゃ相応の感情は抱くよなぁと思いながら書きました。
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