八雲の相棒   作:陽灯

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咲夜戦


吸血鬼異変 その2

十六夜咲夜はエントランスホールにて待機していた。

 

バルコニーにてこちらに駆けてくる巫女を見て迎撃に出ようとした際

 

『面白い人間が来たわね・・・、通して良いわよ。面白くなりそうだわ。』

 

そう主人に言われたためやって来た巫女を正面奥にある大広間に通し、2人目を待っている。

 

(お嬢様が戦いたいと思える相手と一緒に来た人間・・・相応に強いと思うべきかしらね。)

 

美鈴は普段寝てばかりではいるが門番として見ればかなり優秀な部類だろう。普通に考えれば美鈴が2人目まで通すことはないだろうが、お嬢様が興味を持つレベルの人間であった巫女の同行者に警戒の念は抱かずにはいられないだろう。

 

そう考えていると玄関の扉がゆっくりと開いていく、

 

(美鈴が負けた、結構早いわね。まあ2人目に関してはお嬢様の命令もないしすぐに処理すればいいわ。)

 

ナイフを構え、時を止める準備をする。扉が開き、その瞬間に時を止めようとして・・・手を止めた。

 

「・・・人質のつもりかしら、お客様?」

 

美鈴を抱きかかえた状態で入ってきた男に声をかける。さすがに美鈴を肉壁にする防御をされたらたまらない。時を止めて回収しようにも背丈の高い男に抱きかかえられた状態の美鈴を降ろし運ぶことは私一人では至難となる。

 

「・・・メイド?そして人間か?・・・なるほどな。いや、外に置いとくのもなと思ったから連れてきたんだが。」

 

「それならばそちらに置いていただけます?」

 

「分かった、・・・よっと。」

 

(普通に置いた・・・)

 

「これでいいか。で、私の相手は君で良いのか?まあもう戦わなくても良さそうだが。」

 

「・・・どういうことでしょうか?」

 

「君がここに待機しているのに霊華がいない。つまるところ霊華はどこかに連れて行かれた、もしくは通されたか。多分だが、君の主の元にいったんじゃないか。」

 

「・・・その通りですが。同行者がお嬢様に殺されることに焦るべきでは?」

 

「霊華は"博麗の巫女"で異変の最終的な解決は博麗の巫女の役目だ。霊華が首謀者と戦うのであれば、そこでの勝利が異変の解決になる。その補助をしていくつもりだったのだが・・・君がここにいて首謀者に出会っていることに気付いた時点で私の出る幕はなくなった。」

 

「そうですか。」

 

ナイフを取り出し、男に向ける。

 

「・・・・・・」

 

「貴方がそうだとしても、この紅魔館のメイドとして侵入者を処分いたしますわ。」

 

この男が戦う理由がなくなったとしても、男を殺すことには変わらない。

 

「まあそうだよな。君には君の役目があるしな。私も君が霊華の元に行くことは止めたい。」

 

美鈴を倒す人間に近接戦を挑む気はない。時を止め、小手調べとして3本のナイフを投擲する。ある程度距離こそあるが、常人なら捉えきれもせず為す術なく死ぬ程度の攻撃。

 

「・・・随分厄介な能力を持ってそうだな。」

 

頭、胸、右足を狙って投げたナイフは、少し体を捻るような動作一つで全て避けられる。

 

次は倍、少しばらけさせる。縫うように避けられる。

 

そのまた倍、避けた先にも当たるように配置する。その配置したナイフの元に体を動かしたが容易く手で止められる。

 

「・・・かなりのお手前で・・・っ!?」

 

手で止めたナイフが即座に投擲され、咄嗟に時間を止める。もし時間を止めなかったら右足に突き刺さっていただろう。

 

(投擲もできるなら、逆にナイフが向こうの武器にされかねない・・・なら、一瞬で決めるしかない。)

 

持てる限り全てのナイフを360度配置する、鼠1匹通さないような配置。美鈴も忘れず退かしておく。

 

「・・・さ、終わりよ。」

 

そうやって時を動かした瞬間・・・男の姿が視界から消える。

 

(消えた!?)

 

そう思った瞬間、目の前に再度急に現れた男に首を押さえつけ床に叩き付けられる。喉元をいつでも握りつぶせる状態。時間を止めたとて逃れることのできない状態に陥った。

 

「・・・一体どんなマジックで?」

 

「正直それはこっちのセリフなんだが・・・空いてるのが下くらいしかなかったから、そこを無理矢理通った。どうやら他に動く大量のナイフのおかげで全く見えてなかったみたいだな。」

 

「・・・完敗ですわね・・・殺しなさい。」

 

「いや、別に殺さんが・・・」

 

「・・・私を殺さない理由がないでしょう?」

 

「まず必要性がない、従者一人殺して何になる。責任を取るのは首謀者だ。次に人間の里に現状死者がいない、まだ完全に幻想郷のルールを破っていない。情状酌量の余地はあるだろう。」

 

「随分とお優しいんですね・・・。私は全力で殺しに行ったのに、全く手傷もつけられませんでした・・・。」

 

「・・・いや、全くそんなことないんだが。」

 

そう言って男は自らの背中に手を回し・・・ずちゅっと嫌な音を立て、刺さっていたナイフを引き抜いた。

 

「当たっていたんですか・・・」

 

「さすがにあの数は避けきれんよ、被弾覚悟ってやつだ。良い切れ味だな、このナイフ。かなり痛かった。」

 

「顔色一つ、汗一つ流さずよく言いますわ。」

 

「ははは、やせ我慢は得意分野だ。」

 

「・・・そうですか。」

 

首にあった手が離れ、横に男が座り込む。自由に動けるようにはなったものの体を叩き付けられた衝撃であまり動けない私は、上体を起こして横並びに座るような体勢を取った。

 

「名乗っていませんでした。紅魔館のメイド長、十六夜咲夜と申します。」

 

「詠知だ。」

 

「うぅ・・・ん、え、なんでここに?って咲夜さんと詠知さん!?何で横並びに仲良く座ってるんですか!?」

 

「美鈴。何も言わず切り傷用の救急箱とお茶会用のセットを取ってきなさい。」

 

「え、なぜ「いいから。」わ、分かりました!」

 

「・・・一応敵ではあるし別にいらんぞ?あとなんで茶会セット?」

 

「あら、詠知様は今は「お嬢様の戯れに付き合う客人の同行者」ですよ?」

 

「主はそれで納得しないんじゃないか・・・?」

 

「お嬢様は何とでもなります、子どもですし。」

 

「それでいいのか・・・?・・・まあ、それならご厚意に預かろう。」

 

「咲夜さん!救急箱とお茶会セット持ってきました!」

 

「さ、治療しましょう。お嬢様と巫女の戦いが終わるまで、お茶会も一緒にしましょう?」

 

「・・・咲夜、幻想郷にすぐに適合できるよ。」

 

「あら、それは楽しみですわ。その時は幻想郷を案内してくださいね。」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!どういうことですか!?ナイフ刺さってるし、咲夜さん楽しそうだし何があったのか説明してください~~~~!?」




美鈴はいつも不憫である。
美鈴戦と違って、戦う理由があんまりなかったし人間相手だったのでちょっと饒舌になる詠知くん。

次かその次で吸血鬼異変は終わります。

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