「ここまで傷をつけられたのは初めてよ・・・貴方にはこれを出す価値がある。神槍「スピア・ザ・グングニル」」
「それは・・・」
「ふふ、こんなものを見るのは初めて?戦いも美しくないとね、さあクライマックスよ!」
4人でテーブルを囲み談笑している中、ふと疑問に思う。
「そう言えばヨーロッパから来たばかりなのになんで日本語喋れるんだ?」
「・・・確かに。いつの間にか喋れるようになってます。」
「そうですね、日本語の心得がないのに今普通に喋れてます。」
「私は魔術書の中に日本語表記のものがあったから多少は心得があるけど、ここまで上手く喋れるなんてことないわ。」
「何でだろうな・・・?」
海外から来たであろう妖怪はそこそこにいるが、元々コミュニケーションを取れない妖怪はまだしも喋れる妖怪はみな一様に日本語が喋れる。今まではそこまで疑問に思っていなかったが、3人揃って流暢に日本語を喋るのを見て疑問が浮かんだ。本人達も知らないらしく謎はますます深まる。
そうやって首をかしげていると後ろから急に声が聞こえてくる。
「ふふ、知ってはいけないこともあるのよ詠知?」
聞き慣れた声。紫が来た、ならもうそろそろ異変後の後始末か。
そう思い返事をしようとして・・・
「誰だ!!」
先に周りが動き出した。スキマから上半身を出す紫に対して、美鈴が間に割り込むように構え咲夜がナイフを構える。パチュリーは・・・紅茶を変わらず飲んでいる。
「あら、厳しい歓迎ね。」
「いきなりなんの前触れなく現れる妖怪を警戒しないほうがおかしいでしょう。」
「ふふ、随分と威勢が良いわね。遊んであげようかしら。」
「そんな悪趣味な見た目のものから出てくる妖怪と遊ぶ道理なんてないわ。」
結構辛辣なことを言う咲夜・・・悪趣味なのはちょっと分かるけど。
「・・・詠知を傷付けたあげく私にそんな暴言とは、やはり亡き者に・・・きゃっ!」
争いが始まりそうだったのでとりあえず紫を引っこ抜いて抱きかかえる。
「安心してくれ、私の仲間だから。紫、とりあえず挨拶くらいしてくれ。」
「ふふ、強引ね詠知。それじゃあ望み通り挨拶を・・・え、降ろさないの?」
「ほら、早く挨拶しろ。」
「いや待って、こんなお姫様抱っこじゃ威厳も何もないじゃない。」
「いいから。」
ここにいる3人は他人のことをむやみやたらに言いふらしたりからかったりしないタイプだろう。なら多少威厳のない姿を見せても問題がない気がするためちょっと悪戯をする。
「・・・ふふふ、いらっしゃい幻想郷へ。私は八雲紫、詠知と同じ幻想郷を愛し守り抜く者ですわ。」
「よし。」
満足したため紫を降ろす。
「とりあえずは分かりました。そうですか、八雲紫・・・貴方が幻想郷の管理者。」
「知っているのか、美鈴。」
「ここに来る前に幻想郷について調べられることは調べてきたので。」
確かに紫は外の世界の妖怪や神を勧誘してくることもあるため外の世界でも名前が知られているのだろう。
「なら話が早いか。管理者としてこの異変の後始末をしにきた、そうだろ紫?」
「その通り。吸血鬼とは今後について話をしないといけない。」
私と紫がそう発言すると、美鈴と咲夜の目つきが厳しくなる。
「お嬢様の首が条件のような内容であれば全力で抵抗させていただきますわ。」
「そんなことはしない。今後の生活に関しての取り決めの話をするだけ。」
「「幻想郷は全てを受け入れる」ですわ。」
幻想入り直後に幻想郷の各所に攻撃を仕掛けてきた妖怪は何人かいたものの、基本的に博麗の巫女や別の妖怪や神に制圧された後普通に暮らしている。今回もその例にもれないだろう。
だが、今回起こされた異変によって生じた明確点がある。それは・・・
「・・・妖怪の気力の低下は随分問題だな。いくら吸血鬼が強力な存在とはいえ一瞬で周辺の妖怪が軍門に下った。」
「だけれどこれで今回の異変で対処法を考えるための明確な理由付けができた。そういう意味では逆に感謝したいくらい。」
「とにかく大変な事態にはならないことを約束するから安心してくれ。」
「そうそう、これから私はそれに関しての下処理をするから詠知に吸血鬼との協議はお任せするわ。」
「そうか?なら後で結果を伝えに行く。」
「お願いね。」
紫がスキマに入り消える。
「・・・とりあえずは納得します。」
「ありがとう、後は霊華とレミリアお嬢様の戦いが終わるまで待つだけだな。」
「え、どうなってるの?」
巫女との戦いは、お互いにズダボロになりながらも最後は私のグングニルを避けた巫女の御祓い棒フルスイングを顔面にくらって負けた。あまりにも勢いよく突っ込んできて面食らった影響もあったのだが負けは負け。そもそもここまで強い人間にあったのも久しぶりだったし大満足だった。
巫女・・・霊華へ負けを宣言し一緒にエントランスに戻ってきたらそこに広がっている光景は私の脳をフリーズさせるのに十分だった。
謎の男と、門番をしていたはずの美鈴と図書館から基本出てこないパチェ、それに咲夜がお茶会用のテーブルを囲んで茶を嗜んでいるのに驚かないはずがない。
「はあ・・・終わったぞ!」
「お疲れ様霊華。そこまで大きい怪我は負っていなさそうだな、何よりだ。」
「お疲れ様ですお嬢様。服が汚れていますし代わりの服を用意いたしました。着替えに向かいましょう。」
「え、ええ。」
霊華が呼びかけると霊華には謎の男、私には咲夜が近付いてきてそれぞれに声をかける。そして現状の疑問も解消することなく更衣室に向かうことになった・・・
「で、どういうことなの?」
着替えも終わり戻ってくると、咲夜に促されテーブルに座ることになる。美鈴は門番に戻りパチェは結界を消しに戻った。パチェに「良い結果を期待するわ。」と言われたがどういうことなのだろうか
正面に霊華と共に座っている男が話し始める。
「とりあえず挨拶をしよう。詠知だ、今回は霊華の補助に加え今後に関しての交渉役として来た。よろしく。」
目の前の男、見た限り相当強そう。霊華の補助として来ていたり交渉役ということは管理者側の存在、ということは実際に実力はあるのだろう。
「紅魔館の主、レミリア・スカーレット。誇り高き吸血鬼よ。ちなみに霊華、詠知は強い?」
「・・・戦う気か?」
「交渉相手にそんな野蛮なことはしないわ、ただ気になっただけ。」
「・・・博麗の巫女の体術指南役をしている男だ。幻想郷の人間の中では最も強いだろう。」
「ふーん・・・ぜひ今度戦ってみたいわね。」
「霊華は休んでいてくれていいぞ。」
「そうか?なら一息つかせてもらおうか。」
霊華が退出しこの場にいるのが詠知、私、咲夜の三人となる。
「とりあえず交渉を始めていいか?とりあえず食料問題からなんだが・・・」
「こんな所でいいか。再度忠告するが人間の里に攻撃を仕掛けるのは幻想郷では大罪だからな、そこさえ守ってくれれば基本自由だ。」
「分かったわ。それにしても結構あっさり決まるのね、しかもかなりこちらに譲歩する内容。」
食糧問題は定期的な人間の供給(後々詳細を協議)、交易面では地下にて保管及び製造しているワインの人間の里との貿易による収益の確保等こちらが大きく損をするどころか得をする内容だった。
「人間の里とも比較的近いし、吸血鬼の強大さの影響は幻想郷にとって重要なポイントだしな。仲良くしたいわけだ。」
「随分と正直ね。でもいいわ、御託を並べられるよりはよっぽどいい。」
あっけらかんと言う詠知。だが決して嘗められているわけではなくこちらにある程度のリスペクトを込めた発言であるため別に悪い気はしない。
「よし、とりあえず取り決めは終わりだな。」
「そうね、咲夜、いつものをちょうだい。」
「かしこまりました。」
いつもの、血入りの紅茶を淹れさせる。戦いの後で血がすごく飲みたい気分になった。だが一口飲んだ時点で違和感に気付く。
「?何か味が違う。咲夜、何か違うもの入れた?」
「詠知様の血を入れましたが。」
「え、私の血?いつの間に入れたんだ?」
「手当をする際に少し拝借しましたわ。」
「・・・不思議な味ね。でも悪くない。」
あまり気にしたことがなかったが、実力ある人間の味はその分変化するのだろうか。カップの中の紅茶を飲み干す。
「まあいいか。じゃあ咲夜、妖精の確保は任しておいてくれ。あと和食の作り方を教えよう。そのときにパチュリーに本を見繕っておくし、美鈴は手合わせしよう。」
「ええ、伝えておきますわ。お待ちしております。」
「ちょっと待って?何の話?」
知らない話をし始める詠知と咲夜に声をあげざるを得ない。
「個人的な約束ですわ。妖精に関しては労働力という面で紅魔館に関係してはいますが。」
「紅魔館全体と良い関係を気付きたいからな、個人的な約束もしておこうかと。」
パチェが交渉に関して「良い結果を期待している」と言った理由が分かった気がする。咲夜も今結構親しそうに話してるし、最初に見た時美鈴と仲よさそうに話してた気がするし、これは完全にいつの間にか私以外丸め込まれている。・・・なんか仲間はずれな感じがして腹立つわね。
「じゃあ私とも何かしら他に約束をしてもいいんじゃない?」
「それは別に構わんが・・・何かあるか?」
「うーん・・・戦いたいってのはあるけど、美鈴と被ってるのが嫌ね・・・。」
考えながら視線を落とすと、先ほどまで飲んでいた紅茶のカップが目に入る。これだ。
「そうよ、血を飲ませに来なさい!詠知の血の味の理由に興味があるし丁度良いわ。」
「死なない程度だったら別に構わんぞ、じゃあそれで決まりだな。末永い付き合いを期待しているよ。」
ここから依存が始まるんですね分かります。
ほんとはフランにも会わせたかった、紅霧異変に関して書くことがあれば出したいですね。
あと霊華と霊夢の代替わりシーンも書きたい。
次の過去編は多分永遠亭勢との出会いに関して書きます。