「詠知せんせい!"めりーごーらんど"やって!」
「しょうがないなぁ、しっかり捕まってるんだぞー?それっ!」
「わぁ~い!」(クルクル)
私は今日、寺子屋裏の広場に来ている。寺子屋では多くの子ども達が勉学に励んでいるのだが、何も座学だけではない。
体育の授業では広場で鬼ごっこをしたり外界から流れ着いた物で私が作った遊具(鉄棒やシーソー)等で子ども達が遊んでいる。
なぜ私がここにいるのか、それはこの寺子屋で教鞭を執る上白沢慧音からの依頼である。
「体育の授業で子ども達と遊んでくれないか?」
私と人間の里(人里)との関係は非常に深い。幻想郷が発足されてより、私の大きな仕事として「人間の里を存続させる」というものがあった。周辺の安全維持、人喰い妖怪の侵攻の阻止、自治システムの構築、農地や店等の働き場所の確保、防衛能力の教育、各勢力との交渉に交友関係の構築・・・等私が"人間の強者"であるということの利点をフル活用した仕事をおこなってきた。よく過労死しなかったと今でも思うくらいである。
これらの施策の中で後天的にワーハクタクとなり守護者として人里の有力者となった慧音が提案したのがこの「寺子屋」であった。
それまで教育は各家庭に一任し、働き場所に丁稚奉公する形で知識をつけさせるというものであった。教育機関を作ろうにも教えるだけの幅広い知識があり、なおかつ人里に定住している人材の安定的な確保が難しく見送っていたため、慧音の存在は適任でありすぐさま寺子屋の建設計画を始めた。
そうやってできた寺子屋は、今や外来人を除く人間の里の住人ほぼ全てが通ったことのある場所として愛され、慧音は人里のリーダー的存在として尊敬されるようになった。
度々私が慧音に寺子屋へ呼ばれるのは設立への恩義があるらしいのと、寺子屋の授業を見学したり外の世界から仕入れた教育システムと照らし合わせ助言をしたり漂着物を使って遊具を作ったりと、定期的に寺子屋を訪れているためそのついでに働かないか?くらいの感覚なのだろう。
「先生ありがとうございました!さようなら!」
「お~、気をつけて帰るんだぞ。」
体育の授業が本日最後であったため、授業が終わり帰路につく子ども達を見送る。
全員を見送った後、慧音がいる教員室(教員が基本慧音しかいないため大体は慧音しかいない)に向かった。
教員室に入ると慧音は眼鏡を掛け机に向かいテストの採点をしているようだった。
「授業終わったぞ、全員元気に帰って行った。」
「あぁ、ありがとう。丁度採点も終わったところだ。」
「全然構わんよ、お茶淹れてくる。休憩してな。」
「すまないな、お願いする。」
そうやって二人分のお茶を淹れ、慧音の横に座る。
「今日は忙しくてな・・・採点や問題作りが重なってしまって時間が欲しかったんだ、生徒の面倒を見てくれて本当に助かったよ、ありがとう。」
「人里に居るときだけにはなるがいつでも呼んでくれて構わないよ。」
「あぁ、頼りにさせてもらうよ。」
お互いに茶を飲み少しした後、口を開く。
「慧音も今では里のまとめ役か、時の流れってのは速いものだなぁ。」
「そんな老人のような事を言う見た目ではないだろうに、全く・・・」
「慧音がまとめ役をしてくれるから、もう私は隠居生活でも楽しもうか(ゴッ)いてっ。」
横に座る慧音から肩に頭突きを受ける、相変わらずの石頭である。
「里には君を頼りにする者がたくさんいるんだ、隠居などさせんぞ。」
「冗談だよ。と言ってもな、仕事自体はあるが元々のここでの役割はほぼ終わったわけだしなぁ。里のことは好きだから離れる気はあまりないが必要に応じて移住をするかもしれないからな。」
「・・・聞き方が悪くなるかも知れないが、君はもう役割自体を離れてもいいんじゃないか?スペルカードルールが制定されて幻想郷の治安は大分安定するようになった。十二分に働いてきた君が人里でゆっくりと暮らすことを求めるなら私含めて人里の皆は誰も反対しない。」
「・・・優しいな、慧音は。能力で知っているだろう?私が幻想郷の安寧という大義名分を掲げてしてきたことを。もう引き下がれないさ、死ぬまで幻想郷のために尽くしてみせる。」
慧音は満月時にハクタクに変化し、"歴史を食べる程度の能力"から"歴史を創る程度の能力"に変化する。その際に事細かに歴史を知ることが出来る。だから私が「八雲の相棒」として独断で隠密に処理してきたことも知っているはずだ。
私は人間で人里の発展に寄与してきたが、決して「人里の味方」ではない。「幻想郷に必要な場所であるため」関わり、人口を増加させより幻想郷のシステムを安定したものにするために手を貸したにすぎない。
・・・ただ離れることが惜しいと思えるほど、住み続ける必要はないのに居住地を構えてしまうほどこの地や人々が好きなのは事実だ。
そう考えていると慧音が立ち上がり、座っている私の正面に立ち顔を挟み込むように両手を添える。慧音は小柄な体格で、私が大柄なこともあり座っている私と背丈は大差がない。
そして頭を振り上げた姿を見て、意地を張る私に頭突きをするのだろうか・・・そう考えていると
コツン・・・
振り下ろされたように思えた慧音の頭はゆっくりと減速していき、私のおでこと慧音のおでこがくっつき合う。
見つめ合う私と慧音。堅物な慧音の唐突な行為に固まる私と、目を潤わせ真っ赤に顔を染める慧音。その状態で慧音は話し始める。
「だからこそだ。全てを知っているからこそ君の功績がよく分かる、どれだけ幻想郷を愛しているのかも。目的があったのだとしても人里を守ってくれていたことは何の間違いもない。だからずっと尊敬していたんだ。でも君はずっと働き詰めで、しっかり話す機会も得られなかった。」
「・・・すまん、感情移入しすぎないようにしていたんだ。」
「いいさ、君が真面目に仕事に取り組んでいたということなのだから。でも妹紅のことを君はずいぶんと可愛がっていたそうじゃないか。」
「それは妹紅は昔からの友人だったからで、決して贔屓をしたわけでは・・・」
「分かってるさ。妹紅の方がずっと昔からの知り合いでそれに加えて人里の関係者ではなかったから。それは決して誰にも咎められるようなことはないが・・・少し妬いてしまったよ。君のことを話すときに妹紅が見たことのないような照れ方をする姿を見て、嫉妬したんだ。親友に信頼されている君へ、そして君とそれだけの関係を築けている妹紅にも。」
「だがスペルカードルールができて役目を終え、本来の君と話す機会が増えて人柄をよく知れた。皆に愛情深く接し、世話焼きだけどちょっと抜けたところのある君を。そんな人間くさい所を知って、より惹かれていった。・・・君をここに呼ぶ理由に一緒にしゃべりたい、関わりたいというのもあるんだぞ?」
おでこが離れ私の顔にあった手を私の頭にのせ、ゆっくりと撫で始める。
「人間らしい君を知ってしまったから、心配で仕方ないんだ。人里の恩人が体だけでなく心まで傷つく姿を見たくない。君は私よりずっと長生きだし強いからお節介だと思われるかもしれない。でもこんなお節介も焼きそうなほど皆君のことを心配してるってことを覚えておいてくれ。いつかはここでゆっくり暮らして欲しい。人里は、私はずっと君の味方だからな・・・」
妹紅はいずれ出てきます(いつ出るかは未定)
慧音は里のまとめ役として良きお姉さんポジにいてほしい(願望)
次は稗田阿求です。