『鬼』それは頭に角を生やす異形な者であり、夜に現れては人を喰らう恐ろしい生き物であった。更にその身体能力は人間とは別次元であり、身体は頑強、動きも俊敏であり、見つかってしまえばなす術もない。
だが、そんな者たちを斬り払い、民の平穏を守り抜き、鬼の首領を打ち滅ぼさんとする組織があった。それは『鬼殺隊』
人でありながら鬼を滅する政府非公認の組織である。
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皆さんこんにちは。
私の名前は『上坂 天一郎』(かみさか てんいちろう) 今年で19歳を迎えるおっさんです。
私は政府非公認の組織『鬼殺隊』というものに所属しております。
ちなみに説明しておくと鬼殺隊とは文字通り鬼を滅する組織であり、その役職は大きく二つに分けられます。一つは鬼を斬る『剣士』もう一つは彼らの補佐である『隠』です。
隠の業務は剣士に比べると結構ありますが。前線に立つという訳ではないために命を落とす危険性があまりありません。
では、今回はそんな隠である私の仕事をご紹介しましょう。
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「お疲れ様です」
「あぁ。鬼による怪我人が数名いる。治療してやってくれ。異常が見られればすぐに連絡しろ。場合によっては家紋の屋敷に連れていかなければならないからな」
「分かりました」
羽織を纏った剣士の指示に頷いた私は、すぐさまその場を後にし、他の隠によって匿われている被害者の元へと向かった。
「息はできますか?少し沁みますが、我慢してくださいね」
私は鞄から傷薬を取り出すと被害者の腕へと塗る。
隠の基本的な仕事は隊士が鬼と対峙している間の周囲の一般人の保護、そして被害者の治療です。
被害者に傷薬を塗り、特に異常が無ければ剣士達の事はなるべく仄めかし、今夜の事は『獣による被害』と思い込ませて静かに帰路に立たせ、また酷い場合には藤の家紋が書かれた特殊な場所へと運び回復させる。
それから闘いを終えた隊士達の保護、周囲の環境の整備をする事によって二次被害や、無関係者に知られる事を未然に防ぎ痕跡を断つ。
以上が我々、隠の基本的な業務の流れである。隊士のみならず一般人の保護も我々の立派な仕事なのである。
「被害者の保護、無事に完了しました。目立った外傷は特になく、身体も正常です」
「分かった。俺は次の場所へ向かうから、お前達も気をつけてくれ」
それから剣士へ報告を終えると、剣士は去り、我々もすぐさま別の地域へと向かった。隠は補佐が中心であるために、激闘を繰り広げる剣士達に比べて休みはあまりない。
だが、それでも人を守る仕事には変わらないために皆はせっせと働く。
そんな時であった。
「カー!!お館様ヨリ伝令!お館様ヨリ伝令!」
「え?お館様が!?何故私なんかにまた…」
一羽の鎹鴉が私の肩に乗り、手紙を渡した。差出人はお館様である。
因みにここでもう一つ。お館様とは『産屋敷 耀哉』という人の渾名であり、この鬼殺隊を創設した一族の子孫である。
私はあまり会った事がないが、何故かよくこの人から“直々に指示を受けている”。
中身を開けて確認してみると予想通り新たなる指令だ。
『緊急で悪いけど、すぐに地図に示した場所に向かって欲しい』
「う〜ん…」
渡された地図を見てみれば、ここからは然程遠くはないが、道が険しい場所である。今から全速力で走っていけば、数分で着けるかどうかだ。
しかし、負傷した隊士がいるというので、行く以外にはない。私の仕事の流儀は何が何でも救う事である。
「いっくぞぉおおお!!!!」
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耀哉から指定された鬼の狩場にて。負傷した女性隊士の知らせを聞きつけた天一郎は雪の中で血を吐きながら倒れている女性隊士を見つけた。
「大丈夫ですか!?」
咄嗟に駆け寄り、倒れている女性隊士を抱き起こすと、その場に仰向けにし、すぐさま身体の状況を調べる。
「酷い傷だ…それに息も途切れ途切れ…肺が凍っているようですね…すぐに医者に見せないと…失礼します!!」
即座に彼女の身体の調子を把握すると、自身の隊服を脱ぎ、それを布団がわりに彼女を寝かせて隊服を脱がし、隊服の下にあるシャツの隙間から見える身体へと傷薬を塗り、更にその上から止血する為の治療薬を浸した包帯を巻いた。
まるで手慣れているかのように、その処置の速さは凄まじく、10秒も経たない合間に終えてしまった。
「取り敢えず応急処置はこんな感じですね…あとは背負って連れて行くだけ……ん?」
治療を終えた天一郎は最後の仕上げとして、彼女を担ぎ上げようとするも、その女性隊士は即座にその手を払った。
「私の…事はいい…か…ら…早く…逃げ…」
「ダメです!あれ…?よく見れば貴方は花柱の…いえ、そんな事関係ありません!!見つけた隊士は何が何でも助ける!!それが私の流儀ですから!!」
「違う…鬼が…十二鬼月がいるの…!!!」
「えぇ!?」
その時であった。
「あれぇ〜?もう一人増えてるなぁ。その黒子のような格好…そっか!『隠』ってやつか〜!!」
雪が降り積もる道を手に扇子を持った青年が歩きながら現れた。だが、姿形は人といえども、肌は死人の如く白く、口元からは鋭い歯を除かせていた為に、とても人間と呼べるものではない。
更に、その青年の左右の目には人間には決して見られない“文字”が刻まれていた。
『上弦ノ弍』
鬼の首領であり、鬼殺隊が討伐目標としている鬼舞辻無惨により選ばれた精鋭部隊である十二鬼月のうち、上から二番目の実力を持ち、鬼の中でも序列的に三番目に強いとされる鬼であった。
「安心しなよ。彼女は直に死ぬけど、俺が責任を持って食べるから!それに現れた君も同じさ。彼女が死んで寂しいと思うだろうから君も食べてあげるよ!これで二人とも永遠に俺の中で生き続けられるから寂しくはないね!」
そう言い青年は常軌を逸した言葉を口にしながら近づいてくる。
だが
「お願い…!!お願いだから逃げ…」
「肺が凍ってるから無理に喋らないでください!大丈夫です。絶対に助けますから!」
天一郎は応急処置に夢中であった為に上弦ノ弍の言葉に耳を貸すことも傾ける事すらも無かった。
まるで、助ける事自体に熱を注ぎ、周りが見えなくなっているかのように。
それは正に、背後に立つ上弦ノ弍に取って完全に警戒を断っている事に変わりなかった。
「あれ〜?反応してくれないな…目先の事に熱中して周りが認識できない…囲碁をやってる時の黒死牟殿と似てるな〜!まぁ、いっか」
上弦ノ弍もそれ以上、言葉を発する事は無かった。雪に埋もれる脚を曲げ、その場から一気に飛び出して治療している天一郎と女性隊士目掛けて向かっていく。
「痛みも感じないように殺してあげるからね!!!」
「…!」
その距離は1秒も経たぬうちに二人の元まで迫っていき、女性隊士の目にも迫り来る鬼の姿が映っていた。
「お願いだから…逃げ…!!!」
「だから喋らないでくださいって!」
だが、それでもなお、天一郎は治療の手を止めなかった。
『上坂 天一郎』手厚いサポートと処理、そして治療技術から他の剣士達からも信頼が厚い。
だが、それとは別にもう一つ、彼には知られていない能力があった。
それは_____
「あの、治療中ですからアッチ行っててください」
「ぶべらぁ!?」
______鬼を一撃で殴り飛ばす身体能力である。
「十二鬼月がいるなんてまずいですね…見つかる前にすぐに逃げないと…さ、行きますよ」
その後、天一郎はその場を後にし、女性隊士を担ぎながら診療所へと向かっていったのだった。
上坂 天一郎
身長 155
物語開始時点で19歳を迎え、隠にて働く隊士であり、小柄でありながらも大柄な隊士を数名背負いながら千里を駆け抜ける馬鹿力と俊足を持ち、更に負傷した隊士達の応急処置を行う技術も持ち合わせている。
そして_______
圧倒的な強さを誇る十ニ鬼月を殴り飛ばす程の身体能力を持っている。だが、本人は無自覚。仕事の邪魔をする不審者を殴り飛ばしたと思っている。
なんで隠しになったの?→呼吸ができず、剣の才能もないから。