____by Aさん
ドドドドドドドドド
とある山間部の山道を天一郎は土煙を舞い上げながら駆け抜けていた。
「無限列車…話によれば『切り裂き魔』が出ると巷では言われていてその調査のために乗り込んでいると聞きましたが…何とか間に合えばいいのですが…」
周りを置き去りにする程の超高速で次々と山を超えていた天一郎は自身に下された任務を思い出す。
それは先程、自身に宛てられたしのぶからの手紙である。
『次は煉獄さんの任務に同行をお願いします。お館様からも許可をいただいているので、直ちに向かってください。場所は…』
内容は簡単に言えば炎柱である煉獄杏寿郎との合同任務である。場所はなんと数ある汽車の中のうち、連結車の多い無限列車というものであった。
「間に合うかな…!!一応路線は調べてもらってますけども…」
天一郎は鴉から貰った無限列車が通るであろう路線の地図を見ながら次々と駆け抜けて行った。
場所は、ここから遥か百キロも先にあるために普通の隠ならば夜通し走っても数日は掛かるだろう。
すると
「あれは…?」
近くの林の中で誰かが倒れている姿を見つけた。それはなんとボロボロの隊士であった。恐らく鬼と遭遇し、一戦交えたものの、力及ばず倒されてしまったのだろう。
本来ならば、隊士に必ず一匹つけられる鎹鴉が付近の隠へと連絡を送り、駆けつけるがそれらしき姿が見えない。
故に、天一郎は見捨てることもなく、即座に急停止すると、その隊士の喉元を確かめる。
「う…うぅ…」
「良かった!まだ生きてる!!」
まだ息がある。そう感じた天一郎はその隊士を担ぐと、鴉に近くの藤の家紋の家がある場所を聞き、その場へと向かった。
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それから天一郎は藤の家紋の家に倒れた隊士を預けて後から来た別の隠に任せると、そのまま任務へと戻った。
「間に合うかなぁ!?大丈夫かぁ!!??」
その速度は変わる事なく、目の前の障害物(木や岩石)を次々と貫いて行った。
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「ハァ…ハァ…ハァ…!!」
場所は変わり、周囲には平地と広大な森があり、その中央に敷かれた線路の周辺にて。
空を見上げながら荒い呼吸を繰り返す炭治郎の姿があった。その顔は大きな疲労に満ちており、まるで死力を尽くした戦いの後のようであった。
だが、それは間違いではない。
あれから無限列車へと乗り込んだ炭治郎は、見事に煉獄と合流を果たし自身の来た目的を成し遂げるとともに本来の任務であった鬼の討伐に成功したのだ。
戦った鬼は下弦ノ壱である『魘夢』 夢を操る鬼であり、更に無限列車と融合したことによって更なる力を得て彼らを翻弄するも、乗客を守っていた煉獄、禰豆子、善逸そして討伐に当たっていた炭治郎と伊之助によって首を跳ねられ、見事に討伐されたのであった。
その時に列車に融合していた魘夢がのたうちまわった事で走っていた無限列車は横転し、運転車両にいた炭治郎と伊之助は放り出されたと言う訳だ。
すると
「おい大丈夫か三八郎!!刺された腹は!?」
汽車の方から伊之助が駆け寄り、炭治郎の身体を抱き起こした。
「大丈夫…伊之助は…?」
「俺は大丈夫だあ!風邪も引いてねぇ!!鬼の肉のおかげでな。ボヨンボヨンと跳ねたぜ!」
「そ…そうか…なら、他の人達を助けて欲しい…あ、俺の…俺の近くにいた車掌は…?」
「…アイツ死んで良いと思う!!」
「よくないよ…」
「足潰されて動けねぇから直に死ぬぜ!!」
「ならもう罰は受けてる…助けてあげて…頼むよ…」
「…フン!行ってやる。親分だからな!子分の頼みだからな!助けたらアイツの髪の毛全部 毟っといてやるよ!!」
「しなくていいから…」
相変わらずのハイテンションな伊之助に炭治郎は安心しながら見送ると、自身の出血している腹部へと目を向けた。
そこには刺されたのか、大量の血が流れており、隊服に染み渡っていた。この服は鬼を討伐する寸前に邪魔をしてきた先程の車掌によるものであり、だからこそ伊之助はあれほどあの車掌へ冷たかったのだ。
炭治郎は何とかして呼吸をしながら出血を和らげようと試みる。
すると
「全集中の呼吸《常中》ができるのか!感心感心!」
倒れている炭治郎を覗き込むかのように、煉獄が顔を見せた。
「煉獄さん…」
「ふむ…腹部から出血しているようだな、もっと呼吸の精度をあげるんだ。身体の神経を隅々まで行き渡らせろ」
「はい…!」
煉獄から言われた通り、炭治郎は呼吸を行い、出血した器官を探っていく。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「そこだ。止血するんだ。集中を切らすな」
「ぐぅ…!!」
炭治郎は煉獄に指摘された通り、見つけた血管へと呼吸を集中させていく。
すると 腹部から漏れていた血が少しずつ減っていき、次第にその流血は止まっていった。
「ぶはぁ!!」
「うむ!止血できたようだな!」
何とか止血を成功させた炭治郎は大きく息を吐き出し、見た煉獄も笑みを見せる。
「呼吸は極めれば極めるほど様々な事ができる。何でもとはいかないが、確実に昨日の自分よりも強くなるだろう!」
「は…はい!」
煉獄の助言に炭治郎が頷く。
そんな中、煉獄はずっと疑問に思っていた事を炭治郎へと尋ねた。
「そう言えば竈門少年、一つ聞きたいのだが、君や胡蝶姉妹が言っていた隠の姿がいつまで経っても見えないのだが、何か知らないか?」
「…あ…」
煉獄から尋ねられた炭治郎は思い出した。任務に同行すると言われていたにも関わらず、いまだに到着していない天一郎の事を。
「ハッハッハ!仕方ないな!胡蝶姉妹が熱弁するほどの強さをこの目で確かめたかったが、それはまた別の機会にしよう!!」
炭治郎の反応から、彼がまだ来ていない事を悟った煉獄はため息もつかず、ワッハッハと高笑いするのであった。
その時であった。
その場に何かが飛来する。
「…え?」
突如として何者かが目の前に飛来した事に炭治郎は思わず声を漏らす。
「…!」
その一方で、煉獄は鍛え上げられた肉体によって、その場に飛来した“何か”から今までにない危険性を感じ取ったのかすぐさま刀へと手を掛けながらその場を見つめた。
煙が晴れ、そこにいたのは、全身に罪人の刺青を注入された青年であった。
だが、ただの青年ではない。全身の肌は雪のように真っ白で目の色は白ではなく青、そしてその瞳孔には『上弦』『弍』と刻まれていた。
「上弦の…弍…!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方そのころ、天一郎は。
「無限列車?もう出ましたよ」
「はえぇ!?」
今頃になって駅に着き、駅員から衝撃の事実を知らされていた。
天一郎情報その9
任務外であっても、倒れた隊士は見捨てない。