敵わなくたって…守るんだ……!!!
あいつらはおれが守る!!!
______by Uさん
突如として現れた上弦ノ弍。その全身から発せられる威圧感は今まで遭遇した鬼とは一線を画しており、直視しただけで鍛えたばかりの身体が震えていた。
それもそうだ。鬼舞辻無惨を含めた数ある鬼の中でも上から3番目に強い存在であるのだから。
周囲に沈黙が流れる中 上弦ノ弍の目が炭治郎へと向けられた。
その瞬間
その姿が一瞬にして飛び上がり、炭治郎目掛けて拳を振り下ろしてくる。
「…!?」
気づいた時にはもう遅い。倒れていた炭治郎の目の前までその拳が迫ってきていたのだ。
だが、それを寸前に煉獄が防ぐ。
【昇り炎天】___ッ!!!!
天に向けて燃え盛る炎の如き斬撃を放ち、炭治郎へと迫っていた拳を拳の先から肩に掛けて真っ二つに斬りふせる。
「ほぅ?」
それによって上弦ノ弍はその場から二度三度、後方へと跳躍しながら後退した。
「……良い刀だ」
瞬時に再生する腕から滲み出た血を舐めながら上弦ノ弍は称賛の言葉を口にする。
それに対して煉獄は突如として現れた上弦ノ弍の全身から放たれる威圧感に息を呑みながらも冷静になりながら睨みつける。
「理解できないな。なぜ手負いの者から狙う?」
「邪魔になりそうだったからだ。俺とお前の」
「俺と?残念だが、初対面とは言え俺は君のことが既に嫌いだ」
その言葉に対して上弦ノ弍は怒るどころか笑みを浮かべながら答える。
「俺も嫌いだ。弱者を見ていると虫唾が走る」
「…俺と君とでは、物事の価値基準が違う様だ」
「そうか。では素晴らしい提案をしよう…」
煉獄から受けた傷が一瞬にして癒えた上弦ノ弍は怪しい笑みを浮かべながら煉獄へ向けて手を差し出す。
「お前も鬼にならないか?」
「ならない」
上弦ノ弍の提案を一蹴した煉獄は刀を構える。だが、その一方で上弦ノ弍は続けた。
「見れば分かる。お前の強さ…柱だな?練り上げられた闘気に研ぎ澄まされた剣技は至高の領域に近い…。名はなんという?」
「…俺は煉獄杏寿郎だ」
「俺は猗窩座。杏寿郎、なぜお前が至高の領域に至らないのか教えてやろう」
互いに名を名乗り、猗窩座と名乗った鬼は煉獄へと指を向けて淡々と言い放った。
「人間だからだ。人間は老いて死ぬ。だからこそ限界を超えない。鬼になろう杏寿郎。鬼ならば何百年でも鍛錬ができる。お前なら辿り着けるさ」
そう言い猗窩座は更に執行に煉獄を誘う。
だが、
「断る」
それを煉獄は強く拒絶する。
「老いることも人間という儚い生き物の美しさだ。老いて死ぬからこそ堪らなく愛おしいものなのだ。そして強さとは肉体に対してのみ使う言葉ではない。この少年は弱くない。侮辱するな」
拒絶の言葉と共に先程の猗窩座の言葉を全て否定した煉獄は最後に彼の提案を拒否するかの様に繰り返し告げた。
「何度でも言おう。俺は鬼にならない」
「そうか…」
煉獄の意思に猗窩座は頷いた。
その瞬間
______その場に満ちていた殺気と威圧感の濃度が増す。
【術式展開】____破壊殺“羅針”
「鬼にならないなら殺す…!!!」
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「…目で…追えない…!!」
炭治郎と伊之助の目の前では 今までの闘いが霞む程の闘いが繰り広げられていた。
猗窩座の肉体を用いた連撃が次々と煉獄へと降りかかって行き、その練撃を煉獄は僅かな時間の間に得た酸素で呼吸の技を繰り出し防いでいった。
互いにぶつかり合うその力は正に人智を超えており、動体視力を高めた炭治郎や伊之助でさえもその戦いを目で追う事ができなかった。
その一方で、猗窩座の拳を次々と受け止めながら斬撃を放っていた煉獄は一瞬の隙をつき、呼吸を放った。
炎の呼吸 伍ノ型 炎虎__ッ!!!!
その瞬間 煉獄の身体が刀を振り上げながら猗窩座へ向けて大きく飛び上がると、炎を纏った虎が噛み付くが如く、剣を振り下ろした。
「ハァッ!!!」
その一撃は目の前に突き出ていた猗窩座の右拳を右肩から切り離し、その場に鮮血を撒き散らせた。
だが、相手は鬼の中でも最上位の上弦。その“程度”では致命傷にすらならない。
「俺は悲しい。これ程の技術があと数十年で失われていくのが」
その言葉と共に切り落とされていた右腕が瞬時に再生する。更に猗窩座の顔からは汗一つ流れておらず、見る限り全く体力を消耗していない様子であった。
それに対して煉獄は猗窩座の一撃一撃を防ぐために連続で呼吸を繰り出していた為に体力を消耗していた。それだけでなく、猗窩座の拳を左目、腹部へと受けた事で左眼は潰れ、肋骨は砕け内臓は傷ついており立っているのがやっとの状態であった。
「いくら死に物狂いで頑張ろうとしても無駄なんだよ杏寿郎。お前の素晴らしい剣技で与えた傷も完治してしまった。それに対してお前はボロボロ。もう取り返しがつかない。だがそんなもの…鬼にとってはかすり傷だ。___
_____どう足掻いても人間は鬼には勝てない」
猗窩座の冷酷な一言がその場に響く。
何度も何度も立ち向かったとしても、夜が明けない限り、相手は疲れる事も手数を失うこともない。
状況は絶望的であった。
「何度でも誘うぞ。鬼になれ杏寿郎。そして俺と永遠に高め合おう…!!」
煉獄の残された右目が少しずつ震える中、猗窩座の無限の命へと誘う声がその場に聞こえてくる。
それは死を待つ者達や死を恐れる者にとっては救いの声となり得るだろう。
だが、その程度では煉獄の心は折れたりなどしなかった。
「俺は鬼になどならない!!!」
呼吸をフル活用し全身に血を巡らせ、立つこともままならない身体を無理矢理にでも立たせ動かす。
「…俺は俺の責務を全うする!!ここにいるものは誰も死なせないッ!!!」
その瞬間 煉獄の全身から炎の如きユラユラと燃え上がる闘気が溢れ始めた。
「素晴らしい…!!その傷でこれ程の闘気…やはりお前は鬼になれ杏寿郎!!!」
煉獄の満身創痍の身体から溢れ出る闘気を目にした猗窩座は歓喜の声を上げると両腕を握り締めた。
「俺と永遠に戦い続けようッ!!!!」
互いの限界まで溢れ出した闘気は周囲の空気を変えていき、それがぶつかり合う両者の間の空気はまるで蜃気楼の如く歪んでいた。
その光景を目にしていた炭治郎と伊之助は確信する。
______次の一撃で決まるのだと。
互いに対峙しあった両者は闘気を高め合うと最後の一撃を放つべく、互いに狙いを定めた。
その時であった。
______ドドドドドドドドド…
「…ん?なんだ?」
突然と煉獄の後方にある線路から騒がしい音と共に何かが砂煙を巻き上げながら此方へと向かってきていた。
その音に猗窩座は攻撃の手を止め、相手の煉獄も驚き構えを解かず背後へと目を向けた。
その音はだんだんと激しくなり、まさしく此方へと向かってきていた。
猪か?鬼か?それとも新手の柱か?
皆の目線がその砂埃へと注目する。
その瞬間
「こらぁあああああああ!!!!」
その場に響いてきた叫び声と共に黒い影が飛び上がってきた。
「なぁあああああにやってるんですかぁあああああああ!!!!!」
その直後。飛び上がると同時に回転すると鋭い蹴りが猗窩座目掛けて放たれた。
「な…ガハァッ…!?」
その一撃は見事に猗窩座へと命中し彼の身体が脆い音を響かせながら「く」の字に曲がり木々を破壊する轟音を鳴り響かせながら林の向こうへと吹き飛ばされていった。
その一方で
「く!?なんだ今のは!?新手の鬼か!?」
突如として上弦ノ弍である猗窩座が吹き飛ばされた事に煉獄は驚くと目の前に舞い上がる砂埃の中に映り込んできた影へと目を向けた。
「な…!!」
砂煙が晴れ、その中に立っていた影の正体が露わとなると、煉獄は目を大きく開いた。
「ふぅ…全く!任務中の炎柱様を襲うなど本当に近頃の輩は恐ろしいですね!!」
そこに立っていたのは、煉獄どころか炭治郎よりも小柄な体躯に隠と書かれた隊服を身に纏った隊士___
_____【隠】の者であった。
「なぜ隠がここに!?」
「ん?…あ!!!え…炎柱様…!!遅れてしまい申し訳ありません!!」
その声に気づいた隠は自身の顔を見るや否や突然と頭を下げながら此方へと駆け寄ってきた。
すると
「…!!」
得体の知れない“何か”が感じ取れた。その何かの根源は間違いなくこの隠であった。
一体、この隠は何者なのだろうか?いや、それよりも、まさかこの隠が上弦ノ参を殴り飛ばしたのだろうか。
煉獄が疑問を抱く中、その隠に見覚えがあるのか、炭治郎は臭いによってその男の正体を看破した。
「天一郎さん!」
「はぁ!?コイツがあのチビか!?」
すると
「誰がチビですか!」
その声に目の前に立っていた隠が、顔を上げると同時にパァと顔を明るくさせた。
「あ!炭治郎君と猪君。お久しぶりです」
「天一郎!?君が胡蝶姉妹の言っていた…」
「え?何がですか?」
そんな中であった。
「小僧ぉおおおお!!!!」
林の奥から巨大な破壊音と共に全身から威圧感を放つ猗窩座が現れた。その気迫は先程の比ではなく、周囲の空気が揺れており、太い幹を持つ木々が次々と薙ぎ倒されていった。
そして 林から飛び出した猗窩座は飛び上がると天一郎へと向けて拳を構える。
破壊殺___空式ッ!!!
「貴様の顔…!!あの日から一時も忘れた事はなかったぞ…!!」
その言葉と共に猗窩座の拳が虚空へと次々と打ち付けられると、殴りつけられた空気が弾丸のように放たれていった。その空気の塊はただ速度が速いのみならず猗窩座の拳がそのまま向かってくるかのように、当たったその威力は煉獄に明確な苦痛を与える程のものであった。
パン___!パンパンパン_!!!
「な…!!君!!」
「天一郎さん!!」
放たれた空気の弾丸が天一郎の背中へと脆い音を立てながら打ち付けられた。その音を耳にした煉獄や炭治郎は驚き、すぐさま駆け寄ろうとした。
だが、
「……ん?何ですか今の…ちょっと気持ちよかった様な…」
直撃したにも関わらず無傷どころか痛みすら受けておらず、平然としていた。
「え…えええええええ!?」
「はぁあああああああ!?」
「うぇ!?ど…どうしたんですかお二人とも!?」
炭治郎と伊之助が叫び声を上げる中、天一郎が驚いていると、煉獄は恐る恐る尋ねた。
「君…何ともないのか…?」
「え?まぁ、別に」
「…!?」
その言葉を耳にした瞬間 煉獄はようやく自身らが信じてなどいなかった胡蝶姉妹の言葉を思い出す。
____鬼を素手で倒し太陽の元に晒し殺した。
_____鬼の力すらも通じない強靭な肉体を持っている。
「まさか…本当に…」
「わぁ!?炎柱様 傷だらけじゃないですか!大丈夫ですか!?」
胡蝶姉妹の言葉を思い浮かべる中、目の前に立っていた天一郎は煉獄の傷を見ると即座にカバンの中から医療器具を取り出し、素早い手つきで煉獄の傷口へと薬を塗り始めた。
「酷い出血ですね…大丈夫です!任務に遅れた分、その倍は補助させてもらいますので!………誰にやられたのですか?」
「「え…?」」
煉獄へと傷薬を塗る中、天一郎から煉獄の傷の原因を尋ねられた炭治郎と伊之助はゆっくりと猗窩座へ指を向けた。
「「アイツ(です)」」
「へぇ…」
その言葉を耳にした天一郎の額から筋が湧き上がると煉獄を治療していた手を止めて猗窩座を睨んだ。
「あなたですか。任務を終えて間もない炎柱様に傷を負わせたのは」
「…だったら何だというんだ…?」
天一郎は立ち上がると猗窩座に対して拳を向ける。
「ボコボコにします」
「そうか…やれるものならやってみろ…!!」
それに対して猗窩座は笑みを浮かべるのであった。
天一郎情報その10→全速力で走れば数分で十数キロを駆け抜ける。