___by R.Kさん
天一郎が任務へと向かって数日。
宇髄と炭治郎達が向かった遊郭では周囲を巻き込む程の激闘が繰り広げられていた。
「アハハハハ!!ほぉら死ね死ねブサイクどもぉ〜!!!」
巨大な満月が輝く夜の中、多くの家屋が立ち並ぶ屋根の上では際どい着物を着た白髪の女性が叫び声を上げながら帯を操り、善逸と伊之助がそれらを避けながら彼女へと接近しようとしていた。
「ほぉら避けんじゃねぇよぉ!!バラバラに刻んでやるからよぉおお!!!」
その言葉と共に彼女の腕が二人へと向けられ、それに連動するかの様に帯は唸りながら向かっていく。
「く!?何なんだよ!血の斬撃に帯!これじゃミミズ女に近づけねぇぞ!!」
「耐えろ伊之助!!必ず隙が生まれる!!それまで何としてでも避け続けるんだ!!」
その帯が通った瓦や家屋は次々と八つ裂きにされていき、それを伊之助と善逸は避け続けていた。
そしてその傍らでは彼女をも超える存在が戦っていた。
筋肉質な体型を誇り、まるで中国の武器『ヌンチャク』をモデルに模られた特殊な日輪刀を振り回す音柱『宇髄天元』と、『炭治郎』そして途中から参戦した宇髄の嫁の一人である『雛鶴』。そんな手練れの3人を一方的に追い詰め圧倒している上弦ノ伍『妓夫太郎』
「ソラソラソラァ!!!」
「ぐぅ!?」
妓夫太郎の持つ武器である鎌から放たれた一撃が、無数にぶつかり合う互いの斬撃の隙間を通り抜けていき、宇髄の頬や身体へと切り傷を与えた。
「宇髄さん!!」
それを見た炭治郎は更に呼吸を用いて身体能力を強化し、妓夫太郎へと攻撃を仕掛ける。
そして、立て直した宇髄も参加し、二人同時に首を切り飛ばすべく、両側から剣を振り回した。
だが
「お前らが俺の頸を切るなんざ〜無理なんだよぉお!!!」
その言葉と共に妓夫太郎の両腕に握られた鎌がそれぞれ剣を防ぎ、更に両腕から夥しいほどの血液が螺旋状に放出された。
血鬼術___ 円斬旋回・飛び血鎌ッ!!!
「ぐ!?」
その斬撃は範囲を増しながら宇髄と炭治郎に迫ってくるが、宇髄がすぐさま自身ごと下の路地へと身を投げる事で炭治郎や雛鶴への直撃を防いだ。だが、そのまま自身もろとも妓夫太郎と路地へと落下していく。
「宇髄さん!!」
すると
「ンハハハハ!!やってやったぜ!!ミミズ女ぁあ!!!」
突然と伊之助の高笑いが聞こえ、振り返るとそこには 離脱しようとする伊之助の姿があった。見ればその腕には先程まで戦っていた堕姫の首があり、首を斬ることに成功していたのだ。
「このままもう一方の奴の首が切れるまで逃げ切ってやるぜ!!
そう言い伊之助は首を取り返そうと迫ってくる帯を切り裂き、更に速度を上げていく。
このまま伊之助が堕姫の首を持ったままでいれば、後は妓夫太郎の首を斬るだけだろう。
故に炭治郎は希望を持った。
だが、現実はすぐさまそれを否定した。
「おい。俺の妹の頸ぃ…どこへ持ってくんだ〜…?」
その言葉と共に伊之助の左胸を鎌の先端が貫いた。
「伊之助ぇえええ!!!」
そこには何と先ほど、宇髄と共に落下した妓夫太郎がおり、背後から伊之助の心臓部を鎌で貫いていたのだ。
「何故だ!?奴は宇髄さんと…」
炭治郎は咄嗟に先程、妓夫太郎と宇髄が落下していった路地へと目を向ける。
「な…!!」
そこには、片腕を切断されたまま倒れている宇髄の姿があったのだ。
それを見た炭治郎は鬼狩りを優先して伊之助へと駆け寄ろうとするが、目の前から堕姫の数枚もの帯が次々と降り注いできた。
「危ない!!炭治郎!!」
「!?」
咄嗟に目の前に立っていた善逸が炭治郎を突き出す形でそれを避けるものの、すでに二人が立っていた建物どころか、周囲の屋根全体を切り刻んでおり、その足場全てには亀裂が走っていた。
その瞬間
全ての家屋がバラバラに破壊されて倒壊した。それによって炭治郎は下へと落ちていくが、善逸はその崩落に巻き込まれていった。落下していった炭治郎は心臓部を突き刺された伊之助と、瓦礫と共に落ちていく善逸を最後に意識を手放したのであった。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
ー
「…!!」
目を覚ました時には、あたりの景色は一変していた。
周囲の建物はほとんど倒壊しており、更にどこからか引火したのか、自身の周囲にある所々の瓦礫からは炎が燃え上がっていた。
「禰豆子は!?」
咄嗟に炭治郎は自身が背負っていた禰豆子を探す。すると、彼女はいつも入っている箱のすぐそばで眠っていた。
「良かった…すぐに宇髄さん達も助けないと…」
炭治郎は周囲に妓夫太郎と堕姫の気配がない事を確かめると、彼らに気づかれる前に宇髄達を見つけるべく立ちあがろうと前を向いた。
だが、そこには
「なんだぁ?お前まだ生きてんのかぁ?運のいい奴だなぁ〜」
こちらを見下ろす妓夫太郎の影があった。その姿を目にした炭治郎は驚き、立ちあがろうとした動作を停止させてしまう。
「まぁお前以外はもうダメだろうなぁ〜猪は心臓を一突き…黄色い頭の奴は生きてるが瓦礫の下敷きだから死ぬまで放置するぜぇ〜。柱も弱かったな〜威勢がいいだけでよぉ。毒が全身に回ってお陀仏だぜぇ〜みっともねぇなぁ」
その言葉に炭治郎は自身以外の皆が戦闘不能になっていると知り動揺してしまう。
この場にいるのは手負の自身と万全な状態である2人の上弦ノ鬼。
_____完全なる窮地に立たされていたのだ。
「みっともねぇな〜みっともねぇな〜特にお前は格別だよぉ…!!お前の木箱から溢れてんのは血縁だろぉ?姉か?妹か?」
頬を掻きむしりながら妓夫太郎が訪ねてくる。
対抗しようにも刀を巻きつけた手には力が入らず、振り回すどころか持ち上げる事すら出来なかった。
故に少しでも時間を稼ぐべく答える。
「俺の…妹だ…」
「ひ…ひひ…ヒャヒャヒャヒャ!!!やっぱりみっともねぇなぁ!!守れてねぇじゃねぇかぁ!兄貴なら妹を守ってやんなきゃダメだろぅ?なぁ…!!」
その言葉と共に妓夫太郎の腕が炭治郎の右腕の中指と人差し指を掴むと、へし折った。
ポキャ
「ぐ…!!!」
骨がへし折られる音と共に指から凄まじい激痛が走り炭治郎は苦痛の声を漏らす。その様子を見ていた妓夫太郎は嘲笑うかの様に更に不気味な笑みを浮かべながら炭治郎の髪を掴んだ。
「なぁおい。今どんな気持ちだぁ?自分だけみっともなく生き残ってどんなぁ気持ちだぁ〜?なぁ虫けらぁ!ぼんくらぁ!ノロマの腑抜け!役立たず!何でお前は生まれてきたんだ〜!?」
次々と妓夫太郎の口から放たれる言葉が心に突き刺さる。それによって炭治郎の戦意が少しずつ削がれていった。
「どうしたぁ?そのボロボロの醜い人間の体で〜俺の頸を切ってみろよぉ?さぁ…さぁ…さぁ!!!!」
その言葉が決め手となったのか、炭治郎の顔は上を向いたまま動かなくなってしまった。
宇髄も、伊之助も善逸も戦闘不能へと陥り、炭治郎も戦意を喪失。
____もはや、この上弦の鬼に立ち向かう者は誰もいないだろう。
否__。
炭治郎はまだ諦めてなどいなかった。
「…!!!」
天を向いていた炭治郎は妓夫太郎の隙を見ると意識を持ち直し、彼に責め立てられている間に頭の中に思いついた作戦を実行すべく身体を動かそうとしたのだ。
何としてでも頸を切るべく。炭治郎は全身に力を込めて立ちあがろうとする。
その時であった。
「お兄ちゃん!!後ろ!!」
「ん?」
背後から聞こえた堕姫の声と共に何者かが妓夫太郎の腹へと手を回した。
ガシッ
「あ〜?どうしたいきな______」
その瞬間
妓夫太郎の身体が浮かび上がるとその場に持ち上げられる。
そして
「怪我人になぁぁぁぁにやってんですかぁああああ!!!!!」
ドォオオオオオオオオンッ!!!!
巨大な叫び声と共に頭から地面へと叩きつけられたのであった。
天一郎情報その14→バックドロップが得意