とある隠の奮闘が鬼舞辻無惨を苦悩に落とす。   作:狂骨

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咲いちゃった♡__


______by B.Bさん


その隠 陽光山へ

 

 

あの日から数週間が経過し、天元は無事に傷を癒やし退院した。

だが、左腕を失った事で満足に戦える事が出来なくなってしまい、今後の事を考慮した上で引退を決意する事となった。

そんな身体でも階級が甲の隊士を軽くあしらう程の実力があるために化け物には変わらないだろう。

 

そんな彼は煉獄やカナエと同じく、今回の任務を産屋敷廷にて耀哉へと報告していた。

 

「天元、報告に間違いはないかな?」

 

「はい!」

 

耀哉の眠る部屋にて。その布団の側に正しく正座していた天元は耀哉の確認に頷くと、まるで興奮が止まらない子供の様に淡々と話し始めた。

 

「俺はこの目でしかと見ましたぜ!まだちっこいガキンチョ3人が上弦を追い詰め、途中から参戦した隠がド派手に奴らをしばいた光景を!!」

 

「ありがとう天元。少し落ち着こうか」

耀哉はその報告に嘘偽りがない事を確認すると同じく頷き、彼を制止させた。

因みに今、この場には天元と耀哉以外は誰もいない。柱達も自身の任務に忙しい為に短期間に何度も集まる事は難しいのだ。故に今回は天元の報告を耀哉のみが聞く形となった。

 

「ここまで皆を頷かせたとなると、彼にもそれに相応した地位が必要だね…」

 

「つまり、柱に推薦する…という事ですか?」

 

「う〜ん。それも良いと思うんだけど、柱が増えれば当然だけど無惨も警戒し厳密に調査するだろう。やっぱり隠のままでいて、柱達と同じ任務に当たってもらいたいと考えいるんだ」

 

「まぁ…確かにそのほうが良いですね。正直いうと…今回ばかりはあの4人と隠がいなければ、俺はやられていましたから」

 

「上弦は強敵だ。自分を責めてはいけないよ」

 

それから天元は落ち着きを取り戻し、報告を終えると彼に頭を下げて産屋敷邸を後にし、耀哉は笑みを浮かべながら見送った。

 

ーーーーーーー

 

 

妓夫太郎との激闘より2ヶ月が経過したある日。

 

「いやぁ〜良かったですよ炭治郎くんが目覚めて」

 

蝶屋敷へと訪れていた天一郎はお茶を飲みながら安堵の息をついていた。目の前にはきよ、すみ、なほの3人娘から昨日回復訓練を受けている炭治郎の姿があったのだ。

 

「すみません…心配させてしまった様で…」

 

「いえいえ。無事に目覚めたので何よりですよ〜!」

炭治郎は申し訳なさそうにするも、天一郎は首を横に振る。

 

天一郎がここへ来る数日前に炭治郎は目覚めており、偶然にもその場に居合わせていた後藤やカナヲ、3人娘は喜びアオイは涙を流していたらしい。

更に驚いたのが、あのポーカーフェイスなカナヲが笑みを浮かべた事であった。それほど、炭治郎が目覚めた事が嬉しかったのだろう。

 

 

場面は戻り、炭治郎は訓練を受ける中、ある事を思い出した。

 

「あ!そういえば俺が寝てる間に刀って届いてるかな!?」

 

「ひぐ!?か…刀…ですか!?えっと…鋼鐵塚さんの手紙……読みますか…?」

 

その質問に、ちゃぶ台でお茶を用意していたなほはギョッとしながらも手紙を出す。

 

 

そこには___

 

____大量の呪詛が書かれていた。

 

炭治郎の刀を担当するのは『鋼鐵塚』という鍛冶屋であり、腕は確かであるのだが性格に大きな問題を抱えている何とも複雑な鍛冶屋である。

 

その大きな問題こそが刀への愛着であり、一度でも刀を折ったりすれば包丁を持って襲ってくるのだ。しかも今回は炭治郎が二度も刀を紛失した為にその怒りが恨みへと変わってしまっていた。

 

だが、鬼殺隊において、刀が紛失する事はよくあるらしく、彼のみが酷く特殊なのである。

 

 

「どうしよう…こんな手紙貰っちゃ…こっちから会って謝らないと…」

 

「あ、なら…」

手紙を見てオロオロとする炭治郎に天一郎はいい考えを思いついたのか提案した。

 

「刀鍛冶の里へ行ってみては如何でしょう?」

 

「刀鍛冶の里…?」

 

「はい」

 

天一郎は炭治郎へ軽く説明した。刀鍛冶の里とは鬼殺隊を支える刀鍛冶の者達が住まう重要拠点の一つである。場所は隊士は勿論だが、隠のほぼ全員も知らず、隠の中でも極めて優秀な者しか知らされていないのだ。

 

「それほど秘匿されてる場所に行ってもいいんですか?」

 

「えぇ。お館様から許可が出ればその係の隠が来て連れていってくれますよ」

 

炭治郎の質問に答えながら天一郎は早速、手紙を書くと産屋敷邸へと鴉を飛ばした。

 

「すぐに返事が来ると思いますよ」

 

「ありがとうございます!」

 

そんな中であった。

 

「刀と言えば…天一郎さん、一つ聞きたいんですが、天一郎さんはどんな呼吸を使ってたんですか?」

 

「え?」

炭治郎は前から疑問に思っていた事を彼へと尋ねた。上弦との戦いで見せたあの肉弾戦と身のこなし、いくら武術を纏っていようと、妓夫太郎の飛ぶ斬撃や堕姫の帯を躱す事など困難を極めるだろう。

 

そうなれば、呼吸を用いて身体能力を上げていると考えられるため、炭治郎は彼の力の源を知るべく尋ねたのだ。

 

炭治郎から尋ねられた天一郎は思い出したかの様に唸ると答えた。

 

「私の場合は炭治郎くんと同じ水の呼吸でしたね。育手の方が、現役の時、階級が“甲”だったご老人でして、手厚く教えてもらったんですが…どうにもうまくできず…」

 

「そうだったんですね…(じゃあ猗窩座の攻撃を捌いたのも…、呼吸の応用なのかな…?)」

 

 

 

その時であった。

 

「天一郎さん、お館様より任務ですよ〜」

 

入り口からしのぶが手紙を持ちながらヒョコッと顔を出した。その声に天一郎はすぐさま立ち上がる。

 

「分かりました。では炭治郎くん。私はこの辺で」

 

「はい!お気をつけて!!」

天一郎は頭を下げると、そのまま出ていき、炭治郎もその姿を見送った。

 

 

それからしばらくして、耀哉からの許可が降りたのか隠の女性が到着すると炭治郎は刀鍛冶の里へと向かったのであった。

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

刀鍛冶の里 それは日輪刀を作る刀匠達が住まう里であり、鬼殺隊の重要拠点の一つとなっている。

 

その場所は秘匿とされており剣士達は誰1人と場所を知らず、向かう時は耳栓や目隠し、鼻栓などを施した上で隠によって背負われて連れて行かれる。

更に、運ぶ隠にも特殊な点があり、距離ごとに異なる隠が交代していくのだ。即ち、途中までの道のりで運んでいく隠でさえも里の場所を知らず、知っているのは最後の里まで送る隠のみである。

これ程の特殊な施しを得ているからこそ、刀鍛冶の里は昼夜問わず鬼の脅威に目を向けず作業に没頭できると言うわけだ。

 

刀鍛冶の里へと到着した炭治郎はその街並みに魅了される中、長である『鉄地河原鉄珍』の元に足を運んでいた。

 

「よく来たね〜ワシは鉄ちん こと鉄地河原鉄珍。よろぴく。こんなんだけどこの里で一番えら〜いんだよ。まぁ、畳に頭つけるくらい下げたって〜や〜」

 

「竈門炭治郎です!よろしくお願いします!」

 

「いい子だねぇ。こっちおいで。かりんとうあげるよ」

 

鉄ちんから差し出されたかりんとうを口にした炭治郎が齧り始めると、鉄珍は話し始めた。

 

「蛍なんやけど〜今、行方不明になってるのでな、堪忍してやって〜な」

 

「蛍…?随分と可愛らしい名前なんですね…」

 

「ふぅ〜本人は可愛すぎるってんで気に入っておらんのじゃ。あの子はもう小さい頃からす〜ぐ癇癪起こして……すまんのぅ」

 

「いえいえそんな!!俺が刀を折ったり刃こぼれさせてしまったから____」

 

「いや、折れる様な鈍を作ったあの子が悪いんじゃ…ッ!!!」

 

「ひぎ!?」

 

鉄珍のドスの効いた声に炭治郎は思わず身を震わせてしまう。そして、鉄珍の横にいた付き添いのお面の男2人も拳をブンブン振り回し始める。

 

「見つけ次第 連れていきます故、しばしお待ちを」

 

「それに、明日になれば新鮮な鉱石が届く所以」

 

「新鮮な鉱石…?」

 

2人の付き添いの男のうち、1人が漏らした言葉に炭治郎は首を傾げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

刀鍛冶の里より数十キロ以上も離れた標高の高い場所に位置する山【陽光山】

 

そこは鬼殺隊の隊員が持つ日輪刀の材料となる鉱石「猩々緋砂鉄」(しょうじょうひさてつ)と「猩々緋鉱石」(しょうじょうひこうせき)が取れる山である。

 

その材質はやはり他の鉄とは質が異なり、太陽の光を浴び続けた為か、いつしかその刀は擬似太陽のように鬼の首を切ればそこから再生させる事もなく鬼を滅する事が出来るのだ。

 

 

では、それほどの鉱石は誰によって運ばれるのか?

 

___それは勿論、『隠』である。

 

 

 

「では皆さん!張り切っていきましょう!!」

 

「「「「おおおー!!!」」」

 

山の麓にて、採掘担当の者が掘り当てた鉱石が大量に積まれた荷車を天一郎率いる数人の隠が押していた。

 

天一郎達がいる場所は刀鍛冶の里より数十キロ離れている為、ここから幾つもの山を越えていき、更に中間地点にいる隠から送ってもらいながら里へと向かわなければならないのだ。

 

因みに里の場所は秘匿とされており、優秀な隠以外は教えられていない。即ち、ここにいる隠は全員、里の場所を知っている者であり優秀な隠達なのだ。勿論だが、天一郎も例外ではない。

 

そんな彼らは昼間は進み、夜は必ず街にある藤の家紋の家で休む様な形で刀鍛冶の里を目指す。

 

「天一郎さ〜ん!そろそろ休みませんか〜!?」

 

「何言ってるんですか。運び始めてまだ3分しか経ってないですよ」

 

凹凸のある身体を持つ大柄な女性隠の声に天一郎は答えながら里への道を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして数時間後__。

 

 

周囲は既に真っ暗となった。しかも周囲は森。

 

完全なる鬼の活動時刻に森のど真ん中に立っていた事で4人の隠達は慌て始めた。

 

「ちょっとぉおお!!!最悪じゃないですか!!なんで鬼の活動する時間に森のど真ん中にいるんですかぁ!?」

 

「天一郎さんが後少し後少しって言うからじゃないですかぁ!!!」

 

「そんな事より早く火ぃ焚かないとぉ!!!」

 

「鬼避けの香も!!」

 

この時代において、鉱石はとても重要な資源だ。野盗に襲われてしまう事例も少なからずあるうえに、中には刀の材料がこの鉱石であると認識している鬼もおり襲撃されてしまう事もある。

 

故に野宿はあまり勧められていない。

 

だが、下手に動けば鬼と遭遇する危険性も高まるためにその場に留まる事が懸命と言えるだろう。

 

 

天一郎達はすぐさま野宿の支度へと取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____だが、それすらも通用しない能力を持つ鬼もいる。

 

 

「ケッケッケ…ありゃ隠じゃねぇか…なら、アイツらが運んでんのは日輪刀の材料かぁ」

 

天一郎達が休んでいる景色を見渡せる向かい側の山の木の上から、1人の着物を着た男が弓を構えながらその場を睨んでいた。

 

 

この鬼に名前などない。敢えて言うならば『弓鬼』

 

生前は山で猪などを狩る狩人であったが、遭遇した鬼によって彼も鬼となり、鬼殺隊に殺されかけたことから彼らを恨み襲撃する人喰い鬼となってしまったのだ。

 

「さて…1匹1匹なんざめんどくせぇ…一気にやっちまうか」

 

そう言い弓鬼は自身の肉から数本の矢を生成する。彼の肉体から生成された矢は威力は勿論だが、速度も一般の矢の数倍もあり、本人の技術もあってか、狙いも正確である。

更に遠方から攻撃してくる為、いくら鬼殺隊であろうと、勘が鋭ければ回避できない厄介な技なのだ。

 

 

 

 

そして

 

 

 

「……死ね」

 

その言葉と共に構えられた弓矢が放たれた。

 

 

放たれた数本の矢は風を切り抜けていきながら焚き火を焚いて寝ている隠達目掛けて飛んでいく。

 

「どれ、脳天ぶちまけちまったか見てやるか」

 

矢を飛ばしてからしばらく経つと、弓鬼は首にぶら下げている望遠鏡からその場へと目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには___

 

 

 

______数本の弓矢を握り締めながらコチラを睨みつける隠の姿が映っていた。

 

「はぁ…!?」

 

それを見た弓鬼は信じられないのか、もう一度、望遠鏡を覗くが、そこには先ほどと同じく隠の姿があった。

 

「嘘…だろ!?俺の矢が受け止められた…!?普通よりも数倍の速度なんだぞ!?」

 

その姿に全身から冷や汗を溢した弓鬼はその光景が受け止めきれず全身が震え始めてしまう。

 

「何なんだよアイツ…しかも俺と目ぇ合ってたよなぁ!?まさか場所まで気づいてんのかよ…!?」

 

弓鬼は先程の光景が頭の中から離れず、望遠鏡を手に持つ事さえも出来なかった。

 

 

 

 

その時であった。

 

「貴方ですか?こんな危ないもの飛ばした人」

 

「ひぃ!?」

 

背後から突然と声が聞こえ、振り向くとそこには先程、自身を睨みつけていた隠の姿があった。

 

しかも、その隠はトレードマークである顔隠しを外しており、素顔を晒していたが、その素顔はとても人間とは思える様なものではなかった。

 

 

右頬は切り傷、左頬は首から頬全体を覆い尽くす火傷に加えて耳元まで裂けた口。

 

その悍ましい素顔でコチラを見つめるその姿は正に______

 

 

_________本当の『鬼』であった。

 

 

「弓矢を使うなんて…随分と危ない輩がいたものですね…ボコボコにしてあげないと…!!!」

 

 

「いやぁああああ!!!!やめてぇええええええ!!!!」

その後、森全体に弓鬼の悲鳴が轟いたのであった。

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「ふぅ…」

 

弓鬼をボコボコにし、たんこぶだらけとなり気絶した彼を見下ろしていた天一郎は周囲の音に耳を傾ける。

 

 

「………まだ輩がいますね。鉱石は貴重なので守らないと」

 

その後 周囲の山々から約9体の気配を感じ取った天一郎はその場にいた輩(鬼)を全員殴り飛ばし気絶させた後に日に当たる木の上に縛り上げたのであった。

 

 

 





天一郎情報その17→経験や仕事ぶりから結構、重要な任務を任されがち
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