とある隠の奮闘が鬼舞辻無惨を苦悩に落とす。   作:狂骨

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その隠 叩きつける

 

 

深夜__。草木が眠り、霊が闊歩する時刻となる丑三つ時にて___。

 

刀鍛冶の里は大混乱に陥っていた。

 

「うぁあああ!!!」

 

「敵襲!敵襲だぁ!!!」

 

建物が立ち並ぶ郷の中を身体が鯉で手足が人間という異形な化け物が駆け回り、次々と刀鍛冶を襲撃していた。

刀鍛冶達は必死に応戦するも、化け物達の強さに勝てず蹂躙されていった。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

そして、その化け物を作り出した張本人である玉壺は現在、暗い森の中で無一郎と対峙していた。

 

「ヒョヒョヒョ…初めまして。私は玉壺と申す者…殺す前にちょっとよろしいか」

 

「…」

 

玉壺は礼儀正しく頭を下がるものの、その姿勢を見た無一郎は表情一つ変えず、刀の柄へと手を掛ける。彼の表情から余裕があると思われるが、無一郎自身は決して油断などしていなかった。寧ろ通常時以上よりも警戒していた。

それもそうだ。相手は上弦であり、今までの鬼との戦闘の延長戦とは全く異なるのだから。

 

その一方で、玉壺は短い3対の手をパチパチと叩くと、壺を取り出す。

 

「今宵 御三方のお客様には是非とも私の作品を見ていただきたい!」

 

その言葉と共に目の前に置かれた壺から巨大な影が形を変えながら現れ、やがて一つの物体となって現れる。

 

「では!ご覧あれ!!!まずはこの『鍛冶の断末魔』ッ!!!」

 

「な…!!」

「こ…これは…」

玉壺の言葉と共に壺の中から現れた物を見た小鉄は瞳を震わせ 鉄穴森は思わず声をあげる。

 

2人の目の前に現れた壺には___

 

 

_____5人の刀鍛冶がまるで木の根のように絡み合いオブジェにされていた。

 

「そ…そんな…!!おじさん…皆ぁ!!!」

知り合いがいたのか、小鉄は声を震わせる。そのオブジェは所々から上半身や、刀が歪な形で枝の様に突き出しており、割れたお面の下から見えるその目には光りが宿っておらず、既に死んでいる事が分かる。

 

その一方で、その反応を待っていたかの様に玉壺は歓喜の声をあげる。

 

「ヒョヒョヒョ!まずはこの腕!!刀鍛冶特有の豆だらけの汚い手を私はあえて前面に推し出しております!!更にこの虚な瞳を曝け出しながらも、顔の反面を覆うこの仮面は無常感や不条理を表現するために残しました!!」

 

歓喜の声を上げながら玉壺は説明すると、今度は刀鍛冶のオブジェに突き刺さっている刀へと手をかけた。

 

「そして…そして極めつけはここ!!この様に刀を捻ると…」

 

 

グチャ__

 

 

「アアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

その直後、枝の様に突き出していた顔から断末魔の様な叫び声が響き渡った。死んでいるにも関わらず、生々しい叫び声を上げるその姿からは、まるで生きたまま取り込まれ、その痛みにもがき苦しんでいるかの様であった。

 

「ご覧の通り、死体であるにも関わらず彼の者の断末魔をあげられるようになっているのです!!そして刀の捻り方を変えれば叫ぶ数も勢いも高くなると言う作りでございます!!」

 

その言葉と共に玉壺が更に刀を奥深くに突き刺し捻ると____

 

 

「アアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

「うぁああああ!!!」

 

「うぎゃぁああ!!!」

 

____先程よりもより一層 悍ましい悲鳴がその場に響き渡った。

 

「やめろ…やめろよぉおおお!!!!」

 

「危ないですよ小鉄少年!!!」

その苦痛の叫びに精神力が弱い小鉄は飛び出してしまい、鉄穴森止めるものの、彼自身も辛いのか、歯を噛み締めながら震えていた。

 

だが、そうしている合間にも断末魔は更に響き渡っていった。

 

「ヒョヒョヒョ!!如何かなぁ!?お気に召しましたかなぁ!?我が作品は…!!」

 

 

そんな中であった。

 

小鉄と鉄穴森の目の前に立っていた無一郎の眉間に皺が寄せられ、これまでポーカーフェイスであった無一郎の表情から怒りが現れ、玉壺へと向かっていった。

 

「おい。いい加減にしろよクソ野郎」

 

その瞬間

無一郎の刀が玉壺に目掛けて振り下ろされた。

 

「ヒョ!?」

 

その振り回しを、壺の中に潜る形で避けると、何と別の場所に置かれていた壺から顔を出す。

 

「説明がまだだろう!?最後までちゃんと聞かれよ!!!」

 

「…」

玉壺の叫びに耳を貸す事なく、無一郎はそこから飛び上がり、屋根の上に置かれていた玉壺…ではなく、彼の入れ物である壺に目掛けて刀を振るった。

 

「ヒョ!?」

 

空気を突き抜けながら玉壺の壺へと向かっていったその刀は一瞬にしてその壺をすり抜けると見事にその壺を真っ二つに破壊する。

 

 

だが、真っ二つにした直後に再び玉壺は移動して、今度は先程、自身が破壊し損なった壺へと移動した。

 

一方で

 

「よくも斬りましたな…?私の壺を…芸術を…!!!審美感のない猿めが!!」

 

壺へと移動した玉壺は姿を現すと、自身の壺を斬られた事で初めて感情を曝け出し無一郎へと叫んだ。

 

それに対して無一郎は刀を構える。

 

「…(これで避けるってことは…“さっきの”分裂鬼とは違って普通に死ぬのか)」

心の中で、ここへ来る前に戦った鬼の能力を頭に思い浮かべながら玉壺へと目を向ける。

だが、玉壺自身も戦闘態勢へと突入したのか、作品の紹介する口を止めると、両腕から壺を生成し自身へと向けた。

 

 

すると その壺からは2匹のやや大きめな金魚が現れた。

 

「え…?」

 

一体何なのだろうか?そのあまりにも陳腐な姿に無一郎は思わず思考を停止させてしまう。

 

 

 

だが、それが仇となってしまった。

 

「我が芸術をその身に受けヨォ!!!」

 

 

【血鬼術】千本針_魚殺_ッ!!!!

 

 

その瞬間 二匹の金魚の頬が大きく膨らんだと同時に、その口から大量の針が発射された。

 

「…!!!」

 

それを見た無一郎は咄嗟に刀を振り回し、撃ち落とす。周囲に金属音がしばらく響き渡ると、何とかその針の雨を受け流すことができた。

 

だが、安心も束の間であった。

 

その直後にその2匹の金魚は今度は小鉄達へと狙いを定めた。それを阻止するべく無一郎は呼吸によってそこから一瞬で移動すると、最初の一本が彼らへと当たる前にその針を防き、更に立て続けに放たれる針の雨を次々と弾き飛ばしていった。

 

「…」

 

それからようやく血技術も収まり、針の攻撃が止まった。

 

 

だが、

 

「時透殿!!!」

 

あれ程の無数の針を全て防ぐことが出来なかったのか、無一郎の身体の至る所にその鋭い針が刺さり、大量の血液が流れ出ていた。

 

「…邪魔だから隠れといて」

 

「………しょ…承知!!!」

 

無一郎の言葉に鉄穴森は何か言いたげな小鉄を抱えると、すぐさまその場から走り去っていった。

 

 

そして 小鉄達が去り、2人のみとなると無一郎は再び玉壺へ向けて刀を構える。

 

「ヒョヒョヒョ…針だらけで随分と滑稽な姿ですねぇ。どうです?毒で手足が麻痺して来たのでは?」

 

「…」

 

玉壺の言葉通り、無一郎の身体に突き刺さった針には毒が仕込まれていたのか、彼の身体を少しばかり硬直させていた。

 

「本当に滑稽だ。つまらない命を救ってつまらない場所で命を落とす」

 

「…?」

 

その言葉を耳にした瞬間 無一郎の頭に玉壺とは別の声でその言葉が再生された。

 

それはまるで、昔、一度聞いたことがある記憶の様であった。だが、その言葉を誰がどんな場所で言ったのか___それを思い出す事が出来なかった。

 

 

その一方で、無一郎を罵った玉壺は体内から壺を生成する。

 

「ヒョヒョヒョ!まぁ柱ですからねぇ!どんな作品にしようか胸が躍る!!」

 

そして、先程の金魚と同じく、再び何かを召喚しようとするかの様にその壺の口を此方へと向けた。

 

「うるさい」

 

それに対して無一郎は玉壺へ目掛けて飛び出すと刀を構える。

 

「つまらないのは君のお喋りだろう?」

 

その言葉と共に無一郎の刀の刃が玉壺の首筋に目掛けて放たれた。その刀の刃は一瞬にして首の目の前まで到達すると、ゆっくりと切り離すべく、首へと向かっていった。

 

 

そして その刃はついに、玉壺の首へと差し掛かり、肉へと入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間_______

 

 

 

______玉壺の持つ壺から水が溢れ出した。

 

 

『血鬼術』 水獄鉢____ッ!!!!

 

「!?」

 

すると 一瞬にして首を刎ねようとした無一郎の刀が彼ごと引き剥がされ、彼の身体が壺の中から流れ出した水の中に閉じ込められてしまった。

 

「ヒョヒョヒョ…窒息死とは乙なもので美しい…。そして首を切られそうになったときのヒヤリとした感じもまた良い…」

 

「…」

 

無一郎は即座に水の牢獄を破るべく、水に向けて刀を突き出した。

だが、突き出した刀が水の牢獄を突き破る事なく、そのままこんにゃくの様に水の牢獄が伸びただけであった。

 

 

「ヒョヒョヒョ…鬼狩り最大の武器である呼吸を封じた…もがき苦しむその姿を思うと堪らないなぁ…!!!」

 

無一郎のその姿を玉壺は嘲笑いながら三日月が輝く夜空を見上げた。

 

「里を壊滅させれば鬼狩り共に大打撃!!そして弱体化させれば産屋敷の首もすぐそこだ!!ヒョヒョヒョ!!!」

 

 

己の行動を称賛するかの様に玉壺の不気味な笑い声が夜空へと響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

ガシッ

 

「化け物倒してる最中に悲鳴を聞いて駆けつけて来てみれば…」

 

「…へ?」

 

突然と背後から何者かが現れ玉壺の頭を掴んだ。

 

 

「何やってるんですか…?」

 

 

「誰だきさ_______」

 

その瞬間____

 

 

 

ドォオオオオオオオオンッ!!!!!

 

 

 

______玉壺の身体が頭から地面へと叩きつけられると同時に刀鍛冶の里全体を揺らした。

 




天一郎情報その20→怒ると怖い
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