とある隠の奮闘が鬼舞辻無惨を苦悩に落とす。   作:狂骨

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嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつくんだね


______by Toki さん



その隠、呼ばれて向かう

 

 

刀鍛冶の里での激闘より数日。無事に里の移転を終えた天一郎はカナエやしのぶが待つ蝶屋敷へと帰還した。

 

「ふぅ〜ようやく着いた。さてと、炭治郎くん達は元気かな?」

 

無理やり、我が家とされた蝶屋敷の玄関の前に立つと天一郎は扉を開ける。

 

「ただいまかえりまし____ひぃ!?」

 

ドアを開けた途端に天一郎は全身から鳥肌が立つと共に腰を抜かした。

 

そこには____

 

「あらあら〜予定よりも随分遅かったですねぇ〜」

 

「何の連絡も寄越さないで何をしていたんですか…?」

 

____全身から紫色のオーラを発する2体の蝶が仁王立ちしていた。

 

「えっと…ずっと待ってました…?」

 

「えぇ。ここ数日貴方が帰ってこないから何かあったんじゃないかと思って心配して食事が喉を通らなかったんですよ〜。そしたら貴方の“足音”と“匂い” “息遣い”が聞こえてきたのでこうしてお出迎えしたので〜す♪」

 

「そ…そうなんですねぇ〜!!あはははは!!_______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____ごめんなさい!!」

 

「謝っても許しませんよ…?」

 

ガシッ

 

カナエの手が天一郎の右手を掴む。

 

「すぐにお風呂へ行きましょう…身体の汚れを落としながら私と姉さんでもう一度“再教育”してあげますから…」

 

ガシッ

 

しのぶの手が天一郎の左手を掴む。両腕を掴んだ姉妹はそのまま天一郎を風呂へと引っ張っていったのであった。

 

 

「いやぁあああああ!!!!」

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

その後 カナエとしのぶに文字通り全身を“くまなく”洗われた天一郎はようやく解放されて、現在は炭治郎のベッドへと来ていた。

 

「はぁ……」

 

「わぁ!?だ…大丈夫ですか!?酷くやつれていますけど…」

 

「ほっとけよこんなヘタレ。それより傷の具合はどうだ?」

 

“なにかあった”事によって酷くやつれている天一郎をあしらった後藤は炭治郎に怪我について尋ねる。

 

「はい!もうすっかりよくなりました!」

 

そう言い炭治郎はバリバリとおかきを齧りながら答える。因みに無一郎と甘露寺は無事であり、ピンピンし、既に任務へと復帰していた。

 

「あ、そうだ!さっき、庭で見たんですが、禰豆子さんはもう大丈夫なんですか!?太陽の下に出てますけども!?」

 

「はい。何故だか、太陽を克服したらしいんです。ただ…何故か前よりも甘えるように…」

 

「確かに…精神が退行しているように見えましたね」

 

すると

 

「カ〜!カ〜!!上坂天一郎宛に手紙!手紙!お館様より!!」

 

「え?」

突如として窓の外から耀哉専属の鎹鴉が現れ天一郎の肩に止まると、脚に巻き付けられていた手紙を差し出した。

 

「なになに…え?」

 

差し出された天一郎はそれを読んでみると、そこには産屋敷邸へ来て欲しいという内容であり、それを読み終えた天一郎はすぐさま支度をする。

 

「すいません!ちょっとお館様の所に行ってきます!!」

 

「は…はい!!お気をつけて!!」

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

蝶屋敷を後にした天一郎は産屋敷に通ずる道をグングンと進んでいた。

 

そんな時であった。目の前の曲がり角から一人の隊士と鉢合わせた。

 

「……わぁ!?か……風柱様!?」

 

「お前は…」

 

天一郎と鉢合わせた男。その男の顔は大量の切り傷が刻まれており、ただ立っているだけであると言うのに圧倒的な強者としての威圧感を放っていた。

 

その男の名は『不死川 実弥』

 

鬼殺隊の中でも最高位の剣士【柱】の一人である。そんな彼と遭遇した天一郎はオドオドと驚き震える一方で、風柱である実弥は目を向けた。

 

「久しぶりだなぁ上坂」

 

「ど…どどどどうもぉ!!!それでは私は失礼いたしまぁぁす!!!」

 

「あ、おい待…」

彼からの挨拶に天一郎は身体を震わせながら頭を下げると、実弥の呼び止める声に耳を傾ける事なく即座に彼の横を通り過ぎ、産屋敷邸へと向かっていった。

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

ー 

 

その後 産屋敷邸へと着いた天一郎は耀哉のいる部屋で正座をしていた。

 

「天一郎、変わりないかな?」

 

「はい。お館様は…前よりも病が進行してらっしゃるご様子ですね…」

 

そう言い天一郎の目の前で眠っている耀哉の顔は以前会った時よりも酷く顔が病に侵されており、毒のように紫色に染まる箇所が広がり目も真っ黒に染め上がっていた。

 

「ごめんね…こんな醜い姿で出迎えてしまった事を酷く恥じるよ…」

 

「いえ…全て呪いの元凶たる無惨の為…。早く見つけてぐちゃぐちゃに擦り潰し、まるめて茹で____あ、失礼しました…必ず成敗せねば…」

 

「気にすることはないよ。君と同じように彼に恨みを持つ子達はたくさんいるんだから」

 

そう言い耀哉は怒りに燃えている天一郎を諭すと、隣に座っているあまねへと声をかけた。

 

「あまね」

 

「はい」

 

あまねは懐から一枚の紙を取り出すと天一郎へと差し出す。

 

「これは…?」

 

「無惨を倒す為にはある“人”の協力が必要不可欠になる。その手紙をその人に届けて欲しいんだ」

 

「ある人…?」

 

 

その後 天一郎は耀哉からある人について説明を受けると、すぐさま承諾しその場を後にしたのであった。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

時間は経過して真夜中。

 

「ふぅ…」

 

とある屋敷の一室にて。開けた窓の付近に設置されている机に座り手紙をしたためている女性の姿があった。

その姿はまるでこの世のものとは思えぬ美しい女性であり、すれ違えば十人中十人が振り向く程の美女であった。

 

「愈史郎、少し休憩にしましょう」

 

「はい!珠世様!」

 

そんな女性は書類を整理する少年へと声を掛けると掛けると、机に置かれたティーカップを手に取り、紅茶をすする。

 

 

 

その時であった。

 

「こんばんは珠世さん。いけませんよ?こんな夜に窓を開けたままなど」

 

「…」

バサバサと音を立てながら一羽の鎹鴉が窓辺へと降り立った。人語を解する鴉。その姿を見ただけで珠世と呼ばれた女性は察したのか警戒する。

 

「どうしてここが…分かったのですか…?」

 

「人脈…ですかね。この家の元の持ち主を特定しましてね。それに昼間の内に愈史郎くんの視覚も把握。まぁ吾輩はただの鴉ゆえそんなに警戒しないでください」

 

「…」

 

淡々と答えるものの、やはり珠世という女性は安心できないのか未だにその少しばかり寄せられた眉を戻すことはなかった。

 

「…では何の御用でしょうか…?」

 

「やはり不信感があるようですね。炭治郎くんみたいに信頼を得るのは難しいようですので簡単に参ります」

 

尋ねられた鴉は答えた。

 

「鬼舞辻無惨を倒すために協力していただけませんか?」

 

「え…?」

 

その言葉に珠世は額から冷や汗を流す。

 

「どう言うこと…ですか…?“鬼”である私を…鬼殺隊の本拠地に…!?」

 

「そう警戒なさらないでください。貴方様の動向は戦国の頃より代々、お館様の一族に伝えられてきました。そちらが知らずとも、我が主人は既に貴方の事をご承知です。鬼でありながら無惨を憎み研究を日々続け、彼について誰よりも詳しい貴方は今の我々に必要不可欠なのです」

 

「そうですか…」

 

鴉の言葉に珠世は先程まで寄せられていた眉を緩め、考える。

 

 

だが、その答えは自然とすぐに出たのだ。

 

「ぜ____」

 

その時であった。

 

「いけませぇえん!!!」

 

突然と扉がバァァアンと開かれ、やや青みのかかった髪を生やした少年が入ると、すぐさま珠世の前へと出た。

 

「珠世さま!!俺は反対ですよ!!こんな奴ら信用できません!!たとえ炭治郎や禰豆子の仲間であろうと俺達は鬼!いつ切り捨てられるか分かりません!!」

 

そう言い現れた少年は断言するかのように珠世に詰め寄った。そんな彼の名は『愈史郎』珠世が研究に研究を重ね、自身の血で鬼化させた人間であり、昼夜問わず彼女の研究をサポートしていた。

 

そんな彼の言う通り鬼殺隊は鬼を憎む者達で構成されているために、『鬼』である自身らが赴けばいつ殺させるか分かったものではない。故に愈史郎は彼女を絶対に死なせないために強く進言した。

 

 

 

だが、

 

 

「承知の上です」

 

「珠世様!?」

珠世はそれについて首を横に振る。

 

「覚悟を決める時ですよ愈史郎…禰豆子さんが太陽を克服したのも炭治郎さんが痣を顕現させたのも…これはきっと何かの前触れです…この期を逃してはなりません。不安があれど…いまこそ結託しあの下衆野郎に引導を渡すべきです」

 

「ぐ…た…珠世様……美しい♡(小声)」

 

その後、珠世はすぐさま鴉の提案に頷いた。

 

 

「感謝致します。では早速参りましょうか。あ、道中のご心配は無用ですよ?お供として“強力な護衛”もいますから」

 

「護衛…?」

 

鴉の言葉に珠世が頷いていると…

 

「よっと…貴方が珠世さんですか?」

 

鴉に続くように窓に突然と黒衣を身に纏った青年も現れた。

 

「その服…まさか貴方は鬼殺隊の“隠”!?」

 

「はい。お館様の御命令により、貴方をお迎えに参りました。事情も既に聞いております。道中に潜む“輩”から必ずお守りしますゆえ、どうかご安心を…」

 

「は…はい…?」

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

その後 準備を終えた珠世達は鴉の案内の元、天一郎に守られながら産屋敷邸へと向かうこととなった。

 

因みに道中の鬼から身を隠すため、愈史郎の血鬼術である視覚を操る札によって皆の姿は鬼などから見えないようになっていた。

 

「あの…天一郎さん…剣士のお姿が見えないのですが…護衛は貴方一人だけなのですか…?」

 

「はい!」

 

「……」

 

天一郎の元気の良い挨拶に珠世は少々不安を抱く。それもそうだ。こんな道中で仮に鬼に襲われてしまえば、彼は戦闘ではなく事後処理部隊のために確実に食われてしまう。

 

その上に自身も長い間、血液のみで生きながらえてきたために鬼としての怪力も一般の鬼と大差ないほどにまで低下しているために、守りながら戦うことなど不可能である。

 

なぜ産屋敷はこんな小柄な少年を護衛として招いたのだろうか?それだけが不思議で仕方がなかった。

 

 

 

 

その時であった。

 

「くんくん……美味そうな匂いだなぁ〜人間の匂いがするぜぇ〜」

 

「「「!?」」」

 

付近の茂みから不気味な声と共に2メートルを越す筋骨隆々の巨漢の鬼が現れた。しかも最悪な事に嗅覚が発達しているのか、自身の隣に立っている天一郎へと目を向けていた。

 

「(まずい…!!天一郎さんの場所を特定されている…少しでも彼を遠くに…!!!)」

 

 

それを見た珠世はすぐさま自身の隣に立っている天一郎へと目を向けた。

 

 

「天一____あら?」

 

だが、そこには既に彼の姿はなかった。

 

 

その直後

 

「ふんッ!!」

 

「ぐぼへぇ!?」

 

「「!?」」

 

背後から天一郎の声と共に肉を叩く鈍い音と鬼の吐き出す声が聞こえ、驚いた珠世と愈史郎が振り向くと、そこには先程現れた鬼の腹へと拳を叩き込む天一郎の姿があった。

 

 

「えええええええええ!?」

 

それを見た珠世は今までにないほどの叫び声をあげた。

 

「な…ななな何をしてるんですかぁ!?」

 

「え?いや夜盗が現れたので気絶させてるんです」

 

そう言い天一郎は拳を引き抜いた。すると、自身らよりも比べ物にならないほどの体格を持つ鬼の身体がゆっくりとその場に崩れ落ちた。

 

 

 

ドサッ…

 

「さぁ!!コイツが目を覚ます前に進んじゃいましょぉ!!」

 

そう言い鬼を気絶させた天一郎は笑みを浮かべながら先へと歩いていったのであった。

 

 

そんな彼の背中を見つめていた珠世は悟った。

 

 

_____あぁ…確かに“強力な護衛”だと。

 




天一郎情報

→拳の威力は弱い鬼ならば気絶させる。
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