産屋敷邸
それは鬼殺隊の創設者である産屋敷家が住まう住居であり、とても複雑な方法で隠されている秘密の場所だ。ここでは鬼殺隊で過剰な問題行動を起こした者の裁判並びに、柱による『柱合会議』が定期的に行われている。
「おい!起きろ!起きろよ!!柱の前だぞ!!」
産屋敷廷へと柱と共に来た天一郎は、石を敷き詰めて作った石庭の上で柱達の離れた場所にて、捕まえた少年【竈門炭治郎】を必死に起こす後藤を眺めながら控えていた。
因みに、後藤が必死に起こそうとしているその少年を眺めながら立っている剣士達こそ、鬼殺隊において最高位の実力を持ち、鬼殺隊を支えている『柱』である。
全員が十二鬼月を討ち取った功績を持っており、羽織や刀も独特な種類を持つものが多い。全部で9名いるのだが、一人は何故か今のところ不在なようだ。
天一郎は仕事の関係上、何度か会っているために特に驚く事はないものの、後藤自身は彼らの放つオーラにまだ慣れていないのか、必死に少年を揺さぶっていた。
すると ようやく少年が目を覚ました。
「!?」
突然と目の前に多数の剣士達がいる事に驚いてはいるが無理もないだろう。そんな少年が疑問に思っている事を読み取るかの様にしのぶは教えた。
「ここは鬼殺隊の本部。今から貴方の裁判を始めるんですよ竈門炭治郎くん」
「…!?」
しのぶの声に驚いた炭治郎が周囲を見渡した。
すると
「裁判の必要などないだろう!鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らだけで対処可能!鬼もろとも斬首する!」
「ならば俺が派手に首を斬ってやろう。誰よりも派手に血飛沫を見せてやるぜ。そう派手派手だ」
彼の目の前に立っていた、山吹色と赤色の混じった特殊な髪を持った青年『炎柱』煉獄杏寿郎がハキハキとした声で処分を提案して、それに便乗するかのように、大柄で筋肉質な体型を持つ『音柱』宇髄天元が目を煌めかせた。
「そんな事より冨岡はどうするのかね?奴も拘束していない事に俺は頭痛がしてくるんだが?胡蝶めの話によると、隊律違反は冨岡も同じだろう」
「まぁいいじゃないですか。大人しくついてきてくれたので処分は後で考えましょう。それよりも私は坊やからお話を聞きたいですね」
木の上からネチネチと言葉を話す『蛇柱』伊黒小芭内に対して、しのぶは宥めると、裁判の被告人である炭治郎へと目を向けた。
「…!げほっ!げほっ!!」
「あらあら。お水を与えた方がよろしいですね。顎を痛めているのでゆっくり飲んでください」
そう言いしのぶは水を取り出すと炭治郎の口元へと注いでいった。
それから喉を潤した炭治郎は、ようやく喋れる様になったのか、自身の思いを叫んだ。
「お…俺の妹は鬼になりました。だけど人を食った事がないんです!!これからも人を傷つける事はありません!!」
だが
「妄言がすぎるぞ。そもそも身内なら庇って当然。信用しない」
それはただの根拠も何もない言葉のみであり、柱達は納得する事はなかった。蛇柱の言葉に他の柱も同意しているかのように見えるも、それでも炭治郎は訴え続けた。
「聞いてください!!!俺は禰豆子を人間に戻すために鬼殺隊に入隊したんです!!妹は2年前に鬼になってから人を襲ったりしていない!!それに妹は俺と一緒に戦えます!!人を守るために戦えるんです!!!」
その光景を後ろからずっと眺めていた天一郎は顎に手を当てながら、彼の言動について考えていた。
「(う〜ん…あの時、私の後ろに回ってきた時は特に殺意も何も感じられなかったし…あの子が洗脳されてる様にも見えない…)」
天一郎は当事者であった故に、昨夜、被告人である禰豆子が自分の背後に回ってきた事を思い出した。あの時は特に何も感じられず、ただ助けて欲しいと願い出てきた少女の様にしか見えなかった。
「(私はただ補助専門の隠…やはり剣技の達人である柱の方達では感じられる物が違うのだろうか…?)」
柱達の死罪を言い渡すその姿を遠くから見ていた天一郎は自身の感覚と比較しながら推測していた。
因みに、下手に口出しをすれば自身も斬首されるので、異議は上げない。
その後、残りの柱が現れ、炭治郎と一悶着起きようとしたが、その寸前にお館様が現れた事でその場は収まり、裁判が行われる事となった。
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『産屋敷 耀哉』
それは今、豪傑揃いである柱全員が頭を下げている先に鎮座している人物の名前だ。見た目は普通の青年だが、その顔は青く染まっており、何らかの病に侵されている。更に彼の目が皆の元へと向けられていない事から視力もなく盲目である事も分かるだろう。
そんな鬼殺隊をまとめる彼が下した判決は『無罪』
耀哉自身は炭治郎と禰豆子の事は鴉を通して知っていた為にそれを皆へ伝えるものの、やはりいくら彼でも柱の数人は納得できない様子であった。
中でも風柱である不死川 実弥は鬼に対する憎悪が強い為、頑なにそれを受け入れようとせず、禰豆子自身が醜い鬼である事を証明する為に自身の腕に切傷をつけ、そこから流れ出る血を間近で彼女へと見せた。
その時に彼女が取った行動は____
______『拒否』
飢餓状態であるにも関わらず、目の前に流れ出る血に喰らいつく事はなく、そっぽを向いた行動は柱達を驚愕させており
その行動自体を後ろから見ていた天一郎も驚きのあまり瞳を震わせていた。
「(凄いな…風柱様の血は稀血の中の稀血…鬼にとっては大好物の筈……それをあんな至近距離で見せられて我慢するなんて…)」
彼女の行動自体が、この場にいる一部を除いた全員を納得させたのだ。
「さて、これで禰豆子が人を襲わない事が証明できたね。けどね炭治郎、禰豆子の事をまだ快く思っていない者もたくさんいるだろう」
「…!!」
耀哉から出たその言葉に炭治郎は反応すると、その場に頭を下げる。
「証明しなければならない。君と禰豆子が鬼殺隊として闘い役に立てる事を。だから十二鬼月を倒しておいで。そうすれば、皆も禰豆子に対する見方や炭治郎の言葉の重みも変わってくる」
「は…はい…!!」
その言葉を身に沁みるかのように受け止めた炭治郎は立ち上がる。
「俺は必ず鬼舞辻無惨を倒します!!俺と禰豆子が悲しみの連鎖を必ず断ち切ってみせます!!!」
「今の炭治郎にはできないから、まず十二鬼月を倒そうね」
「……………はい」
その瞬間 その場にいた柱の殆どが吹き出しそうになったのはまた別の話である。
因みに天一郎も同じく吹き出しそうであった。
その後、無事に裁判は終わり、炭治郎はしのぶの提案によって蝶屋敷にて身を預けられる事となった。
「お館様…失礼します」
「うん。天一郎、これからもよろしく頼むよ」
「はい」
後藤に背負われ、更にその後に続く様に天一郎も続き、箱から顔を出している禰豆子を箱に戻して背負うと後を追った。
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天一郎達が向かう場所である蝶屋敷にて。
「ふんふんふ〜ん♪」
屋敷に数多くある一室の部屋の中では、白衣を着用しながら窓の外を見上げている一人の女性がいた。
水晶の様な目に長く伸びた黒い髪とそれを束ねる蝶の髪飾り。その女性は何やら良い事でもあったのか、とても嬉しそうな表情を浮かべていた。
「まさかカナヲが最初に再会するなんて驚いたわ。けど、元気そうでよかった…」
そう言い彼女は自身の頭の中に、4年前のあの日の事を思い浮かべた。襲いかかってきた上弦ノ弍を殴り飛ばし、瀕死であった自身を救い驚異的な脚力で屋敷まで運び込んだあの隠の男の事を。
「私も会いたいわ…あの隠の人に…色々と聞きたいことが山程あるから…」
天一郎 情報その3
→死んだ魚の様な目をしているため、覚えられやすい