__カァー!!カァー!!上坂天一郎死亡!!無惨トノ戦イニヨリ死亡!!!
天一郎の戦死。それは付近を飛んでいた鴉によって、すぐさま全隊員へと知らされた。
「…!!」
伊之助、善逸、村田と共に回廊を進んでいたカナヲはその知らせを耳にした途端にその場に崩れ落ちた。
「カナヲちゃん!大丈夫!?」
「カナヲぉ!!腹でも痛いのか!?」
善逸と伊之助が駆け寄る中、カナヲは涙を流し始めた。
「義兄さん…義兄さん…!!」
ーーーーー
そして 輝利哉達が待機している山奥の屋敷の中に整備された実験室では
___パリン
一本のフラスコが床に落ちた。
「そんな…あの人が…」
「しのぶさん!!しっかり…!!」
天一郎の死を耳にしたしのぶはそのショックに耐えきれず、その場に崩れ落ちてしまった。珠世が駆け寄り、その目からは光が消え去っており、全てに絶望しているかのようであった。
「何をしているのしのぶ?」
「姉さん…?」
すると、すぐそばで立っていたカナエが背中を向けながらいつもよりも低い声で彼女を制した。
「貴方は柱でしょ?柱である貴方がここで挫けてどうするの?」
「姉さん…!!」
その言葉にしのぶは怒りを露わにした。
「姉さんは何とも思わないの!?あの人が死んで一番悲しいのは姉さんの筈でしょ!!!」
「悲しんでいる暇なんてないわ」
しのぶの言葉にカナエは淡々と返すと、整理した薬品を珠世へと渡す。
「鬼殺隊の殉職なんて…珍しくも何ともない。それに今回は相手が無惨よ…いつ誰が死んでもおかしくはないもの」
「姉さん…」
いつものような温和な雰囲気ではなく、元柱であった時の彼女のその胆力にしのぶは頷き、再び立ち上がる。
すると、カナエの雰囲気がいつもの優しいものへと変わった。
「でも信じましょう。あの人は必ず帰ってくる。今までだってそうだったじゃない。何度も何度も、あの人は帰ってきた。上弦ノ弍や遊郭で戦った時も…今回もそうよ」
その時であった。
背後から見えるカナエの前にあるテーブルへと涙が落ちた。
「あれ…?なんでだろ…なんで…こんなにも…あの人が帰ってくる姿が想像できないの…?」
◇◇◇◇◇◇◇
炭治郎の目の前に散らばっていたのは、倒れている上弦の壱らしき鬼の遺体の上で上半身と下半身がなき別れとなり、顔も左反面を失っていた天一郎の肉片であった。
「天一郎さん…そんな…!!」
目の前で天一郎が殺されていた現実を炭治郎は受け入れることが出来なかった。
「哀れな男だ。あの日、せっかく助かった命を大人しく日銭を稼ぐために使えばよかったものを」
「…は…?」
無惨が唐突に溢したその言葉に炭治郎は驚く。
「どういう事だ…?」
「コイツの親は私が消した。私の研究の邪魔になるからな。その場にいたコイツも殺したが、まさか運良く生き延びていたとは思ってもいなかった。それに聞けばコイツは戦役に出ていたそうじゃないか」
「な…!!!」
そう言い無惨は天一郎の頭を踏みつけ、笑みを浮かべた。
「皮肉なものだなぁ!!!国のために戦った者がその国に住む者によって殺されるとは!!異常者には相応しい最後じゃないか!!」
「「「…ッ!!」」」
その言葉は炭治郎のみならず、背後で構えていた杏寿郎と義勇の怒りを煽り、杏寿郎に至っては今まで見た事がない程にまで激怒し顔から筋が湧き上がっていた。
「その脚をどけろ…貴様が天一郎殿を嘲笑う資格などない…!!!」
その時であった。
___ズン
「「「「!?」」」」
城が突然と揺れ出した。それは先程の天一郎の咆哮によるものよりも大きく、まるで地震の様に揺れていたのだ。
その揺れを感じた無惨は更に額に筋を湧き上がらせる。
「これは……何をしている鳴女ッ!!!!」
ーーーーーーーー
場所は変わり無限城の中心部にて。そこには無惨の配下である上弦ノ肆『鳴女』の姿があった。彼女が奏でる琵琶の音によって無限城は形を変えているが、それがいまや彼女ではなく、“彼”のものへと成り変わっていた。
「何をやっているか?操ってるんだよ。この女の思考を」
彼女の背後に立ちながら、両指を彼女の頭へと食い込みながら淡々と告げるその鬼は、なんと珠世の付人である『愈史郎』であった。
「こんな場所じゃ不公平だろ?俺が地上に叩き出してやる」
その言葉と共に愈史郎は更に力を入れて、鳴女の思考を操作する。
「ヌン…ッ!!!」
それによって、無限城が次々と揺れ始めていった。
ーーーーーーーー
「おのれぇ…!!邪魔をす___ぐぅ!?」
無限城が揺れていき、次々と木片が崩れ落ちていく中、無惨は咄嗟に脳内へとエネルギーを集中させて鳴女の体内に流れる己の血を呼応させると愈史郎もろとも取り込もうとするが、咄嗟に炭治郎達が動き出しそれを阻止する。
「何故か分からんが今が好機だ!!!注意しつつ奴の頸を狙うぞ!!」
「はい!」
「あぁ…!!」
杏寿郎の言葉に頷いた炭治郎と義勇は再び無惨へと向かっていく。
それに対して、妨害を受けた無惨は己の身体中から刃のついた細長い触手を生やすと炭治郎目掛けて振り回した。
「邪魔をするな異常者どもめがぁあ!!!!」
すると
ベンベン
突如として炭治郎、杏寿郎、義勇の足元に襖の扉が現れ、彼らはその襖へと落下していった。
「外へ出たか…だがこれで邪魔者を…!!!」
「待てやコラァ…!!」
「!?」
その時であった。突如として自身の脚が何者かによって掴まれた。
「きぃ!?貴様は…!!」
足元を見ると、そこには下半身と顔の半分を失いながらも笑みを浮かべながら脚にしがみつく天一郎の姿があった。
「寂しいじゃないですかぁ〜!!!もうちょっと私と遊んでこうぜ〜?無惨さま〜ぁあ!!!!」
その言葉と共に天一郎は両手で飛び上がると、無惨の顔面へとしがみついた。
そして
「ぐぁぁぶぅ!!!!」
「ぐ!?」
無惨の顔面へと喰らい付いた。
「ぐぁあああ!!!!離れろぉおお!!!」
「がひょぉほほほ!!!死ねぇ!!私と共に死のうよ無惨んんんん!!!」
顔へと喰らい付いた天一郎を無惨は必死に引き剥がそうとするが、天一郎は狂ったように笑いながら、半分となりながらも剥き出しの歯で無惨の鼻を噛み潰していく。
「おのれぇえええ!!死に損ないがぁああ!!!」
「ぐひょひょひょひょ!!」
それによって無惨は視界に加えて意識さえも天一郎に向けざるを得なくなってしまった。
すると、次々と周囲から無限城の木々が落下し、2人へと降り注いでいったのであった。
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
「うわぁ!?」
外へと出された炭治郎は尻餅をついた太ももを押さえながら周囲を見渡す。
そこは、静まり返った街中であった。
「外へ出たんだ…皆は!?」
周囲を見渡すと、周辺には同じく周囲を見渡していた実弥や無一郎、玄弥や伊之助達などといった、無限城に幽閉されていた鬼殺隊の面々がいた。
「よかった…皆出れたんだ!」
皆の無事を確認した炭治郎は、すぐさま同期である善逸、伊之助、カナヲに駆け寄った。
「善逸!伊之助!カナヲ!!」
だが、彼らからは再会を喜ぶ気配は無かった。カナヲに至っては涙を流しながら泣いていた。
「炭治郎…あの人は…天一郎さんは…死んだのか…?」
「…」
善逸の言葉に炭治郎は先程の無惨に踏みつけられている天一郎の姿を思い出す。切り裂かれた胴に左側の頭部。あの時には既に彼の目からは光が失われていた。
炭治郎は明確には伝えず、ただ事実であるというように頷いた。
「…あぁ」
「そんな…」
残酷な現実に、伊之助は言葉を失い、天一郎を嫌っていた善逸でさえも、眉間に皺を寄せながら拳を握り締めた。
だが、悲しむよりも、まずは現状である。自身らが出てきたは良いが、無惨がまだだ。彼を地上へと引き摺り出し太陽の光の元に晒さなければ終わらない。
「そうだ…早く無惨を見つけないと…!!日の出まであとどれくらいだ!?」
炭治郎は勿論、周囲の柱達も状況を確認するべく歩き出した。
その時であった。
____ッ!!!!
突如として目の前の土が巨大な音と共に爆発した。
「「「「「「!?」」」」」」
その音を耳にした全員が、その場へと目を向けると、その煙が一瞬にして晴れ、中から左上半身を失いながらも憤怒の表情を浮かべた無惨が現れた。
「ほぅ…?夜明けまでこの私を留めるつもりか…」
そして、無惨は一瞬に身体を再生させると背中から骨盤のような物体と共に細く強靭な8本もの触手を生成し、炭治郎達目掛けて振り回した。
「面白い…やってみろッ!!!」
天一郎情報その???
___一度見つけた獲物への執着心がとてつもなく高い。