____ by Mr.2
____私は愚かだ…一時の感情に身を任せながら何もかも全て捨て去るとは……お館様…皆…緑壱…仮にもう一度歩めるのならば、共に___
__いや、貴様を見ているとそんな後悔をしている自身が更に惨めに思えてくるな。
__今から私の全てを貴様に注ぐ。鬼殺隊を裏切った私が言える立場ではないが…我が弟が成し得なかった事を…鬼舞辻無惨を討ち取ってくれ…!
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無惨の苛烈な攻撃が炭治郎達を追い詰めていた。全身から伸びてくるその触手の先端部には鋭利な刃物があり、その切れ味は掠っただけで人体を切り裂く切れ味を持っていた。
「うぉ!?何なんだよこのタコみてぇなんは!!ミミズ女に似てるが速さが段違いだ!!」
「油断するな!擦りでもすれば奴の血が送り込まれるぞ!!」
肌の感覚が人一倍発達している伊之助が避ける中、義勇が注意を呼び掛ける。
近くには、細胞が壊死し全身が崩れかけている隊士の遺体があった。無惨の鋭い刃には斬りつけた際に大量の血が送り込まれるような構造になっているために、斬りつけられた者はその細胞の侵蝕に耐えきれず死亡してしまうのだ。
だが、それを警戒していたとしても、無惨は常に大人数の中から複数を標的にしながら振り回しているために、その不規則な刃の動きを見切る事など不可能であった。
その瞬間
「がぁ!?」
「きゃ…!」
「く!?」
無一郎、甘露寺、伊黒の身体を無惨の刃が斬りつけた。
「時透さん!!甘露寺さん!!伊黒さん!!」
玄弥の声が響く中、今度は無惨の刃が玄弥へと向かってきた。
「く!?」
「馬鹿野郎!!目を逸らすな!!」
無惨の刃が玄弥を貫く前に、実弥が飛び出して彼を背負う形で回避するが、その刃は実弥の足へと掠った。
「兄貴!!」
「騒ぐな!俺の身体の頑丈さは知ってんだろ!!」
その言葉と共に実弥は刀で自身の脚を斬りつけた無惨の触手を斬り飛ばす。
その一方で、炭治郎は背後から無惨の首へと刀を向けていた。
だが、
「がぁ!?」
その刃が無惨へと届くことはなく、現れた無惨の触手が炭治郎の顔の表面を斬りつけた。
「「炭治郎!!!」」
カナヲと善逸の声が響く中、炭治郎の身体が赤い血を吹き出しながらゆっくりとその場に崩れ落ちる。
「終わりだ。掠っただけで猛毒となる私の刃をあれほどまで深く、更に額で受ければ傷に加えてその傷から流れ込んだ大量の毒が体内を蝕む____
____竈門炭治郎は死んだ」
「…ッ!!」
その言葉を耳にしたカナヲの額に筋が湧き上がり、刀を握る力が更に強くなっていく。
「よくも…よくもよくもよくも…!!!」
今まで無感情であったカナヲの脳内は、炭治郎や天一郎達と交流を重ねることで様々な感情を曝け出していくことが出来ていた。それによって、今まで現れる事のなかった感情が、頭の中を埋め尽くした。
それは『怒り』
『敬愛する義兄である天一郎の死』と『想いを寄せる炭治郎の死』大事な二人を失った事による悲しみとその二人を死に追いやった張本人である無惨に対しての憎しみが頂点へと達し、もはや制御できない領域にまで踏み込んでしまったのだ。
「ふぅ…!!ふぅ…!!!」
だが、それでもカナヲは場数を踏んできた経験としのぶ、カナエとの稽古によって辛うじて冷静を保っており、その怒りを刀を握り締める腕へと集中させていった。
すると、驚異的な握力で握り締められていた日輪刀が______
_________赫く染まった。
「!?」
それを見た無惨は目を大きく開き、咄嗟に標的をカナヲへと変える。
「(あの刀の色は…まさかアイツの…!?)」
その刀を見た途端に無惨の頭の中に、あの日、自身を絶命寸前まで追い詰めた“耳飾りの剣士”の姿が浮かび上がった。
「いや…奴に比べればあの小娘は…」
無惨が現実に戻った時には既に、カナヲは目の前まで迫っていた。
「フゥゥゥ!」
___『花の呼吸』【伍ノ型 徒の芍薬】__ッ!!!!
その瞬間 無惨の全身へと5連続の斬撃が襲い掛かり、切り傷をつけた。
「ぐぅ!?」
切り傷と共に、その傷から襲いかかって来る焼ける様な痛みに無惨は眉間に皺を寄せると、すぐさまカナヲに向けて触手を振り回した。
「鬱陶しいぞ小娘がぁ!!!」
だが、それを阻止するかの様に杏寿郎が横から突撃した。
____『炎の呼吸』【壱ノ型 不知火】ッ!!!
一瞬にして迫った杏寿郎の炎の如き振り回された日輪刀が、カナヲへと迫ろうとした触手を全て捌いた。
「貴様は猗窩座が殺し損ねた男か…!?貴様もさっさとくたばれッ!!」
「無理だな!!大事な弟子や弟の行く末を見届けなければならないのでな!!」
その言葉と共に、再生した触手を杏寿郎は避ける形で後退する。
それと入れ替わる様に周囲からは実弥、悲鳴嶼、義勇達が迫ってきた。
____風の呼吸 壱ノ型__
____水の呼吸 漆ノ型__
____岩の呼吸 壱ノ型__
それぞれが一直線に放ち敵を貫かんとする型へと移行し、無惨へと一斉攻撃を放とうとした。
だが、次の瞬間 無惨は額に筋を湧き上がらせる。
「舐めるなぁあ!!!!!!」
「「「「!?」」」」
突如としてその場に咆哮が響き渡り、迫っていた3名を吹き飛ばしていった。
それだけではない。無惨は右脚を振り上げると地面へと勢いよく振り下ろす。
それによって、その場に巨大な地響きと共に地面が陥没し無惨を中心に半径が数メートル以上ものクレーターが形成され、付近に立っていたカナヲがそのクレーターの圏内へと入ってしまった。
「…!!」
そして、そのカナヲへと無惨の鋭い目が向けられると、彼女目掛けて触手が振り下ろされていった。
「まずい!カナヲちゃん!!」
「栗花落さん!!!」
付近に立っていた善逸と無一郎が叫び、飛び出そうとするが、その刃はもはや彼女の目の前まで迫ってきていた。
「…!!」
その光景を目にしていたカナヲは動くことが出来ず、ただ迫って来る刃を見つめることしか出来なかった。
その時であった。
カナヲに迫っていた触手が一瞬にして全て切り飛ばされるとともに、彼女の身体がクレーターの外にある隠達の元へと届けられた。
「今のは…ぐぅ!?」
その光景を見た直後、無惨の全身へと先程とは比べ物にならない程の痛みが走る。
その一方で、助けられたカナヲは自身を救い出した影を見つめながら涙を流していた。
「炭治郎…!!!」
「…」
その声に、カナヲを救い出した影は隠達へとカナヲを預けるとすぐさまその場から無惨のいるクレーターの中心へと降り立つ。
「…ほぅ?それではどちらが化け物か分からないな」
無惨の皮肉混じりの言葉と共に露わとなったのは、顔の半分が腫れ上がった皮膚によって覆われている悍ましい姿となった炭治郎であった。
だが、その言葉に対して炭治郎は何も余計な一言もなく、淡々と告げる。
「終わりにしよう…無惨」
その時であった。
ドドドドドドドドド
「「!?」」
突如としてその場が巨大な地響きと共に揺れ、その異変に無惨は勿論だが、炭治郎も驚き、周囲を見渡した。
すると
ガシャァァァン
地面から突如として何者かの両腕が現れると共に無惨の両足を掴んだ。
「な!?なんだこの腕は!?」
自身の脚を何者かに掴まれた無惨が困惑するが、その腕はその問い掛けに答える事なく動き出した。
そして
「旅は道連れ世は情けッ!!!!」
ズガァァァァン!!!
突然の叫び声と共にその掴んだ両足が地面へと吸い込まれ、それと同時に引き摺り込まれた無惨が首元まで埋まった。
「「「「「ええええええ!?」」」」」
その光景にその場にいた全員は驚き、煙の巻き上がるその場へと目を向けた。
すると 炭治郎の目の前の土が一瞬にして盛り上がり、別の黒い影が姿を現した。
「あなたは!!」
その黒い影を目にした炭治郎は驚き、
「き…貴様は…なぜだ…なぜ生きているのだ…!?」
無惨は驚くと共に恐れ慄いているかの様に土の面だけから見せている顔を真っ青にさせる。
そこに立っていたのは_________
「いや〜目覚めたら地中にいたので出てきましたよ」
_____破けた隊服を身体に巻き付け、風にたなびかせながら血の色に染まった鋭い目を向ける天一郎であった。
「天一郎さぁぁぁぁぁん!?」
「「「「「「「「ええええええええええ!!!????」」」」」」」」
その場に炭治郎の叫び声と共に無惨を除いた全員の驚きの声が響き渡るのであった。
天一郎「ん?あ、皆さんどうも」
炭治郎「しかも軽!?」
天一郎情報 その???
→たとえ戦場で刀で突き刺されようと銃弾で撃ち抜かれようと、絶対に死なない。