とある隠の奮闘が鬼舞辻無惨を苦悩に落とす。   作:狂骨

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その隠 朝日と共に

 

夜明けまでの二十分。これまでの1000年間の中で無惨は最も焦っていた。

 

「!?」

 

迫り来るは炭治郎と天一郎の連携による猛攻。それは時間が経つにつれて激しさを増していった。

 

「ふぅ…!!」

 

 

炭治郎は適切なリズムで呼吸を行いながら日の呼吸を繰り出していた。それによって、再生する筈の部位の再生が止まり、更に古の時代に緑壱につけられたその焼き傷が更に苦痛を与え始めた。

 

それだけではない。

 

「ソラソラソラソラぁ!!!!」

 

鬼と化した天一郎の想像を絶する程の連打が次々と炭治郎へと放った触手を吹き飛ばしていったのだ。

 

2人の連携はさらに息が重なり合っていく。

 

「ぐぅ…!?(なんだこの息の合い様は…!?戦闘方法が全く異なるコイツらがこんな短時間で…!!)」

 

そんな中、

 

「な…」

 

その光景を見つめていた無惨の目にある光景が映り込んだ。無惨の目の前に浮かび上がったのは______

 

 

 

 

 

______互いに剣を握りしめながら戦う“双子の兄弟”の姿が映り込んだ。

 

 

「死してなお私の邪魔をするかぁ…!!!」

 

その光景に無惨は白目を剥くと共に牙を剥き出しにし叫んだ。

 

「さっさと私の前から消えろぉおおおお!!!亡霊どもがぁぁぁ!!!!」

 

「「…!!!」」

 

その咆哮と共に無惨の口から発せられた衝撃波は周囲へと響き渡り、建物を次々と倒壊させていき、至近距離にいた2人を吹き飛ばした。

 

 

だが、それでも2人は退かなかった。

 

「オラァッ!!!」

 

「がばぁ!?」

 

逃走する無惨へと一瞬にして追いついた天一郎は体勢を低くした状態で水平に足を振り回し、逃げ惑う無惨の右足を吹き飛ばした。

 

 

それによって走っていた無惨の身体は地面へと転げ落ちていく。

 

「炭治郎くん!!」

 

「はい!!」

 

天一郎の呼び声に炭治郎は応え、呼吸を整えながらその刀を無惨目掛けて振り下ろそうと刀を構えた。

 

 

そんな中であった。

 

 

「いいのか!?私が死ねば!私の血によって生かされている上坂天一郎も死ぬのだぞ!?」

 

 

「…!!」

 

無惨のその言葉が響くと、炭治郎の動きが突然、鈍くなる。それと共に無惨の脚が再生し、炭治郎目掛けて触手を振り回した。

 

「ぐ!?」

 

無惨の言葉を耳にした炭治郎はようやく現実へと戻り、触手を避けるが、先程よりも無惨に対して明確に芽生えていた殺意が消えてしまった。

 

「(ここで無惨が死ねば…天一郎さんが…)」

 

先程の言葉、それは嘘偽りないものだ。禰豆子は鬼化を解く薬を飲んでいるために時間によっては助かるが、それすらも摂取していない天一郎は無惨が消滅すればともに消滅してしまうだろう。

 

「天一郎…さん…」

 

「そうだ!!貴様は人1人の命を奪おうとしているのだ!!グズめ!!!私を殺すために鬼殺隊に入った奴が私を殺すために1人を殺すなど本末転て____」

 

 

その時であった。

 

 

「ふごぁ!?」

 

 

無惨の顔面を天一郎が掴む形で塞いだ。

 

「その通りだ…テメェの血が流れてるからアンタが死ねば私も死ぬ…カナエさんやしのぶさんを残していくのが気に入らねぇが______

 

 

 

 

 

___________ンな覚悟とっくにできてんだよ…!!鬼殺隊なめんじゃねぇぞッ!!!!」

 

 

その言葉と共に無惨の下顎を掴む力が更に強まると、その顎を顔ごと握り潰した。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

無惨の絶叫が響く中、天一郎は炭治郎目掛けて叫んだ。

 

 

「炭治郎!!!ここでへこたれてんじゃねぇ!!!私達は死ぬ覚悟でコイツの首を狙ってんだ!!!!そうだろう!!!」

 

 

その言葉に炭治郎は頷き、再び日輪刀を握り締めた。

 

「はい!!」

 

その目からは涙が溢れ出ていたが、炭治郎は決して退くことはなく、無惨に向けて駆けて行く。

 

向かってくる炭治郎に対して無惨は額から筋を湧き上がらせ、血走った目を向けると6本であった触手をその倍以上の12本の触手へと変化させた。

 

 

「クソがぁぁぁ!!!さっさと死ねぇええええ!!!」

 

 

 

だが、炭治郎は立ち止まらない。それどころか、更に加速していった。

 

 

すると

 

 

「ぐぁぁぶぅぅぅ!!!」

 

「!?」

 

____シャク

 

無惨へとしがみついていた天一郎が大きく口を開き、その右腕を喰い千切った。

 

 

「ぶががが!!!やらぜねぇぞ!!」

 

天一郎だけではない。

 

「死ぬのはテメェだクソ野郎がぁぁぁ!!!!」

 

【風の呼吸】捌ノ型 初烈風斬り___ッ!!!

 

 

「全くもって同意だッ!!!」

 

【炎の呼吸】伍ノ型 炎虎___ッ!!!!

 

炭治郎へと向かおうとした無惨の強靭な触手を煉獄と実弥の刀が断ち切った。

 

「く!?2本程度…!!!」

 

無惨が残りの触手を向かわせようとするが、

 

「炭治郎!!いけえぇえええ!!!」

 

【雷の呼吸】壱ノ型 霹靂一閃___ッ!!!

 

「やっちまえもんじろぉおおおおお!!!」

 

【獣の呼吸】壱ノ型 穿ち抜き___ッ!!!

 

 

「あと一息だッ!!!」

 

【水の呼吸】壱ノ型 水面斬り__ッ!!!

 

「サッサと奴を斬れ…!!!」

 

【蛇の呼吸】弐ノ型 狭頭の毒牙(きょうずのどくが)

 

周囲の復帰した善逸や伊之助、義勇そして伊黒達の攻撃が次々と襲い、形成された無惨の触手が切り刻まれていった。

 

「なに!?」

 

それによって、炭治郎へと向かっていく触手はなくなり、無惨は新たな触手を生やそうとするも、もはやその体力すら残っていなかった。

 

「終わりだ…無惨…!!!」

 

そして炭治郎は舞った。

 

壱ノ型 円舞

 

弐ノ型 碧羅の天

 

参ノ型 烈日紅鏡

 

肆ノ型 灼骨炎陽

 

伍ノ型 陽華突

 

陸ノ型 日暈の龍・頭舞い

 

漆ノ型 斜陽転身

 

捌ノ型 飛輪陽炎

 

玖ノ型 輝輝恩光

 

拾ノ型 火車

 

拾壱ノ型 幻日虹

 

拾弐ノ型 炎舞

 

壱から拾弐 全ての型を繰り出し無惨の身体へと傷を与えて行く。そしてそれは1度ではない。

 

日の呼吸には拾弐の他にもう一つ型があるのだ。

 

 

それは『壱から拾弐の型 全てを円環を成すように繰り返して行く』ことである。炭治郎は全ての型を放つと再び壱ノ型を無惨へと放っていったのだ。

 

 

まるで、永遠と照りつける太陽のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして 遂に時はきた。

 

 

「…!!」

 

背後に聳える山々の間からゆっくりと太陽の光が差しその場を照らし始めた。

 

「な!?」

 

それを見た無惨はすぐさま逃走を図ろうとする。だが天一郎は決して逃さなかった。

 

「オラァッ!!!」

 

「がぁ…!?」

 

逃走する無惨へ向けて跳躍すると、背後から首を掴み地面へと押し倒すかの様に叩きつけた。

 

「逃がさねぇぞぉおおお!!!!」

 

「離せ…離せぇええええ!!!!!」

 

無惨は自身の腕を天一郎へと放ち、腹を貫くも、もはやその抵抗など無意味であった。

 

「ぐぁああああ!!!!!」

 

山の中から顔を出した陽の光がその場を照らし出し、無惨と彼にしがみつく天一郎の身体からは湯気が沸き始め、2人の身体が燃え上がった。

 

 

「「「「「…!!!」」」」」

 

その光景を目にした皆は刀を振るう事をやめ、その場を見つめた。

 

 

顔を出す太陽の光は更に面積を広めると共に強さも増していき、真っ暗な闇を無惨ともに照らし出していった。

 

「おのれおのれおのれぇええええ!!!こんなところでえぇええええ!!!この私がぁぁぁぁあ!!!!」

 

激しく燃え盛る炎の中、身体が次々と焼け焦げ崩壊して行く無惨の断末魔が響き渡って行く。

 

だが、それは彼だけではない。

 

「天一郎さん!!!」

 

「義兄さん!!!」

その光景を目にしていた炭治郎とカナヲは無惨ともに燃え盛る天一郎の名を叫ぶ。

 

だが、声は返ってこない。それでもまだ意識はあるのか、その身体で無惨を必死に押さえ込んでいた。

 

 

「上坂…テメェ…」

 

「……」

 

「天一郎殿…」

 

実弥、伊黒、杏寿郎のみならず皆の声に耳を傾けず、たとえ鬼になろうともズタボロになろうとも、己が身を犠牲にしようともただ無惨を仕留めるという任務のみに集中し続けて行く1人の“隊士”の姿勢に皆は目を向けていった。

 

 

 

 

そして 燃え盛る炎は遂にその勢いを止めた。

 

「「「「「…!!」」」」」

 

炎が消え、朝日が照らすその場所には無惨の身体は残っておらず完全に消滅していた。残っていたのは__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________直立する天一郎だけであった。

 

 

 

「「「「「「「「………え?」」」」」」」

 

 

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