とある隠の奮闘が鬼舞辻無惨を苦悩に落とす。   作:狂骨

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その隠 蹂躙する

 

「待ってください禰豆子さん!」

炭治郎達が戦っていた場所から数キロ以上もの離れた場所にある屋敷にて。そこで匿われていた禰豆子は輝利哉の静止の声に耳を貸すことなく扉を蹴破り飛び出していた。

 

それだけではない。

 

「おい待て胡蝶姉妹!」

 

「珠代殿も!?」

 

宇髄と、杏寿郎の父である槇寿郎が慌てる声が聞こえ、見れば薬剤の研究に没頭していた3名が禰豆子の後を追っていったのだ。

 

「行かせて…あげなさい…」

 

「父上!?ですが天一郎さんが…!!」

 

輝利哉がその行動に慌てる中、後ろで眠っていた耀哉が落ち着かせるようにそう一言だけ口にした。

 

「慌てることはないよ…天一郎は必ず戻ってくる。

 

ーーーーーーー

 

天一郎の身体を乗っ取った無惨。その身体は非常に小柄であるが、無惨の肉体とは比較にならない程の力を宿していた。

 

『炎の呼吸 肆ノ型【炎虎】』…ッ!!!

 

『蛇の呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙』_…ッ!!!

 

「ふん」

 

杏寿郎が虎が噛みつくかの如く剣を振り下ろし、それを避けさせないために死角から伊黒の重い一撃が放たれたが、天一郎の肉体を乗っ取った無惨は双方の一撃をアッサリと掴む形で止めた。

 

「どうした?止まって見えたぞ」

 

「く!?」

 

 

「テメェら離れてろぉ!!!」

 

その時であった。目の前から猛々しい叫び声と共に実弥が迫り、飛び出すと日輪刀を振るう。

 

___風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎッ!!!!

 

その瞬間 実弥を中心に竜巻が発生し、無惨を飲み込むようにしてすり抜けていった。

 

だが、

 

「なんだ、そよ風か?」

 

「!?」

 

敵を切り裂く烈風でさえも無惨の身体を傷つけることすらできなかった。

 

「どうなってんだ…肉体の硬さが無惨の時とは別物じゃねぇか!?」

 

「当たり前だ。コイツの肉体に私の血が流れているのだぞ?」

 

 

その瞬間 実弥の目の前に無惨が現れた。

 

「な…!!!」

 

「貴様らの呼吸なぞもはや効かぬ」

 

そして拳が放たれ、実弥の身体は建物へと叩きつけられた。

 

「兄貴!!」

 

「他人の心配をする余裕がどこにある?」

 

「!?」

 

駆け寄ろうとした玄弥に向けて一瞬で近づくと実弥と同じくその身体を殴り飛ばした。

 

「げん…ぐぁ!?」

 

「お前が黒死牟の子孫か。だが今となっては羽虫も当然よ」

 

実弥、玄弥に続き無一郎も殴り飛ばした無惨は周囲へ目を向ける。その周囲には力尽きて倒れている柱達の悲惨な光景が広がっていた。

 

「どうした?私を斬るのではなかったのか?傷一つ与えられていないではないか」

 

 

その時であった。

 

「…ん?」

 

無惨の立っていた位置が影に覆われた。それに気づいた無惨が上を見上げると、そこには____

 

 

 

「南無阿弥陀…!!!」

 

____鉄球を足で踏みつけながら急降下する悲鳴嶼の姿があった。更に気づいた時にはその身体は目と鼻の先まで迫ってきていた。

 

 

【岩の呼吸】弐ノ型 天面砕きッ!!!!

 

 

 

 

だが、

 

「……だから何だ?」

 

「な…!!!」

 

 

その超重量級と重力加速度による急降下の一撃に向けて、握り締めた拳を放った。

 

 

それによって、その鉄球は粉々に砕け散り、その衝撃によって押し当てていた悲鳴嶼の脚へと強烈な痛みが走った。

 

「ぐぅ!?」

 

その痛みによって既に体力の限界に達していた悲鳴嶼は体制を立て直す事ができず、そのまま地面へと落下してしまう。

 

そしてそれを無惨は決して見逃さなかった。

 

「終わりだ…!!!」

 

その言葉と同時に、無惨の振り回された脚が悲鳴嶼を蹴り飛ばし、建物へと叩きつけたのであった。

 

 

 

しのぶを除いた柱全員の戦闘不能、もはやまともに戦えるものなどいないその絶望的な状況の中、その光景の中で立っていた無惨は高らかと声を上げて笑った。

 

「ふはははは!!!!皮肉なものだな!!本来ならば日が昇れば立っているはずの貴様らが地に伏せ鬼である私が立っているとはな!!!」

 

 

その時であった。

 

「天一郎から出ていけ…ッ!!!!」

 

背後から炭治郎が飛び出し刀を振り回した。

 

【日の呼吸】壱ノ型 円舞ッ!!!

 

「今ではその型も止まって見えるな」

 

「…ッ!!!」

 

無惨を殺すために編み出した原初の呼吸。その一振りを無惨は呼吸をするかのようにアッサリと受け止めてしまった。

 

「この刀もアイツのものか。忌々しいが今となってはあの時の男も造作もないなッ!!!」

 

「がはぁ!?」

 

その言葉とともに刀が粉々に砕け散り、無惨が足を振り回し炭治郎を蹴り飛ばした。

 

「炭治郎!!!」

 

炭治郎が刀を手放し、地面に倒れていく中、その光景を目にしていたカナヲは周囲へと目を向ける。

 

「…!!」

 

柱の全員はもはや立ち上がることはできず、気を失っており、隊士達も動ける者は誰1人として残っていなかった。

 

「み…皆…」

 

 

「コイツの記憶によれば貴様はコイツの妹だったな…?」

 

「!?」

 

突如として声が聞こえ、目の前に目を向けると、そこには自身を見下ろす無惨の姿があった。

 

「無惨…!」

 

カナヲは立ち上がり、剣を振るおうとしたが、もはや憎しみよりも恐怖に飲まれてしまい、立ち上がることができなかった。

 

「もはや立ち上がることもできないか。まぁいい」

 

その姿を目にした無惨はゆっくりと手を振り上げる。

 

「さぞアイツも苦悩するだろう。自分の身体を乗っ取ったこの私に自分の身体で妹を殺されるのだからな」

 

 

 

その時であった。

 

 

「うわぁぁぁぁあ!!!!もうやめろよぉおおおおお!!!!」

 

「!?」

 

その場に叫び声が聞こえ、見れば隠である後藤が駆け寄り、カナヲへと拳を振り下ろそうとした天一郎に背後からしがみついた。

 

「幾ら何でも惨すぎるだろうがぁ!!!テメェには心はねぇのかぁ!!!!」

 

「離せ」

 

後藤がしがみつく中、無惨は身体を動かしながら後藤を振り払おうとするが、後藤は決して離さなかった。

 

「帰ってこいよ上坂ぁぁ!!!早く戻ってコイツぶん殴ってくれよぉおお!!!」

 

「鬱陶しいッ!!!」

 

だが、その叫び声に天一郎が目覚めることはなく、無惨は怒りの声を上げながら後藤を振り払った。

 

「がはぁ!?」

 

「後藤さん!!!!」

 

炭治郎と同じく後藤が地面に放り出される中、再び無惨の目がカナヲへと向けられた。

 

「終わりだ。お前を殺した後に奴の恋人である姉妹も後を追わせてやる」

 

「…ッ!!!!!」

 

 

そして、遂にその拳がカナヲ目掛けて振り下ろされたのであった。

 

 

「にい…さ…ん…!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

「!?」

 

突如として無惨の手が止まった。

 

何の前触れもなく、まるで誰かに止められたかのように突然とその動きが止まり、周囲の皆は勿論だが、無惨も驚きを隠せなかった。

 

「な…なんだこれは…なぜ動かない!?」

 

突如として自身の意思に反するかの様に止まったその腕は、動かす事さえも出来なかった。

 

「なんだ…!?何がどうなってい?!?奴の意識が残っているというのか!?」

 

突然と起こった謎の現象に無惨が歯を食いしばりながら何度も何度も腕を動かそうと試みる中、無惨はようやく見えた。

 

 

「な…!!!」

そこにはカナヲへと振り下ろそうとした腕を力強く握り締め留めている何者かの腕があった。

 

「き…貴様は…!!」

 

その腕が伸びて来た方向へと目を向けた無惨は目を大きく震わせる。

 

「…」

 

そこに立っていた“燃え盛る炎のような痣を持つ6つ目だった男”は無惨の顔を見ると笑みを浮かべた。

 

 

「無惨…ここにいるのは_____お前だけではないぞ」

 

 

 

それだけではない。その男が笑みを浮かべると共に無惨の頭を何者かが掴んだ。

 

 

「おい。私の大事な“妹”と“親友”に…何してんだテメェ」

 

 

 

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