_____by S.Gさん
4年前
「えっと…姉さん…もう一回言って…」
「え?あの隠は鬼を殴り飛ばした」
「ぜぇえっっっっっっったいあり得ないッ!」
あの時、自身の妹に見たこと全てを話しても信じてもらえず、頭を打ったと言われていた。
ーーーーーーー
あれから天一郎はカナエによって部屋へと連れ込まれ、現在は椅子に座りながら彼女と対面していた。
「えっと…あの、お元気そうでなによりです…」
「えぇ!4年前の貴方のお陰で!」
天一郎が言葉を掛けるとカナエは笑みを浮かべながら答えた。その笑顔はとても美しく、間近で見た天一郎は頬を赤く染めて後藤と同様に緊張し取り乱してしまう。
「あれからずっとお礼が言いたかったんです。4年前は本当にありがとうございました。貴方のお陰で…妹にまた生きて会えることができて…」
「いえいえいえ!!これが仕事ですから!!!どうか泣かないでください!!」
あの日を思い浮かべて涙を流そうとするカナエに対して驚いた天一郎は手をアタフタさせながら落ち着かせた。
それからようやく涙が止まったカナエに対して、天一郎はある疑問に思っていたことを尋ねた。
「その…今、妹さんが柱を務めていると聞きましたが…貴方は復帰しないのですか…?」
「…」
恐る恐る天一郎が尋ねると、カナエは表情を暗くさせ、肺が位置する部分に手を当てた。
「もう戦えません。あの時の怪我で肺が凍って…呼吸も出来なくなってしまったんです」
_____「え?」
その言葉を聞いた瞬間 天一郎は一瞬固まってしまう。
「えっと…ちょっと待ってください…!戦えなくなった!?えぇ!?」
「…」
意識を取り戻した直後に慌てふためき、パニックになりながらも再び尋ねると、カナエはゆっくりと頷いた。
「少し後ろめたかったけど、今はしのぶに屋敷を渡して、私は助手として調合や機能回復訓練の手伝いをしています。アオイときよちゃん、すみちゃん、なほちゃんの4人と一緒に。あ!任務のない時はカナヲも一緒にやっているんですよ!後で紹介しますね!」
そう言いカナエは表情を一変させて笑みを浮かべながら今の自身の現状を話していった。
だが、対する天一郎の表情は_______
「_____は?」
酷く静かな“怒り”に満ちていた。そしてその顔からは『それ』を除いて全て消え去っていた。
「ちょっと待ってください。貴方を助けたのって、大雪の日ですよね?って事は犯人はあの訳の分からないこと言ってた輩ですよね?…って事はあれですか?何の関係もない輩が勝手に花柱様に因縁つけて貴方を戦闘不能に追い込んだって事ですか?鬼殺隊で忙しいにも関わらず」
「いや…あの…落ち着いて…?」
「成る程。一般人に手を出せないとこ突いてきたんですね。では私は隠ですからやり返していいですよね?…証拠隠滅は我々『隠』の十八番なので、アッチがその気でしたら此方も全力で仕返ししなければなりませんよねぇッ!」
「え…え!?え!?」
カナエが慌てふためく一方で、天一郎は立ち上がり、玄関へと向かった。
「ちょっとソイツ探してきます」
「待って待って待って!!!」
その行動を見たカナエは即座に止めようと彼の腰に抱きつくものの、カナエよりも背が低いにも関わらず、その身体はグングン前へと進んでいった。
「お願い!!話を聞いて!!」
「聞いてるからこうなってるんです。取り敢えずソイツここに連れてきて土下座させますので」
「きゃ!?」
すると、その勢いにもう耐え切れないのか、カナエの手が離れてしまい、それによって天一郎は即座に玄関へと向かってしまう。
「では、失礼します」
バタン__。
ーーーーーーーーー
スタスタ…
柱合会議を終え、蝶屋敷へと戻ってきたしのぶは顎に手を当てながら、先程、後藤と共に蝶屋敷へと向かった隠のことを考え込んでいた。
「(禰豆子さんを連れていったあの隠が…姉さんの言ってた隠…本当に鬼を殴って撃退したのかしら…?)」
頭に思い浮かぶ姉の話していた隠の事に思考錯誤しながらも、しのぶはカナエのいる部屋の戸を開けた。
「姉さん、今戻ったわよ……姉さん!?」
扉を開けたしのぶは驚きの声を上げてしまう。
「う…うぅ…!!」
「大丈夫ですか!?」
そこには自身の姉であるカナエが床へと崩れ落ちながら涙を流しており、それを炭治郎やきよ、すみ、なほの3人娘が介抱していた。
「何があったんですか!?」
「しのぶさん!?い…いやぁそれが…カナエさんと話してた隠の人が出ていって、その後カナエさんが…」
「姉さんと話してた隠の人…!?」
炭治郎の言葉にしのぶは驚き、4年前から姉が話していた隠の事を再び思い出すと、泣き崩れているカナエへと歩み寄った。
「姉さん!!彼が来たの!?ここに!?」
「えぇ…だけど…行ってしまったわ……____
________上弦ノ弍を探しに…ッ!!!」
その後、すでにカナエが鴉へと話していたのか、鬼殺隊全員にその話は伝わっていた。だが、その隠についての手掛かりなどは特定の人物以外は所持していなかった為に少数の鴉しか動員できず、更に隠であった為か、殆どの隊士の間では『でしゃばり過ぎて命を落とした身の程知らず』として死んだも同然の様に認識された。
その一方で___。
ドドドドドドドドド
その身の程知らずは蝶屋敷を出たのちに、頭の中であの日、カナエを瀕死に追い込んだ輩(鬼)の顔を思い浮かべながら各地を探し回っていた。
「何だテメェ…?俺の住処に潜り込むたぁ……ぐはぁ!?」
「ケーヒッヒッヒッ!こんな暗い所に人間が入ってくるな___グボヘェ!?」
襲いかかってくる別の輩(鬼)を次々と殴り飛ばしながら各地の山々の至る所にある洞窟や街の中を探し回る。
勿論だが、障害物なども気にしない。
バァァァァン バァァァァン バァァァァン
バァァァアアン!!!!
道を塞ぐ大岩もあり得ない場所から突然と生えている大木さえも全て突き抜けていきながら多くの土地を回っていく。
時には蝶屋敷から数十キロ離れた場所や、とある炭焼きの親子が惨殺された山、そして“青い彼岸花”が数輪咲き誇る場所やヒグマのよく出る小樽など、蝶屋敷を出てから水しか口にせず、寝る事もなく、まるまる1週間、日本全土を探し回っていった。
それでも、天一郎は疲れるどころか、更に加速していった。
「あんの訳の分からねぇ輩がぁ…!!私達の希望を潰しやがって…!!若気の至りじゃ許さねぇぞ!!探知能力を完全に活用して絶対見つけ出してやる…ッ!!!」
そして。蝶屋敷を出てから1週間と3日目の深夜。日本を一周し、蝶屋敷から数十キロ以上も離れた大きな屋敷にて。
キキィイイイイイイン___。
超高速で走り回っていた天一郎の足が止まる。
その先には______
「あんれぇ〜?君だれ?新しい信者希望の子かな〜?」
___目的の輩(鬼)がいた。
「見つけたぞクソガキ」