とある隠の奮闘が鬼舞辻無惨を苦悩に落とす。   作:狂骨

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嫌味か貴様ッ!!

_______by H.Yさん


その隠 帰ってくる

 

天一郎が童磨を探しに向かってから1週間と数日。蝶屋敷はいつも通りに機能はしているものの、暗い雰囲気に包まれていた。中でもカナエは心配のあまり睡眠をとる事が出来ず、その目には疲れが現れているのか、黒く塗り潰したかの様に濃い隈が出来上がっていた。

 

 

「…」

 

朝日が昇る前の部屋の中でカナエは布団に座りながらただ俯いていた。

 

頭の中に浮かび上がってくるのは自身の怨敵を探しにいくべく出ていったあの“隠”の事である。あの日、確かに彼は鬼を殴り飛ばし救ってはくれたが、あれは鬼が勝利に慢心し油断していたからに過ぎない。一人で真っ向から戦いを挑めば確実に喰われるのが目に見えている。更にあの鬼の血鬼術は少しでも吸っただけで内部機関が壊死してしまう程の超低温な冷気を操ってくる。それを呼吸を使わないにしろ、人間である彼が吸ってしまえば、仮に生きて帰ってきたとしてもタダでは済まないだろう。

 

 

もうカナエは限界であった。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…!!」

 

あの日 彼を止められなかった自身の不甲斐無さを恨んだカナエはただ彼への謝罪の言葉を口にすることしか出来なかった。

 

「姉さん…」

 

「ごめんね…しのぶ…姉さんが弱くて…ごめんね…!!」

 

しのぶに対しても己の不甲斐無さを詫びる。彼を危険に晒してしまったのも、妹へ柱という隊の重要な役割へと就かせてしまったのも何もかも己が無力の所為であった。

 

 

「大丈夫よ姉さん…まだ鴉達から連絡は来てないから死んでないとも言えないけど、死んだとも言えないわ」

 

「…だけど…」

 

 

そんな中であった。

 

 

_____ほら暴れてないで来なさい!!

 

___嫌だ!!陽の光浴びたら死んじゃうよ!!これ以上は無理!!

 

 

「…え?」

 

外から何やら騒がしい声が聞こえてきた。その声を耳にしたカナエは耳を疑うと再び聞くべく耳を澄ませた。

 

 

___なに引きこもりみたいな事言ってんですか!?陽の光浴びて死ぬのは鬼だけですよ!

 

___だからさっきから鬼だって言ってるじゃないか〜!!何で信じてくれないのさぁ〜!

 

___私程度に負けるアンタが鬼な訳ないでしょうがぁああ!!!グズグズ言ってるとその顔面にまたオラオラ叩き込むぞオラァッ!!!

 

___ヒィイイ!!もうやだこの人ぉおおお!!!

 

その声は段々と此方へと近づいており、聞けばその内の一人は自身が4年前に対峙した男の声であったのだ。

 

 

「…!!」

 

「姉さん!?」

 

あの日、一時も忘れた事がなかったあの鬼の人を食ったかのような音色と声色。そしてそれを制圧する声。それを耳にしたカナエは自然と立ち上がり、しのぶの横を通り過ぎると玄関を飛び出した。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「…!!!」

 

玄関を出て左右のうち、右の道へと目を向けると、驚きのあまり身体が固まってしまった。

 

「あとさっきから自分の事を鬼だの何だの言いますがねぇ!!私より長く生きてるんでしたら、いい加減そういうの卒業したらどうです!?」

 

「じゃあこの目はなんなのさ!?目隠しされてるけど!!」

 

「そんなもの化粧でしょ!?言っときますがねぇ!!いつまでも人前でそんなものやってたらこの先 冷たい目で見られますよ!いい加減大人になりなさいやぁッ!!!」

 

「もう立派な大人なんだよ〜!!!」

 

そこには4年前に自身を絶命寸前まで追い込み、剣士としての生命を断たせた上弦ノ弍が自身よりも小柄な天一郎によって、目隠しと身体をグルグル巻きにされながら地面に踏みつけられていた。

その縛り方が独特であるのか、怪力である鬼がその怪力を発揮できない様に手足を捻られており抵抗できなくさせていた。

 

 

「あ、花柱様」

 

「え…?あ、あの時の子がいるの…?」

 

その一方で、向こうも此方に気づいたのか動きを止めて目を向けてきた。

 

「丁度良かった!コイツですよね?花柱様を襲った輩は…ん?」

 

天一郎が笑みを浮かべながら、引きずっていた上弦ノ弍の襟首を掴みながら此方へと向かってきた時であった。

 

周囲を取り囲む山々の間から朝日の光が差し込み、その場を照らし始めていった。

 

 

「わ〜!朝日だ!綺麗〜!」

 

「なんだってぇ!?」

 

それを見た天一郎は笑顔を輝かせるが、一方で上弦ノ弍は驚き顔を引き攣らせ、ジタバタと身体を動かして天一郎から逃れようとする。だが、天一郎は彼を離すことはなかった。

 

「うわぁあああ!!!離して!!お願いッ!!」

 

「なに暴れてんだコラァ…暴れたら殴るって言いましたよなぁ!?」

 

「そんな事言ったって!!………あ」

 

すると、顔を出した朝日の神々しい光が天一郎と、彼に引きずられている上弦ノ弍を照らし出した。

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

「うぎゃああああああ!!!」

 

 

「「!?」」

凄まじい断末魔を上げながら童磨の身体が焼け焦げていった。その悍ましい断末魔にカナエは勿論だが、彼を担いでいた天一郎も驚いていた。

 

 

そして 朝日が照らしてから数秒が経った頃には_____

 

 

____上弦ノ弍の大柄な身体は完全に崩れ去り、空気へと溶けて消えていた。

これが自身の怨敵もとい鬼の中で3番目の力を持つ上弦ノ弍の呆気ない最後となったのだった。

 

 

 

「え…え…え?嘘…上弦を…?上弦ノ弍を倒しちゃった…?」

 

その光景がいまだに受け止めきれないのか、カナエは目を点にしていた。すると、

 

「姉さんどうしたの!?いきなり出ていって!」

 

「しのぶ…姉さんもどうしたらいいのか分からない…」

 

「えぇ!?」

 

自身の後を追ってきて外へと出てきたしのぶが肩を揺らしてくるが、カナエはもう何をどう言えばいいのか分からず、目を回しながらフラフラと頭を揺らすことしか出来なかった。

 

 

そんな中であった。カナエを揺らしていたしのぶは目の先にて立ち尽くしている隠の姿を目にした。

 

「あれ?あの隠の人…」

 

「はっ!」

 

しのぶの言葉にカナエは気を持ち直すと、残された問題を思い出した。天一郎のことだ。本来、上弦ノ弍を鬼としてではなく、【迷惑を掛けた輩】と認識して探してここまで連行してきたのだ。それが鬼と知れば____どうなるか予測がつかない。

 

 

見れば、天一郎は童磨が焼け落ちた光景を見つめながら全身を震わせていた。

 

「何であの人震えてるの?」

 

「あ…それはね…」

 

天一郎の状態に首を傾げるしのぶの傍でその様子を見ていたカナエは困惑しながらもゆっくりと声をかけていった。

 

「えっと…その…落ち着いて…?」

 

「こひゅ〜…」

 

「わぁぁぁ!!」

 

すると 天一郎は目を回しながらその場に倒れてしまった。

 

「しっかりしてくださ〜い!!」

 

それを見たカナエは慌てて駆け寄ると必死に身体を揺らすのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

  

人間が住む世界とは別の空間へと位置し左右それぞれに床や階段が存在する謎の城。

 

 

異空間【無限城】

 

周囲全てが無限の襖や階段、そして回廊によって形成された空間の中でただ一人、立っていた上弦ノ参はその光景を見つめながら驚きのあまり瞳を震わせていた。

 

「(ここへ呼び出されたという事は…上弦が…鬼狩りにやられた…!?)」

 

 

 




天一郎情報その5

鬼が怖い
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