バカとクズは使いよう。   作:枕魔神

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清涼祭編プロットあらかた書き終えました。
ゆっくりですが再開です。




第二章
バカと祭りと暗躍するクズ01


【Side吉井明久】

 

 ある者は人生の墓場へ、またある者は強制貧困生活へ。

 様々な結末を迎えた先の試召戦争から数週間、戦いの熱に変わって、ここ文月学園祭の雰囲気は学園祭一色に染まっていた。

 

 清涼祭

 

 そう呼ばれるこの学園の学園祭は、召喚獣システムなんて風変わりなものを導入しているからか、それはもう毎年盛大に開催される。

 今年も例に漏れず、メインイベントの試験召喚大会を始めとした催しが目白押しで、本番間近に迫った今、最後の追い込みと誰もが忙しなく準備に明け暮れていた、そう……

 

「プレイボール!」

 

 校庭で野球をやっている僕達、Fクラスの生徒以外は。

 

「来い明久! バッターはノーコンだぞ!」

「体力筋力運動神経全てを母体に置き去りにしたとはいえ、あまり俺を舐めるな! パワプロくんとファミスタとプロ野球スピリッツを網羅した俺に死角はねぇ!」

 

 キャッチャーミットを構える雄二と、情けない発言とは裏腹に、ホームラン予告をしながらバッターボックスに立つ晴楓。

 

「僕のボールを受けてみろ晴楓!」

「ばっちこーい!」

 

 ピッチャーの僕はそう叫び、相方の雄二のサインを確認する。

 

 全力の ストレートを 晴楓の顔面に

 

「ちょっとちょっと雄二! それじゃ出塁させちゃうよ!」

「一撃で仕留めれば大丈夫だ! お前なら出来る!」

「……僕を信頼してくれてるんだね」

「当たり前だ! そもそもクズにルールは適用しない!!」

「確かに!!」

 

 雄二の言う通りだと思ったし、奴に貧困生活を強いられた僕には豪速球をぶつける当然の権利があるとも思った。

 だから僕は最高のボールを、晴楓の頭の後ろで構えた雄二のミット目掛けてぶん投げた。

 

「おらぁ! 積年の恨み! 死ねっ! 晴「あーれー手がすべったー」ぎゃああ!! バットが飛んできたぁあ!!?」

 

 晴楓の手をすっぽ抜け、僕を目掛けて一直線で飛んでくるバットを全力で回避する僕、当然ボールは明後日の方向へ。

 

「いやー、俺握力も貧弱だからさー。ごめんねー、しょうがないよねー」

「棒読みがわざとらしい!!」

「いや、実は俺ボール打つの苦手なんだよ。人間の頭蓋骨打ち砕くのは得意なんだけど」

「レッドカァド!! クズ退場!!」

「野球にレッドカードねぇし、そもそも故意に死球狙った貴様が何を抜かすか」

「五月蝿いよクズ! 僕は雄二のリードに従っただけだ! 殺るなら雄二を殺れ!!」

 

 まったく! 実行犯の僕より指示した雄二の方が罪が重いに決まってるじゃ無いか!

 

「ピッチャービビってる、へいへいへい」

「バットぶん投げるバッターなんて、どんな優秀なピッチャーでもビビるに決まってるでしょ!」

 

 二球目投げて顔面にぶつけてやろうかこのクズめ、バットを手放した今なら確実に仕留めれるだろう。そんな事を企んでいると、凄い勢いで学校から此方に向かってやってくる強面筋肉達磨。

 

「貴様らっ! 何をやってる!!」

「「げっ! 鉄人(先生)」」

 

 揃えて苦い顔をする僕と晴楓。

 

「学園祭の準備をサボって何してる! 貴様が主犯か吉井ィ!」

「違いますよ! なんで晴楓も一緒に居るのに、まず僕を疑うんですかぁ!」

「これが賭博関係なら楠木を疑うが、奴が自分から野球をやる訳がないだろう、体力テスト万年最下位だぞ?」

「確かに!」

 

 今回も僕が誘わなかったら教室でずっと寝てたと思う。自主的に運動しようって気が無いんだよね、自分の手を汚さずに悪巧みを企むクズらしいっちゃらしいけど。

 そんな鉄人からも、ものぐさ野郎として認識されている晴楓に僕は視線を向ける。そそくさと教室へ戻ろうとしていた所を鉄人に捕まっていた。あの野郎!

 

「何処へ行くつもりだ楠木」

「っ! 雄二が野球をするって提案して、それに悪ノリした明久が俺を無理やり連れ出したんです! 奴等二人が悪い! 鉄人先生、俺は被害者だ!」

「なにスラスラと噓ついてやがる晴楓貴様ぁ!」

 

 僕をおとりにしただけじゃ飽き足らず、鉄人にデマを流すとはなんて野郎だ。確かに人数合わせで無理やり誘ったけど、始まってからは晴楓もノリノリだったじゃないか!

 

 そんな非難の意味を込めて僕が晴楓を睨むと、晴楓の近くにいた雄二が、僕にサインを送ってきた。

 

 フォークを 鉄人の 股間に

 

「そんな事したらいよいよ僕がロックオンされるじゃないか!」

「大丈夫っ! それが狙いだ!」

「どこも大丈夫じゃないよ!?」

「とにかく! 早く教室に戻れ! まだ何も出し物が決まって無いのはうちのクラスだけだぞ!」

 

 そう言って怒れる鉄人にオンボロFクラス教室に連行される僕達。

 こうして僕達の甲子園への挑戦はゲームセットとなった。

 

   ◇

 

【Side楠木晴楓】

 

 さて、バカ共に紛れて野球をやっていた俺だが、現在進行形でとても大きな悩みを抱えていた。そう、試召戦争が落ち着いたら何処か遊びに行くという美波と約束だ。

 Aクラス戦の後の明久に集ったアレは、姫路と邪魔な明久がいたしノーカウントだろう。となれば改めて俺から誘わないといけない事となる。

 

 俺は思った、無理だと。

 

 教室でサラリと何でもない様に言えばいい? FFF団が黙ってないだろうが。

 二人っきりになった時に言えばいい? 何か意味深になってしまうだろうが。

 そもそもあの放課後にチキッた俺が悪い? その通りだよくそったれ。

 

 この後に及んでヘタれている俺は、ウダウダと悩みながら、何処かにペアチケットとか良い感じのきっかけでも無いかなぁと都合のいい事を考えていた。なので学園祭どころじゃないのだ。

 

「そんな訳で今から俺は寝るけど、話し合いは皆でやって、皆で学園祭頑張ってね」

「んじゃあ、お前学園祭の実行委員長な」

「せめて投票とか取繕えや」

 

 学園祭に俺と同じように興味が薄いのか、気怠げな雄二がそう任命してくる。当然そんな面倒くさい事はノーセンキューだ。というか、そもそも……

 

「本当に良いのか? 俺が実行委員長で、俺だぞ?」

「……島田、お前がなってくれ」

 

 俺が真顔でそう問いかけると、渋い顔して発言を撤回する雄二。

 

「坂本ってハルの事はウチにぶん投げれば良いと思ってない?」

「クズ担当大臣だと思ってる」

「その認識はとっても不名誉よ」

 

 好き勝手言ってくれる二人だが、俺への理解が深いようで何よりである。クズに権力を持たせたらどうなるか分かったもんじゃ無いもんな。

 

 そんな訳で、俺のストッパーを兼ねた実行委員長が決まろうとしていたが、美波は「無理よ」と首を横に降った。

 

「ウチは召喚大会に出るもの、実行委員なんて出来ないわよ」

「あぁ、あのウチの学校はこんな珍しいシステム取り入れてますよぉって御偉いさん達に盛大にアピる見世物大会な」

「そのとおりかも知れないけど、相変わらず言い方がいちいちクズいよね晴楓」

「やかましいぞ明久、ついでだお前が実行委員長やれよ」

「嫌だよ!」

 

 なら口を挟んでくるな、バカめ。

 

「んで、美波よ何でそんな面倒そうな行事に?」

 

 進んで目立つ様な事をするタイプでも無いと思っていたため、不思議に思ってそう問いかけた。

 

「瑞希に頼まれたのよ、お父さんを見返したいんだって」

「お父さんを見返す?」

「うん、家で散々Fクラスの事をバカにされたんだって怒ってるの」

 

 あの姫路が怒るってイメージがあまり無いので、そうなのかと姫路に視線が集まる。

 

「だってお父さん、皆の事をよく分かってないのに、Fクラスってだけで馬鹿にしてくるんですよ! 許せませんっ!」

 

 家で言われた事を思い出してるのか、頬を膨らませてプリプリとそう怒る姫路。

 Fクラスの俺からしても此処は馬鹿の掃溜めだと思うけど、なんと姫路はそうは思わないらしい。なんとも珍しい感性の持ち主だ。

 

「だからウチと組んで優勝して、お父さんの鼻をあかそうってわけ」

「なるほどな……姫路、人選ミスじゃないか?」 

「そんなことないですよ! それに同じ女の子の美波ちゃんと頑張りたかったんです!」

「クズと違って瑞希はいい子ねー! ウチらが馬鹿にされたからって怒らなくても良いのに。本当に良い子、クズと違って!」

「わわっ!」

 

 これみよがしに俺に抗議の視線を向けながら、姫路にギュッと抱着く美波。百合百合してるところ悪いけど、結局実行委員長決めは振り出しに戻ったんだから話を戻すとしよう。

 

「で、結局誰がやるわけ?」

「島田、サポートとして副委員長を任命するならどうだ?」

「雄二、貴様そこに俺を据えおこうって企んでやがるだろ、言っておくが俺がサポートで出来るわけが無い、足を引っ張らない様にするのが精一杯だ」

「そうよ、結局ウチの負担が大きいじゃない」

「……ならサポートのサポートとして明久をやるから、さっさと話し合いを始めてくれ」

「「それなら良いぞ(わ)」」

「あれっ!? 僕の意見は聞く気無し!?」

 

 自分は大丈夫だと安心してた所に、予想外の角度から狙撃を食らった明久が抗議の声を上げるが、当然皆無視。ついでに言うなら拒否権も発言権も無いぞ明久。

 

「なんだか貧乏クジばっかり引いてる気がするよ……」

「貧乏のお前にはお似合いだな、明久書記」

「はいはい、話が進まないからハル副委員長は黙りなさい」

 

 肩を落とした明久と、美波と、美波に引っ張られ俺が卓上に上がる。

 

「それじゃあ、ちゃっちゃと決めるわよ。クラスの出し物で何かやりたい事があれば挙手してくれる?」

 

 美波がそう告げると、スッと一人の男が真っ先に手を挙げる。我らがFクラスを代表する変態、ムッツリーニである。

 

「はい土屋」

「……写真館」

 

 美波に当てられて、立ち上がったムッツリーニが意見を述べる。

 写真館、写真館ねぇ……

 

「……土屋が写真館って言うと、かなり危険な感じがするんだけど」

 

 美波も俺と同じ事を思ったのか嫌そうな顔をしている。

 

「一応聞いとくけどムッツリーニ、それR指定的に大丈夫なやつ?」

「……R-15、セーフ」

「……吉井、一応意見だから黒板に書いといてくれる」

「あいよー」

 

【候補① 写真館『秘密の覗き部屋R-15』】

 

 いや、オブラートってもんがあるだろ。書き方よ。

 

「次、はい横溝」

「メイド喫茶ってのがパッと浮かんだんだが、流石にベタだろ? てな訳でウエディング喫茶なんてどうだ?」

 

 奇をてらってそんな意見を横溝は提案する。アイデア自体は悪くないが、学園祭まで時間が無いってのにウエディングドレスなんて凝ったものを揃えれるかは疑問だった。それに……

 

「ウエディングドレスを着るにしてもよ、姫路に美波に、あと誰が着るわけ?」

「何言ってんだ、勿論木下だろ? あとネタ枠で吉井とあとお前」

「誰がネタ枠だ!?」

「却下だ却下! 貴様なんておぞましいもん提案し腐ってんだ!」

「……これも意見よハル。吉井、板書お願い」

「「嘘だろ美波(島田さん)!?」」

 

【候補② ウエディング喫茶『人生と僕達の墓場』】

 

 最悪過ぎる候補だが、美波は知らぬ顔で俺と明久の反論を無視して会議をすすめる。

 

「さて、他に意見は……はい須川」

「俺は中華喫茶を提案する」

「中華喫茶? ウチにチャイナドレスでも着せようっての?」

「いいや、そうじゃない。本格的な烏龍茶と簡単な飲茶を提供する店だ、決してイロモノ格好で稼ごうって訳じゃない。近年ヨーロピアン文化による中華文化の淘汰が世間では見られるが、『食』に関して中華よりも奥深いジャンルは無いだろう。本ら「あーうん、長くなりそうだからストップ須川、端的に言うと?」……中華最高! 中華! 最高! オマエも中華最高と言いなさい!

「嫌だよ」

 

 熱くなりすぎて、話が長くなっていた中華の悪魔に待ったをかける俺。その中華文化にかけるお前の情熱は何処からやって来た、そんなキャラだったのかお前。

 

「それじゃ吉井、須川の意見も黒板に書いてくれる?」

「了解」

 

【候補③ 中華最高喫茶『ヨーロピアン』】

 

 絶対に明久の野郎、話を聞いてないな。

 というか、今まで出た意見を改めて見てみるが……

 

「どれもコレもセンスってもんがねぇよな」

「それなら、晴楓が意見を出せばいいじゃ無いか」

『そうだ文句ばっか言いやがって!』

『少しは貢献しろ!』

「あ? それもそうだな……」

 

 そう明久達に言われ、癪だが俺も何か考える事にした、一応今までの意見を参考にしつつ、反論の余地もないクールな案を。

 

 そして閃く、厶ッツリーニのエロ要素、横溝のコスプレ喫茶要素、須川の中華要素、最後に俺の趣味。

 全てを完璧に取り込んだ最強な俺の案は……これだ!

 

「そうだ! 麻雀喫茶やろうぜ!」

『『『だと思ったぜ! 却下だクズ野郎!』』』

 

 俺のナイスな案に速攻でケチ付けてくる、センスの無いクラスメイト達。

 

「何故だ! 麻雀は中華がルーツだし! 喫茶にすれば体裁は保たれる! 一応今までの案を参考に考えた結果だぞ!?」

「そう言う問題以前の話じゃろ」

「……俺の意見が入ってない!」

 

 そうムッツリーニは言うが、むしろお前の要素が一番強いんだぞ?

 

「はぁ……お前ら知らんのか」

 

 これみよがしに溜息を吐く俺、どうやら全てを語らねば読解力の低いコイツ等には伝わらないのだろう。

 これさえ聞けば絶対に乗ってくるはずだという自信の元、俺は一つの文化をクラスメイトに教えてやった。

 

「日本にはな……脱衣麻雀って文化があんだよ」

『『『貴様さては天才だなっ!』』』

 

 声を揃えて叫ぶ手のひらくるりのクラスメイト達、エロに繋げてやればこのバカ共なら食いついて来ると思ってたさ、計画通り(渾身のゲススマイル)

 

「ムッツリーニなら麻雀ゲームのプログラミングぐらい出来んだろ?……あと素材も持ってるだろ?」

「……当然、任せておけ!」

「で、ワンオーダでワンゲーム制にしてやって、難易度は丁度完全脱衣が出来ないくらいに設定してやれば、チラリズムに誘われドツボにハマったアホな客が金を落とすだろ? 儲かるって訳よ」

 

 今どきゲームで牌操作なんて珍しくも無いんだから、問題ないだろ(ド偏見)

 

『ムッツリーニ監修の脱衣麻雀だと!?』

『いったいどんな名作になるんだ!』

「晴楓! さっそく麻雀を教えてよ! デモプレイは僕がやるんだ!」

 

 盛り上がる助平男子共、コレでコイツ等にも麻雀を布教する事が出来る訳だ、何なら文化祭後に似たような手口でコイツ等から搾り取ってやる事も出来る訳だ。まったく、夢は膨らむばかりですねぇ!

 そんな中、当然ながら女子である美波が盛り上がる男子達、主に俺を睨みながら反対だと声を上げる。

 

「ちょっとハル! そんなえっちなゲームなんて駄目よ!」

「安心しろって、何も問題ないって」

「問題しかないわよ! そもそも土屋監修って絶対に盗撮した写真が使われるじゃない!」

「……ノーコメント」

「それはほぼ答えよ!」

 

 絶対に駄目っ! と断固反対の意思を固める美波。まぁ当然っちゃ当然の意見ではある。正直反対されると思ってたさ、だけど美波には安心してほしいんだ。

 

 だって……

 

「ぶっちゃけ美波の写真が使われてようと誰も選ばんだろ、あいや訂正、清水のクソレズ以外選ばんだろ。だから美波、俺達で脱衣麻雀作っていいよね!」

「そう言う問題じゃないうえに駄目に決まってるけどそれはそうとして何が美晴以外誰も選ばないよ死ねクズ!」

「コークスクリューブロォカハッ!!?」

 

 俺のレバーに捻りの効いた拳が炸裂する。相変わらず女の癖にいいパンチ持ってやがるぜ。

 俺は息ができ無くなりその場に蹲る。そんな俺をゴミを見るかのような目つきで一瞥すると、男子達に向かって美波はこう言った。

 

「アンタ達も! こうなりたく無かったら辞めなさい!」

『『『イエスッ! マムッ!!』』』

 

 シンプルな脅しに全員敬礼して美波の命令に従う。暴力に晒された俺達は余りにも無力だった。

 

【候補④ 麻雀ゲー厶喫茶『ドキッ♡美少女だらけの麻雀大会〜ポロリもあるよ〜』 】

 

 あいも変わらずネーミングセンスが最悪過ぎる。カモフラージュってもんを知らんのか、こんなのもし鉄人先生にでも見られ『ガラガラッ』Oh……。

 

「どうだ、学園祭の出し物は決まっ……Oh」

 

 立て付けの悪い扉が開き、とてもタイミング悪くやってくる鉄人先生。黒板に書かれた酷すぎる案を確認すると、俺と同じように眉間を抑えて天井を仰いだ。

 

「……補習の時間を増やしたほうがいいかも知れん」

『ち、違うんです先生!』

『そうです! それは吉井が勝手に書いたんです!』

『クズが悪ノリした結果です! 僕達はあそこまで酷くありません!』

「ねえ? 酷くない? 掌返し露骨じゃない?」

「そうだよ! 晴楓の悪ノリはともかく僕は言われたとおり書いただけだよ!」

「おいこら待て裏切るな馬鹿野郎」

「馬鹿者っ! みっともない言い訳をするな!」

 

 自分たちだけ補習を回避しようと、他人に責任を押し付けぐだぐだ騒ぎ出す薄情者共に、鉄人先生の一喝が飛んだ。

 流石は鉄人先生、せっかくクラスの為に案を出してやった俺の気持ちを無下にする、クソッタレクラスメイト達を見て怒ってくれたのだろう。

 ありがとう鉄人先生、明日お礼に何か持ってこようかな? バナナでいいかな?

 

「先生はクズの楠木なんかに意見を求めた事と、バカの吉井なんかを書記に選んだこと自体が頭の悪い行為だと言っているんだ!」

 

 決めた、今度絶対にバナナ叩きつけてやるこの妖怪補習ゴリラめ。

 

「まったく、お前らは少しは真面目にやったらどうだ? 稼ぎを出してクラス設備を向上させようとか思わんのか?」

 

 鉄人先生のその言葉に、クラス連中は「そうかその手があったか」と目の色を変えた。

 

『中華喫茶なら──』

『お化け屋敷のほうが──』

『稼ぎ目的ならやっぱカジノとか──』

『『『クズが食いつくだろ血迷うな!!』』』

 

 とたん会議は活気出す。まったく現金な奴らだが、先の試召戦争で実質なんの成果も得られ無かったからな、設備を少しでも快適にしたいって気持ちはわからんでもなかった。

 

 だがしかし、流石はバカで癖の強い集団Fクラス、意見を言うのは良いが、話が要点を得ずにバラバラで、纏め上げる美波が苦い顔をする。

 この烏合の衆を一纏めにしていた赤ゴリラはと言うと、我干渉せずと知らぬ顔で寝腐っていた。

 

「ねぇハル、吉井、どうにかして坂本を引っ張り出せない?」

「無理だろ、見ろよあの腹立つ寝顔」

「雄二は自分の興味無いことに対して恐ろしく冷たいからね」

「こっちが勝手に決めていいならいっその事アイツのストリップショーにでもしてやるか?」

「駄目だよ晴楓、稼ぎを出さなきゃいけないんだから。そんな汚い出し物なんて誰も見ないよ」

「……霧島ならヘビーローテーションするだろ」

「需要が限られ過ぎてるよ!」

「はいはいストップ、アンタ達まで話が脱線してどうするのよ! とりあえずハル、アイツ等黙らせて」

「えぇ……めんどくさ」

 

 美波からそう言われ、俺は渋々重い腰を持ち上げて立ち上がった。

 

「はぁ……お前ら少し落ち着けー」

 

 がやがや! ざわざわ!

 

「3秒以内に黙れよー」

 

 がやがやがや!! ざわざわざわ!!

 

「黙らなかったらテメェ等の秘密無差別に校内放送するからなー、さーん」

 

 ────シンッ

 

「にーって黙ったな、ならよし」

「まさかの堂々たる脅し!?」

「ありがとうハル」

「そしてちっとも動じてない島田さん!?」

「ハルに頼んだらまともな手段を使うわけ無いじゃない。まったく、まだまだね吉井は」

「ごめん! 僕はそこまでこのクズに対しての理解が深くないんだ! あと分かってて晴楓に頼んだ島田さんはだいぶ毒されてると思う!!」

「それじゃ皆、今まで出た案から決めるから多数決を取るわよ」

 

 叫ぶ明久を無視して、淡々と多数決を取って行く美波。その結果、最も票を集めたのは俺の脱衣麻雀……では無く須川の中華喫茶だった。

 

「それじゃあFクラスの出し物は中華喫茶に決定ね!」

 

 案を出した俺としては若干不本意だが仕方無い、決まった事は決まった事だ。それに、中華喫茶なら美波のチャイナ服も見れるだろうしな。

 

「そんな訳で鉄人先生、出し物決まりました」

「うむ、承知した。ではさっそく準備に取り掛かるように!」

『『『はーい』』』

 

 気の抜けた返事が響く。それを聞いた鉄人先生は教室を後にしようとするが、何か思い出したかのように「あぁそうだ」と呟いて振り返った。

 

「一応伝えておくが、召喚大会の締切は明日までだからな、参加するものは忘れぬように」

「鉄人先生、そんなもんに参加する奴が、ウチのクラスに姫路以外にいるとお思いで?」

「優勝景品に目が眩んで無謀にも挑戦する奴がいるかも知れんだろ」

「先生も無謀って言ってんじゃん、てか優勝景品とかあるんすね」

「あぁ、優勝すれば如月グランドパークのペアチケットが贈呈されるぞ」

「…………へぇ」

 

 それは良い事聞いたわ。

 

   ◇

 

【Side根本恭ニ】

 

 あの忘れられない悲惨な事件から数週間、あのクズから受けた仕打ちは、試召戦争が終わってからも俺に尋常じゃない被害をもたらしていた。

 Bクラス内での俺の威厳は当然消え去り、Aクラス生徒は近づくだけで悲鳴を上げる。根本恭ニは女装癖のある変態だと学園中に広まっていた。

 

 その中でも一番堪えたのは、彼女であるCクラス代表の小山友香から別れを切り出された事。別れたくない俺は友香に縋りついた、誤解だと、全てはあのクズのせいだと必死に説明した!

 

「そして! 俺はようやく友香と召喚大会に出る約束を取り付けた! この大会で優勝して友香のハートを再び掴むっ!」

 

 夕焼けの帰り道でそう宣言する俺、数日後に開かれる学園祭がとても待ち遠しかった。

 

 しかし、そんな俺の新たな決意は簡単に踏みにじられる事となる……

 

「ねーもっとくーん」

 

 腹立つほどにニコニコの笑顔で、まるで聖火のように右手に女装した俺のグラビア写真集を掲げながら、こちらにやってくる全ての元凶のせいで。

 

「召喚大会出るぞー、これ親と彼女とその他諸々に郵送されたく無ければ俺と組んで優勝しろー」

「クズノ木ぃいい!! 畜生がぁあああ!!」




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