キリが良いとこまで書くと短くなりました。
次回は長いはずです……きっと多分、ネイビー
【Side楠木晴楓】
『もしもし、ワシじゃが?』
「ん? 秀吉?」
『そうじゃ。晴楓よ、何を企んどるのか知らぬがこっちも緊急事態なんじゃ、手を貸してくれんか?』
「えー、マジで今は手が離せな『実はムッツリーニに頼んで、晴楓用にチャイナ服の島田で写真集を作る予定なのじゃが』分かったなる早でそっちに向かう。いくらだ、いくらでそのブツは買える」
『手伝ってくれたら当然無料で渡すが、相分からず欲望に正直じゃのう……普段からそれだけ素直なら色々と楽じゃろうに』
「うるせぇわ、要件それだけなら切るぞ?」
『まった晴楓、ついでにじゃが、雄二の姿も見えんのじゃ、心当たりは無いかの?』
「雄二ぃ? 知らんけどどうせ霧島から逃げてんだろ? 裏かきまくった結果女子更衣室とかじゃね?」
『なるほど……忙しところすまんかったの。お詫びに島田の化粧はワシが腕を振るわせてもらう』
「お前マジで最高だわ」
ピッ……
「てな訳で俺一回教室戻るけど、作業は続けろよな根本」
「ふざけるなっ! 今貴様に抜けられたらどう考えても人手が足りんわ!!」
「教師にバレたらおじゃんだから人数増やせねぇの分かってんだろ? 黙って手を動かせよ」
「そもそも抜けるなって言ってるんだよ俺は! 俺の青春勝手にぶっ壊しておいて! お前は女の元に行くとか舐めてんのか!!」
「うっせぇなぁ……お前も儲かるんだからしのごの言うなよなめんどくせぇ。写真集発動するぞ?」
「このッ!! さっさと行ってこいクソ野郎!」
◇
「なるほど、それで俺を呼んだって訳ね」
多忙の中に根本を置き去り、Fクラス教室へと戻ってきた俺は、美波から今までの話を聞いてそう呟いた。
姫路の転校ねぇ、そりゃFクラス全員が必死になる訳だ、何だかんだで仲間意識が強い連中だもんなアイツ等。
「まぁ姫路には俺も試召戦争の時の借りがあるから、今回は協力は惜しまんぞ」
「ホント? 良かったわ! もし断られたらどうしてやろうかって思ってたから」
「ははは、俺が美波様のお願いを断るわけ無いじゃないですかヤダー」
サラリと断った場合は処刑が待っていた事が判明。いったいどんな事する気だったんだコイツ、別に怖いから詳しくは聞かねぇけどよ。
俺はナチュラルに処刑を行おうとする美波に改めて戦慄を覚る。
「それで晴楓よ、何か案はあるのかの?」
「おう、考えるからちょっと待てな」
さっそく秀吉に意見を求められ、俺は顎に手を当て考える。手っ取り早く集客率を上げて、がっぽり稼ぎを出す方法を。
中華喫茶、目新しくはあるが肝心のメニューは胡麻団子と飲茶と烏龍茶のみ。中華オタク須川監修の丁寧な逸品だとしても、どうも寂しさが残る。せめて杏仁豆腐とかを加えられれば良かったのだが、予算の都合上泣く泣く諦めたらしい。
よって、俺はメニュー以外の部分で付加価値を付けた方が効率的だと結論づけた。
そう、チャイナ服。結局はエロである。
「チャイナ服来た女子高生が、美味しくなーれっ♡ってあざとい呪文でもかけたらよ、ただの胡麻団子でもぼったくれるんじゃね?」
「晴楓よ、それじゃメイド喫茶じゃ」
「いいじゃん、チャイナ喫茶。そっち路線で売り出そーぜ」
「でも、それだけで本当に売れるの?」
俺に胡乱げな疑いの視線を向けてくる二人。なに、俺もそんな学園祭の雰囲気に当てられたなんちゃってチャイナ喫茶で稼げると思ってないさ。
やるならガチだ。
「実際儲けてる店を参考にしたら色々とあるだろ、チャイナ娘とのチェキとか、胡麻団子のあ~んオプションとか、チャイナ娘が履いてたニーソ販売とか、チャイナ娘とのアフターオプションとかな?」
「最初はまだしも最後の方はいったい何を参考にしてるのよ!?」
「え? キャバクラ」
「学園祭の出し物じゃと言っておろう!?」
目を向いて反論してくるが、そんな事は俺も分かってるっての、あくまで参考にするだけだ。
「まぁ全部は流石に教師からのストップがかかるだろうが、要するにせっかくの美少女達のチャイナ服だ、利用しない手は無いだろ?」
「……でもそれだと変な客も来るんじゃ」
「そこもキャバクラ参考にしよーぜ、可愛い女の子の裏には怖ーいお兄さんってな。お誂え向きにうちのクラスは俺以外ほぼ武闘派だしよ」
FFF団なんて殺戮集団、武闘派の代表みたいなもんだろ。
「明確なルールを決めてその中で楽しんでもらう、守らないなら即刻退去。これなら大丈夫だろ」
「……それなら、大丈夫かな」
「だろ?」
俺の説得に美波が首を縦に振る。実際にやれる事と言えば謎の呪文とかあ~んとかぐらいだろうけどよ、それだけやれって言っても美波恥ずかしがって断るだろ?
だからよりぶっ飛んだ意見を出して、美波のハードルを下げさせて貰った訳よ、交渉の基本は相手との折衷案を付ける事だからな! 心の中でほくそ笑む俺。
「これである程度、集客率は上がるんじゃないか?」
「じゃがそれじゃと男子がメイン層になってしまうのう」
「チャイナ服のレンタル用意して写真コーナーでも作っとけば、学園祭の熱に当てられたアホな自称インスタグラマーがやって来るだろ。映えスポットって奴だ」
「偏見じゃが、割と的を得てる気がするのう」
「ムッツリーニもいるし、プロ並の凄腕カメラマンとでも銘打っとけば話題になるだろ?」
いつの時代も男はエロが好き、女は映えが好きなのだ。
「ハルったら、なんでこう言う時ばっかり、知恵が働くのかしら……」
「知恵は知恵でも悪知恵の類じゃのう」
「心外な、お前らだって俺のこういう所を期待して呼んだんだろうが」
「「それはそうだけど(じゃが)」」
美波と秀吉が本当にコイツどうしようもないなって感じの呆れた視線を俺に向けるが、俺はそれを知らぬ顔でスルーしてやる。
そんな丁度話も一段落ついた所に、タイミングよく教室に戻ってくる明久と雄二。例の学園長への直訴が終わったのだろう。
「ただいまー」
「おう、おかえり……って雄二どうした?」
あの癖の強いババアと話してきたんだし労いの言葉を掛けてやろうと思ったてたのだが、やる気に満ちた表情の明久の隣に立つ、絶望しきった死に顔の雄二に俺は言葉を失う。
「あぁ、ただ勝たなきゃ結婚、逃げても結婚の結婚板挟みに絶望してるだけだから大丈夫だよ、気にしないで!」
「気にするわ! ……マジで何があったんだよ」
◇
【Side吉井明久】
学園長へ直談判しに言った僕と雄二。結果としては条件付きだが教室設備の改善を約束して貰うことができた。
その条件とは、召喚大会で僕と雄二が優勝し、如月グランドパークのペアチケットを回収する事。
なんでもこのペアチケットは曰く付きでペアで行ったカップルを強制的に結婚までプロデュースするらしい。この遊園地に来たカップルは幸せになれるってジンクスを作るためだとか何とか。
どんな理由であれ、姫路さんの為ならなんでも頑張る予定だった僕は、その条件にいっそうやる気が増したが。相棒の雄二の内心はそれどころじゃ無かった。
「なるほど、確か婚約で脅されてチケットでデートする約束をしたと言っておったのう」
「うん、だから霧島さんが優勝したら結婚」
「逃げても結婚と言うわけか、難儀じゃのう雄二よ」
「詰んでるわね坂本」
「冗談じゃねぇ! 俺はまだ自由を謳歌したいんだ! 翔子と結婚なんてしねぇぞ!」
「諦めが肝心だよ雄二」
事の顛末を僕から聞いた皆は雄二の未来を憂いていた。
自分の言動が原因で首を絞められる雄二の様は、見ててとても哀れで、こうは成りたくないと強く思えた。
一方、絶望する雄二とは裏腹に、説明を聞いてからやけに不機嫌な男が一人、晴楓である。
「ちっ……ペアチケット曰く付きかよ」
「何じゃ、晴楓はペアチケットが欲しくて召喚大会に参加したのか?」
秀吉のその問いかけに「まぁな」と答える晴楓。晴楓如きにペアで行く相手なんて存在しないだろうに、何故ペアチケットが欲しかったのだろうか。謎である。
「……は、ハル。それってもしかして」
僕とは違って島田さんには心当たりがあるのか、何故か頬を染めておずおずと晴楓に問かけていた。
じっと晴楓を見つめる島田さん、そんな視線を受けて晴楓は観念したかのように天を見上る。そしてポツリと呟いた。
「………………メルカリで、転売したかったのに」
「はい出たよクズムーブ!」
このクズと来たらスキあらば金儲けの事しか考えてないんだからまったく!
「それホント?」
「うす」
「……ふーん、そういう事にしといてあげるわ」
「……うす」
晴楓の答えに満足したのか、意味ありげに島田さんは笑う。その晴楓を完全に理解したような雰囲気に、僕は流石クズへの理解が深い事で定評のある島田さんだと感心した。
「それじゃあ晴楓は出場は辞めるの?」
「いや、今更取り消し出来ないし。準備もしてるし……何よりこんなスカ掴まされて、稼ぐだけ稼がないと元取れないし」
「? それなら結局出るんだね」
「不本意だけどな」
良かった、Fクラスの学力を宣伝する為にも参加する人は多い方がいいもんね。
「まぁ、参加すると言っても優勝までする気ないからな。お前等の優勝に協力してやるよ」
「わしも手伝わせてもらおうかのう、何せ友人の晴れ舞台じゃ」
「ありがとう晴楓に秀吉!」
二人の協力に感動する。友情ってやっぱり素敵だと再認任。晴楓のクズさと秀吉の可愛さがあれば優勝だって夢じゃないよね!
「……どのみち優勝しないと設備の改修は出来ないんだ、何が何でも、例え対戦相手を殺してでも、俺達は勝たなきゃいけない! 」
「そこまで結婚したくないのね、坂本」
「当たり前だッ!!」
いつの間にやら復活した雄二が島田さんのツッコミに全力で肯定する。
本当、どんだけ結婚したくないんだよ。
「……てかコイツ、チケット無くてもそのうち捕まりそうだよな」
「雄二は霧島に弱いからのう」
「尻に敷かれる未来は見えてるよね!」
「恐ろしい事吐かすな貴様ら!!」
雄二は全力で嫌がるけれど、僕等にはどうしても雄二が霧島さんから逃げきれるとは思わなかったし、逃がす気も無かった。我々は恋する乙女の霧島さんの味方です。
とまぁこんな感じで、雄二のみに問題が発生したものの他は滞りなく、姫路さんの両親を納得させるため、学園祭の準備を僕達は着々と進めていくのだった。
◇
【Side楠木晴楓】
美波をデートに誘うための宛にしていたペアチケットが使えない事が分かり、俺は憤怒した。
挙げ句その事を本人に感づかれ、メルカリで転売するとバレバレの嘘を付き、見逃してもらうと言う情けない事態にまで発展した。
今日は学園祭当日。まだ俺は憤慨していた。だから絶対に召喚大会で大儲けしてやると心に誓ったんだ……
「さぁさぁ張った張った! 注目すべき第一回戦はBクラスの松田・竹林の松竹ペア対Cクラスの田中・山田の普通ペアの戦いだぁ!」
「現在オッズは松竹ペアが1.2倍! 普通ペアが1.8倍だ!」
『松竹ペアに3枚!』
『俺は普通ペアを!』
『男なら大穴勝負! 普通ペアに全ッパじゃあ!』
「「毎度ありぃ!!」」
体育館の裏、教師の目の付かない所で開かれるこれは俺と根本の共同出し物、召喚大会賭博である。
違法じゃないよ? 根本はただの証券を売ってるだけで、その証券を適当な値段で俺が買ってるだけ。ほんで偶々俺等が儲かるだけだ。もう一度言うけど違法じゃないよ?(違法です)
「それじゃあ! これ以上は教師にバレる可能性がある為、今後の証券はネットで販売するからな! 同士共よ解散!!」
『『はーい!!』』
一旦ギャンブルカス共、略してブルカス共を解散させ。根本と二人、手元に残った売上金を見て笑みを浮かべる。
「はっはっは! チョロいわぁ、チョロチョロのチョロQですわぁ! これは大金持ち待ったなしですねぇ根本さん!」
「お前に誘われたときは半信半疑だったが、まさかこうも上手く行くとはな……」
「へっへっへ、こんなん序の口よ。今からもっともっと儲かりまっせ!」
現地で買った奴らが拡散し、ネット販売所を宣伝してくれる。そうすれば俺達はさらに儲かる! ボロい商売でっせ!
教師にバレぬよう、必死に準備したかいがあったってもんよ!
「それじゃあ俺は教室に戻る、召喚大会の出番に遅れてくるなよ」
「わかってるさ、大会も絶対に勝たなきゃならないからな」
「優勝しないと写真集破棄してくれないからね……俺が」
「その通りだよクズ野郎!」
そんな根本の罵倒を背中に浴びながら体育館裏を後にする俺。
財布の中身はお金いっぱい、夢で胸いっぱい。これから楽しくなるぞ……!
俺の清涼祭が今、幕を開けた。
ここまで読んでくださった皆様、お気に入り登録 高評価をくださった皆様、本当にありがとうございました!