取り敢えず24話まで書き溜めれたので投稿です。
【Side楠木晴楓】
「よってらっしゃい見てらっしゃい! メイド喫茶と中華喫茶の奇跡のコラボ! 中華メイド喫茶【ヨーロピアン~全人類ご主人さま計画~】だよぉ! メイドもチャイナもいるよぉ! 」
「呼び込みご苦労さん、相変わらずクソみたいなネーミングセンスだな。他に案は無かったのかよ」
「ははは……晴楓もお疲れ様! 客入りは上々だよ!」
「そりゃ良かった、まぁ看板娘が美人揃いだしな、人は集まるだろう」
先の試召戦争でAクラスと結んだ『なにか一つうちのクラスのお願いを聞いてもらう』権利を発動し、AF合同で行う事になった中華メイド喫茶なる妙ちくりんな店は、俺の思惑通り大盛況。
美人がメイド服とチャイナ服来てんだ、客が来ないわけが無く売上金はウハウハ、ある一点を除いて完璧な作戦だった。
まぁ、お察しの通りその一点が最悪なのだが……
「そういえば、出ていくお客さんに聞いたところ、特にハルコちゃんってメイドさんが人気みたいだよ!」
「奇遇だな、俺も店先に立ってるアキちゃんってメイドが可愛いって聞いたぞ?」
「「………………」」
「「なんでこうなったっ!?」」
本当に何でまだ俺等が女装したままなんだよっ!??
店が好評なのはいい、今のところ妨害もないし順調だ。だがしかし、なんで未だに俺達は女装したまんまなんだよっ!? 常夏を成敗する俺達の役目は終わっただろ!?
二人揃って頭を抱える俺達に「サボるんじゃ無いわよー」と美波が声をかける。
「忙しいんだから、ちゃんと仕事してよね」
「だけど島田さん、こんなの罰ゲームだよ」
「恥をリアルタイムで上塗りしてるわ」
「仕方ないじゃない二人とも、少しでも人を集めないと行けないんだから」
「普通男の女装なんざゲテモノだろ? 飲食店にいたら駄目だろ? 人が寄り付かなくなるぞ?」
「でも、実際人気じゃないハルコ」
「だから困ってんだろぉが! ハルコって呼ぶなや!!」
それが一番腹立つわ! どいつもこいつも鼻の下伸ばしやがって、俺は男だってのっ!?
「くそっ、自分の顔面と華奢な身体が憎い!」
「ハルコ、島田さんと同じで胸は無いけど、見た目完璧な美少女だもんね」
「誰の何処が男のハルと同じよ!」
「あべしっ!」
いらん事を言ったせいで美波からしばかれる明久。ザマァ見ろ、誰が完璧な美少女だ。必死に意識しないようにしてるんだから、自覚させるんじゃない。
「理不尽だ。何故俺がこんな辱めを」
「全ては売上の為よ、頑張りなさいハル」
「……もう売上とかどうでもよくね?」
「あの金の亡者の発言とは思えないセリフだっ!?」
「どうでも良くないわよ。ただでさえ妨害で売上伸び悩んでるんだから、打てる手は打たないと」
美波はそう言うが本気で解せない。いや、道理は嫌すぎるが理解できる。少しでも売上が伸びるなら手は打つべきだろう。
しかし、それを加味したとしても、俺の負担大きすぎん? 可愛い女子のチャイナ服とクズな男のメイド服、羞恥心的に後者の方がハードル高くない? バランス取れてなくない?
俺は、俺がハズレくじを引いている事実が一番許せなかった。明久の様に、道連れにする奴は多いほうがいい。
そう思い、少しばかり悪戯心が湧いた俺は、美波をからかってやる事にした。俺ばっかり恥ずかしいのは不公平だよね?
「そう言う美波はちゃんと接客してんのかよ」
「当たり前じゃない、真剣にやってるわよ?」
「えー? ほんとでござるかぁ?」
「なによ、疑ってんの?」
「別にー? あーそうだー、じゃあ俺にやってみなよ?」
「はぁ!?」
一瞬で顔を赤く染めて反応する美波。何いってんだこいつって思われてるだろうけど、発言は撤回しない。
「いやさ? 正しい接客の参考にさせてもらおうかなって思いましてー」
「いやよ恥ずかしい!」
全力で拒否する美波に、まぁそうだろうなと内心で語ちる。分かる、すっごい分かるよその気持ち、同級生に接客ロールプレイとか嫌すぎるよな。けど絶対に俺は引かない、何故なら俺以外にも恥ずかしい思いをする奴は多い方がいいからだ。所謂道連れってやつよ。
とは言っても普通に頼むだけじゃ美波はやってくれないだろう。このままでは平行線のままなので、俺は押して駄目なら煽ってみろの精神で美波を煽る事にした。
「え〜? 出来ないのぉ? 人にあーだこーだ言っておいてぇ?」
「なっ! 出来るわよ! 見てなさいよ、完璧な接客を見せてやるんだから!」
嘘だろこいつ、ちょっろ……と思うが、けして口には出さない。そんな事したらやってくれなくなる上に、サービスで鉄拳も飛んでくるからね。
口は災いの元、余計な事は言わない。美波と友達やる上で大切な事である。(実践できているかは別である)
「美波さんの〜ちょっといいとこ見てみた〜い」
「晴楓、すっごい悪い顔してるね」
「やかましいぞ明久。ほら美波、完璧な接客とやらを見せつけてくれよ」
「このっ……あとで覚えてなさいよっ…………いらっしゃませご主人さま! 喫茶ヨーロピアン~全人類ご主人さま計画~にようこそ!」
目を閉じ覚悟を決めた後、接客スイッチを入れて俺に向かってそう言う美波。なお、この間美波の顔は真っ赤である。
俺は笑いそうになるのを堪えて、美波の接客を受ける。
「ご、ご注文はお決まりでしょうか?」
「えー? じゃあこのハッピーオムライス、メイドさんの呪文付きをよろしく」
「なっ!? そんなメニュー無いわよ!?」
「あるよ、メイド喫茶の方に」
そう言って指差すはAクラスが作ったメニュー表。堅物なエリート集団かと思えば、意外と遊び心ってのをわかってやがる。誰か知らんがナイスだメニュー作ったやつ。
「合同でやってんだからよぉ? 美波もやらなきゃ駄目だろ?」
「そ、それは……ほら! うちはチャイナ服だから! むしろハルがやんなきゃ駄目なんじゃない!?」
「なるほど、一理あるな」
「まぁ無理でしょうけど? ハルが先にやるなら「コホン……美味しくなぁれ ♡美味しくなぁれ♡ ハッピーオムライスぅ……萌え萌えきゅんっ♡」 何でできるのよっ!?」
何故って、お前を辱めるためならば、この程度の羞恥心なんて微々たるものでしかないんだよ。はっ! 丁寧に萌え声で語尾に♡付けてやったわ!
「ほら、俺はやったぞ。やれよ」
「くっ……さてはハル! あんた楽しんでるわね!」
「はははっ! 今更気がついたか。もう遅いけどな」
羞恥で瞳に涙を浮かべながら、俺を睨みあげる美波。はははっ! そんなに睨んでも痛くも痒くもない! 可愛いだけだわ!
「四の五の言わずにやれよ美波、指でハート作ってさ」
「ぐっ……覚えてなさいよ」
俺がそう言うと、 ようやく観念したのか美波はおずおずと指でハートを作る。潤んだ上目遣いで、頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にして、かき消えそうな程の小さな声でこう言った。
「……も、もぇもぇ……きゅんっ♡」
え、かわっ────
「…………」
「ど、どう?」
「……………………」
「ちょ、ちょっと何か言いなさいよ!?」
「…………………………………」
「え? ハル?」
「……ちょっと失礼するね島田さん」
「え? な、何よ吉井」
「おーい晴楓? おーい……駄目だ、やっぱり死んでる」
「死んでるの!? 何で!?」
「島田さんの萌えきゅんにクズは耐えきれなかったか。仕方ない、ムッツリーニ!」
「……準備は出来ている」
「流石だよ! 電力チャージ!」
「……チャージ完了1500ボルト」
「蘇れ、蘇るんだ! 帰ってこい晴楓っ!」
ビリリリリリリリィ
────はっ!?
「可愛いかよっ!」
「良かった!生き返ったんだね晴楓」
気がつけば、喜ぶ明久と、額の汗を拭くムッツリーニ、戸惑っている美波が目の前にいた。
もしかして俺は意識を失っていたのか? なんだろう、とても良いものを見た気がする。
「俺は……いったい?」
「思い出さないほうが良い、晴楓には早すぎたんだ」
「……命に関わる」
「なんだか良くわからんが、何かとても可愛いものを見た気がするんだ。この世のものとは思えない程にキュートだった。なんだ? アレは天使か? 太陽の Komachi Angelでやや乱れて Yo Sayなのか?……どう思う美波?」
「っ……知らないっ!」
俺がそう聞くと、美波は耳まで真っ赤にさせて店の奥へ引っ込んだ。なんだよ、急に怒り出して。気を失う前の俺何したんだよ?
「ムッツリーニ、これは異端審問会に掛けるべきかな?」
「……本人に記憶がない、よって慈悲を与える」
「そっか……良かったね晴楓、命拾いしたよ!」
「え? 何? 何がだよ、怖ぇわ」
「まぁまぁ、知らないほうがいい事もあるさ。さぁて僕は呼び込みに戻るよ」
「……俺もキッチンが忙しい」
そう言って持ち場に戻っていく二人に、全然現状を理解できない俺。良くわからんが、とりあえず俺も任された業務に戻る。
本当に何故だか気分が良い。女装で接客は死ぬほど嫌だが、少し頑張れる気がした。
◇
「いらっしゃませー、ご主人さま」
「むふっ……く、くるしゅうないですぞ」
接客に戻った俺は、早速やってきた客に元気な声で挨拶。
相手はパツパツのチェック柄のシャツで、肉が乗ったジーパンの色々と滲み出ている男。
あ……心折れそう。
「でゅふゅ、メイドさんかわ、可愛いでありますな。チェキ宜しいかな?」
「……スゥ……あーそーゆーのやってないんでー、写真欲しいなら入り口に記念撮影スポットあるんで、メイド服でもチャイナ服でも勝手に着て一人で撮ってくださーい」
「おっふ、手厳しぃ。ならば拙者はブラックコーヒーを所望するでありまする」
「はーい、ブラックコーヒーですねー。ぐっつぐっつに煮え滾ったやつ持ってきますんでぇ、誤ってぶっかけてやりますんでぇ、ここでお待ち下さーい。クソキ……ご主人さま」
「ぐふっ、軽蔑の視線、助かる」
先程頑張れると言ったな、前言撤回だ。
マジでクソかよこの仕事、精神汚染が止まらねぇわ。どんだけ気分が良かろうと、後から汚物を見てしまうと、気分は最悪にしかならないらしい。
「もぅマヂ無理、お家帰る」
「大丈夫か晴楓、死んだ目をしておるぞ?」
裏で熱湯コーヒーを死んだ目で用意している俺を心配して、秀吉が声をかけてきた。なお、コイツも例に漏れずチャイナ服である。
「大丈夫じゃない、早く元の姿に戻らないとメンタルが死ぬ」
「大袈裟じゃのう、女装など誰でもするじゃろうに」
「断言していい、この学園でその価値観持ってるのお前だけだから。マジで女装に抵抗なさすぎるぞ秀吉この野郎」
「プロじゃからのう」
「そんなプロ根性捨ててしまえ」
「ホントその通りね、プロ意識と女装は別物でしょうが」
役作りに関して一切の妥協を見せない秀吉に、そう吐き捨てた俺。そんな俺の言葉に、丁度ドリンクを作りにやってきた木下姉が同意する。
「実の弟が女装してるだなんて、恥ずかしいったらありゃしないわ」
「そうかの? わしが言うのも何じゃが、演劇部として、どこに出しても恥ずかしくないクオリティだとは思ってるのじゃが?」
「……そういうことじゃねぇと思うぞ?」
キョロキョロと自身に変なところが無いかを確認する秀吉。誰が完成度の良し悪しで恥だと言ったよ、むしろ完成度高いから問題なんだろうが、性別頑張れ、違和感もっと仕事しろ。
そうやって、てんで的外れなことを言う実弟に、木下姉は深いため息を吐いた。
「秀吉といい、アナタといい、吉井くんといい……何なの? Fクラスは女装癖の変態の巣窟なの?」
「おいその認識をすぐに改めろ木下姉。俺は貴様の弟の様に進んで女装する変態じゃねぇ!」
「晴楓おぬし、今さらりとわしの事を変態扱いしたのう」
「事実だろうがよぉ。普段女に見られるのを嫌がってる癖して女装自体は嫌がらねぇって、もうそういうプレイにしか見えんわ」
「失礼な! わしは演るからには本気なだけじゃ! けして女子に見られたいわけじゃない!」
「チャイナ服で言われても説得力ないわよ、秀吉」
「そ、それはその通りじゃが」
ド正論すぎる木下姉のツッコミに、口をつぐむ秀吉。どうやら多少の自覚はあったらしい、良かった良かった。
マジで最近秀吉の事をしっかりと男だと認識している俺でさえも、あれ? こいつ女だっけっ? てなる時が多すぎんだよ。
「無駄に完成度高いのが尚の事悪いよな。明久を筆頭に、うちのクラスの奴ら、お前のこと女だと本気で信じてるぞ」
「……薄々感じていたとはいえ、複雑じゃのう」
「やっぱりFクラスは変態の集まりじゃない。合同でお店出すの早まったかしら」
「おい。この件に関してだけ言えば、俺は正常だからな? 一緒にすんじゃねぇ」
「秀吉と同じくらい女装に違和感がない人が正常なわけ無いじゃない。むしろ普段とのギャップが大きいぶん、秀吉より不気味だわ」
「知らねぇよ! こっちだって不本意じゃい!」
だから物怪の類を見るかのような目で俺を見るな木下姉!
「誰が好き好んでこんな格好するか!」
「……確かに姉上が言うとおり、晴楓の女装のクオリティは常軌を逸しておるのう」
「完璧に女の子にしか見えないのが腹ただしいわ」
「うるせぇ見た目に感しては俺のせいじゃないわ! 秀吉が無駄に丁寧に化粧し腐ったのが原因だろぉが!」
「いや、見た目もそうなのじゃが。晴楓の凄さはそれだけじゃないのじゃ」
「……どういうだよ?」
顎に手を当て思案顔をする秀吉に俺がそう問いかけると、秀吉は真剣な顔で「まず一つ目なのじゃが」と言葉を続た。
「今のおぬしの身体の動かし方、完全におなごのそれじゃぞ?」
「……は?」
「足は自然と内股になっておるし、動きも品があり丁寧になっておるし……自覚無かったのか?」
「ねぇよ!? 嘘つけや!」
「嘘ではない、見事な演技じゃと思っておったが……そうか、無意識だったのじゃのう」
「なっ……」
演技だと思ってたってことはガチなやつじゃねぇかよ。演劇関係で嘘を絶対につかない秀吉から告げられる衝撃の事実に、俺は開いた口が塞がらない。
「そして二つ目じゃが、女子の服に慣れすぎておるのも原因じゃ、それだけ長いスカートを履いておっても裾を踏んだり、フリルを何処かに引っ掛ける気配もなし。極めつけはヒールじゃのう」
「たしかに、そこまで高くないとは言っても、何でヒールを履きこなしてるのよ」
「……さ、さぁ……なんでだろうね」
──
────
『ねーちゃん、これ歩きにくい。ひらひら邪魔だし靴もフラフラする』
『頑張って晴楓。可愛い晴楓がもっと可愛くなるためだからね! ほら、頑張ったらお菓子あげるよー』
『おかし!! ボクがんばる!!』
────
──
消えろ過去の記憶と経験値!!!!
俺は心当たりがあり過ぎる原因に血の気が引くのを感じた。まさかここまで重症だとは、あのクソッタレの影響が俺の深層心理に深く刻まれている事に恐怖を覚える。
「まさか晴楓にこんな才能があるとは……晴楓よ、演劇とか興味ないかのう?」
「この流れで入部するわけねぇだろ! 空気読めや!」
「じゃ、じゃかしかし! まるで日常的に女装してたとしか思えないその才能! 逃すのは惜しいのじゃ!」
「っふぁ!?」
何ということだ、演劇変態の恐るべき観察眼は、俺の黒歴史に限りなく近づいていた。くそ、おもわず俺は驚きの声を上げてしまったじゃねぇか。
「あ、アナタまさか……」
案の定ドン引きする木下姉。
「まて誤解だその目をやめろ木下姉。俺が女装癖のある変態野郎だって事実は一切合切存在しない!!」
「それはそれで不気味よ! 逆に何もして無いのにどうしてそんなに女の子なのよ!?」
「そうか、晴楓は生まれながらの天性の乙女じゃったか……」
「はっ倒すぞ演劇バカ!!」
誰が生まれながらの乙女だ! 腐れ姉貴と同じような事を言うんじゃねぇ!
「もういい! もうそろそろ召喚大会の二回戦もあるんだ、今すぐ元の姿に戻ってやる!! 俺の服は何処だ!?」
「ちょっ!? 楠木くん!?」
「待つのじゃ晴楓よ! 姉上もおるのじゃぞ、ここで脱ごうとするでない!」
「いいや限界だ脱ぐねぇ! 俺は今も昔も性自認は男なんじゃい!」
だからガキの頃に女装してたとか、あんなおぞましい過去なんて存在しないんだ! 楠木晴楓は男なんだ!!
そういそいそとメイド服を脱ぎ捨てようとする俺、そんな俺に「まぁ待て晴楓」といつの間にかやって来た元凶ゴリラの声がかかる。
「せっかく見事な女装なんだ、すぐに落としちゃもったいないだろ? 落ち着けよ」
戯言を吐かすゴリラ、当然そんな言葉に従えるわけがない、これ以上待てと言われて素直に待てるか!
「俺は落ち着いてるとも! とにかく脱がねば俺が俺のままでいるうちに! これ以上女装のイメージを持たれる前に!」
「……まぁ、脱ぎたいなら止めはせんが、貴様の着替えならここに無いぞ?」
「は?」
「しっかり隠しておいたからな」
「……は?」
やばい、キレそう。
「おいおい、おいおいおいおい? そんな事許されるわけねぇだろぉがよぉ? テメェに人の心ってのは無いんか?」
「なに、そのまま行けばいいじゃないか。似合ってんぞ」
「死ねゴリラこの野郎ッ!」
忌まわしき奴の眼球目掛けてスターフィンガー(容赦の無い目潰し)を繰り出す。しかし残念ながら、身体能力が高いゴリラは正面から俺の手を掴み、俺の渾身の攻撃を防いぐ。
隙かさず空いた左手でもゴールデンクラッシャー(金的)を、繰り出すがそれすらもガッシリと防がれてしまった。
「ぐぎぎぎッ……その汚らしい手をはっなっせぇ!! 許さん、赦さんぞクソッタレぇ! 大人しく俺の痴態を移したその眼球をくり抜かれろゴリラァ! せめてもの詫びでタマ潰れて死ねぇ!! ゴリラ死ねぇ!!」
「誰がそんな危険思想を持ってる奴の手を離すか!」
全力で雄二をブッ殺す為に抗う俺。
だが現実は悲しきかな、雑魚雑魚体力の俺が不意をつかず、真正面からゴリラに勝てるわけ無かったんだ。ジワジワと体力を失い力負けし、ゴリラから組み敷かれる俺。
床に押さえつけられて、完全に俺の敗北である。
「ちっ、手こずらせやがって敗者は大人しくその服のまま大会に出て、精々客寄せパンダしてこい」
「ぢぐしょぉおおお!!! クソ死ね雄二! それか殺せぇ!! そんな羞恥プレイ強制されるくらいならいっそ殺せぇ!!」
「……私、今初めて彼に同情してるわ」
「あれだけキレてても見た目が完全におなごじゃから、絵面が地獄じゃのう」
騒ぐ喚く泣き叫ぶ、全身全霊を籠めて遺憾の意を示すが人の心が無いゴリラには微塵も効果が無かった。この野郎は何が何でも俺に女装をさせたいらしい。そうかそうか、つまり君はそういう奴だったんだな。
よし決めた、奴は必ず然るべき手段で今日の事を後悔させてやる。目には目を、歯には歯を……
「離せや雄二」
雄二への復讐を決意した俺は、暴れるのを辞めてスンッと落ち着きを取り戻す。
その様子を不審に思いつつも、再び暴れても何時でも取り押さえられると判断したらしい雄二は俺の拘束を解いた。
ぐるりと抑えられた事で固まった肩の関節を一周、クソ馬鹿力がよぉ。
「雄二」
「なんだ? 服の場所は教えんぞ?」
「いや、それはもういいんだよ。精々後悔しながら苦しんでくれればそれで、じゃあ二回戦行ってくるわ」
「は……晴楓よ、無理をするでは無いぞ」
「大丈夫だ秀吉問題ない」
「なに、クズにはいい薬だろ」
「スゥ…………大丈夫、大丈夫だから」
「ッ! すまんかった晴楓、その覚悟の決まった姿、お主は紛れもなく漢じゃ!」
恐らく表情筋が死滅して、座った目をして大丈夫と呟く俺を秀吉は抱きしめ、そう励ましてくれる。
思わず涙腺が緩みそうになるけど、グッと堪えて似たような境遇を持つ心の友の言葉に「ありがとう」と返し、俺は戦場へと向かうのだった。
心にドス黒く燃える復讐の業火を灯して。
◇
「……最後はびっくりするくらい大人しくなったわね。彼、あれだけ嫌がってたのに」
「いや姉上、あれは大人しくなったと言うかのぉ」
「なに、無駄だって理解して諦めたんだろ」
「…………雄二、お主」
「何だよ?」
「…………いや、ただ覚悟しておくのじゃな」
「? よくわからんが、俺は持ち場に戻るぞ」
「はぁ……あれは駄目じゃのう」
「どういう事よ?」
「それはのぉ「ちょっっ! ちょっとヤバイよ秀吉ぃ!? さっき入口で晴楓とすれ違ったんだけどなんか滅茶苦茶ブチ切れてたよぉ!!」「木下! なんかハルがすっごい怒ってたんだけど!? なんとしても絶対に復讐してやるみたいな雰囲気出てたんだけど!? 何か知らない!?」……こういう事じゃ姉上」
「……清涼祭、大丈夫かしら」
ここまで読んでくれた皆様、ありがとう御座いました。
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