バカとクズは使いよう。   作:枕魔神

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長くて二分割した影響で、今回めっちゃ短いです。


バカとクズの救出作戦01

【side楠木晴楓】

 

 雄二への復讐と、イカサマ野郎に対する嫌がらせを完遂し、その後の三回戦もサクッと勝利した俺。

 気分は晴れやか、今日はもう試合もないし残った時間文化祭を楽しもう。とりあえずメイドのままで一人じゃ辛いから葉月あたりでも連れてくかと、ホクホク顔で中華メイド喫茶までの道をスキップしていた。

 

「よぉ、クズ。随分と楽しそうじゃねぇか?」

 

 そんな中、不意に後からドスの利いた声で呼ばれ振り返る。なんとそこには、晴れやかな気分を一瞬で曇らせるほど気持ちの悪いムチムチメイド服を装備した、我らが代表の坂本雄二くんが立っているではありませんか。いや今はゆーじちゃんだったな、訂正訂正。

 いったいぜんたい何の用だろうか?(すっとぼけ)取り敢えず煽っとくか。(確信犯)

 

「お! 誰かと思えば、メイド服で幼馴染への愛を叫んだゆーじちゃんじゃないか。人生の墓場と社会的な死に両足突っ込んだ感想はいかがかな?」

「死ねぇ!!」

「華麗に回避っ!」

 

 俺の顔面目掛けて振り抜かれた拳をすかさず回避。はっ! そんな怨み込み込みの大ぶりパンチなんて誰が当たるか!

 

「貴様のせいであの後薬を盛られてタキシード着せられそうになったんだぞ!?」

「知らんわぼけぇ! そのままゴールインしとけや! 良かったじゃん! おめでとう霧島雄二!」

「勝手に人を婿養子に入れるな! ぶっ殺すぞテメェ!」 

「そもそも? 何故俺が貴様に狙われないかんのじゃ? ワタシナニモシテナイヨー?」

「白々しい! 翔子にメイド服持たせたのテメェだろ!!」

「はっ! 何処にそんな証拠があるんですかねぇ!? 人を責めるならそれ相応の根拠を提示してくれないとぉ!!」

「うわぁ、ここぞとばかりに煽り散らしてる」

「実際、証拠が無いからのぉ」

「……自分の手を汚してない分、質が悪い」

「なんの事かなぁ? いいががりはよしてくれよ? 悔しかったら俺に非があるって証拠を出してみやがれ!」

 

 ま、そんなの無理だろうけどな? と思いつつ、笑顔で雄二の周りをグルグル回る、スクワットもしてみる、全身を使って煽り散らかす。

 いくら脳筋ゴリラと言えども証拠も無いのにこの往来のど真ん中で人は殴れまい! どうだ格の違いって奴を思い知ったか雄二め! ははは! ざまぁmグポァ!!??

 

「死ねクズ」

「まぁそうなるよね」

「け、蹴り入れやがった……証拠も何も無いのに……コイツ、俺をなんの躊躇いもなく蹴りやがった」

 

 鳩尾に繰り出されたゴリラのヤクザキックに、貧弱な俺は地面に蹲る。こ、この暴力でしか自分の意見を主張出来ない脳筋野蛮人がぁ……。

 

「そ、そんなすぐに手が出るクソゴリラだから、俺に簡単に騙されんだよ」

「あ、今自白した」

「よし、なら大義名分も出来たし、もう数発殴らせろ」

「嫌だよ! 死ぬわ! 近づくんじゃねぇクソ野郎!」

 

 指をポキポキ言わせてんじゃねぇよクソゴリラ! 俺は明久と違って繊細だから、お前の攻撃に耐えれるような頭の悪い体の作りしてねぇんだよ!

 

「そもそもよぉ、貴様が俺の服を隠さなければ良かった話だろぉがよぉ! 知らんのか目には目を歯には歯を、メイド服にはメイド服って言葉を!」

「知るかそんなクズに都合良い言葉なんざ、だからって俺の服もどっかに捨てんじゃねぇ!!」

「は? なにそれ? それこそ知らんがな。俺は霧島にペアルック薦めただけだっての」

「……ほぅ?」

「あ、これ僕やばい感じ?」

 

 つまりなんだ? 俺は馬鹿の分も被害被ってたってわけだ。おおよそ、全ての罪を俺に擦り付けてたのかな? なにそれ、許されるわけ無いよね?

 

「俺は、もし雄二が愛の言葉で誑かしに来ても、耐えてメイド服着せさせてくれって霧島に頼んだだけだ」

「……つまり、俺を気絶させて翔子にプロポーズ紛いの事をしたのは?」

「俺の指示じゃない、完全にそこの馬鹿の単独犯だ」

「っ! じゃあね二人とも! 僕はちょっとお花摘みに言ってくるよ!」

「「逃がすかぁ!!」」

 

 自身の罪が明るみになった途端、一目散にこの場から逃げようとした明久だが、そうは問屋がおろさない。

 

 ゲシッ!(俺が逃げる明久の足を蹴り払った音)

 

 バタッ!(そのまま明久が思いっきり倒れた音)

 

 グハッ!(そのまま雄二の肘を食らった明久の音)

 

「おいおい明久さんよぉ? 人に罪を擦り付けるとはいい度胸してんなぁ? あ゛ぁん?」

「人を嵌めておいて逃げるだなんて卑怯だとは思はねぇか?」

「煩いよ! 雄二は僕のお陰で勝てたんだから文句言う権利はない! 晴楓は自分も多少なりともと言うかだいぶ罪はあるんだから甘んじて折檻を受けろ! ハイ論破! 僕は無実だ! この脳筋ゴリラとクズモヤシめ! 今すぐこの拘束を解けぇ!」

「「誰が解くか! バカ野郎!!」」

 

 貴様をここで逃したら、雄二の怒りの矛先は俺だけになるだろうが! このまま流れに便乗して貴様を処刑してやる! そして生き残るのはこの俺だ!

 

「と言うか、何一人だけ普通の服に着替えてんのお前?」

「そうだなぁ、俺達だけメイド服なのは不公平だよなぁ? 明久」

「なっ! なに恐ろしい事を言ってるの!? 僕は今の君たちみたいな恥ずかしくて一生の恥みたいな格好を二度としないって決めたんだ!!」

「そうかそうか、そんなに俺達と同じ格好がしたいか」

「なら着せてやるよ、俺達が! お前に!メイド服を!!」

 

 そう言って雄二はメイド服を取り出す。もういちいちツッコまないけど、完全に処刑のパターン化してきたよな、メイド服の刑。

 今日だけで四人の男子が無理やり着せられてるし。マジでどうなってんだこの学校、頭おかしいんじゃねぇの? まぁ、着せるのは着せるんだけど。

 

「ほぉら、怖くないよー。アキちゃんに戻ろうねぇー」

「寄るな変態! 女装したいなら一人でしてろ! 僕を仲間に引き込もうとするな!!」

「「うるせぇ! 黙って着替やがれ!!」」

「ぎゃぁああ!!」

 

 くたばれ明久! メイド服にメタモルフォーゼじゃあ!!

 

「抵抗虚しく、結局着せられる運命なんじゃのう」

「……Fクラス男子、総勢五名、女装してる奴四名」

「残ったのがムッツリーニだけじゃのう」

「……俺、今のうちに逃げておく」

「それは、懸命な判断かもしれん」

 

      ◇

 

【side吉井明久】

 

「……屈辱」

「いや、逃げれるわけないじゃんね?」

「そうだぞムッツリーニ、俺達は一蓮托生。死ぬ時も女装するときも皆同じだ」

「これも男の友情ってやつだよムッツリーニ」

「ついに皆女装してしもうたか」

 

 どさくさに紛れて逃げ出そうとしたムッツリーニ。そうは行くかと、捕獲して脱がしてチャイナ服を無理やり着させる事に成功。いくら身体能力に優れたムッツリーニでも、他人をどん底に突き落とす為の僕らのチームワークの前に逃げることなど不可能。

 結果メイド服三人チャイナ服二人、計五名の女装男子の集団となった僕達は、周りの好機の視線に耐えながら教室へと帰ってきたのだった。

 

 クズとゴリラとムッツリの相手で疲れたけれどこれで一息つけるとホッとしたのも束の間、何だか教室内が妙にざわついてる事に気が付いた。

 

「おい、何があった?」

 

 僕と同じく何かを察したらしい雄二が、近くにいた慌てた様子の須川くんに問いかける。

 

「坂本っ! 大変だ! 今まで何してたんだよ!?」

「何してたって言われてもなぁ、見て察してくれとしか」

「うわっ! 何でお前ら全員女装してんだよ!? ってそれどころかじゃ無いんだって!!」

 

 晴楓に言われ、俺等全員の姿を見て驚く須川くんだけど、すぐに話をもとに戻して大変だと騒ぐ。

 この惨状を見てそれどころじゃないと言えるだなんて、いったいどんなトラブルが起こったのだろうか。

 

「ウェイトレスが拉致られたんだよ! 姫路と島田姉妹、霧島が連れてかれた!」

「……あ゛?」

 

 須川くんの説明を聞いて隣の晴楓がブチ切れる。文化祭で拉致だなんて、いったい何が起きてるんだ!

 

「どういうこと須川くん!? 詳しく説明してよ!」

 

 僕は須川くんに詰め寄って説明を求めた。

 須川くんが言うには、突然ガラの悪い不良の集団がやって来て、好き勝手暴れた後に女の子達を連れて行ったのだと言う。

 服装はこの学校の制服じゃ無いらしく、動機も不明、何処に行ったのかも分からないらしい。

 

「何やってんだよテメェら! 犯人の手掛かりすらねぇってどう言う事だ! あ゛ぁん!?」

 

 須川くんの説明に更に怒りを顕にする晴楓、僕も内心は彼と同じだった。

 彼女達が今頃どんな怖い目に会ってるかと思うと気が気じゃないし、そんなピンチの時に助けに行けなかった自分が情けない。ムッツリーニにメイド服着せてる場合じゃなかった、何やってるんだ数分前の僕!

 

「くそ! 取り敢えずすぐに探しに行かねぇと!」

「落ち着け晴楓!」

「落ち着けだぁ? 無理に決まってんだろ雄二! 美波達だけでも最悪なのに、そのうえ小学生の葉月まで拉致られてんだぞ! 一刻も早く助けてやらねぇと駄目だろうが!」

「その為にも落ち着けって言ってんだ! 大丈夫、大方の予想はついている」

「チッ! ならさっさと聞かせろや」

 

 今にも教室を飛び出そうとしている晴楓に、冷静に待ったをかける雄二。こういう時は本当に頼りになる男だ。

 

「予想がついてるってどうゆう事? 雄二」

「なに簡単な話だ、うちのクラスの妨害を熱心にする奴等なら二人、心当たりがあんだろ?」

 

 そう言われて思い浮かぶのは、坊主頭とトンガリ頭の三年生。

 

「なるほど、十中八九あの常夏コンビの仕業じゃのう」

「よぉし、それならアイツ等縛り上げて拷問して、監禁場所吐かせれば言い訳だな? 三年の教室まで行くぞオラ!」

「だから落ち着け言ってるだろ、待て晴楓。腹が立つことに俺達には証拠が無いからな、暴力沙汰で営業停止になれば本末転倒だ」

「だからって! 早く助けに行かないと姫路さん達に危険が!」

「分かってる! だから叩くなら直接だ、ムッツリーニ現行犯と場所の特定だ!」

「……もうやってる、任せておけ」

 

 そう言ってパソコンを操作するムッツリーニ、画面には何個ものカメラ映像が映し出されていた。

 

「ムッツリーニ、この映像って」

「……盗さ……こほん、監視カメラの映像」

「やけにローアングルばっかなんだが?」

「……たまたま」

 

 晴楓からそう言及され、そっぽを向くムッツリーニ。オッケー敢えて詳しくは言及しないでおくよ、今回に関しては多いに助かってるし、クラスメイトから犯罪者を出したくないしね。

 

 数十個にも及ぶ映像を素早くチェックしていくムッツリーニは、ものの数分で目的の映像を見つけ、これだと呟き、犯人の写った映像を拡大させた。

 そこに写っているのは金髪やらピアスやら、明らかにガラの悪い男子達が姫路さん達を連れて校門を出ていく姿。

 

「……犯人はこいつ等、見たところ七人グループ」

「△△高校の奴らか……」

「こいつ等が姫路さんを! 許せない!」

「……場所は、ここから五分くらいしたとこにあるカラオケ。盗聴した音声もある」

「出来したぞムッツリーニ、場所が分かったなら後は簡単だ」

「皆を助けに行くだけじゃな!」

 

 秀吉の言葉にみんなで頷く。事態は一刻を争う、少しでも早く女の子達を助け出す為に、僕達は力を合わせて犯人を退治することを誓うのだった。





ここまで読んでくれた皆様、ありがとう御座います。
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