ブルアカ小説に感けて全然投稿できずに申し訳ありませんでした。
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【side吉井明久】
誘拐騒ぎも落ち着き、喫茶店も売上げ上場で清涼祭の一日目が終了。皆が二日目に備えて帰る中、僕と雄二はFクラス教室で一息ついていた。なお、メイド服はすぐに着替えた。素晴らしいよね、ズボンって。
「そろそろか……」
一緒にお茶を飲んでた雄二がそう呟いた。
「そろそろって?」
「さっき廊下ですれ違った時に、ババァをここに呼び付けたんだよ」
「学園長? 一応アレでも目上の人なんだから、用事があるなら僕達の方が行ったほうが良いんじゃないの?」
「用事も何も、今回の一連の妨害はあのババァが原因の筈だからな、理由の説明をしてもらわんと気がすまん」
「ババァが原因って……あのクソババァなにか隠してたのか!?」
さも当然の様に雄二が言った情報に、驚きの声を上げる僕。妨害って事はさっきの誘拐もそうだよね、姫路さんも危険な目にあったし、喫茶店も大変だったし、雄二の言う事が本当なら僕も文句を言ってやりたかった。
「へぇ、やっぱ何か裏があったんね。雄二がコソコソしてたから着いてきて正解だったわ」
「この声、晴楓?」
「ちっ、隠れてやがったか」
不意に聞こえてくる晴楓の声。何処から聞こえてきたのだろうと僕がキョロキョロしていると、ガタガタと音を立てて掃除用具入れの扉が開かれる。中から出てきたのは当然お馴染のクズ。なんて所に隠れてんだコイツ。
「二人だけでババァの弱み握ろうなんて水臭いじゃん。俺も用があるからな、混ぜろよ」
「はぁ……だからコイツは呼びたくなかったんだ」
「晴楓はどうしてここに? 晴楓もババァが怪しいと思ったの?」
自分の考えた計画に悪影響が無ければ、基本はスルーを通す晴楓の奴が、態々掃除用具入れなんかに隠れてまで、ババァと話したいって事に疑問を持った僕がそう問いかける。
「お前らも気が付いてんだろ? 召喚大会、あれイカサマ野郎がいんぞ。それも多分教師以上の奴がバックにいやがる面倒くせぇ奴が」
「えっ!?」
「……やっぱりか」
驚く僕とは裏腹に、だろうなと溜め息を吐く雄二。
「俺達の情報が相手に漏れてた、どうやら俺達を勝たせたくない奴が居るらしいとは思ってたが」
「それは初耳だが、少なくとも対戦教科を事前に知り得る、又は選択出来るやつが居るぞ。お前ら以外にな?」
僕達が大会で優勝する為にババァに取り付けた、勝負する教科の選択件を見破ってみせた晴楓は、ニヤリと笑って雄二を見た。
「そこまで気が付いてやがったか」
「自ずとな、イカサマ野郎の予想が外れるのはお前らの試合だけだったから後は勘よ。普通に考えて明久とお前で優勝するなんて歩の悪い賭け、お前が素直に飲む訳ねぇもんな?」
「予想?」
「あぁ。俺さ大会の裏で賭博の運営やってんだけどよ、そこで不審な券の買い方する奴がいたんよね」
「さらっととんでもない事カミングアウトしやがった!?」
このクズ! なにかここ最近ずっと忙しそうにしてるなって思ったらコレだよ! 金儲けのことしか考えてない金の亡者はとことん最低だった。
「今大会で残ってるのは俺等、お前等、美波達に、後は……」
「常夏コンビだな」
「その通り。ソイツ等が【K.H.LOVE】って名前で勝利券を買い漁ってやがったのさ。アレは選択教科を好き勝手出来るやつじゃねぇと説明がつかねぇ」
「加えて常夏コンビは、喫茶店の方にも執拗に妨害行為をしてきたからな。完全に黒だ」
「つまり二人は、その常夏コンビを裏で支えてる犯人はババァだって言ってるの!?」
なんてクソババァだと僕が声に出したと同時に、ガラガラと音を立てて教室の扉が開かれた。
「……やれやれ、せっかく来てやったってのに、随分な言われようじゃないかクソガキ共」
「来たかババァ」
「よぉババァ、待ってたよ」
「現れたなババァ! この諸悪の根源め!」
「完全に黒幕扱いってわけかい」
まるで自分は被害者と言わん態度で肩をすくめるババァ、いけしゃあしゃあと白々しいことこの上なかった。
「黒幕とまでは言わんが、俺達に話すべきことを話してないのは、立派な裏切りじゃないか学園長」
「全く、賢しい奴とは思ってたけど、まさかアンタがアタシの考えに気がつくとは思ってなかったよ」
「最初からおかしいとは思ってたさ。態々低得点者の俺らに取引を持ちかけるなんて効率が悪すぎる」
「たしかに、チケットを回収するだけなら霧島さん達でも良いもんね」
「つまりチケット云々はブラフ。ババアの真の目的は、俺達が召喚大会に出て優勝することにあると思ったんだ。するとそれを防ぐかのように俺達の情報が敵に流れてたり、店にまで妨害しに来たからな。ババアが何も知らねぇわけがねぇんだ」
順を追って説明する雄二に、ババア長は降参だと両手を上げる。
「はぁ……そこまで分かってるとなっちゃ全てを話すしかないね。それで? 坂本と吉井だけならまだしも、どうしてそこのクズも居るんだい」
「ババアの弱みが握れると聞いて」
「噂通りのクズだね」
「はは、俺も有名になったもんだよね」
「1ミリも誇る事じゃ無いよ晴楓」
歯に衣を着せない物言いで正直にクズ回答をする晴楓。誰もがクズに呆れていた。
「まぁいいさね、それじゃあ順をおって説明するとしようか。出来れば伏せておきたかったんだけどね」
だから誰にも公言するんじゃ無いよと、特に晴楓に念押しして学園長は真相を話しだした。
「アンタの言うとおり、アタシの本当の目的はペアチケットなんかじゃ無い。もう一つの方さ」
「もう一つって何だっけ?」
「しらん。俺はペアチケットの転売しか興味なかったからな」
「お前らは揃いも揃って……『白金の腕輪』ってのがあっただろうが。特殊能力がなんたらってやつだ」
雄二が僕と晴楓にその白金の腕輪の説明をする。何でも二つあってそれぞれ別の特殊能力があるとかなんとか。
「その白金の腕輪ってのがどうかしたの?」
「アタシはあんた達二人に、この腕輪を勝ち取って貰いたかったのさ」
「なんで態々? 腕輪が欲しいなら回収すればいいじゃないか、ババアは腐っても学園長なんだし」
「そうできない事情があったからだろ」
「だな、てかそんな事したらババアの面目丸潰れよ。この大会は色んなおえらいさんやらスポンサーやらが見てんだ、優勝賞品の最新技術の腕輪を運営が回収したとなれば、何か重大な問題があったと思われるだろうな」
僕の疑問に雄二は呆れたように、晴楓はニヤニヤとしながら答えた。そんなにババアの弱みを握るのが楽しいのかこのクズは。
「坂本はともかく、アンタも悪知恵が回る厄介なクズだねぇ。殆どあんたの言うとおりだよ。白金の腕輪には一つ大きな欠陥があったのさ」
苦々しく顔を歪めながら学園長は言葉を続けた。
「あの腕輪はね、ある一定の入力出力を超えると暴走するんだよ」
「??つまり?」
「アンタみたいなバカしか使えないってことさ」
「いきなり人を貶してどういうことだこのクソババア!」
「なるほどな」
「雄二も納得しないでよ!?」
入力出力とか暴走とか難しい事を僕がわかるわけ無いだろ! もっと誰にでも分かりやすいように説明するべきでしょ!?
「それで『優勝の可能性がある低得点者』の俺達に白羽の矢がたったって訳だな」
「普通の優勝者が使ったんじゃ暴走するもんな、確かにこの二人はピッタリすぎるわ、特に明久」
「その通りさね。二つある腕輪の内、召喚フィールド作用の方はまだある程度まで耐えれるんだけどね。問題はもう一つの同時召喚の方、現状だと平均点数ですら暴走する危険があるもんだから、こっちは吉井専用だね」
「あれ? これは僕褒められてる?」
「いや、バカだって言われてるぞ」
「しかも物凄い勢いで」
「なんだとババア!」
「自分で気が付かない時点でお察しだね」
クソ! 直接言われても遠まわしに言われても腹が立つ! そんな感じで憤りを感じる僕を余所に、雄二と晴楓は何かに気がついた様子だ。
「つまり、俺達を妨害してたのは学園長の失脚を狙ってる立場の奴等。他校の経営者とかになるな」
「あぁ、それなら多分内通者教頭だろ? 心当たりがある」
「あの二人共、そうやって僕を会話から置き去りにするのを辞めてほしいな」
「「置いてかれる明久が悪い」」
「君達に思いやりは無いのかい!?」
「「多少なりとも貴様に対する物は無い」」
仲良く口を揃えてそう言うろくでなし共。今すぐに友達を辞めたい切実に。
「まぁ話が進まねぇから、バカの明久の分かりやすいように説明するなら。学園長が失脚して得するやつは誰か? それは時期学園長候補の教頭だろって話だよ。他校に色々顔だしてるらしいぜ?」
「御名答。というか、楠木は何でそんな事まで知ってるんだい」
「握れる弱みは取り敢えず握るのが、俺のモットーなんで」
「身知らずのチンピラの弱みすら知ってたからなコイツ」
「今更こんな事じゃ驚かないよね」
「……末恐ろしいガキだね」
クズノ木耐性が出来てない学園長がドン引きしているが、僕らFクラス生徒からすればこんなの序の口過ぎた。
「それじゃあ妨害してきた常夏コンビや、例のチンピラは」
「教頭の差し金だろうな、協力してる理由は知らん」
「どーせ内申点とかしょーもない事だろーけどな」
ふむふむと、これまでの話を聞いてみて僕はふと二つの事を思う。
「あれ? これ相当マズい話じゃない?」
「そうだな、この学校の存続に直結してるな」
この学園の根幹となる、試召喚戦争と召喚システム。最新の技術と言えば耳聞こえは良いけれど、それは色々と存在自体の有無を疑問視されやすいものだ。そんな状態で、スポンサー達が見ているなか暴走なんて問題を起こしてしまえば、学園の存在意義も問われるだろう。これが一点。
そしてもう一点が……
「そんな話を晴楓に聞かせて大丈夫なの?」
「流石に信用なさすぎん?」
心外だと言わんばかりの顔をしているが、本当に日頃の行いを顧みて欲しい。
「そのへんは大丈夫さね。そこのクズはリスク管理はしっかりしてるからね」
「そうだぞ、これをネタに学園長を揺する事はするだろうが。学園が潰れるようなことはしねぇよ、それは俺も困る」
「でも揺すりはするんだ」
「するだろ、拉致とかで迷惑かけられたんだし」
真っ直ぐな瞳でそんなクズいことを言う晴楓、話が脱線したなと軌道修正をする。
「つまり、何としてでもお前らは優勝しねぇといけねぇ訳だ」
「でも、いざとなったら優勝者に事情を話せば……」
「さっき残りの選手を話しただろうが明久、準決勝に残ってるのは俺等と姫路達とクズコンビ、そして……」
「常夏コンビっ……!」
「アイツらが優勝したら嬉々として暴走させるだろうなぁ」
これまで僕らに最低な事ばかりしてきた常夏だ、その様子が目に浮かぶ。交渉なんて期待するだけ無駄だ。
「残る試合は二試合。ここまで話を聞いたんだ、アンタにも手伝ってもらうよ楠木。次の準決勝の相手、常村と夏川に何としてでも勝つんだ」
「まぁ、そうなるよねぇ……」
硬い表情でそう言う学園長とは裏腹に、晴楓はやる気なさそうにポリポリと頬をかいた。このクズ、学園のピンチだってのに、ちゃんと状況が理解できてるのだろうか。
「まぁ、やれることはやるよ。その代わり学園長も俺の事見逃せよな」
「……なんのことだい?」
「白々しい、どうせ賭博の事気がついてんだろ? その事を見逃せって言ってんの」
「お前、最初っからそれが目的で隠れてやがったのかよ」
「当たり前だろぉが」
相変わらず過ぎる晴楓に、大きなため息を吐く学園長。
「わかったわかった、この件に関しては特に処罰は無いよ。どうせ致命的な証拠も残らないようにしてる癖にホント小賢しい奴だね」
「念には念をってな」
「台詞だけ聞いてると犯罪者みたいだよね」
「みたいも何も実際やってる事は真っ黒だろ」
「煩ぇなぁ! 常夏のせいで落ちた店の売上の補填に使っても良いと思ってたんだが、そんなん言うならこの金要らねぇんだな!?」
「流石晴楓! 金儲けの達人! よっ! 男前!」
「俺は信じてたさ、最後に頼りになるのはお前だってな!」
「お前らの手首ねぎ切れてんぞオイ」
そんなこと無いよ! だからその汚い金を渡せ! どうせ碌な事に使わないんだから僕等が有効活用してやるよ!
「アンタら……仲いいね」
「「「それは無い!!」」」
こうして学園祭初日は幕を閉じた。
◇
そして翌日、召喚大会の準決勝。晴楓と根本くんペアVS常夏コンビの注目の一戦。
「あー、棄権します」
『勝者! 常村・夏川ペア!!』
「やりやがったあのクズ!!!!」
◇
【side楠木晴楓】
「何勝手に棄権してやがるクズこの野郎!!」
控室に戻るなり騒ぐ、今日は女装してない根本。そんなキノコヘッドを黙らせるために、俺は鞄から例の写真集を取り出し根本に叩きつけた。
「うるせぇなあ、ほら報酬の写真集ならやるよ」
「っ!? な、何を企んでやがる!?」
「何も企んでねぇわ! ただ俺が優勝する意味が無くなったし、他にやることできたからな」
明久と雄二なら常夏如きに負ける事は無いだろ、なんか勉強頑張ってたみたいだし? なら俺がここで無駄に頑張る意味ないよねって話である。
「てなわけでとっとと帰れ根本」
「本当にお前今回傍若無人すぎるだろ!? 暴君か!!」
「それもこれもどれもあれも全部お前が悪い」
試召喚戦争で負けたお前が悪いし、それで写真取られて弱み握られたのもお前が悪い。そもそも最初っから美波に手を出したら殺すって言ってるのに、拉致紛いの事したお前が悪いのだ。慈悲は無い。
まぁ、だから今回も同じように許す気は無いのだ。
「色々とやることあるから忙しいんだよ俺は、お前と違ってな」
「ちっ、相変わらず腹立つ野郎だな」
「なんとでも言えや負け犬。んじゃ、博打の運営は任せた。教師陣は心配しなくていいようになったから決勝戦で大いに稼いでくれ」
そう言い残して控室を後にしようとしたのだが。待て! と手を掴まれて止めらる。
なんだよと振り返れば、似合わない真面目な顔をした根本。
「……写真集の元データも渡せ」
「チィッ!」
抜け目ない奴め。
俺は根本めがけて、ポケットに入ってあったメモリースティックをぶつけた。
◇
【Site吉井明久】
僕は怒っていた。土壇場で臆病風に吹かれ逃げ出した晴楓の奴にブチ切れていた。
「根本くんと組んでる晴楓の方が勝てるかも知れないのに、本当に何やってんだよあのクズ! これで本当に後が無いじゃないか!」
「……解せないな」
そんな怒れる僕とは打って変わって、雄二は思案顔で顎に手を当てている。
「何が解せないわけ雄二?」
「いや、よく考えてみろ明久。晴楓の奴は常夏コンビにブチ切れてたろ?」
「アイツらのせいで女装する嵌めになったってキレてたね」
「その上、拉致騒ぎもあったからな。間違いなく腹に据えかねてるはずだ」
「確かに……」
そう思えば確かにあっさりしすぎている。この状況は僕の知ってる晴楓ならば、どんな汚い手を使ってでも勝ちを奪い取り、観衆の目の前で心行くまで煽りまくる案件だ。何ならおまけで社会的に殺そうとしても不思議じゃない。
そんな感じで晴楓の行動に違和感を覚えていると、僕の携帯電話に一通のメールが届いた。噂の晴楓だ。
宛名)クズ
件名)わかってると思うけど
──────────────
負けたらお前らも殺す
「oh……」
晴楓から送られてきた、余りにも端的かつ理不尽な一言に思わずそんな声が漏れる。
隣で覗いていた雄二はなんとも言えぬ顔をしていた、多分僕も同じ顔をしているんだろう。臆病風に吹かれるどころの話ではない、晴楓の怒りはひしひしと確かに伝わった。
「『お前らも』って事は常夏の二人を殺す事は確定なんだね……」
「やっぱりこうなったか……」
「となると、まずは次の試合を突破しないとね」
さもなければ、何をされるか分かったもんじゃない。
「幸い相手は姫路達だ、事情を説明して勝ちを譲ってもらおう」
「二人には悪いけどそうだね」
当初の目的である、Fクラスが大会で活躍して姫路さんのお父さんの鼻をあかす目標は、準決勝に勝ち進んだ生徒の半分以上が僕達Fクラスと言う事で達成できたと思うし、真摯に頼めば案外簡単に譲ってくれるかもなと僕が思っていると、丁度姫路さんと島田さん、それと葉月ちゃんが教室に入ってきた。
「ちょうど良かった姫路さん、実は話があってさ」
「吉井くん? 準決勝の準備をしなくてもいいんですか?」
「うん、その事なんだけどね。僕、どうしても優勝景品(腕輪)を手に入れなきゃならないんだ」
「優勝景品(ペアチケット)ですか? 」
小首を傾げる姫路さんに、僕は自分がどれだけ真剣に優勝景品を望んでいるのかを力説する。
「実はある人から頼まれててね、僕がそれを手に入れないと学校が大変な事になるんだ」
「ある人……誰ですか? (坂本くんなのかな?)」
「詳しく言えないけど、とにかくその人に優勝景品を渡さないといけないんだよ。それさえ出来れば全部うまく行って僕は幸せになれるんだ!」
「そう……ですか……(やっぱり坂本くんと一緒に遊園地に行って幸せになるつもりなんだ)」
「だから! お願い姫路さん! 準決勝僕達に勝ちを譲って!」
「はい! 絶対に嫌です!」
「なんで!??」
姫路さんににっこり笑顔でハッキリそう拒否された僕。可笑しい、アレだけ真摯に説明したというのに伝わらなかったと言うのか?
そんな僕達のやり取りを黙って見ていた島田さん、深いため息を吐いて口を挟む。
「八百長だなんて、男らしくないわよ吉井」
「いや、八百長だなんて大げさな」
「勝ちを譲るってそういうことでしょ? ズルは良くないわ」
「バカのお兄ちゃん……ズルするんですか?」
「は、葉月ちゃん」
純粋な小学五年生からの非難の視線にたじろぐ僕。どうしようとチラリと雄二に視線を向ければ、我関せずと知らん振り。駄目だコイツ、本気で使えない。
「……バカのお兄ちゃん。葉月、バカのお兄ちゃんを応援しようと思ってたのに」
瞳をうるうるさせて僕を見上げる葉月ちゃん。ごめんね、失望させちゃったかも知れないけれど、これも学園の存続の為に仕方ないんだ……。
そう痛む心に言い訳をして、こうなれば土下座でもなんでもして頼もうと思っていた時だった。
多分、葉月ちゃんを悲しませたバチが当たったのだろう、当の葉月ちゃんの口からとんでもない爆弾が投下された。
「葉月っ! バカのお兄ちゃんが優勝したら! 大人のキスをしてあげようと思ってたのに!」
「「……は?」」
瞬間、場の空気はズンッと重くなり、恐ろしく冷たくなる。ハイライトの消え失せた二対の瞳がギロリと僕を捉えた。
「……どういうことですか? 吉井くん?」
「……妙に仲が良いと思ったら、そういう事だったんだ…………コロス」
「待つんだ二人共誤解だ!! 僕は葉月ちゃんをどうこうするつもりは無い!」
瞳孔ガン開きの姫路さんと、物騒な事を呟く島田さんに待ったをかける。しかし二人の怒りは収まらない。
「坂本くんだったり、葉月ちゃんだったり、吉井くんは節操が無いんじゃないですか? 少し……お仕置きが必要ですね」
「……うちは今から、お姉ちゃんを遂行する」
「駄目だ全然止まらない!?」
「包丁はどこだったかしら……」
「私の分もお願いします」
「包丁でなにする気!? ちょっと雄二! このままだと試合より先に僕が殺される!! 黙ってないで助けてよ!?」
ヘルプ!と雄二に助けを求める僕。そんな僕を一瞥した雄二は、深いため息を吐いてからようやく重い腰を上げた。
「まぁ待て二人共」
「どいて坂本。そいつ殺せない」
「ふふ、やっぱり坂本くんと吉井くんはデキてるんですね。……早く、吉井くんの目を覚まさないと」
「だから落ち着けって、ここでコイツを殺せしても何もならんだろ」
そう言って雄二は怯まずに、荒ぶる二人を宥めていく。今にも僕を刺殺しかねない程の怒気を滲ませていた二人も、心做しか冷静さを取り戻した様な気がするよ。流石雄二、伊達に筋肉と暴力だけが取りの代表ゴリラでは無かったらしい。
「ありがとう雄二、助か「殺るなら試合でやれ、御誂え向きにこのバカの召喚獣は、痛みのフィードバック付だ」おいコラクソゴリラ何恐ろしい提案してくれてるんだ!」
前言撤回。流石ゴリラ、本当に筋肉と暴力しか取り柄のないクソゴリラだった。マジで許さんぞゴリラめ。
そんなゴリラの戯言に、確かにと納得している姫路さん達。
「ただでさえクズが棄権して一試合潰れたからな、此処でバカを殺して不戦勝になれば、姫路の父親からの印象も良くないだろ?」
「……なるほど、坂本の言うとおりね」
「どうせ殺すなら合法的に、試合で思いっきり殺してやれ」
「……わかりました、それじゃあ私達は先に準備してますね」
「逃げるんじゃ無いわよ! 吉井!」
「逃げたら、わかってますよね? 吉井くん?」
そう言い残して、教室を後にする姫路さん達。
どうしよう、もう腕輪とか学園の存続とかどうでもいい。今すぐ逃げなければ僕は、僕は殺されるだろう 。
「よし、一難去ったな」
「何処がだクソゴリラ! このままじゃ僕の召喚獣はミンチにされちゃうよ!?」
「なに、勝てばいいだけだろ?」
雄二は自信満々にそう言うけど、姫路さん相手にそれが出来たら苦労しないんだよ。
「そう言うからには作戦があるんだろうね!」
「当然だ。まずあの二人は間違いなくお前を狙って来るだろう」
「そうだね、雄二のせいでね!」
「んで、その間にお前ごと俺が姫路達を葬り去る」
「だと思ったよ冷血ゴリラ!!」
一切悪怯れる事なくいけしゃあしゃあと言いやがって。
「もういい、貴様を殺して僕は逃げる事にする。怨むなら僕を陥れようとした自分の愚かさを恨め!」
そう僕が叫び、姫路さん達が置いていった包丁を握り締めて、悪徳ゴリラに襲いかかろうとした時、再び僕の携帯電話からメールの着信音が鳴り響いた。
「チィッ!!」
命拾いしたなと舌打ちをしてメールを確認する僕。
宛名)クズ
件名)念を押すが
───────────────────
俺への当てつけとかで、不戦敗とか嘗めたことするなよ? こっちには貴様を殺すブツがある事を忘れるな。
【僕がメイド服で萌え萌えキュンしてる画像】
何としてでも美波達に勝ち、常夏を殺せ。さもなくばコレをばらまく。
僕はメールを読み終えて、深い、とても深い溜め息を吐いた。
生き残るには、勝つしか無いんだね……。
「良ぉし! 準決勝頑張るぞぉ!!」
「……可愛そうなやつ」
「生きて帰れた証には絶対貴様だけは殺してやるからな雄二!!」
「頑張ってくださいバカのお兄ちゃん! 優勝したら葉月がご褒美あげます!」
「うん! それは丁重にお断りさせてもらうけれどもありがとう葉月ちゃん! 僕に優しいのは君だけだよ!」
葉月ちゃんの優しさがささくれだった僕の心を少し癒やす。渡る世間は鬼どころかバーサーカーとゴリラとクズばかり。本当に終わってるなこの世の中、もっと僕に優しくしてくださいお願いします。
「絶対に! 絶対に! 生きて帰るんだ!」
そして雄二を殺すと決意して、僕は準決勝へと向かうのだった。
ここまでは読んてくださった皆様、高評価や感想をくれた皆、様ありがとう御座いました。
現在別の二作目のブルアカ小説を書きつつコッチも並行してやってます。ちゃんと絶対に完結はさせますので……
なるべく早く書けるように努力します。