バカとクズは使いよう。   作:枕魔神

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単発です。


クズとデートと遊園地 前編

【Side楠木晴楓】

 

 来たるべきXデーが到来した。そう、美波とのデート(妹付)当日である。

 

 先日のクソ姉貴襲来により精神に大ダメージを負った俺、結局今週は学校を丸々休んだと言う事もあり、美波と直接顔を会わせるのは実はあの日が最後。それに加えての初めてのデート、俺は凄く緊張していた。

 

「…………ォェ、吐きそう

 

 それはもうドチャクソに緊張していた。

 

 だって仕方ないじゃん、最後に会ったのがアレなんだからさ、顔を合わせ難いどころの話じゃ無いのは当然じゃん。どこの世界にコレからデートする相手に最後に晒した姿が女装の男がおるねん。マジで巫山戯ろよ、許さんぞクソ姉貴。

 

「落ち着け、俺。大丈夫さ、何せ葉月も居るんだから変な空気にはならねぇよ。大丈夫、普段どおり、普段どおり」

 

 そう自分を誤魔化してなんとか落ち着かせようとする。忙しなくそわそわしながら、時計を確認すると約束の時間まであと5分。家に居たら本当に吐きそうだからかれこれ一時間待機している訳だが、ぼちぼち美波たちもやってくるだろうか?

 

  あ、やべぇ……今更ながらこの服変じゃないだろうか? 寝癖とか付いてないだろうか? そんな乙女かよと吐き捨てたくなるような事を徒然と考えていると、

 

「あ! もやしのお兄ちゃん居ました!」

 

 背後から島田家の天使、俺の魂の妹の声が聞こえた。

 俺は緊張がバレないよう、ポーカーフェイスを意識しながら振り返る。

 

「なっ!?」

 

 そして目の前の光景に言葉を失った。緊張とか気まずさとか色んな物が秒で吹き飛んだ。

 

 此方に小走りで近付いてくる二人の少女。

 一人は先程の声の主である島田葉月。普段どおりのツインテを揺らしながらやって来た。

 そしてもう一人、葉月の姉の島田美波。普段は存在しない乳を揺らしながらやって来た。

 

 もう一度言おう、美波が乳を揺らしながらやって来た。何一つ普段どおりじゃない姿で現れた。

 

 あの美波にデケェ乳がある、え? 貧乳の霊圧が消えた? ばるんばるんじゃん、何あれ? 牛?

 ソレは俺の脳がショートする程の情報量。完結しない膨大な情報、コレが無量空処。

 

「おまたせしました! もやしのお兄ちゃん!」

「……っ!? お、おう。今来たとこだから気にすんな」

「?? ぼーっとして、どうしました?」

 

 どうしましたと聞きたいのはこっちだ。さっきから俺と目を合わせようとしないお前の姉に言ってやりたい台詞だ。マジでどうした。

 

「…………」

「……おまたせ」

「……おう」

「…………」

「…………何?」

 

 何? じゃねぇよ? それは俺が言いたいんだよ。え? これってツッコんで良いわけ? 言って良いわけ? 「数日見ない間に急成長したんだ、良かったね」って? 無理だろ、死ぬぞ?

 

「……黙ってないで、何か言いなさいよ」

 

 そんで自分から意見を求めてきただと? 正気か? この女……

 

「……えぇ、逆に聞くが……お前それで良いのか? 俺がなにか言ってキレたりしない? 俺殺されない?」

「……殺さないから、言ってみなさいよ」

 

 まぁ、本人がそう言うならぶっちゃけてやるか、いい加減俺も我慢の限界だし。これも友情ってやつだ。

 

「なら遠慮なく……」

「…………えぇ」

「……どうしたその胸部装甲、気でも狂ったか」

「あ゛あぁ!! 」

 

 容赦ない俺の言葉に頭を抱えてしゃがみ込む美波。すると虚乳が太ももに挟まれて形を変えた。

 

「はっ!」

 

 滑稽なソレを鼻で笑う。

 

「お姉ちゃん、どうしたんです?」

「触れてやるな葉月。人は誰しも気の迷いってもんがあるんだよ。まさかこんな暴挙に出る程に貧乳を悩んでたなんてな……ごめんな、気がつけなくて」

「憐れまないでくれる!?」

「いや無理だろ。牛乳、買ってやろうか?」

「いらないわよ!!」

 

 そう叫んだ美波は涙目で俺を睨んでいた。そんな顔で凄んでも無駄だぞ、今のお前が何をしてもギャグにしかならんからな? マジウケる。

 

「うぅ……ウチだって途中で少し可笑しいって気がついてたわよ!」

「気がついてたならすぐにUターンするべきでしょ、それもはやパッドで盛るとかのレベルじゃないでしょ。どんな凶悪な外部パーツ取り付けてんだよ」

「外部パーツって言わないでくれる!? ただのヌーブラだからぁ!」

「ただのヌーブラならこうはならんわ。どんだけサイズアップする気だったんだよ」

「Fゥ!!」

「欲張り過ぎだろ……」

 

 いくら自身がFクラスだからって、そこも合わせんで良いだろ。呆れて何も言えないでいると、半場ヤケになってる美波がだってぇと言葉を続ける。

 

「だってこれが良いて言ってたんだもん。ハルも喜ぶって言ってたんだもん!!」

「誰が?」

「お姉さんが!」

「何処まで恥を晒すんだあのクソアマ」

 

 ピースして笑うクソッタレ元凶の姿が脳裏に浮かんだ、まさかこんな所でもしゃしゃり出てくるとは、本当に害しかない奴だ、いつか絶対に絶縁してやる。

 

「あのなぁ美波。姉貴の言う事は真に受けるもんじゃねぇぞ? アイツ人を揶揄う事しか考えてねぇから」

「けど……」

「けど?」

「お姉さんが見せてくれたハルの持ってるエッチな本! 全部胸のおっきな人だったし!!」

「プライバシー侵害どころの話じゃねぇなぁ!!」

 

 もう訴えたら勝てるだろ。マジで。

 

「そもそもどっから出て来たそのエロ本は!?」

「お姉さんはハルの机から取ってきたって言ってたわよ!」

「普通に窃盗罪!」

 

 アレか! 明久への賄賂用のアレか!! アレがよりにもよって美波の手に渡ったってのか! 地獄かな? どうやって弁明すんだよマジで。

 

「ハルはロングヘアで胸の大きな女の子が好みなんでしょ!? ほら! 望みのロングヘアとFカップよ!?」

「ヤケになりすぎだろ落ち着け! あと乳がインパクト強すぎてポニテじゃねぇの気がつかんかったわ!! 俺イメチェンってこういう事じゃねぇと思う!!」

 

 何故髪型だけで留まらなかったのか、盛るにしても加減をしなかったのか。謎過ぎる。

 

「本の女の人がこんな感じだったんだからしょうがないでしょ!?」

「一応弁明するが、すっげぇ誤解でしかないからね?」

「嘘よ! 証拠は揃ってるんだから!」

「うん、だよね。俺も自分で言ってて本気で無理があるとは思ってる」

 

 あーもう、積みだよ積み。これからデートだったってのに巨乳好きのレッテルを貼られちまったよ。どうすんだこの状況……

  

 死んだ目で天を仰ぎ、考える。逆転の一手を。

 

 クソ姉貴。揃ってしまった物的証拠。クソ姉貴。事実無根。そもそも俺は胸に興味無い。結局は顔。クソ姉貴。身代わり。スケープゴート。生贄。イコール、明久……………………はっ!!

 

 そして閃く。

 

 そこからの俺の行動は早かった。携帯を取り出し素早く電話を掛ける。当然スピーカーモード、画面にはバカの二文字。

 

 数コールの後、奴は俺からの電話に出た。

 

『もしもしー? どったの晴楓、今週ずっと休んでたけど、ようやく天罰でも下った?』

 

「明久今度エロ本買ってやる。好みを端的に言え」

 

『へ? マジで!?』

 

「マジだ、早く!!」

 

『え、えっと巨乳とロングヘア!!

 

 ブチッ!!

 

 大声でそう宣言した巨乳好き、それだけ聞ければ十分だと俺は躊躇無く通話をぶっちぎった。感謝するぞ明久、今度本気でエロ本を買ってやろう。

 

「……てなわけだ。アレは明久用ってわけ」

 

 そう言って美波の様子を見てみれば、どうやら全てを理解してくれたらしく、ただでさえ赤かった顔は更に朱に染まる。

 

「まぁあのクソ姉貴、気持ち悪い事に本当に俺の性癖とかも知ってそうだもんな」

「……つまり?」

「盛大に揶揄われたな」

「お姉さんっ!!??」

 

 目を見開いてショックを受ける美波。クソ姉貴に騙されて可哀想に、心の底から同情を禁じ得ない。

 

「どんな状況で騙されたかしらんけど、もっとちゃんと奴を疑え。アイツ本当に碌でも無いんだよ」

「実物の証拠が合ったら誰でも信じるでしょ!?」

「証拠偽造くらい平気でするぞ、あの女」

「…………な、なるほどね」

 

 脱力しながら肩を落としてそう呟く美波。姉貴の危険性をしっかりと理解してくれて何よりである。

 

 これで誤解も溶けて一件落着。とはいえこの死んだ空気はどうしたものかと俺が考えていると、クイッと裾を引かれた。今まで放置してしまっていた、葉月である。

 

「どした葉月?」

「あの、もやしのお兄ちゃんに質問なんですけど」

「うん。何だ?」

「それなら、もやしのお兄ちゃんはどんな女の人が好きなんですか?」

「………………」

 

 さっきまでの俺たちの会話を、良く理解できないなりにしっかりと聞いていた葉月の純粋な疑問だった。

 

「お姉ちゃん、もやしのお兄ちゃんが喜んでくれると思って頑張ってお洒落したんですよ?」

「お、おう……」

「勘違いしちゃったのはしょうが無いですけど、それならお姉ちゃんに正しい答えを教えてあげて欲しいです」

 

 「お姉ちゃん可哀想」としょぼんと俯きながらそう言う葉月。せっかくのお出かけだってのに初っ端から俺たちが揉めてたら落ち込むし、葉月目線から見たらそう思ってしまうのも無理ない話だよな。

 全て、このインパクトしかない乳を装備させたクソ姉貴が悪いけど、それは葉月には関係が無い話。あと美波も完全に被害者だし。

 

「ごめんなぁ葉月、まずは順番が違ったよな」

 

 なでこりと葉月の頭を撫でてやり、俺はジッとこちらに聴き耳を立ててた美波に視線を向けた。

 

「……なに?」

 

 相変わらず似合ってない巨乳をぶら下げて、ぶすくれた表情の美波。なるべく面白いソレを見ないように気を付けて、俺は美波と目をあわせた。

 

 まぁ、これ一応デートな訳だしな。

 

「あー、その。何だ……えっとな」

「…………」

「そのクソ見てぇな外部装甲は似合ってねぇけど。それのせいで反応遅れたけどよ」

「……うん」

「髪。何時ものポニテも好きだけど、そっちも似合って……んな」

「……ッ!」

 

 むず痒く過ぎて、最後まで視線が合わせてられなくて、ふいっと視線を反らせば、にっこにこの葉月。ご満悦な様子で何よりで御座います。

 

「へ、へぇ……そっか、ハルは普段のポニーテールも、降ろしたのも好きなんだ」

「俺の好みってのはよく分からんけど、まぁ、似合ってるとは思ってるよ」

「えへへ、そうなんだ」

 

 ふにゃっと笑うな、頼むから。釣られてこっちも表情が崩れるから。キモい顔になっちゃうから。あー、顔が熱い。

 

「もやしのお兄ちゃんも真っ赤です!」

「見るなー葉月ー。おら、さっさと遊園地入んぞ時間は有限なんだからなー」

 

 誤魔化すように葉月の手を引く。もう片方の手は美波と繋がれていた。

 

「まったく、相変わらずハルは誤魔化すのが下手よねぇ」

「うるせぇな、それよか美波は入園したら化粧室行ってこいよ、邪魔だろソレ?」

「うん、すっごい邪魔」

「折角の遊園地なんだから楽しもうぜ、俺は葉月と待ってるからさ」

「うん、ありがとう」

 

 三人で並んで歩く。最初からごたついたが、良い感じに緊張も解れたとプラスに考えておこう。楽しなきゃ損だしな。

 

 今日は文化祭で頑張ったぶん、クソ姉貴のせいで溜まったストレスのぶん精一杯遊んでやるぞと意気込み、入園する為にチケットを取り出した時だった。

 

「あれ? 晴楓?」

「なぬ? 晴楓じゃと?」

 

 聞きたくない声が聞こえて振り返れば、見慣れたバカ面と女面が一つ二つ。

 

「あ! バカのお兄ちゃんたちです!」

 

 明久と秀吉に葉月も気がついて声を上げる。同時に俺は血の気がサッ引くのを感じた。

 

 まだ秀吉は良いとして、貴様はどんなタイミングで現れてやがる明久この野郎。

 速やかにただの保護者として同行していると説明しなくては、万が一にも明久にデートとバレたら俺は一巻の終わりだ。

 その後の展開は、怒り狂うFFF団、簀巻きにされる俺、紐無しでバンジージャンプ、嫉妬の炎による火あぶりの刑まで容易に想像できた。

 

「島田さんと葉月ちゃんも一緒に何してって……はっ!」

 

 突然の事態に俺が固まっている間に何かに気がついた様子の明久。

 チィッ! 流石にバレたか? クソ、かくなる上は不意をついて後頭部を叩き割り、奴をブッ殺すしか……

 

「どうしたんだ島田さんその胸!? すごく腫れてるじゃないか! すぐに病院に行かな「吹き飛べ吉井の記憶!」ギャアア! キュウキュウシャァア!!

 

 ……要らぬ心配だったな。

 

「よし! ナイスだ美波! あとは俺に任せろ。速やかに埋めてくるから!!」

「ウチも手伝うわ!!」

「そのスコップは何処からだしたんじゃ晴楓! 待つのじゃ二人共!」

「「待たない、目撃者は消す!! 絶対に!!」」

「二人揃って、慣れた手付きで明久を埋めようとするでない!!止まっ……む、ムッツリーニ!! 加勢してくれムッツリーニよ! ワシだけじゃ止められん!!」

 

      ◇

 

【side吉井明久】

 

「つまりてめぇらは、例のチケットで明日行われる、雄二と霧島のデートの下見に来てるってわけね」

「せっかくなら上手く行ってほしいからのう」

「……それで、皆が揃うまで待ってた」

 

 後からやって来たムッツリーニと姫路さんの加勢もあり、暴れる二人を何とか止める事に成功。

 今は胸の異物を取り除いた島田さんと、すごく嫌そうな顔でその場を離れたがっている晴楓に、事の説明をムッツリーニと秀吉がしていた。

 

 僕? 僕は息も絶え絶えで跪いてるよ? 虫の息ってこういう事だったんだなぁ……

 

「ゼェ……ヒュー……」

「大丈夫ですか? バカのお兄ちゃん」

「ゆっくり息してください吉井くん」

 

 僕に優しいのは姫路さんと葉月ちゃんだけだよ本当に。

 

「……ひ、久々に、本気で殺されるかと思ったよ」

「本気で殺す気でやったからな」

「……あはは…………美波ちゃんは冗談でしたよね?」

「? ウチも本気だったわよ?」

「こ、この人で無しどもめぇ!」

 

 真顔でエゲツない事を宣うクズとバーサーカーのコンビにドン引きする。僕はただ、貧相な島田さんの身体にエゲツない異変が起きていたから心配しただけだったのに、悪意七割の善意だったのに……とんだ目にあったよ本当に。

 

「見事なハイキックじゃったのう。明久が錐揉み回転しておったわ」

「そこまで凄いものじゃないわ、結局記憶はトばせなかったし」

「……そう簡単に記憶はトばない、人体は意外と頑丈」

「それに……忘れたくても忘れられない光景だったしね」

「何かしら? 吉井? コロサレタイノ?」

「いえっ! 何でもないですっ!!」

「……そ」

 

 ハイライトの消えた瞳の島田さんに、僕は全力で頭を垂れて、完全降伏のポーズを取った。

 危なかった……また怒らせたら今度こそ三途の川とあの世をトライアスロンしないといけない。僕だって学習するのだ、一度踏んだ地雷くらい回避できるさ、だから晴楓はそれ来たぞとスコップ取り出すの辞めろ!!

 

「すぐ埋めようとするな晴楓よ、明久が居らぬと今日の下見も進まん訳じゃし」

「チッ……人様のデートの下見に雁首揃えて、暇人かよお前ら」

「そうは言うが、お主も知っておったら同じ事をするじゃろう?」

「嬉々としてするね、雄二を陥れるの楽しいし」

 

 一週間ぶりのクズ野郎のクズ発言、僕らを非難できる立場かよ、手のひらねじ切れてるのかな? 一応サポートって名目で参加してる僕たちと、100%私利私欲のクズを一緒にしないで欲しい、心の底から。

 

「本当は楠木くんと美波ちゃんも誘うつもりだったんですけど」

「晴楓は一週間学校に来とらん上に着信拒否、島田も用事があると言っておったから誘わんかったのじゃが……」

「……まさか二人で来てるとは……これは、異端審問会案件」

「チッ、余計な事を……」

 

 ムッツリーニがジロリと晴楓を睨んで呟く。晴楓は更に嫌そうな顔で舌打ちをした。

 

 ムッツリーニの言うとおりだ、さっきは島田さんの有り余るインパクトに薄れてしまっていたけど! 葉月ちゃんと一緒とは言えどこれは立派なデート! 僕たちFクラスの同士に隠れてコソコソとデートするなんて許されない! 生殺与奪の権利は晴楓じゃ無く僕に有る!!

 

「遺言はあるかな晴楓? ちょうどそこにジェットコースターがあるから、レールの上に君を括り付けようかと思うんだけど。いいよね?」

「いいわけないよね? そんなトムとジェリー的な処刑方」

「……拒否権は、ない」

「あるわ! 人権と共にあるわ!」

「それも無い!! このクズ野郎!!」

「ただ付き添いだっての、美波一人だけだと大変だろーが」

「……戯言を、両手に花……ギルティ」

「二度と葉月の視界に入るなムッツリーニ。そんでもってデートじゃねぇっての」

「貴様がなんと言おうが! 世界は! それを! デートと呼ぶんだぜ!!

「黙れ私怨マシマシサンボマスター!!」

 

 いっちょ前に権利だけを主張するクズに、僕とムッツリーニはジリジリとにじり寄る。僕たちを出し抜いて女の子とデートした罪は何よりも重いのだ。それも二人も一緒になんて……万死に値する。

 

 そんな怒りに飲まれてしまった僕たちにストップをかけたのは、意外な人だった。

 

「駄目ですよ二人とも、邪魔しちゃ」

「ひ、姫路さん!?」

「……そこをどけ姫路、晴楓を殺せない」

「だから殺しちゃ駄目ですって!」

 

 こんなクズを庇う必要ないのに、晴楓と僕たちの間に立ち塞がりる姫路さん。両手を広げてとうせんぼをしている。

 

「いいぞ姫路! なんか知らんがこの気狂い共から俺を助けてくれ!!」

「このっ! 姫路さんの背中に隠れるなんて卑怯だぞ!!」

「卑怯でけっこう! いのちを大事にが俺のメイン作戦じゃ!!」

 

 虎の威を借る狐状態の晴楓が、姫路さんを盾に煽り散らす。クズ野郎め、島田も呆れた視線を向けていた。

 

「ハル、あんたねぇ……」

「仕方ねぇだろ美波。姫路に頼らな俺は死ぬ!! だから任せた言ってやれ姫路! 暴力は最低な行為だって事をな!!」

「はい! 喧嘩は駄目ですよ二人共!」

「そーだ!そーだ!!」

「そもそも二人はデート中なんです!! 邪魔しちゃ駄目です!!」

「そー、ん?……あの、姫路さん? 」

「……瑞希?」

 

 園内に響く姫路さんの声。おや? 流れが変わったぞ?

 

「折角のデートなんですよ? 素敵な日にしてほしいじゃないですか、多分これが二人の初デートなんですよ!

「あの、助けてくれるのはありがたいけどその、大きな声で言わんでくれます?」

「私気づいてたんです、楠木くんが必死に文化祭中も頑張って美波ちゃんをデートに誘おうとしてたの!

「あのぉ! 黙ってくれます!? てか気がついてたんかい!!」

美波ちゃんもずっとソワソワしてて、楽しみにしてたはずなんです!

「少し止まろうか瑞希! ちょっとホントお願いだから!!」

 

 大きな声で恥ずかしい事を、皆の前で暴露しまくる姫路さん。助けて貰ってる手前強く出れずに、背後からグサグサと刺されてる晴楓と、流れ弾を食らって羞恥に悶る島田さん。

 なんだろう、少しだけ可哀想になってきたかも知れない。

 

「だから、そっとして置いて上げましょう? ね? 吉井くん」

「う、うん分かったよ姫路さん。多分一番デリケートな所を抉ったのは姫路さんだけどね」

 

 ちらり

 

「あ、無理。なんか全部バレててるのにコソコソ画策してた事実が耐えられない。死ぬ」

「うぅ、瑞希の純粋さが怖い……、悪意がないから逆に辛い」

「お姉ちゃんともやしのお兄ちゃん、どうかしたんですか?」

 

 葉月ちゃん、今だけはそっとしておいてあげよう。純粋さの追い打ちは凄く可愛そうだ。

 

「……惨い」

 

 リア充絶対殺すマンのムッツリーニですら憐れみを感じるなんて、行き過ぎた純粋さがこんなに惨たらしいものだったなんて僕は初めて知ったよ。

 

 完全に怒りの向き先を失った僕とムッツリーニ。満足気な姫路さん。キョトンとする葉月ちゃん。そして死んでる晴楓と島田さん。

 地獄の様なこの状況を傍から見ていた秀吉が、深いため息を吐いて口を開いた。

 

「何をしとるんじゃお主たちは……仕方がない、ここはワシが人肌脱いでやるかのう」

「……な、何する気だ秀吉、と、トドメか?」

「そんな事せんわい、ちょっとした事じゃよ」

 

 そう言って秀吉は、晴楓たちの隣で場の空気に置いてかれていた葉月ちゃんの前に立ち、しゃがんで視線を合わせてこう言った。

 

「どうじゃ島田の妹よ。良かったらワシと一緒に遊園地を回らぬかのう?」

「へ? お姉ちゃんたちとですか?」

「うむ、どうじゃろか。今ならバカのお兄ちゃんも一緒なんじゃが」

「なるほど! それなら葉月行きます!!」

 

 秀吉の手を取り僕たちの方へやって来る葉月ちゃん。

 

「葉月!? ちょっと木下、急にどうしたのよ?」

 

 疑問に思った島田さんがそう尋ねると、秀吉は可愛くウインクしながらいたずらっぽく笑った。

 

「これで正真正銘のデートじゃ。邪魔したのう二人共」

「なっ!!」

「おまっ! 秀吉ぃ!?」

 

 その言葉にボッと瞬間湯沸し器になる二人。

 その反応に満足気な秀吉は、僕たち皆の手を取り「ほれ、ワシらは退散するぞ」と言い残してその場を後にするのだった。

 

「木下くん、ナイスアシストです!」

「なに、ちょっとしたお節介じゃよ。流石に可愛そうじゃったし」

「それはそうだけどさ、島田さんはともかく、晴楓が得をするのは腑に落ちないんだけど」

「……異端審問会的にはアウト」

 

 例えどんな事情があっても、僕ら異端審問会はリア充を許さない作らせない。特にあのクズの晴楓が幸せになるなんて耐えられない。

 何処か煮え切らない僕とムッツリーニの言葉に、「そうじゃのう」と呟く秀吉。

 

「まぁワシらはワシらで、当初の目的を果たすとしよう。丁度お誂え向きの二人組みも居ることだし」

 

 ふっ……流石だよ秀吉。天才か君は!!

 

「雄二だけをアシストするなんて不公平だよね。僕らがしっかりと晴楓も助けてあげないと!!」

「……まったく、世話の焼けるヤツだ」

「葉月ちゃんも姫路さんも、二人が仲良くなるために頑張ろうね!」

「はい! 頑張ります!」

「葉月も手伝うです!!」

 

 くくく……晴楓め、安々とデート出来ると思わないことだよ!! きちんと僕らが君で満足行くまで遊んだあとに! 人生の墓場に叩き込んでやるからね!!




ここまで読んでくださりありがとう御座います。
高評価、ここすき、感想、励みになりますのでよろしくおねがいします。

なる早で仕上げてきます。
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