“智慧”、“陽炎”、“ガチャ”を得た転生者の異世界冒険譚~ありふれ編~ リメイク版 作:白の牙
「全員、準備は出来たか」
2日間しっかりと休み、心身ともに万全に整えた飛羽真達はいよいよ下の階層へと赴こうとしていた。
「私は大丈夫だよ」
「私もよ」
「僕も・・・大丈夫だよ」
「・・・・私も」
リインフォースとアルファは飛羽真の問いに直に答えたが、ハジメと恵理はもう一度、装備などを確認してから答えた。
「うし、じゃあ・・・行くか」
「真っ暗だね」
「洞窟だからな」
遠征で行ったことのある全ての階層には緑光石があり薄暗くても道の先を視認できたが、この階層には緑光石が存在しないらしく、全くと言っていいほど見えないのだ。
「どうするの?目が暗さに慣れるまで留まる?」
「いや、危険だが、灯りを付けて先を進む。隊列は俺、アルファ、南雲、中村、アインスの順で行く」
恵理の問いに答えた後、飛羽真はポーチから緑光石を取り出し灯りをつける。
暗闇の中で灯りをつけるなんて魔物達にいる場所を教えているのと同じで自殺行為だが、こうしなければ進むことが出来ない。
「(っま、常に探知魔法を使うから問題ないんだけどな)」
だが、探知魔法を使うことが出来る飛羽真がいるので奇襲される心配はない。そして、飛羽真の指示通りの隊列で先を進んでいると、1体の魔物が近づいてきていることを察知した飛羽真は手で止まるよう、指示を出す。
「南雲、スタングレネードを思いっ切り投げろ」
「うん」
飛羽真の指示を受け、ハジメはポーチからスタングレネードを取り出し、ピンを引き抜くと前に向け思いっ切り投げると、スタングレネード対策に作ったサングラスと耳栓を着用した。
ハジメがスタングレネードを投げてから数秒後、閃光と轟音が洞窟内に鳴り響いた。閃光と轟音は数秒後に収まった。
「・・・・」
飛羽真は気闘法の一つ“朧”で気配を消し、移動すると、灰色のトカゲが倒れていた。
「・・・死んでるのか?」
『解。恐らく、スタングレネードの轟音でショック死したと思われます』
「・・・取り合えず、斬っておくか」
何ともあっけない幕引きに少し唖然としながらも飛羽真は魔物を斬って、ステータスと持っている能力を手に入れた。
「・・・まさか、他の魔物もコイツのように死んでるんじゃないだろうな?」
飛羽真の呟きは当たっており、その後、遭遇した魔物の内、3匹がスタングレネードの轟音で死んでいた。
「そろそろ休むか」
「そうですね」
「そうね」
階層をくまなく探索し、これ以上は何の成果も得られないと理解した飛羽真は本日の探索はここまでにしようと提案すると、リインフォースとアルファが賛同し、ハジメと恵理も頷いて答えた。
「それじゃあ、休む場所を作るか。南雲」
「うん」
飛羽真に話しかけられたハジメは適当な壁に手を当てると錬成魔法を発動させ、穴を開けた。2人で協力し、2つのカプセルハウスを出しても大丈夫な空間を作り上げた。
「さて、本日の戦利品はっと」
飛羽真は簡易テーブルと椅子を出すと座り、倒した魔物から得たスキルを確認する。
‐夜目
‐気配探知
‐石化耐性
この3つがこの階層で本日得た戦利品だ。
「“夜目”はフクロウの魔物、“気配察知”は六本足の猫、“石化耐性”は灰色のトカゲだな」
「夜目っていうぐらいだから暗闇の中でもよく見えるようになるのかな?」
「多分そうだろうな。丁度人数分あるし、全員覚えておこう」
飛羽真は夜目のスキルが込められたカードを全員に渡す。渡されたカードを貰うと、カードが小さな光りの球体へと変化し、飛羽真達の体の中へと入っていった。
飛羽真はカードの効果を確かめるためつけていた灯りを消し、真っ暗にする。
「おぉ~~~、暗いのにちゃんと周りがちゃんとわかる」
「これなら灯りがなくても動くことが出来るね」
「だな。残りの“気配探知”と“石化耐性”は4人で相談してくれ」
「八神君はいいの?」
「俺は状態異常無効のアクセサリー常に身に着けてるし探知系のスキルも持ってるからな」
恵理の問いに答えると、飛羽真は夕食を作るためにカプセルハウスへと入っていった。
「さ~~~て、何を作ろうかな~~」
冷蔵庫を開け、中に入っている食材を確認しながら献立を考えていると、メッセージを受信した事を知らせる音が鳴った。
「何だ?」
電子機器のないこの世界でメッセージが届いたこと首を傾げながら飛羽真はスマホを付けると、ガチャアプリにメッセージが届いている事に気づき、アプリを起動する。
「何々、“アップデートのお知らせ。アップデートして新しい機能を手に入れよう”・・何じゃこりゃ?」
『解。文字通りの意味かと』
「新しい機能・・ねぇ。・・・更新しておくか」
飛羽真は“アップデートを行いますか?”の問いに“はい”をタップし、アプリのアップデートを始めた。
アップデートは数分で終ると、新しい機能の説明文が表示された。内容は特定のミッションをクリアすることで特別なチケットが手に入るとのことだ。
「“尚、ミッションの内容は表示されません”。自分で探せってことか?」
面倒と思いつつもクリア報酬のチケットに興味があるのもまた事実であるため、日々の行いを大事にして行こうと決めるのだった。
「どれぐらい降りたんだろうね?」
「ん~~~50はいってるんじゃないか?」
迷宮攻略を開始してから早数ヶ月(体感)。飛羽真達は迷宮の攻略を続けている。
勿論ここまで来るのは簡単ではなかった。
ある階層ではタールのような粘着性のある泥沼がそこからかしこにばらまかれており、足が取られ動きにくいうえ、そのタールはある鉱石が融解したもので、100度以上の熱が加わると発火し、その熱は摂氏3000度にまで達し、火系統の魔法が使用不可能だった。
またある階層では、階層全体が毒霧で覆われた階層で、呼吸もままならなかった。幸いにもガチャで手に入れた状態異常無効のアクセサリーのおかげで何とかなったが、毒のほかにも麻痺を与える鱗粉をばらまく蛾や毒を吐き出すカエルがいたりとこちらも厄介だった。
更に地下迷宮だと言うのに密林のような場所も存在し、本当に自然で出来た迷宮なのかと疑問を感じた。
「ほれ、足元がお留守だぞ」
「うわ!?」
飛羽真の持つ刀に意識を集中しすぎたせいで、足払いを躱すことが出来ずハジメは尻餅をついてしまった。
「この階層に留まって3日。2人の体術も様になってきたことだし、そろそろあの場所に行くとするか」
「何があるのか不安だけど・・・」
「何かが変わる、そんな気がするよね」
飛羽真がい言った通り、5人は50階層で作った拠点で足踏みをしていた。下の階層に行くための階段を見つけているのにだ。
理由は此処、50階層で異質な場所を見つけたからだ。
そこは、何とも不気味な空間だった。高さ3メートルの装飾された荘厳な両開きの扉。その扉の脇には2対の一つ目の巨人の彫刻が半分、壁に埋め込まれるように鎮座していた。
全員がその扉に期待と嫌な予感を感じていた。この扉を開ければ確実に何かと相対することになる。だが同時に、迷宮攻略に新たな風が吹く気がすると。
そして、入念に準備を整えた飛羽真達は扉の前へとやってきた。最初に足を踏み入れた時に感じた悪寒こそ無くなったが、警戒を怠らずに歩みを進める。
「近くで見ると尚、凄いわね」
見事な装飾が施された扉を見てアルファが呟く。
「飛羽真、扉の中央を見て下さい。窪みのある魔方陣が描かれています」
「・・・・見たことのない式だな(智慧之王、解析を頼む)」
『了』
「う~~ん、お城の本には乗ってなかったような気がする」
「じゃあ、相当古いってこと?」
ハジメの話を聞いて恵理が尋ねる。
「どうだろう?全部読んだわけじゃないから」
智慧之王の解析が終るまで扉に触れ、押したり、引いたりして開かないかを試したが、ビクともしなかった。
「錬成魔法で道を作って中に入っちゃう?」
「それが一番かな?」
「おい」
恵理の言葉に頷いたハジメは扉に触れ、道を作ろうとする。それを見た飛羽真は止めようとするが一足遅く、錬成魔法が発動された。その瞬間、
「うわ!?」
扉から赤い放電が走り、ハジメの手を弾き飛ばした。
「あち、あち、あちちちち!?」
「だ、大丈夫、ハジメ君!?」
ハジメの手から吹き上がる煙を見て恵理は神水を飲ませる。そんな2人を見て飛羽真が溜息を吐いていると、野太い雄叫びが響き渡った。
その声を聞き、後ろに後退すると、飛羽真達は直に動けるよう構える。雄叫びが続く中、声の正体が遂に動き出した。
「オブジェかと思った物が実は門番でした。RPGでもよくある展開だよな~」
お約束通りの展開に苦笑いする飛羽真を他所に扉の両側に彫られていた2体の巨人が周囲の壁を砕きながら現われた。
「その大剣何処にしまってたの?」
何処からか出した大剣を見て疑問を口にするハジメ。巨人は未だ埋まっている半身を強引に抜きだし、無粋な侵入者を排除しようとするが、
「邪魔よ」
いつの間に巨人の頭上に跳躍していたアルファが炎を纏わせた剣を一閃。巨人を真っ二つにした。
その光景を反対側の巨人が唖然とした表情で見ていた。
「容赦ないな」
「戦う準備が整うまで待って上げるほど、私は優しくないわ。貴方だってそうでしょう?」
「まぁ・・・な!」
アルファの問いに答えながら飛羽真は刀を抜刀と同時に“絶天”を使用し、アルファ斬った巨人と同じ末路を辿った。
「さてっと、南雲、中村、アルファが倒した巨人から魔石を取り出してくれ」
「え、う、うん」
容赦ない飛羽真とアルファに若干引いていたハジメは言われた通り、倒した巨人から拳大の魔石を取り出し、飛羽真に渡す。
飛羽真はもう一体の巨人から採取した魔石とハジメから受け取った魔石を扉の窪みへと嵌め込んだ。
直後、魔石から赤黒い魔力光が迸り、魔方陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に魔力が全体に行き渡っているのか壁がうっすらと発光、灯りで満たされた。
飛羽真は全員を見回した後、警戒しながら扉を開ける。扉の奥は真っ暗闇で、大きな空間が拡がっており、“夜目”と周りの明りに照らされ少しずつ全容が分かってきた。
中は艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へと向かって2列に並び、部屋の中央付近には巨大な立法体の石が2つ置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、光沢を放っている。
「(あの立方体、何かが生えてるな)」
飛羽真は立方体の前面の中央辺りから何かが生えている事に気づき、確認しようとしたとき、
「「・・・誰?」」
掠れた弱々しい女の子の声が聞こえてきた。