“智慧”、“陽炎”、“ガチャ”を得た転生者の異世界冒険譚~ありふれ編~ リメイク版   作:白の牙

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 今更なきもしますが、明けましておめでとうございます。

 そして、更新が遅れ申し訳ありません。モチベーションが上がらず、こんなに時間がかかってしまいました


第10話

 

 

 「これよりオルクス大迷宮での演習を行う!」

 

 『は、はい!』

 

 大迷宮へと続く広場に集まった斗真達はいつになく真剣な表情をするメルドに戸惑いながらも元気よく返事を返した。

 

 「ハジメ」

 

 お上りさんのように周りをキョロキョロ見回しているハジメに斗真が声をかける。

 

 「どうしたの斗真君」

 

 「何、渡しておきたいものがあってな。ほい」

 

 そう言うと斗真はハジメにウェストポーチと紙束を渡した。

 

 「何・・これ?」

 

 「この世界に来た時に約束したろ?時が来たら渡したいものがあるって。本当はもう少しハジメのステータスが上がってから渡そうと思ってたんだが、今渡しておいた方がいいと思ってな」

 

 「で、でも、ポーチなんて渡されても」

 

 「見た目はな。それはゲームでいうアイテムボックスでな。色んなものを収納することが出来る。紙にはリストと取扱書が書かれてるから、ちゃんと読んでおけよ」

 

 「う、うん」

 

 「お義兄ちゃん、ハジメ君、もう行くって」

 

 「おう」

 

 恵理に声をかけられた2人は先を行くクラスメイト達の後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 外の賑やかさに半紙、迷宮内は静寂だった。

 

 縦横5ⅿ以上はある通路は明かりもないのに薄ぼんやりと発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認出来ていた。聞くと所によると、オルクス大迷宮には緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっており、その鉱脈を掘って出来ているとのことだ。

 

 隊列を組みながら進んでいくと広間に辿り着いた。物珍しげに辺りを見回している一行の前に壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

 「よし、光輝達が前に出て、他は下がれ。交代で前に出て戦ってもらうから準備をしておけ。あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいがたいした敵じゃない。冷静に行け」

 

 灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。“ラットマン”という名称に相応しく外見はねずみっぽいが・・・二足歩行で上半身がムキムキで八つに割れた腹筋と膨れ上がった胸筋の部分だけ毛がなかった。

 

 正面に立つ光輝達、特に前衛である雫の頬が引き攣っているのが遠くから見えた。

 

 「あれは私も嫌」

 

 雫の表情が見えたのか恵理が思いを代弁する。

 

 「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地に帰れ――“螺炎”」」

 

 光輝、雫、龍太郎の3人が迎撃している間に、香織とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を行う。

 

 2人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎が残ったラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。断末魔の悲鳴を上げながらラットマン達は灰へと変わり果て絶命した。

 

 「あぁ~~・・うん、よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!それと、今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に肩を竦めるも、メルドはちゃんと注意を行った。メルドの言葉に香織と鈴はやりすぎだったことを自覚して頬を赤らめた。そして、交代しながら戦闘を行っていき、斗真、グレイフィア、朱乃、ハジメ、恵理、幸利の組の番となった。

 

 「ハジメ、取説はちゃんと読んだか?」

 

 「半分は読み終えたよ」

 

 「そうか。なら、お前1人で戦ってみろ」

 

 「お義兄ちゃん、それは」

 

 その発言に傍にいた恵理が待ったをかける。

 

 「決めるのはハジメだ。どうする?」

 

 「・・・・やってみる」

 

 少し考えたあと、ハジメは1人で戦ってみると言うと前に出る。斗真から渡されたポーチに手を入れ、中からおもちゃの銃らしきものを取り出した。

 

 「さすがオタクだな。あんなものを作るだなんて」

 

 ハジメが取り出したものを見て、普段からハジメを馬鹿にしている面々が笑い声を上げる。

 

 「ふぅ~~~」

 

 ハジメは後ろから聞こえる笑い声を無視し、心を落ち着かせると、銃口をラットマンに向け、引き金を引く。すると、発砲音と共に1発の弾丸が放たれ、ラットマンを撃ち抜いた。

 

 「「「「・・・・は?」」」」

 

 その光景に笑っていたものは目を見開き、口を開けた状態となった。メルド達騎士団の面々も何が起こったのかわからず目を見開いている。そして、同じように放心していたラットマン達だったが、すぐに我に返り、ハジメへと一斉に襲い掛かる。

 

 ハジメは慌てることなく、正確に、確実にラットマンの頭部を撃ち抜いていく

 

 「射撃精度に補正が付くとはいえ、次々とヘッドショットを決めるなんてやるな~」

 

 「銃の持ち方も様になっていますね」

 

 一方、斗真達はハジメの射撃の腕に感心していた。そして、ハジメが最後の一体を撃ち抜いたことで戦闘は終わった。

 

 「ふぅ~~~」

 

 魔物をすべて倒したことを確認したハジメはゆっくり息を吐くと、地面にへたり込んだ。

 

 「あ、あれ?」

 

 「大丈夫、南雲君?」

 

 「う、うん」

 

 「お疲れさん。慣れた動きだったな」

 

 「何回か父さんが開発したゲームのテストプレイをしてたんだ」

 

 「ヘッドショットが全弾ヒットした理由は?」

 

 「おふざけで作ったっていうヘッドショットじゃないと倒せないゲームをプレイしたことがあったからかもしれない」

 

 「何その無理ゲー」

 

 「少しいいか?」

 

 ハジメが全弾ヘッドショットできた理由に斗真が驚いているとメルドが声をかけてきた。

 

 「ハジメ、その武器は一体?」

 

 「これですか?これは、銃と言って僕たちの世界にある武器の一つです」

 

 メルドの問いに答えたハジメは銃についてメルドに教える。

 

 「そんな物が。ハジメ、その銃という物を多く作る事は可能か?」

 

 「・・・・すみません。これは偶々うまく出来上がったものなので」

 

 銃の性能を聞いたメルドはハジメに大量生産できるかどうか尋ねるも、ハジメは多く作ることはできないと言った。

 

 「そうか」

 

 「(これでよかったんだよね?)」

 

 残念がるメルドを見ながらハジメは横目で斗真を見るだった。渡された書類には取り出した銃について質問、量産できないか?と尋ねられた時はなんでもいいから無理だと断ってくれと書かれていたのだ。

 

 戦闘後、ひと騒動あったものの順調に遠征を続ける勇者一行。そして、当初の予定よりも早く20階層の最奥へとたどり着いた。

 

 その空間は鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしており、ここを抜けると21階層へと続く階段があるとのこと。

 

 「(この状況で魔物の相手をするのは苦労しそうだな)」

 

 地形の関係上、縦一列となって進むほかなく、複数の魔物に襲われようものなら苦戦を強いられるのはまず間違いないだろう。

 

 「ん?」

 

 すると、斗真の気配、魔力、万能感知、超直感が反応を示した。そして、遅れること数秒後、先頭を歩いていたメルドと光輝達が立ち止まり、戦闘態勢へと入った。

 

 「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけよ!」

 

 メルドの忠告を聞き、警戒を強める光輝達。

 

 「(あれか)」

 

 感知スキルの効果で魔物がどこにいるのか分かった斗真は視線をせり出ている岩へと向ける。すると、せり出ていた壁が突如変色しながら起き上がり、2本足で立ち上がるとドラミングを始めた。

 

 「ロックマウントだ!2本の腕に注意しろ、豪腕だぞ!」

 

 

 飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が強化した拳で弾き返すと光輝と雫が取り囲もうとするが鍾乳洞的な地形のせいで思うように囲むことができないでいた。

 

 ロックマウントは龍太郎をどかそうと数回、攻撃を仕掛けるもそのすべてを弾き飛ばされ、龍太郎という人壁を抜けられないと理解すると、後ろに下がり、仰け反りながら大きく息を吸ったあと、

 

 「グガァアアアア!!」

 

 部屋全体を振動させるような強烈な咆哮を上げた。

 

 「ぐっ!?」

 

 「うわ!?」

 

 「きゃぁ!?」

 

 前衛を務めていた3人の体に衝撃が走る。ダメージ自体はないものの体を硬直される。

 

 「(今のは?)」

 

 『解。魔力を乗せた咆哮と測定。一時的に敵対者を麻痺させる効果があるようです』

 

 ロックマウントが放った咆哮を解析したラファエルが解析結果を刀真に教える。

 

 ロックマウントは動けない光輝達の隙をついて突撃してくるかと思われたが、傍らにあった岩を手に取ると、砲丸選手顔負けのフォームで香織達後衛組に向かって投げつけた。

 

 岩は動けない前衛組の頭上を越え、香織達へと迫る。

 

 避けるスピースが心もとない香織達は準備していた魔法で迎撃すべく魔法陣が施された杖を岩に向ける。あとは魔法を発動するだけ。しかし、魔法を発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的な光景に思わず硬直してしまった。

 

 何と投げられた岩もロックマウントだったのだ。擬態を解除したロックマウントは空中で1回転を決めると両腕を広げて香織達へと迫る。

 

 「「「(ルパンダイブ・・だと!?)」」」

 

 一瞬、有名泥棒アニメの主人公とロックマウントがだぶってしまう斗真、ハジメ、幸利の3人。香織達もその光景に唖然としていたが、ロックマウントの顔を見て、

 

 「ヒィ!?」

 

 悲鳴を上げた。何故ならロックマウントは妙に目が血走っており、そのうえ、鼻息も荒い。そんな存在が近づいてくるのを見れば悲鳴を上げない女性はいないだろう。

 

 「はぁ」

 

 誰もが動けないのをよそに斗真は鞘から剣を抜くと逆手に持ち替え、刀身に炎を纏わせる。そして、こっちも槍投げ選手の顔負けのフォームからロックマウント向け、剣を投げ飛ばした。投げ飛ばされた剣は一直線に香織達に迫るロックマウントへと飛び、顔に深く突き刺さる。剣が突き刺さったのを確認すると、纏われた炎を遠隔で操作し、ロックマウンの体全体に行き渡らせると、

 

 「爆ぜろ」

 

 炎の温度を一気に上げ内部で爆発、爆散させた。

 

 「(ちょっとばっかし、グロかったか?トラウマにならなきゃいいんだけど)」

 

 まじかで爆破シーンを見せたのはまずかったかと斗真が思っている中、一人の少年がキレていた。

 

 「・・・・よくも香織達を・・・許さない!」

 

 そう正義と思い込みの塊、光輝だ。青褪めているのを死の恐怖を感じたと勝手に思い込み、怒りをあらわにする。そして、そんな光輝の感情に呼応して、手に持つ聖剣が光り輝く。

 

 「あの馬鹿。レビー、朱乃」

 

 「はい」

 

 「分かりましたわ」

 

 光輝が大技を放とうとしているのが分かった斗真はグレイフィアと朱乃に指示を出す。斗真の言わんとしていることが分かった2人は、鎖付きの短剣と伸縮自在の鞭を光輝へと放つ。

 

 「万翔羽ばたき、天へと至れ“天翔・・・”っ!?」

 

 詠唱を経てより強烈な光を纏った聖剣を振り下ろそうとした光輝の腕を短剣と鞭が縛り上げ、動きを拘束する。光輝の動きが止まったのを確認するやいな、斗真はせりだす岩と天井を隠れ蓑に一億年の修行で習得した剃と月歩の併用技“剃刀”で一気に前まで移動し、地面に突き刺さった剣を回収、ロックマウントとの距離を瞬時に詰めると、

 

 「焔一閃」

 

 炎を纏わせた剣でロックマウントを一閃。切断個所に炎が灯り、一瞬で全身に炎が行き渡りロックマウントは悲鳴を上げることなく灰となった。

 

 「八神、一体どういうつも・・・」

 

 「バカモン!」

 

 「へぶぅ!?」

 

 ロックマウントを倒されたことでグレイフィアと朱乃の拘束から解放された光輝はなぜ邪魔したのかを問い詰めようとするが、メルドの拳骨を食らい、地に沈んだ。

 

 「メ、メルドさん?」

 

 なぜ自分が殴られ、怒鳴られたのか分からない光輝はメルドを見る。

 

 「こんな狭い場所であんな大技を使おうとするなんて何を考えている!少しでも加減を間違ったら天井が崩れ埋められていたかもしれなかったんだ!八神はそれを起こさせないために行動した。感謝こそしても怒るのは筋違いだ!」

 

 メルドが光輝を怒っているのを横目に斗真は地面に座り込んでいる雫に近づき、手を差し出す。

 

 「大丈夫だったか雫?」

 

 「えぇ、ありがとう」

 

 礼を言いながら差しだされた手を取り、立ち上がる雫。

 

 「気にすんな。それより行ってこい」

 

 斗真はまだ青褪めた表情をしている香織を視線を向ける。言わんとしていることが分かった雫はもう一度、礼を言うと香織のもとへと行った。

 

 「斗真様」

 

 「グ・・・ビナー、朱乃、ありがとうなあの馬鹿の動きを止めてくれて」

 

 「たいしたことはしていませんわ」

 

 斗真が剣が刃毀れしていないか確認していると後方にいたグレイフィア、朱乃が近づいてきた。光輝の動きを止めてくれたグレイフィアと朱乃に礼を言う。少しの間、たわいもない会話をしていると、

 

 「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

 「ん?」

 

 メルドの慌てた声を聞き向くと、小悪党4人組のリーダー格である檜山が壁をよじ登っていた。

 

 「何やってんだあいつ?」

 

 馬鹿(檜山)の向かっている所に視線を移すと、青白く発光する鉱物が花咲くように壁に生えていた。

 

 「っ!?」

 

 そして、その鉱物を見た瞬間、斗真の超直感の警報がなった。この警報がなにを意味するのかは分からないが、あれに触れたらまずいことが起こると理解した刀真は止めるべく動き出そうとしたが、一足遅く、檜山が鉱石に触れてしまった。

 

 鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がった。魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していく。

 

 「っく、撤退だ!全員、早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルドの言葉に全員が部屋を出ようとするが、間に合わなかった。トータスに無理やり連れてこられた時と同じように部屋の中に光が満ち、斗真達の視界を白一色に染め上げるのだった。

 

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