ハーレムを目指せと言う神の啓示が聴こえてくる様だぜ‼︎   作:とむとむ

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処女神は数多くいるが童貞神など存在しないのだ

 

 

白銀、かぐや、藤原の3名はいつも通り生徒会の職務に勤しんでいた。

 

「あら、なんです? これ」

 

「あぁ、さっき校長が生徒から没収したんだと。教育上良くない本だから処分しとけってさ。全く、自分でやれって話だ」

 

ふと周囲を見渡したかぐやは頭の悪そうな雑誌を発見。教育上良くない物の処理を生徒に任せるなど、あの校長はかなり適当なところがある。教育に携わる者としていかがなものか。

 

「教育上良くない本?」

 

気になった藤原は雑誌を手に取り、ページを繰る。

 

「ひ……ひゃあああっ‼︎」

 

しかし何かに驚いた藤原は雑誌を取り落としてしまう。雑誌はかぐやがキャッチ。

 

「乱れ…いや淫れてます! この国は淫れてます!」

 

(なんだ…? あの慌てよう……もしかしてヘアヌード⁉︎ ヘアヌードがあったのか⁉︎)

 

「"初体験はいつだったアンケート“、"高校生までに“が34%…ですか」

 

藤原とは対照的に、かぐやは淡々と内容を声に出した。

 

(あぁ、ヘアヌードではなかったのか……34%⁉︎)

 

自身の予想が外れたことに落胆する白銀。しかしすぐさま34という数字に反応した。

 

34%、つまりは三分の一強。30人のクラスであれば10人が経験済み。現在生徒会室にいる3人のうち、1人は経験済みの可能性が高い。

 

「嘘です! 皆そんなにしてるハズありません!」

 

内心、全力で藤原に賛同する白銀。それもそのはず。未経験といっても男女では全く意味が違う。もっと直接的な表現をするなら処女に価値を見出す人間は一定数いるがあるが童貞に価値などない。処女は穢れなき者の象徴。ヘスティア、アルテミス、アテナ、処女神は数多くいるが童貞神など存在しないのだ。

 

「こ…こういうのはこういう本を読んでる人がアンケートに答えてるから高いだけですよね」

 

「あぁ……サンプルセレクションバイアスってやつだ、実際そんなに多くない筈……っ‼︎」

 

しかし白銀、ここである可能性に気づく。

 

(いや待てよ。現在生徒会のメンバーは5人。5人の集団に於ける34%なら1人か2人が妥当。2人の方が可能性が高いが1人でも不自然ではない。そして生徒会には、甘いマスクに軽薄な態度などヤリチンの素質を兼ね備えた花菱ちはやという男がいる。もしアイツが"そう“ならこのアンケートはあながち間違ってないのか?)

 

物凄く失礼だが存外的を射ている考察をする白銀。だがこれを口に出す必要はない。自身の精神衛生を考慮してもここは話を終わらせるのが吉。

 

「そうですか? 私は適切な割合だと思います、むしろ少ないんじゃ?」

 

「「⁉︎」」

 

バイアスによる誤情報として処理しようとしていた2人。ところがかぐやが爆弾を投下したことで意識を持っていかれる。

 

「あの……まさかとは思うのですが、かぐやさんはその……経験あるんですか?」

 

「はい、だいぶ前に」

 

「ええええええ‼︎」

 

(はぁ⁉︎ 嘘だろ⁉︎ 財閥の令嬢がどこの馬の骨とも知らんやつと子供作ったら大問題だろ‼︎ 娘の異性関係もっと精査しろよ‼︎)

 

四宮家の後継者はかぐやの兄の1人になるであろう事は確定。時間的な観点から見ても今かぐやが身籠ったとしても後継者争いに何ら影響はない。しかし長女の在学中の妊娠など厄ネタにしかならないのは変わらぬ事実。普通なら決められた相手と……

 

(あぁ、花菱か)

 

いるではないか。決められた相手が。

 

白銀は乱れた精神が急速に沈静化するのを感じた。

 

(もし四宮に経験がなかったとしてもどうせ相手は俺じゃないのに、何をムキになってるんだか)

 

「高校生にもなれば普通経験済みなのでは? みなさん随分愛のない環境で育ったんですね」

 

「っ──‼︎」

 

(…こっちの気も知らねぇ癖に好き勝手言いやがって)

 

かぐやはごく普通の意見を述べたつもりである。しかし今の白銀の心情は察するに余りあるだろう。だがここで男が取り乱すのはあまりにもダサすぎるというプライドで持ち堪える。

 

「もう、いいだろ……この話は」

 

どうにか絞り出した一言。しかし…

 

「ちなみになんですが…お相手はちはやさんですか?」

 

藤原の質問で会話が続行。確かに気になってしまうのは頷けるがもはや白銀の脳は破壊寸前だった。藤原の口からちはやの名が出た瞬間己の意思に反してイメージが鮮明になる。

 

ちはやの腕の中で様々な表情を見せるかぐや。もしかしたら跪いて奉仕をしているかも知れない。ただ、かぐやの気品や高潔さを知っていてなお、とめどなく溢れるイメージの中にかぐやが優位に立つものは一つとして存在しなかった。

 

(あーあー、聞きたくねぇ)

 

失意に沈む白銀。だがかぐやの次の一言はその全てを消しとばして余りある威力を持っていた。

 

「へ? ちはやさんとだなんて…そんな」

 

「………はぁぁぁぁあ⁉︎」

「………うぇええええ⁉︎」

 

本日最大の衝撃。白銀は『あの花菱ちはやと深い仲にあるなら自慢したくなるのも仕方がない』と思っていたし、藤原は『許婚の関係を知っている生徒会役員だけの空間だったから正直に話した』のだと思っていた。

 

しかし今前提が覆った。相手がちはやでないのなら、それこそどこの馬の骨とも知らない相手になるし、他の男との関係など事情を知っている生徒会役員の前でこそ隠すべき事案。

 

白銀と藤原は部屋の隅に集まる。

 

「おい、相手が花菱じゃないってことは…」

「まさか浮気ですか⁉︎」

「許嫁になる前なら大丈夫なんだが…」

「お二人の関係は10歳の頃からです‼︎」

「流石にそれより前にヤったとは考えにくいか…」

 

「?」

 

ちはやが12歳の頃から使用人に手をつけている事実を知らない2人の中でかぐやへの印象が急変する。

 

その時

 

ガチャ

 

「「‼︎」」

 

「遅れてごめんね」

 

最悪のタイミングでちはやが生徒会室に到着した。かぐやが何を思って先程の暴露をしたのか分からない状況であるため2人はとにかく話を逸らす方針で一致する。

 

ちはやに違和感を持たせず話を変えるため白銀の頭が高速回転する。こと頭脳労働に於いて白銀は藤原を当てにしていなかった。

 

だがその一瞬が命取り。

 

「こんにちはちはやさん。突然ですが一つ質問してもよろしいですか?」

 

「いいよ」

 

「ありがとうございます。では、ちはやさんは初体験はもうお済みでしょうか?」

 

「ん?……あぁ、その雑誌に載ってたんだね」

 

実は今、かぐやのテンションは爆上がり中である。と言うのも、高校生ならば当たり前に済ませていると思っていた初体験を白銀と藤原が済ませていなかったからだ。

 

つまりちはやが大多数と同じく未経験であるなら、それは今まで何をしても勝てなかったちはやに『初体験の早さ』で勝利することを意味する。

 

対してちはや。『初体験』という言葉自体に性的な意味はない。『ヤる』や『イく』のように文脈上で初めて性的な意味を孕むものなので、今のかぐやの質問ではその真意を理解することは普通できないはず。

 

だがちはやの頭脳がそれを可能にする。テーブル上に雑誌を発見。表紙から内容を推測。かぐやの質問と照合し状況を理解。

 

何が言いたいのかと言うと、かぐやの好奇心とちはやの洞察力によって齎される爆速テンポの会話は誰にも止められないという事。

 

「ちなみにかぐやは?」

 

「私ですか? 私はもう済ませていますよ」

 

 

──────────────────

 

 

え? マジ? いつヤったの? 相手は?

 

ちはやショック〜、出会った頃から8年近くかけて進めてきたシナリオが儚くも崩れ去った瞬間だね。

 

 

ちょっと話変わるんだけど、俺は常にかぐやの10歩先をいくようにしてきたんだ。この子の目標であり続けるためにね。

 

かぐやにとって許嫁の俺は最初、自身の人生を縛る存在でしかなかったハズだ。さらに自分より高い能力を持っていながらも、特権階級に生まれた責務など顧みず人を食ったような言動をする俺への評価は最低値スタート。

 

でもその評価も少しずつ変化する。俺の何気ない気遣いに触れる度、感情が見えない気味の悪さは決して崩れない余裕の表れに、自分勝手は意思を貫く強さに見えてくる。人の評価は見方で全く別物になるし、そうなるように仕向けてきた。

 

氷のかぐや姫なんて呼ばれてた時代も側を離れないで、むしろ能力を誇示してこの子の負けず嫌いな性格を刺激し続けた。

 

今のかぐやにとって俺は超えなければならない壁。超えられずとも、せめて並び立てるようになって初めて、この子はあの日の俺への言葉を取り消すだろう。そんで俺たちは愛し合う訳だ。

 

 

なんでそんなに周りくどいことするかって?

そりゃ人生最大の脳汁を味わいたいからよ。

 

めっちゃ時間かけてゆっくり距離縮めてって結ばれた暁にはそれは凄いことになるよ。肉体的、精神的絶頂がマッチして脳汁ドバドバだね。

 

だから俺のシナリオは焦らしまくったかぐやのハジメテをウルトラロマンティックなシュチュエーションでいただくことで完結するつもりだったんだけど……

 

できないならしょうがないね。プラン変更だ。

 

 

──────────────────

 

 

かぐやの言葉を聞いたちはやは黙り込んだ。その目に浮かぶのは驚愕、困惑、悲壮、そして微かな憤怒。

 

ちはやがここまで感情を露わにするのは初めての事、言葉はなくとも皆がそれを感じ取った。

 

「えーっと…うん、そっか……じゃあ学生の間は自由にっ……て…ことでいいのかな?」

 

「?」

 

ちはやは自分に言い聞かせるようにそう呟きながら、指先でかぐやの頬を撫でる。

 

かぐやの告白が衝撃的な事実であっただろうことは疑うべくもないがそれでもちはやは取り乱さない。

 

「白銀、今日は帰るよ」

 

「あぁ、それがいいだろう」

 

それでも冷静になるために一旦距離を取る選択をし、白銀もその判断を咎めなかった。

 

 

 

 

ちはやが部屋を去った後しばらくは誰も声を発さなかった。ただちはやの表情を見てなお自身の間違いに気が付かない程かぐやは愚かではない。

 

「あ、あの、初体験というのは具体的どのようなものなんですか?」

 

「逆に四宮はなんの事だと思ってたんだ?」

 

「てっきり、キ…キッスの事かと」

 

「会長、ここは私から……」

 

同性の藤原が説明役を買って出る。

 

16分後

 

 

「だって…‼︎ そういう事は結婚してからって法律で‼︎」

 

初体験の本当の意味、そしてそれを履き違えていた事に対する羞恥でかぐやの顔が真っ赤に染まる。

 

しかしちはやの表情を思い出した瞬間、今度は顔を真っ青にした。白銀と藤原も同時にその事に思い至る。

 

「あー四宮…花菱には明日俺から伝えておこう」

 

「……お願いします」

 

もちろん勘違いさせたことは自分の口から謝罪するつもりであったが『初体験をキスだと思ってた。セックスはまだしてない』などとは決して言えそうになかった。

 

 





次回

もう他の男とヤってたの?
じゃあ俺も他の子とヤるけど文句ないよね

という免罪符を得たちはやが一瞬だけ暴れる話
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