色使いは七色と舞う「クソザコ能力だったけど、能力を極めた結果、最強になりました。」 作:ぱすたご
はぁ、これを着るのか 。紗理奈さん趣味悪すぎるだろ
タクミは紗理奈が選んだ服を手渡され、連れ込まれた試着室の中でぼやいた。
タクミの手に握られている服は黒を基調とし、襟やスカートの裾が白いリボンや装飾がついているクラシカルロリータ系のワンピースであった。
17歳の元男にとっては刺激が強く、自分が着たことを想像すると恥ずかしくなってしまう。
「タクミちゃん、まだー?」
外から紗理奈さんの声がする。まずい、早く着ないとさっきの下着みたいに無理やり着せられる未来が見える。
慌てて、服に手を通して着ようと試みる。背中のジッパーを開けて体を入れ、ジッパーを閉めなければならなかったので少々手間がかかってしまった。
そして、服を着たタクミは自分の姿が似合っているのか、確認するために鏡を見た。
手首がレースで装飾された長袖、膝の少し下まである黒いリボンがつけられ裾が白いスカートを着た姿の可憐な女の子が鏡の前に立っていた。
カールが軽くかかった金色の派手な髪とは対照的なモノトーンな黒と白の服はタクミが思ったよりも似合っている。
タクミは目の前で待っている紗理奈に声をかけるべくカーテンを開けた。
「どう?に、似合ってるのか?」
これまでの人生でスカートとは無縁な生活を送ってきたタクミにとって、着用したときの何とも言えない違和感があるせいで足元に意識を向けざるをえなかった。
股下の風通しがいいことに違和感を感じつつ、紗理奈のほうを見て反応をうかがった。
「ぇぇぇええええええ、かわいいいいいタクミちゃん最高だよ。やっぱ服屋つれてきたの正解だった。ちょっと、匂いを、、、」
とまぁ変態的な反応をし、いやらしげな手つきをした紗理奈さんに瞬時に能力で恐怖映像を視界に流し込んでやった。
恐怖映像を見て、涙目の紗理奈さんは反省したのか、2,3着ほど似合っている服を選んでくれた。
その後はフードコートで食事をすることも考えたが、両手がふさがるほど買い物をしたので、車に荷物を運び終えた後どこかのドライブスルーに立ち寄って軽食を買う結論へと至った。
服もすべて紗理奈さんのおごりで買ってもらったし、その上ご飯もおごってもらったのだからありがたいことであった。
車はドライブスルーを経由して、再び研究室近くの駐車場へと戻った。
「まったく、急にショッピングモールへと連れてこられたと思ったらセクハラ同然の行為をされるし、紗理奈さん俺じゃなかったら訴えられて今頃捕まっていますよ。」
「まぁまぁ、タクミちゃんと私の仲じゃないかぁ。これからもよろしくね。」
といいつつ、尻を軽くなでてきた。
この人の思考どうかしているだろ。歩くセクハラ製造機じゃん。いつか本当に逮捕されるんじゃないだろうか。
とそんなことを考えながら、研究室に戻ってきた。
「荷物は車においてきたけどいいのか?」
手ぶらで帰ってきたことに気が付き紗理奈さんに尋ねる。
「あぁ、ちょっと色々と事情があってさ。服とかそういう女性モノを買ってくるようにシンくんから頼まれてたんだよね。ほら、シンくん行けたとしてもそういうモノのことわからないし。」
「その事情ってのは?」
「事情はね、シンくんから直接説明してもらったほうがいいと思って、メッセージで帰ったこと5分くらい前に伝えたから、そろそろここに来るんじゃないかなぁ、、、」
とドアのほうに目をやる紗理奈さん。
「おお、二人ともいるようだな。」
「シンくん。言われた通り買い物は済ませておいたよ。」
「色々と大変だったと思うが、助かった。」
いいえ、シンさんこの人はセクハラを堪能していました。
「そうそう、急な相談事だったから考えることがたくさんあって大変だったよ。」
平然と虚偽の証言をする紗理奈さん。
「ちょっとシンさん聞いてくれよ。紗理奈さんはで、、フモゴゴゴゴ」
非難もといセクハラを訴えようとしたタクミを抑え込んだ紗理奈はすぐさま記憶の処理を行うため、能力を使用した。
記憶共有は相手と自分の記憶を共有する能力である。通常の使い方としては相手の体験したことを見るために使われる。だが、この時紗理奈は別の使い方をした。自分の記憶を強制的に共有させ、相手の頭の中に流し込むことで少し前の記憶をあやふやにするという裏技的な方法を用いたのであった。
言い換えるのならば、5分前に経験したことを忘れさせるために自分の3日分の記憶を強制的に相手の脳内へと共有させることで5分前の記憶を3日と5分前の記憶にさせ記憶をあやふやにしてしまうという一歩間違えれば廃人まっしぐらな方法である。
「どうした、急にタクミの口を抑え込んで。」
「やだ、シンくん。タクミちゃんがちょっとせき込みそうだったから口を塞いで挙げただけだよ。」
とごまかしながら、記憶の処理を行っていく。
火事場の馬鹿力とでもいうのか、はたまた常習犯の手口なのか、紗理奈は素早く情報を処理しようと極限まで集中して能力を使っていた。
もちろん、きれいさっぱり最近のことを忘れては仕事に支障が出てしまう。そのため、紗理奈はショッピングモールでの記憶をあやふやにしつつ、それ以外の前後の記憶を3日分の記憶を流し込んだ後にタクミ自身の記憶を再度タクミ自身に都合のいいように抜き出して共有させた。
、、、、、、あれ何を喋ろうとしたんだっけ。
数秒、紗理奈の三日間を疑似体験していたタクミは再び意識を取り戻す。
タクミの頭の中では紗理奈と最初に記憶共有を行ったときに3日分の記憶がなぜか流し込まれ、その後ショッピングモールで楽しく紗理奈さんと買い物したという風に記憶が変わっていた。
デジャブを感じるように思えるが、気のせいか。
「タクミ、何か喋ろうとしていたけどいいのか」
「んー、話すことあったような気がするけど。紗理奈さんがちょっとセクハラしてきたのが大変だったってことかな。」
「それは本当か?!おい、紗理奈どういうことだ。」
シンは怪訝な目で自分の妻に目を向けた。
「あーシンさん。いいよ。女同士ならありえるかもしれないスキンシップ程度だと思うし。」
「タクミがそういうなら問題ないか」
シンは納得したのか、部屋に備え付けのコーヒーマシンのところへと向かっていった。
この時、紗理奈は安心していた。そう、セクハラすべてをあやふやにするのは不可能なことである。問題はささいで質の悪いセクハラまがいのことをあやふやにすれば、追及をまぬがれることができると考えてのことだった。
「ねぇ紗理奈さん、セクハラの件、貸し一つね。」
安心しきっていた紗理奈はタクミに耳元で囁かれ、記憶を覚えていたことにギョッとしタクミのほうを振り向いた。
「な、なんで覚えているの」
「まさか、何のことかさっぱりだよ。けど、紗理奈さん。やっぱ、能力を使って誤魔化していたか。」
けれども、服を買い与えてくれた上にご飯をおごってもらった恩もあるのでシンさんには報告しないでおこうとタクミは思った。
「ぐぬぬぬぬ、鎌をかけたなタクミちゃん。」
あと少しで完全犯罪だったのにと、悔しがる紗理奈であった。