色使いは七色と舞う「クソザコ能力だったけど、能力を極めた結果、最強になりました。」   作:ぱすたご

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#18 最強は養子になり、入学に期待する。

「で、話したいことって?」

 

来客用に置かれている机。その近くに備え付けられたソファに腰掛けながら、タクミは対面に座っているシンに聞いた。

 

「そのことだが、まずはこれを見てほしい」

 

そう言って、シンはA4の紙が入る大きさの茶封筒から一枚の紙を机の上に取り出した。

 

「このデータって一色タクミ。つまり、俺のDNA配列?この左のやつが男の時のDNAで、この右に書いてある奴が今の俺か。ほとんど違いなんてねーじゃん。」

 

「お前、赤の他人とのDNAの違いってどのくらいか知っているか?」

 

「だいたい90%ぐらい同じで10%ぐらい違うんじゃない?」

 

「それだと、チンパンジーと人間のDNAの違いだ。正解は赤の他人とのDNAは99.9%同じなんだ。だから、その検査結果だと、男の時のタクミと女の時のタクミはまったくの別人ということになる。」

 

「それに何の問題があるんだ?普通に考えて、男から女になればDNAの違いなんて出てくるに決まってるじゃん。」

 

「いや、それがだなぁ。能力を使われて性転換をされた場合は、元の体の組成を利用して男から女になるはずだから赤の他人までDNAが違うレベルになるのはありえないことなんだ。」

 

「つまり、これはただの性転換をさせる能力ではなくて、なにかに変えられた結果が女だったってことかよ。じゃあ、性転換系統の能力を使ったとしても元に戻るのはほぼ無理じゃん。」

 

「それはそれでまずいんだが、もう一つ厄介な問題があってな。今から一週間後に能力行使許可証の更新があるだろ。それまでにどうにかしないと、公の場で能力が使えないまま業務に参加できないわけだ。」,

 

「うわー。そっちの問題もあることも忘れていた。仮に更新できなかったら、業務の支障もでるな。身分不詳の人物がこの機関で働けるわけないし、この状況を説明しようとしても能力を使われた証明ができないって八方塞がりじゃん。」

 

シンに指摘された事実にタクミは頭を抱える。

 

「まぁ一時的に学業に専念するという形で休職をとっていれば、更新を先延ばしにはできるな。長くて1、2年できるな。あと、休職をするというなら上司の俺が話を通せばスムーズにいくだろう。」

 

休職?え、強い相手と能力使ってドンパチできなくなるってこと?

 

シンの案は職を失うことを免れるという点では現状の解決策としては最適解なのかもしれない。ただ、タクミにとっては強い能力者と戦い、最強を証明することができなくなるのは致命的な話だった。

 

「1、2年も戦えないのかよ。あと休職している間、寮も使えないことになるし、まともに能力を使えないのもなぁ。いっそのこと人目のつかないところで山籠もりでもするしかないのか。なぁシンさん、もっとましな解決案ないのかよ~。」

 

女になった影響なのかわからないが、感情が高ぶり涙腺がゆるくなっているタクミは目を潤ませながらシンに懇願する。

 

女の涙という最大の武器を使いながら、どうにかいい解決案をシンに絞り出してもらおうとするタクミの浅はかな計らいであった。

 

そして、タクミの涙ぐむ姿は紗理奈がシンに対して、怒りの目線を向けるきっかけになるのは充分であった。

 

シンは隣に座っている紗理奈からの圧を感じ取り、話をあわてて切り出した。

 

「お、落ち着くんだ。隣の紗理奈が怖くなるからやめてくれ。一応、解決方法がないことにはないんだ。つまるところ、お前の現状の課題としては、元の姿に戻る、休職中に能力の訓練をしたい、身分証明をするものがほしいってところだな。」

 

「そうかな。とりあえず、男に戻るのが課題として、それまでの仮の身元証明をできる手段、それと能力を使うのに困らない環境で訓練ができれば何の問題もないさ。」

 

「そうか、ならその解決案を話そう。」

 

「それは?」

 

「お前には音塚家の養子となってもらう。そして、八咫烏学園に編入するんだ。」

 

え、聞き間違いかな。この人、今養子になってもらうって言ったよね。聞き間違いかな。

 

「もう一回、言ってくれない?」

 

「だから、タクミには音塚家の養子になって、八咫烏学園に編入してもらう。」

 

「はぁああああああああ。養子って、まじかよ。」

 

「ああ、マジだ。そのほうが簡単に身分の用意できる。それにだ、八咫烏学園に編入すれば、能力も使える。なんなら、同世代の能力者と切磋琢磨できるだろう。なかなか良い提案だと、俺は思うが?」

 

「あら、私もタクミちゃんが娘になってくれるのは大歓迎だよ。」

 

と嬉しそうに話す紗理奈。

 

ちょっと、待て。養子を簡単にとってもいいのかよ。

 

それにだ、両親がなくなって、路頭で迷っていたか暴れていたかの俺をこの機関に誘ってくれたのはシンさんなわけだし、厄介になっていいものか考えてしまう。

 

「そんな簡単に養子とかとっても問題ないのか?」

 

「一応、音塚家は百家八色の百家のほうで名を連ねる家だから養子をとることは何ら問題ないな。百家八色なら家が断絶しないように養子をとることなんて日常茶飯事のことだし。それに男に戻った時は、離縁して苗字をもどせばいいから苗字に関しても問題はないからな。まぁ、後はタクミの返答次第ではあるが。」

 

百家八色?!八色の姓とその下にある百家から構成された百家八色の出身なのかよ。今の日本異能社会において、政治の中枢を担っている名家に名を連ねていたのか。目の前の二人が??いやいや、ありえん。シンさん、いつもお昼ごはん紗理奈さんの手料理で高級な外食とか行っているイメージないんだけど。紗理奈さんも派手というよりもシンプルな服に身を包んでいるからそんな雰囲気なかったし。

 

「あのー百家八色に名を連ねているって、初めて聞いたんだけど。」

 

「まぁ、そうだろうな。百家八色の内、能力の強さから八色の姓は知らない人のほうが珍しいと思うが、百家の方は家の多さか目立たない家はそこまで周知されていないな。でも、うちの隊でも知っている人間はいたはずだから、百家について知ろうと思うなら、わかっていたけどな。」

 

「んー百家八色とかより目の前の強い相手と戦えるほうが楽しいと思ってしまうからあんまり気にしていなかったわ。もし、百家八色と戦えたらウハウハだろうけどよ。そんな機会ないんだよな。」

 

現実的に考えて、百家八色に理不尽な殴り込みを仕掛けるのもできなくはないだろう。でも、それをすると職がなくなる上にアウトローな異能者と簡単に戦うのが難しくなるってのが問題なんだよね。

 

「それなら、さっき言っていた八咫烏学園に通えば、百家八色と戦える機会はできるはずだ。」

 

「ほんとか!!」

 

「あぁ、能力の成長を校風に掲げた八咫烏高校に百家八色に名を連ねる子息は基本的に入学を義務付けられているからな。それに校風の特性上、授業には対能力者訓練が設けられている上に授業外でも双方の合意があれば、戦うこともできる。運が良ければ、百家だけじゃなくて、八色の姓とも戦えるだろうが問題は起こさないようにな。」

 

これまでのタクミによってなされた悪行の数々を心配し、釘をさした。

 

「なにその最高の環境。養子にならないかって提案。それで頼むぜ。」

 

当の本人は百家、さらには日本最高峰の異能力者を輩出している八色の姓と一戦交えることができるかもしれないと興奮して聞いていなかったが。

 

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