リュージとオペラオー   作:アシール

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序章

ありし日の宝塚記念。

 

ベテラントレーナーのリュージは、手塩にかけて育てた愛バが第4コーナから最後の直線に入ってくる姿を手に汗握りながら眺めていた。

 

「うちからミッキーロケット!ストロングタイタン!

外からサトノダイヤモンドも並びかける!

さらにはヴィブロス!大外からワーザー!

香港年度代表ウマ娘も来たぞぉ!最内ノーブルマーズ!

しかし先頭はミッキーロケット!ワーザーだ!ワーザーだ!これが世界の実力か!

内からミッキーロケット粘る!

ワーザー交わすか!ミッキーロケット!ワーザー!

ノーブルマーズ3番手!ミッキーロケットォォォ!!!」

 

この日、現在のリュージの相棒であるミッキーロケットが、

初めてG1のゴールを先頭で駆け抜けた。

この勝利はリュージにとっても、十数年ぶりのG1勝利である。

 

このレースについて、のちにミッキーロケットはこう述べている。

「第4コーナーを回った時に私は先頭にいました。いつもだったら直線の途中でバテちゃうんですけど、この時ばっかりは違いました。例えるなら…そう、誰かが背中を押してくれたみたいな…そんな感じがしましたね。」

 

重賞を勝つ実力がありながらも、距離適性の幅の短さや苦手なスタートに苦しみ、なかなかG1を勝てずにいた彼女が、阪神レース場のターフの上で嬉し涙を流しながら観客に手を振っている姿を見て、リュージは若き日に共に駆け抜けた唯一無二の相棒の姿を重ね合わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

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十数年前…

 

 

ここは東京都府中市にある

『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』

通称トレセン学園。

 

この年、トレーナーになって3年目の若手であるリュージは、師匠のイワモトトレーナーが率いるチームの部室に向かっていた。

 

コンコン ガチャ

「イワモト先生、失礼します。」

「おぉ〜リュージ、来てくれたか。

すまんなぁ。色々と忙しいんに。」

「いえいえ、お気になさらず。それでご用件というのは?」

 

「実は、あるウマ娘をうちのチームに入れてほしいっちゅう依頼を受けてな。それをリュージ。お前に任せたいと思っちょる。」

「はぁ…。けど俺まだ3年目で、サブトレーナーとして先生のサポートしかやったことないんですけど、ええんですか?」

「なーにを言うちょる。もう3年目じゃろが。

それなりに仕事も覚えてきた頃じゃろうし、そろそろ独り立ちも考えないかんじゃろ。どげんな。頼まれてくれんか。」

 

リュージは急な話に戸惑いながらも、質問する。

 

「…ちなみにそのウマ娘っていうのはどんな()なんですか?」

「その()の名前は『テイエムオペラオー』っちゅうてな。

おいの幼馴染が今まで面倒を見とったんじゃが、レースに対して非凡なものがあるから、うちのチームで面倒を見たってくれいうて連絡が来たがよ。」

「テイエムというと、あの竹山会長のところの?」

「そうよ。その竹山会長からの依頼だったわけよ。」

 

竹山会長とは、テイエムの名前がついたウマ娘全員の援助をしている後援会長で、面倒を見てきたウマ娘全員から『親父さん』と慕われている人物である。

 

遠征時の移動費や勝負服の用意、レースを引退した後の就職先の斡旋など、さまざまなところでサポートを行なっており、そう言った経緯からテイエムの名を冠するウマ娘たちに対する発言力が非常に強いものがある。

 

また竹山会長は、イワモトトレーナーが少年時代を過ごした鹿児島の幼馴染であり、株式会社テイエム技術研究所の代表取締役でもある。

 

なお、竹山会長がテイエムの名のつくウマ娘たちを支援している理由は、自らの名前(竹山正次 たけやままさつぐ)のイニシャルがT.Mで、それがテイエムと読めることから、「テイエムの娘は皆、自分の娘のように見える」というのが理由らしい。

 

閑話休題。

 

「テイエムさんとこの()たちは、大体うちのチームに入ってもらっとるが、今回の()は今までの中でもピカイチらしい。かなりの大役にはなるが、お前の成長にはもってこいやと思うがよ。どげんな。やってみんか。」

 

リュージは少し考えた末、

 

「わかりました。俺にどこまでできるかわかりませんが、誠心誠意努めさせていただきます。」

「おぉ、そうか!よう言うてくれた!ほいじゃ3日後に竹山さんがオペラオーちゃん連れてトレセン学園に来る予定じゃから、その時に顔合わせちゅうことで。」

 

話がまとまり、自分のトレーナー寮の帰路に着くリュージは、内心期待と不安を抱きながら、初めての担当ウマ娘に対して思いを馳せていた。

 

「『テイエムオペラオー』か。どんなウマ娘なんやろうか…。」

 

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