リュージとオペラオー   作:アシール

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鹿児島弁って難しいですね…。
ネット辞書で調べながら書いてみましたが、あってるかどうかわかんないです…。


第1話 テイエムオペラオー登場!

リュージがイワモトトレーナーからテイエムオペラオーの指導を任されてから三日後、トレセン学園の正門の前に一台のセダンが到着した。

車から降りてきたのは、スーツを着てメガネをかけた少しだけ恰幅の良い年配の男性と、栗色の髪をしたウマ娘だった。

 

「ここがトレセン学園かい?親父さん。」

「そうだ。ここはトゥインクルシリーズなどのレースで活躍するために、全国からウマ娘の学生が集まる、全寮制の中高一貫校だ。

そして地方では異次元レベル扱いされるようなエリートたちが、しのぎを削る戦場でもある。

活躍できるウマ娘はほんの一握りしかいないし、ケガや戦績の悪さが原因で学園を去ることになった者も数多く存在する。

実際私が支援してきたウマ娘の中にも、失意の中で学園を去っていった者が両手で数えきれないくらいいる。

表面的な華やかさとは裏腹に、実際は生きウマ娘の目を抜かなければ生き残れないような厳しい世界だ。

…どうする?やっぱり入学するのはやめておくか?」

「はーっはっはっは!まさか!むしろここからボク主演の大歌劇が始まるのかと思うとワクワクするよ!なんてったってボクは「世界最強・最速にして、最高の美貌を持つ天才ウマ娘」テイエムオペラオーだからね!」

 

「…君には無用な心配だったかもしれんな。

…正直に言うと、初めて君と出会った時、私には君が光り輝いて見えた。

この()はトゥインクルシリーズの歴史に燦然たる輝きを刻むウマ娘になると、出会った時にそう確信したんだ。私が唯一心配していることがあるとすれば怪我をすることくらいだ。

だからオペラオー…。体だけは壊さないようにな。」

「はーっはっはっは!さすがは親父さん!素晴らしい慧眼だよ!ではキミに約束しよう!ボクがこのトレセン学園から、誰もみたことのないような英雄譚(エピック)を世界中に届けることを!」

 

オペラオーはそう竹山会長に啖呵を切った。

 

「期待しているよ。ただその英雄譚(エピック)やら歌劇(オペラ)やらを演じる前に、まず君を担当してくれるトレーナーのところへ行かなかければ。契約してくれるトレーナーがいなければトゥインクルシリーズに出走すらできないからね。

あぁ、トレーナーの件については話をつけてある。

まだまだ若手ながら、非常に優秀なトレーナーらしい。」

「なるほど!そうなのかい!まさに僕にピッタリじゃないか!

どんなトレーナーなのか、会うのがとても楽しみだよ!」

 

そういった話をしていると、

学園の校舎の方から緑の服を着た女性がやってきた。

 

「竹山会長!お久しぶりです!」

「これはこれは駿川さん!お久しぶりですね!お元気でしたか!」

「はい!おかげさまで!竹山会長もお元気そうで何よりです!で、そちらが…」

「あぁ、紹介します。今年から入学をさせていただきますテイエムオペラオーです。

オペラオー、こちらはトレセン学園の理事長秘書の駿川たづなさんだ。

理事長の秘書としてだけではなく、トレーナーや生徒のさまざまなサポートも担当されている。

今後も色々とたづなさんにはお世話になることもあるだろう。さぁ、ご挨拶なさい。」

「はじめまして!ボクの名前はテイエムオペラオー!人呼んで世紀末覇王と呼ばれているウマ娘さ!」

 

(なんだろうこの人、ボクたちと同じ匂いがする…)

オペラオーはほんの少し訝しみながらたづなさんに挨拶をすると、

 

「はじめまして。テイエムオペラオーさん。駿川たづなです。よろしくお願いしますね。

…早速ですが、オペラオーさんを担当するトレーナーさんのところにご案内します。

どうぞ、こちらへ。」

 

たづなさんはそう言うと、トレセン学園の応接室へ2人を案内する。

 

「こちらが応接室になります。まだ顔合わせまでお時間がありますので、お掛けになってお待ちください。」

「わかりました。」

「たづなさん!今のうちにトレセン学園の中を色々と見てきても構わないかい?」

「はい。もちろん構いませんよ。

ただ、顔合わせの時間までには戻ってくるようにしてくださいね。」

「はーい!」

 

そういって、オペラオーは応接室から出て行く。

竹山会長はたづなさんの出してくれたお茶を飲みながら、

イワモトトレーナーとリュージの到着をゆっくりと待つようである。

 

 

 

 

 

 

 

「あかん。ちょっと遅れそうや。」

 

リュージは駆け足でトレセン学園の応接室に向かっていた。

昨日夜遅くまで、オペラオーが来てからのトレーニングメニューを考えていたため、寝坊してしまったのである。

 

「しもたなぁ。完っ璧にやらかしたわ。顔合わせの10分前くらいには応接室についとるはずやったのに。まぁ、時間にはぎりぎり間に合いそうやしええか。」

 

そういいながらトレセン学園の中央広場に差し掛かると、

そこには独自の行動をとっているウマ娘が…いやもう正直に言おう。とびっきりに変なことやってるウマ娘がいた。

 

「ーーー今宵幕が開けるのは、このボクテイエムオペラオーの輝かしきヴィクトリーロード。」

「この演目に名前をつけるならば、『テイエムオペラオー栄冠へのプレリュード』と言ったところかな。」

「フッ…一体どれほど美しく、感動的な物語になるのかーーー想像しただけで、頭の中に天使たちのファンファーレが鳴り響いてくるようだよ!」

「後は観客を待つだけなんだがーーーうーん。なかなか人が通らないな…」

 

一風変わったウマ娘は、誰もいない中央広場で独り語りをしている。

 

(いや、あれ何してんねん。関わらんようにしよ)

 

そんなことをリュージが考えながら通り過ぎようとすると、

 

「ーーーおや?」

 

彼女と目が合ってしまった…。

 

「おおっ!!よく来てくれたね、そこの君っ!!」

(え?俺のことか?)

「ふふっ、目的はわかっているよ。ボクのオペラを鑑賞しに来たんだろう?」

(いやいや、目的も何も…全然ちゃいますけど?)

「なんといっても、脚本ボク!演出ボク!主演ボク!豪華キャストで送る、史上最高の超大作オペラだからね。」

(いや全部自分やんけ。)

「さあさあ、そこのベンチに腰をかけてくれたまえ。」

「「いや俺は今から行かなあかんところがあr」コホン、では始めるよーーー」

 

「ち、ちょい待ってくれ!」

 

「ーーーん、なんだい?」

「いや…いろいろと聞きたいことはあんねんけど…オペラってどう言うこっちゃねん…?」

 

「フッ…簡単な質問だね。いいかい、ボクはこれからボクのことを担当するトレーナーさんと会って、それからメイクデビュー戦に挑むことになる。その際は学園全体を巻き込む一大イベントが起こることだろう。」

「だからボクはその前夜祭としてオペラを上演し、トゥインクルシリーズをさらに盛り上げようと考えているわけさ!」

 

リュージ、唖然。

 

「…どっからツッコんでいいんかもわからへんのやけど、まずトレーナーがちゃんと決まってへん段階で前夜祭開くっちゅうんも意味わからんし、あとやるにしても前夜祭っちゅもんは前日にやるもんやから、メイクデビュー戦が始まる前の日にやるべきやろ。」

「おやおや、おかしなことを言うね。前夜祭が前日でなければダメだと誰が決めたというんだい?」

「あとそもそも今は、夜ですらないからな。ガッツリ午前中やからな。」

「はっはっはっは!前夜祭が夜じゃなければダメだと誰が決めたというんだい?」

「ほななんで前夜祭っちゅう言葉を使こてんねん!」

「やれやれ、常識に縛られるなんて、全くもってナンセンスなことだ。なぜならボクは、王者の中の王者!つまり”世紀末覇王”だからさっ!!

”覇王”にとって、前夜祭が前日だの夜だの、それは問題にも満たない……ふふっ、わかったかい?」

「…すまん、ぜんっぜんわからへんわ。」

 

「ふむ、ボクの思想についてくるにはまだ少し早かったみたいだね。まあいい、とにかく君は記念すべき1人目の観客だ。ボクの素晴らしい演技を、その目に焼き付けてくれーーーって、ん?」

「…ちょっと待ちたまえ。君が身につけているのはもしや、トレーニングバッジではないかい?」

「せやけど…」

 

「ふふっ…はははっ…はっはっは!はーっはっはっはっはっはぁ!」

「それはいい!気に入ったよ!キミ、ボクのトレーナーにならないかい?」

 

リュージ、絶句。

 

「はぁ!?ちょっと待ってくれ!自分、トレーナーがもう決まってるんちゃうんかい!?」

「ん?あぁ、心配は無用さ。ボクのことを担当する予定だったトレーナーには、

顔合わせの時に、丁重にお断りをしておくよ。」

「そういうことを言うてるわけやなくてやな…」

「ボクはキミを一目見た時に気づいたんだ!キミこそボクのトレーナーになるべき存在だと!

この出会いはまさに運命!ボクのオペラに魅せられた君ならば、トレーナーになる資格がある!」

「恥ずかしがらずにボクの手を取ってくれ!さあさあ!」

 

「そないなこと急に言われてもやな…無理なもんは無理やねん。」

「おや、ボクのトレーナーになるなんて畏れ多いかい?けれど君の気持ちはよくわかるよ。

ボク自身でさえ、鏡に映った自分を見ると、動悸が止まらないほどだからね。」

「いや、そう言うわけやなくて…俺実はもう既に担当が決まってもうてんねん。」

「な、なんだってぇ!?それは本当かい!?」

「おう。…てな訳で申し訳ないんやけど!サイナラ〜!」

「あっ!ちょっときみぃ!待ちたまえ!」

 

リュージは逃げ出した!

 

 

 

リュージは中央広場にいたとびっきり変なウマ娘からほうほうの(てい)で逃げ出して、

時間ギリギリで応接室の前にたどり着いた。

すでにイワモトトレーナーは到着している。

 

「すんません!遅れました!」

「問題なか。時間ぴったいじゃ。ほいじゃ入るが。」

 

そう言って2人は応接室に入ると、

竹山会長は笑顔を浮かべながら椅子から立ち上がった。

 

「おぉー!いっつぁん!さしかぶい(久しぶり)じゃなあ!元気にしちょったか?」

「まっさん、さしかぶいじゃね。元気しちょっとよ。おまんさぁも元気そうでないよりじゃ。」

 

竹山会長とイワモトトレーナーは地元の鹿児島弁で挨拶を交わす。

ちなみにいっつぁんはイワモトトレーナーの、まっさんは竹山会長のあだ名である。

 

「で、いっつぁん。そこんにせ(若者)が例のトレーナーけ?」

「そうじゃ。紹介すっど。オペラオーちゃんのトレーナを担当させようとおもっちょるリュージじゃ。」

 

イワモトトレーナーからの紹介を受け、リュージは竹山会長に自己紹介をする。

 

「初めまして。今回テイエムオペラオーさんのトレーナーを担当することになりました、リュージです。」

「あぁ。ゴホン…初めまして。竹山です。これからオペラオーのことをよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。ところで、オペラオーさんはどちらに?」

 

すると竹山会長は少しはにかみながら、

 

「実は少し学園を見てまわると言って、部屋から出て行ってしまいましてな…。」

「あぁ、なるほど。承知しました。ではオペラオーさんが帰ってくるまで待ちましょう。」

「いやはや、お待たせすることになってしまい申し訳ない。もうすぐ帰ってくるとは思うのですが。」

 

そうして3人は応接室にある椅子に腰掛けながら、話を続ける。

 

「ちなみにオペラオーさんは、竹山会長から見てどんなウマ娘ですか?」

「そうですね…。ポテンシャルとしては現時点でかなりのものを持っているんですが、その…なんというか…。個性が強いというべきか、キャラクターが立っているというべきか。

まあ、かなりの変わり者でしてな。」

「はぁ、なるほど。変わり者ですか…(変わり者?なんか嫌な予感が…)」

 

そんな話をしていると、唐突に扉が開いた。

 

「すまない。少し遅れてしまったかな。ってあぁ!キミはさっきの!」

「えぇぇぇ!?さっきの()やんけ!何でここにおんねん?…まさか君がテイエムオペラオーなんか!?」

 

竹山会長は少し驚いたように、

「おや、リュージトレーナー。彼女と会ったことが?」

とリュージに聞く。

 

リュージはテンパりながら、

「はい。実はここに向かっている途中の中央広場を通っているときに、

彼女が1人オペラを演じているところに出くわしまして。

正直に申し上げて変わった娘だなぁとは思っていたのですが、

まさか彼女がテイエムオペラオーさんだとは…。」

 

するとオペラオーが、

「いやぁ!まさかキミが本当にボクのトレーナーだったとは!

やはりキミはボクのトレーナーになる運命にあったんだね!」

と満面の笑み。

 

そこにイワモトトレーナーが、

「…なんかようわからんが、リュージとも相性良さそうじゃし、問題なかんじゃらせんか。」

竹山会長も、

「じゃっどな。オペラオーもリュージ君に懐いちょっごたっし。問題なかじゃろう。」

 

2人にそう言われて膝からガックリきているリュージ。

「マジか…ほんまに大丈夫なんか…?」

 

と、いうわけで。

 

「ハーッハッハッハ!これからよろしく頼むよ!トレーナー君!」

「…まぁ、なんとかするしかないか。こちらこそよろしく頼むわ。オペラオー。」

 

リュージとオペラオー。これが二人の運命の出会いだった。

ここから2人のトゥインクルシリーズが始まる。

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