マージナル・アーカイブス - 子供使い、先生になる -   作:オーバードライヴ

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いろいろと遅くなりましたが更新です。その分ちょっと長めだから許して。




00011010_信頼という爆弾

「やっぱりこのお店がよくないのよ! 私たちはあの子達の友達なんかじゃないし! アウトローらしく、ワイルドに仕事に来ているだけなのよ! なのに、あったかくて親切で! お腹いっぱい食べられて! 和気あいあいとしたこのほんわかとした雰囲気! 私たちには決定的に合ってないわよ! ここにいるとみんな仲良しになっちゃう気がするのよ!」

 

 私がそんなことを叫んだところで状況は変わらない。ポスティング作戦開始の前の腹ごしらえで店に入ったら大将にすごくサービスされてしまい、ありがたく頂戴したのだが、今買い出しに出ているというバイトの名前がセリカだと知った時点でとてつもなくヤバイ橋を渡っていることに気が付いた。

 

 そんな嘆きも大将は優しい目で見て裏に引っ込んでいくし、ムツキも『それの何が問題?』と取り付く島もない返答。

 

「便利屋68は無慈悲でクールに仕事を完遂させることを目標としているのよ。お友達気分なんて私たちには不要なの! わかる!? 仕事前にその理念がガタガタになっちゃ締まるもんも締まらないわよっ!」

「考えすぎじゃない? それに、セリカちゃんに会って揺さぶりかけるのも一つの手だと思うし、まずは仲良くなるってのもいいとおもうんだけどなぁ」

 

 ムツキはわかってない。本当にアウトローの何たるかをわかっていない。

 

「そんなのめちゃくちゃよ! いい? 私たちは冷酷で、非情で、無慈悲じゃなきゃいけないの! こういうほっこりする店は必要ないの!」

「アル様、わかりました!」

 

 ハルカがものすごくキラキラとした目でこちらを見てくる。

 

 その手には起爆装置。すでに安全装置としてのピンが引き抜かれている。

 

「ハルカ、ようやくアル様のお役に立てそうです!」

「あ!!!」

「ちょ、ハルカまっ……」

「……へっ?」

 

 カチカチ、と高速で二回スイッチが鳴る。同時にバックヤードの方から強烈な爆風が吹いてきた。こういう時は抗わず頭を庇うことだ。首や頭にダメージが入るとヘイローに響く。目をつぶって何度か転がると砂の味と血の味が一緒にした。さらば醤油野菜MAXラーメン。あなたのことは二度と忘れないわ。もう顔向けなんてできないけど。

 

「ハルカ……いつの間にC4を……」

 

 カヨコがそういうのが聞こえる。目を開けたくない。目を開けたら奇跡的にラーメン屋は無傷とかないかしら。希望にすがりつつゆっくり瞼を開ける。

 

 そんなことなかった。見るも無残にがれきが飛び散っている。

 

 おそらくだが、火薬の量が多すぎたせいで可燃性の軽いものがかなり遠くまで飛び散ったのもあり、大きな火はまだ出ていない。それでも厨房のあたりでくすぶっていた火を消しに大将が走っていた。どうやら大将はゴミ出しか何かで厨房から離れたタイミングだったらしい。とりあえずよかった。これで大将がスープを引っかぶって大やけどとか言ったら目も当てられない。

 

 満足気なハルカをとりあえず回収すると同時に爆発音で飛んで戻ってきたらしいエプロン姿の黒見セリカが目を三角にして文字通り突っ込んでくる。突撃兵かお前は。

 

「何してくれてんのアンタら!?」

 

 槓桿は既に引いてあったのだろう。すぐに相手が撃ってくる。

 

「カヨコ! ムツキを連れていったん離脱! パターンBでバックアップ!」

「無茶しないでよ」

「わかってるわよ」

 

 黒見セリカはとりあえず弾丸をばらまいてきている。判断は間違ってない。昨日ブラックマーケットで顔を合わせてしまった後なのもなおのことマズい。この状況で、ヴァルキューレのチラシポスティング大作戦とかしにきたとか言っても信じられるハズもない。

 

(とはいえ、セリカだけであれば一旦マシなのでは?)

 

 核爆弾二人組(ホシノとシロコ)がいない状況は正直チャンスではあるが、あぁもう間に合わない。

 

 恐ろしい速度でロードバイクが突っ込んでくる。

 

「見つけました……砂狼シロコ! ここで死んでください……!」

 

 いきなりハッスルしたハルカが飛び出して愛銃を発砲しようとしていたが、それより先にロボット戦車が行く手をふさいだ。数は2機。音がない上に到着が早すぎる。おそらく電動なんだろう、時速100キロ以上で突っ込んできて狙った位置で止まるコントロール技術は恐ろしい。あれどこかで買えないかしら。

 

「無茶しちゃだめよ! わかってるわね!?」

「アル様の応援があれば百人力です……っ!」

 

 だめだ。全然わかってない。

 

 カヨコとムツキのバックアップ態勢が整うまでこちらも逃げられない。時間を稼ぐしかないが、ハルカがもっとヒートアップするのが先か、増援がくるのが先か。なんとかして交渉に持ち込みたいが、セリカは頭に血が上ったまま、ロボット戦車から補給を受けているし、シロコは冷静にポイントしたまま動いていない。交渉どころではない。

 

 切実に交渉がしたい。少なくとも柴関ラーメンを爆破するつもりはなかったことは弁解したいが、ハルカがシロコに突っ込んでしまってどうしようもない。このままではハルカがひどいコトになる。

 

「ちぃっ!」

 

 もう撃つしかない。いくら劣勢でも社員(なかま)を見捨てるなんぞ言語道断。信頼には信頼で応えるのがモットーなら、親愛を寄せてくれているハルカを見捨てるのは信条を捨てることだ。それぐらいなら風紀委員の脚でも舐めた方が数億倍マシだ。

 

 ロボット戦車のライトかセンサーか分からないが撃つ。そうだ。ここにハルカよりもヤバい真性のアウトローがいるぞ。

 

「アル社長っ!?」

「下がって!」

 

 そう言うが早いか私も伏せる。ほぼ野生の勘だが真横から恐ろしい数の7.62ミリ弾の雨が髪を削って抜けていく。十六夜ノノミが既にサイドに回り込んでいる。嘘でしょ。

 

 校舎からはここはかなりの距離がある。爆発を確認してすぐにアビドス高校から飛んできたとしても、ノノミはあのミニガンを抱えて時速100キロ以上で疾走してきたことになるが、さすがにそんなことはあるまい。

 

(なんでこう相手の展開が早いのよ!)

 

 そのタイミングで頭上でちらりとナニカが光った。鏡を使ったカヨコからの合図。

 

「いっくよー!」

 

 間髪おかずにムツキがフラグメンテーションをシロコに向かって投げ込んだ。声に出したのはハイになっていて周りが見えてないハルカへの合図だが、それが仇になった。シロコがそれに即応して手りゅう弾を空に向かって蹴り返した。嘘でしょ。なんであれで対応できるの。

 

 蹴り上げた時の勢いを止めずに回転運動に変えたシロコがハルカに飛びかかる。とっさに逃げようとしたハルカの肩にストックを引っかけ地面に叩き付けられるのが見える。上手いことスリングを首にかけられている。あれでは無理に距離を取ることができず、ショットガンをシロコに向ける空間を確保できない。セリカなら狙えるだろうが、それより早く喉仏にストックが食い込む。マズい、ハルカが完全に詰んだ。聞いてない。アビドスが近接格闘(C Q C)まで強いなんて聞いてないわよ。

 

 ハルカのショットガンが地面を滑った。シロコが蹴り飛ばしたのだろう。お願いだからこれ以上極端な方向にハルカが走らないことを本気で祈る。さすがにC4に雷管を差したまま携帯するような指導はしていないので、このまま自爆とかはハルカもできないはずだ。

 

 ノノミは弾倉の交換に入っただろうが、ロボット戦車の照準が私に向いている。セリカはムツキやカヨコを探して雑居ビルの方に銃身を向けている。彼女を横から狙う分には無防備だが、私が指一つ動かそうもんならハイサイクルのマシンガンを喰らうことになる。

 

 カヨコとムツキは動けるが、同じ場所からの攻撃は警戒されている。配置転換し、シロコを吹き飛ばしてハルカをフリーにし撤退するのが武力をつかって切り抜けるなら唯一の活路だ。

 

 だめだ。リスクが高すぎる。私一人ならともかく、ハルカが背負うリスクが大きすぎる。相手はここまできてとどめを刺してこない。顔を真っ赤にしているセリカも黙っている。バイト先を爆破され冷静ではない彼女すら黙らせる誰かが、確かにそこにいる。

 

 つまり、相手が選んだ手段は、私たちの殲滅ではない。

 

 この手口は、ごく最近見た覚えがある。

 

《初めまして……というよりは、昨日ぶりだね、便利屋68のみなさん》

 

 ロボット戦車が喋った。……いや、おそらくスピーカー。ハッとしてシロコのさらに奥を見る。遠くに同型のロボットが見える。その向こうには昨日船で見た大人が立っていた。スーツ姿の、大人の、男。

 

「メフィストフェレス……」

 

 やはりあれは、悪魔に違いない。

 

 

 


 

 

 

 柴関が吹き飛んだという通報から30秒ちょっと。キリノと走って改札に向かう。IC乗車券は便利だ。精算とかを全部後回しにできる。

 

「やぁ、大変なことになってきたね」

 

 指揮官用の管制用ゴーグルをつけつつ改札をくぐるとアヤネが出迎えた。

 

「セリカちゃんはバイト中だった関係で戦術総合表示端末(T I T T Y)を携帯していない状況です。予備をシロコ先輩に渡しました。ホシノ先輩にはまだ連絡が付かないですが……」

「うん、とりあえずホシノへの連絡は継続して頼む」

 

 眼鏡型のイルミネーターをつけたキリノをチラリと見てからアヤネが情報を連携してくる。TITTYをつけているので僕の護衛だとわかったのだろう。TITTYがオンラインなのは目の前のアヤネに加えてノノミとシロコ、あとは隣のキリノだけだ。

 

「ロジコマを出す。アヤネ、アビドス高校は今無人だね?」

「はい。無人です」

「ということは、迫撃砲を撃ち込まれたところで人的被害はないわけだ」

 

 駅を出ると白い煙が見えた。西方向、煙が南に抜けているということは風は北風。

 

「人的被害は……ありませんけど……」

「お墓に校舎は入らないよ」

 

 アビドスで待機させていたロジコマを指揮階梯に組み込む。弾薬とバッテリーの情報連携がある。カーゴ部分にはアビドス生徒4人分の追加弾薬が満載されている。走る防弾弾薬庫のコンセプト通り動いてくれそうだ。ロジコマがいなくなったことでアビドスの校舎そのものは完全にノーガードだ。まぁこの隙に破壊してくるのであれば、しっかりと修繕費は請求できるはずだから、まずは良しとしよう。

 

 地図を表示。シロコのアイコンが時速55キロで移動している。なるほど、自転車か。左だけ素早く二回瞬きして全体無線をコール。通知音に続けて口を開く。

 

「アラタだ。指揮を開始する。シロコ、突出しすぎるな。ノノミ、次の角を西に入れ、相手の背後を取るぞ」

 

 僕たちも軽くジョギングの速度で動きつつ指示を出していく。

 

「ノノミをリーダーにシロコ、セリカでSA班だ。シロコとノノミには目標地点を仮置きしたから移動を継続してくれ。ロジコマをSL班とする。アヤネと応援に来てくれているキリノでSC班を構成、僕の護衛と指揮補佐を頼む。アロナ、柴関ラーメン周辺の監視カメラ映像を全体共有で出せるかい」

 

 アロナがラグもなく画像を表示させた。柴関の店は平屋だが、きれいに屋根まで吹き飛んでいる。けれど覚悟していたのと比べても火災は思ったよりひどくない。柴関ラーメンの大将が消火器で火を消し止めようとしているのが見える。大将の傍でバトルライフルを構えるセリカが見える。ピンポイントで構えているところを見るに誰かを警戒しているように見える。画角の関係で何を狙っているのかは見えない。取り急ぎ最速でロジコマを突っ込ませるように手配。無人機は被害を考えずに偵察に出せるのがいい。

 

「セリカも大将も無事だ。ほかにお客さんがいないといいんだけど……」

 

 そういいつつ、過去に画像を巻き戻し、爆発の瞬間を見る。オレンジ色の閃光はC4爆薬特有の色だ。つまり相手は迫撃砲や対地ミサイルを持ってないか使えない。仕方なく炸薬を柴関に仕掛けた形だろうか。

 

《現場が見えた。……犯人も見えた》

「犯人?」

 

 シロコの視界映像を呼び出す。確かにがれきの脇で呆然としている様子の陸八魔アルが見えた。何をやってるんだろう。がれきの影で恍惚とした表情をしているのは、情報が正しければおそらく伊草ハルカ。ハルカはその表情をしつつもセリカに銃口を向けている。なんだこれ。

 

「あぁうん。便利屋68だね」

 

 本来ならあと二人いるはずだが姿が見えない。本当に何をやっているのだろう。セリカが何かを口にしてるのが見えるが、なんて言っているのかはここからではわからない。そこにシロコが突っ込んでいく。

 

「様子がおかしい。まだ撃つな。ノノミ、ポイントを変更する。P13N1へ」

 

 ノノミの攻撃ポイントを逃走経路を考えてかなり手前に配置していたのだが、まだ便利屋が現場にいるというのがよくわからない。罠か、対話を求めているか。

 

《見つけました……砂狼シロコ! ここで死んでください……》

「そのまま下がれ。ロジコマが盾になる」

 

 相手がショットガンを構えるより早く、ロジコマが射線に割り込んだ。最高速度時速120キロは伊達じゃない。ギリギリだが間に合った。もう一機のロジコマはセリカと大将を庇う位置に出す。

 

「シロコ、セリカにロジコマのカーゴトランクに武装が入ってること伝えられるか? あとTITTYをつけさせて」

《ん》

 

 現地にロジコマが到着したことで、情報の解像度が一気に上がる。攻撃してくる対象に番号を振り、脅威判定を掛けていく。

 

 そのタイミングでD.U.から回収したばかりのロジコマが僕たちに合流した。これで盾にはなるが、この子達はヴァルキューレから直行した都合上、弾薬の補給をしていない。盾としては優秀でも攻撃手段がないから移動できる遮蔽物以外の役割は果たせない。それでも十分といえば十分だけど。1機はノノミの盾として別ルートで動かす。

 

 システムによってB1とマークされたハルカはシロコに向かってショットガンをためらうことなく撃ってくる。火力としては脅威だが、ロジコマの装甲を抜くほどではない。そろそろ弾が切れるはず。ショットガンの再装填の間にどこまで押し込めるか。

 

 セリカのアイコンがポップアップ。予備の端末をシロコが投げ渡したらしい。シューティンググラスを付けたセリカ、案外似合うじゃないか。

 

「シロコ、スタンバイ、攻撃対象はB1。セリカ、B1に構わずB2への射撃を想定、いったん射撃中止。合図まで待て」

 

 ハルカが一気に飛び込んでくる。弾切れになった時に相手の懐に飛び込もうとする判断そのものは悪くない。がれきだらけだから安定した遮蔽物はないうえに、注目を集めておいて隠れると後続のメンバーに照準が向く。

 

 なるほど、ハルカが守りたいのは後ろのアル社長か。

 

 ハルカのカバーでアルが発砲。かなり精度がいい。スナイパーとして優秀なんだろう。初めて見るはずのロジコマのライトを正確に射貫いてくる。センサーごと潰して無力化するつもりだろう。カンも働くタイプだな。便利屋ということだから、これが落ち着いたら戦力として雇ってみるか。チナツに嫌われそうだけど。

 

《位置につきました☆》

「オーケーノノミ。B2が見えるかい?」

 

 指示出しはあくまで記号で。B2にナンバリングされた陸八魔アルを叩いて包囲されていることを正確に伝えたいのだが、陸八魔アルはこれをちゃんと読んでくれるか。無謀な突撃とかせずに降伏してくれよ。

 

《はーい。B2確認できましたー》

「横なぎに弾帯一つ空にしたらP14D3まで後退。そこでロジコマと合流して再装填」

 

 ノノミが射撃を始めると慌ててアルが頭を下げた。同時にシロコが前に飛び出す。ハルカの視線がアルの方を向いたせいで、色々と疎かになったタイミングだった。その迷いが、命取りになるんだろう。

 

《いっくよー!》

「!?」

 

 シロコのマイクが知らない誰かの声を捉えた。同時にハルカとシロコの間に円筒形の何かが落ちてくる。今度の反応もシロコが早かった。それを地面に落ちる前に下からすくうように蹴り上げる。高く飛んだそれがまるで花火のように上空ではじけた。破片手りゅう弾(フラグメンテーション)を蹴るなんてと思うが危険域外まで蹴り上げられる筋力があるなら話は別だろう。

 

「シロコ、そのままB1を拘束しろ。セリカ、P13N3のビルの3階窓際を警戒。そこにもう一人いるはずだ」

 

 シロコは引き下がろうとするハルカを銃でうまく引き倒し、彼女の首にスリングを引っかけていた。あんなことができるのか。すごいけど次からあれは禁じ手だな。急激に首が締まるとキヴォトス人でも死にかねないんじゃないだろうか。試したことがないからわからないし、試すつもりもないけれど、一応注意点にリストアップしておく。

 

 だが、相手の攻撃のおかげでB3の場所も割れた。向かいのビルの3階の窓際だ。銀色にも見える髪に黒いドレス調の服装。浅黄ムツキは彼女のことだろう。これを俯瞰してコントロールしてるのが、まだ見つからない鬼方カヨコがB4といったところか。

 

「今のところは情報的な攪乱もなし、か。実行犯だけを煽ってバックアップが追い付いてない」

 

 僕はマイクを切って横をジョギングしているアヤネにそう聞くと、アヤネは首を横に振った。

 

「だとしてもなんで柴関が……」

「脅しだろうね。ただ、ハラスメント攻撃にしては相手の動きが妙だけど」

 

 ハルカを地面に押さえつけ、ショットガンを蹴り飛ばして武装解除したシロコがそのまま動きを止める。

 

「シロコはそのままB1を拘束。B2の警戒はロジコマに任せ、セリカは周囲警戒」

《了解っ! あと二人いるはずよね!?》

「そうだ。あと二人いる。落ち着いて、セリカ。怒って判断を間違えると後でひどいことになるぞ」

 

 セリカの怒りで弾んだ声にくぎを刺す。

 

《僕たちもあと15秒で到着する。狙ってくるなら僕が合流したタイミングの可能性が高い。警戒を厳に》

 

 本来なら僕が突っ込む必要もないのだが、相手の動きがあまりに読めない。だが、こうなった背景そのものは読めてきた。

 

 おそらくだが、こちらを孤立させるためにも関係各所を爆破して回ろうとしたが、予算か人員の関係でミサイルを使えなかったため、炸薬を用いた爆破をしようとしたのだろう。しかし爆破前に意図が大将に露呈し退避が完了する前に爆破するしかなかった。要は計画的に攻撃をしたのではなく、突発的に動かざるを得なくなったのだろう。

 

 カイザーグループをつついた甲斐があったといえばそうなのだが、あまり行儀の良くない相手だけが残ってしまった。下請けの便利屋68に情報をあまり流さずにとりあえず脅した形だろう。相手はカタカタヘルメット団の時と同じ失敗をしている。カイザーグループの指揮官はあまり要領が良くないらしいが、ちゃんと対策をしてほしい。動きが読みにくいのは僕が困る。

 

 そう考えると、ロジコマを1機潰された廃工場での戦闘の指揮官はカイザーグループ側ではなく、ヘルメット団のラブが言っていた『資金提供者(パトロン)』側の人員なんだろう。僕がラブにした『依頼人は他にもいたんじゃないのか』という質問を彼女は否定しなかった。

 

 あの指揮官なら話が通じそうだったのに、残念な方が残ってしまった。仕事がやりづらい。

 

 目の前に崩壊した柴関のがれきが見えてきた。下請けの皆さんにはどんどんゲームを降りてもらうか味方になってもらって、可能な限り相手の牙を抜いていくのが優先だ。少なくともこの状況で社長の陸八魔アルは反撃をやめて素直に伏せている。

 

「アロナ、周辺の熱情報のスキャンを継続。ロジコマのスピーカーをオン。僕が交渉する」

 

 そう言って前に出るとアヤネとキリノが慌てて拳銃を構えた。いや、脅さなくてもいいと思うんだけど。止めるまでもないと思うのでいったん継続。

 

「初めまして……というよりは、昨日ぶりだね、便利屋68のみなさん」

 

 とりあえず、相手と目が合った。うんうん。悪くない反応だ。

 

「銃を突きつけあいながらの話し合いはきらいです、とりあえずお互い武装解除といきませんか」

《……交渉、ってわけね》

「えぇ、きっと互いに良い条件を出せる」

《こっちに選択肢がないじゃないの。……わか――――――》

 

 相手の返事を聞く前にアロナがアラートを発報。ほぼ反射でシロコやセリカが伏せる。アヤネの反応が遅れたがキリノが脚を払って伏せさせた。僕も伏せる。

 

 迫撃砲の砲弾が隣のビルに着弾するまでは、いい交渉になると思ったんだけどな。

 

 全員バイタルが確認できたからまずはよし。爆薬だけじゃなくて迫撃砲もちゃんと持ってたのか。油断はよくない。うん。僕ももっと冷静にならないといけない。




どんどん現場に人が増えていく。描写しきれるのか、頑張れ、作者!

次回 僕のミスだった

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