マージナル・アーカイブス - 子供使い、先生になる -   作:オーバードライヴ

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00100100_足を舐める

「よし、警備をロジコマに任せてシロコはキリノと状況証拠を固めてくれ。証拠固めの指揮はフブキに任せてあるからそちらの指示に従うように。ロジコマは僕の指揮下に入れるから、アヤネは少しでも体を休めてくれ。明日は前線指揮を頼むことになる。負荷が高いだろうから、眠れなくても横になって目を瞑っておくといい」

 

 ヘリの中から指示を出している間に、もうゲヘナの上空に差し掛かっていた。

 

「シロコもだ。キリノのサポートは午前中までにして、午後になったら休憩に入ってくれ。君とセリカが攻撃の核になる。無理にでも休むんだ。セリカも、指揮車両でアビドスに戻ったら休みなさい。戦力の関係で君たちを中核に据えるしかないんだ。体と頭を少しでも休めてフラットにいこう」

 

 ゲヘナのヘリポートは風紀委員会の建物にあるらしいと聞いていたが、山の中にタワーマンションみたいな高層ビルが出てきて驚く。進入許可はとってあるとのことで、そのままヘリポートに降りてもらい、マキと外に出ることにした。今日ばらまくためのTITTYをまとめたアタッシュケースを手にヘリパッドに降り立つ。

 

「マキ、何の問題もないとは思うけど、勝手に発砲しないように」

「あたしの護衛だと不安?」

「というより、そのペイント落ちにくそうだから」

「ちぇー」

 

 マキはこういうところで子供っぽい。子供っぽいこと自体はいいし年相応に見えるのだが、いたずらっ子気質なのは少し気になる。特に今からいろいろと交渉事が続くのだ。

 

「先生!」

 

 ヘリパッドの脇からチナツの顔が見えた。軽く手をあげて答え、ダウンウォッシュの中を小走りでそちらにむかう。

 

「いきなり押しかけてすまない。チナツも、イオリも」

「えっと、いきなりだったのでご用件すら聞けてないのですが……いったい何を……」

「至急でヒナと面会したい、もしくはマコト議長でもいい」

 

 ここで万魔殿の名前が出たことに眉をひそめた風紀委員二人組。先に口を開いたのはイオリだった。

 

「委員長にそんな簡単に会えるわけないだろう。そうだな、土下座して私の足を舐め昨日の無礼を認めたら取り次いでやらんこともないが―――――――――」

「イオリ!」

 

 チナツが割り込むが、その様子に笑う。

 

 なんだ。その程度か。

 

「ひぇっ!?」

 

 僕が膝をついて舌を出しただけで向こうから飛びのく。

 

「ななななななな、なん、なんっ……!?」

「どうしたんだい? 土下座をして足を舐め、昨日の騒動について認めたら取り次いでくれるんだろう? それくらい安いもんだ」

「大人としてのプライドとか、人としての迷いとかないのかっ!?」

「僕が迷う間に子どもが死んでいくんだ。そんなものはとっくに売り払ったよ」

 

 チナツの喉がひゅっ、と変な音を立てた。いけないいけない。

 

「もう一度お願いしたい。ヒナかマコトに取り次いでくれ」

「わ、わかりました! すぐに手配を―――わぷっ」

 

 チナツが回れ右をして走り出そうとしたタイミングで誰かにぶつかった。

 

「それには及ばない」

 

 ぶつかったのは軍服っぽい恰好の銀髪の女性。整った顔立ちには濃いグレーの制帽が乗っている。その横で額に手を当てて苦しそうな表情をしているのはヒナだ。どうやら一部始終を見られていたらしい。後ろに赤い髪の女性がいるが。あの子は多分初対面だ。制服からして風紀委員会のメンバーではないらしい。

 

「ひ、ヒナ委員長?」

「連邦生徒会のヘリが高速で突っ込んでくるから何かと思って飛んできたの……万魔殿との定例会議中だったのだけどね」

 

 イオリが青くなっている。なるほど、上司が出てこれないと読んでたな。

 

「風紀委員の品位を疑わざるを得ない状況だが、客人の前だ。弾劾はあとにしよう。ゲヘナ学園へようこそ。万魔殿議長、羽沼マコトだ」

「連邦捜査部顧問兼アビドス高校廃校対策委員会顧問のアラタ・リョータです。昨日はアビドスの代表権移行決議への協力感謝します」

 

 マコトが手を差し出してくるので素直に握手に応じる。ヒナがものすごく嫌そうな顔をしているし、後ろの赤い髪の子もどこか面倒くさそうな表情をしている。

 

「なに、こっちの風紀委員会の不手際だから気にしないでほしい。……それで、いきなりのご訪問だが、どういった用件で」

「それが、アビドスの関係でカイザーPMCと真正面から戦争を仕掛けざるを得ない状況に追い込まれてしまってね。できればそちらの風紀委員会の戦力を借りられないかと」

 

 そう言ってヒナを見ると驚いた顔をする。

 

「……先生なら、私たちの手を借りなくても負けなさそうな気がするけど」

「買いかぶりすぎだよ。相手が相手だ。……小鳥遊ホシノが敵の手に落ちた」

 

 それを言うとヒナの目が見開かれる。

 

「連邦捜査部はこれを未成年者略取誘拐と断定。現在令状を請求中だ。令状が発行され次第カイザーPMCの拠点を強襲、これを撃滅し、小鳥遊ホシノを奪還する計画を立てている。1個小隊でいいから戦力を貸してほしい」

「……私たちの兵力を使って何をする気?」

「近傍に敵の補給拠点がある。襲撃後、そこからの応援が想定される。これの足止めを頼みたい」

 

 目線を目の前のマコトに戻す。

 

「対策委員会書記の奥空から、この件を飲んでくれれば、公式での損害請求を取り下げる用意があるとの伝言を預かっている。どうだろう。1小隊預けてくれないか」

「それには及ばない。万魔殿から車両部隊を……」

「だめです」

 

 赤い髪の子が割り込んだ。ため息をつくその子に視線が集まる。

 

「アビドス砂漠に戦車を送り込むには時間がないです。……あぁ失礼先生。自己紹介がまだでした。万魔殿の議員、棗イロハです」

「ありがとう、イロハ。車両は厳しいということだけど。人員を割くこと自体は問題ないと捉えていいのかな?」

「えぇ。ただ、昨日の今日でうちの風紀委員を信用してくださるのなら、ですが」

 

 ヒナ、ものすごく大変な立場なんだろう。いつかどこかでお菓子でも送っておきたいところだ。

 

「そこについては問題ない。少なくともシャーレはエデン条約という課題のある中での最善を探す間の行き違い、と捉えている」

 

 マコトは考え込む様子を見せる。

 

「先生はこの後?」

「一応トリニティにも同様の要請をかけにいくつもりだ。どこまで乗ってくれるかはわからないけれど」

「キッキッキ……面白い先生だ。時間があればじっくりゲヘナを案内したいところだが……」

 

 そう言ったマコトに微笑みかける。さっきの考え込む様子はフェイクだな。結構腹芸の通じる子だ。

 

「今日は遠慮しましょう。ただ、時間を合わせてまた来ますよ」

「空崎委員長、可能な限り答えてあげるように。それでは先に失礼する」

 

 マコトがマントを翻して去っていく。イロハと名乗った赤髪の子がつかつかと寄ってくる。

 

「議長があそこまで機嫌がいいのも珍しいです。シャーレに飽きたらぜひゲヘナに。対マコト議長対応要員として好待遇を約束しますよ」

「そりゃどうも」

 

 イロハも去っていくのを見て、ヒナがため息をついた。

 

「イオリ……面倒を増やさないで」

「す、すいません、でした……」

「うん。イオリは自分がされたら困ることを要求するのはやめた方がいい。話が通じない相手のこともあるからね」

 

 そう言うと睨まれた。マキにも睨まれるのは納得がいかない。

 

「先生も、あんまりイオリをからかわないで」

「あぁ、からかったつもりはないんだが。うん、気を付けよう」

「……で、私たちは何をすればいい」

 

 これからの動きをヒナに説明。アコとイオリも出すということで一瞬大丈夫かと思ったが、ヒナが直接現場で陣頭指揮を執るという。派遣人員は9名、事故を防ぐためにも同一箇所でトリニティの戦力を運用しないことで話がついた。うん。その規模なら万が一の時も撤退も早い。悪くない判断だ。ヒナはやはり地頭がいい。

 

「じゃあ頼んだよ」

 

 ヘリでそうそうに離脱する。トリニティまでは大分ある。ヘリのなかで情報をアップデートし、いろいろ考える必要がある。

 

 

 


 

 

 

「……ぶはぁ!? なんだあの大人」

 

 階段室に入って汗と一緒に貯めてた息を吐き出す。追いついたイロハまでため息。

 

「格好つけてるなと思いましたが……そんなですか」

「気づいてないのか。あのアラタ先生の目……」

 

 片手で顔を覆って汗を拭う。生徒の前で跪く大人という滑稽な絵面だったが、やばさはそこにない。

 

「あれは……根本的に見ている世界が違う目だ……空崎ヒナめ……なんて奴に勝手に借りをつくりやがって……」

 

 とはいえ、風紀委員の派遣で今回の事件は表向きチャラ。風紀委員会を議論に上げるネタを提供してくれた以上、万魔殿としてはいいことづくめだが、間違いなくヤバイやつを抱き込んだ気がする。ゲヘナとして連邦生徒会やシャーレと向き合うとアレが毎回出てくるとなると、可能な限り衝突を避けるしかない。少なくとも5人そこらで風紀委員会の中隊規模を壊滅させる実力まである。

 

「イロハ、彼の情報を適当にレッドウィンターに流せ。たしか近々表敬訪問があっただろう。あのタイミングで紹介の名目で髭に後処理を押し付ける」

「はぁ……また思いつきですか? どう転んでも知りませんよ」

「キッキッキ……それでも、なんとかするしかない。あのトリニティを蹴り落とすまでは!」

 

 

 


 

 

 

「すまない、遅くなった!」

 

 ヘリパッドからだと遅刻しそうだということで、トリニティ本部棟前でホバリングしてもらって降ろしてもらったのだが、待っていた面々があんぐりと口を開けていた。なんだか白い修道服とセーラー服のあいのこと言った風貌の制服にベレー帽をかぶったヒフミと、キヴォトスに来た時以来久々に顔を合わせるスズミの前に降りてきたのだが、そんなに変だっただろうか。

 

「せ、先生、ホイスト降下できるんですね……」

 

 スズミに驚かれるが僕は笑って答えるしかない。半ば飛び降りるようにしてマキも追ってくる。

 

「ん? いろいろあってね。それにしても時間ギリギリになってしまって申し訳なかった。……ヒフミも前会った時と制服が違うね」

「ひゃいっ! えっと、これ、ティーパーティーとしての制服なので……」

 

 なんだか怯えられているような気もする。そんなにひどい表情をしているだろうか。

 

「えっと、ナギサ様とパテル分派のミカ様がお待ちです……どうぞ、こちらへ……」

 

 ものすごく緊張した面持ちのヒフミに案内される。

 

「あの……ホシノさんは……」

「多分生きてる。多分ね」

「多分……」

「大丈夫。必ず助け出す」

 

 建物の中は白い大理石みたいな壁材や赤いじゅうたんなど豪華絢爛な内装。すごい学校だな。

 

「ここから先は非武装地帯です。武装をおもて……お持ちでしたらお預かりします」

 

 ぎこちない敬語。普段から丁寧語のヒフミのことだから、これはおそらくこう口にしなければならないというプロトコールなんだろう。差し出されたトレーの上にホシノから預かった拳銃を置く。マキも銃を預けていた。一応フォーマルでもいいようにスーツで来ているが襟を一応正しておく。

 

「それでは、ご案内します。トリニティ総合学園執行部、ティーパーティー、パテル分派の聖園ミカ様、フィリウス分派の桐藤ナギサ様がお待ちです」

 

 マキが唾をのむ音が聞こえる。3メートルはあるであろう背の高い真っ白なドアが開き、バルコニーのような空間に通される。映画かアニメでしか見たことのないような長いテーブルがある。

 

「ようこそ、ティーパーティーへ」

 

 テーブルの奥側に二人の生徒が見える。一人は桃色の髪の生徒がニコニコと微笑んでいる。もう一人は亜麻色の髪の生徒で真面目そうに澄ました顔で僕を見る。声をかけてきたのは亜麻色の髪の方。

 

「ティーパーティーの今季のホストを務めます、桐藤ナギサと申します。こちらがティーパーティーのメンバーの」

「聖園ミカ、よろしくね?」

 

 ぱちんとウインクしてから、席を立ち、つかつかと寄ってくる桃色の髪の子。その子……ミカの腰の位置から翼が生えているのだが、それをきれいに飾り付けているところからして、かなりのおしゃれさんなんだろう。残念ながら、僕には審美眼なんてものはないのでおしゃれだなあ以上のことはわからない。

 

「ティーパーティーにトリニティの外の方を招くに至ったのは今回が初めてです。記録上でも貴方が初めてとなります。アラタ先生」

 

 勧められるまで席にはつかない方がいいだろうと思い立っていると、亜麻色の髪の人……ナギサの説明が始まった。その間にもミカが僕の前まで来て顔をのぞき込んだり、身だしなみをチェックするようにくるりと一周回ったりしている。

 

「普段はトリニティの一般生徒もここに立ち入ることは許されていません。ティーパーティーの執行部、もしくは三派閥からそれぞれ選ばれた補助役のみが参加を許され……ミカさん?」

「すごいヒトって噂だったからもっとすごいのを勝手に想像してたんだけど、私たちとあんまり変わらないね? うんっ! 私は結構いいと思うっ! ナギちゃん的にはどう?」

「……ミカさん。初対面でその言動はいかがなものかと思いますよ。愛があふれるのは結構ですが、時と場合を選びましょうね」

「うぅ……はぁい。でもまぁ先生、とりあえずこれからよろしくってことで!」

 

 そう言ってミカはさくっと自分の席に戻っていった。ナギサに席を進められて僕も着席する。テーブルの反対側の端だ。マキの椅子は用意されてなかったが、僕の後ろで休めの姿勢を取っていた。護衛、という意味では正しい。椅子を用意してもらえばよかったかな。

 

 それにしても、力を持ってるのはナギサなんだろうが、聖園ミカの方がおそらく間合いの読みあいは上手いのだろう。失態を演じつつもアイスブレイクとして議論に入りやすくしつつ、僕とマキをけん制した。警戒するべきはミカだ。

 

「それで、ヒフミさんから聞いています。我々の援助がほしいと」

「資料を回しても?」

 

 一応ハードコピーを2部持ってきておいてよかった。待機していたヒフミに渡して、それをナギサとミカに見てもらう。

 

「僕の直接的かつ超短期的な目標は不当に拉致、監禁されているアビドス高校の生徒の奪還にある。とはいえ、それを主導していると思われる組織とその資金の流れは君たちトリニティ総合学園に対しても脅威であると考えている。今のうちに牽制しておきたい」

 

 資料として回したのはブラックマーケットへの資金の流入とカイザーコーポレーションの下請け実績のある犯罪集団がトリニティ生徒を襲っているという実績等についての統計資料。ヴァルキューレ経由の情報だけでも、集計すればかなりの量がある。

 

「ふーん……よく調べてるね。多分これ、パテル(うち)で持ってる情報とそんなに質変わらないよ?」

 

 流し見しているミカがすぐにそう言ってくる。うん、この子、さっきの懐に飛び込んできたのは演技だな。

 

「それらの裏には、このカイザーコーポレーションが絡んでいると?」

「全件ではないだろうけどね」

「ふむ……すでに影響が出ているとなると、手を打たないわけにもいかない……」

「そちらが意図的に放置しているのでなければ、対応をある程度明確に打ち出した方がいいかと思う」

 

 この一言は蛇足かもしれないが、とりあえず判断を急がせる。

 

「なるほど、意図と目的はわかりました。それで我々には何を?」

「可能であれば戦力の提供。難しければ医療関係の支援を受けたい」

 

 そういうとしばらく無言の時間が落ちる。ヒフミが居心地悪そうに僕を見てくるが、辛抱強く待つ。そんなヒフミにナギサがちらりと視線を送るがヒフミは気が付かなかった様子だ。

 

「気に入らないなぁ」

「ミカさん?」

 

 ナギサが虚をつかれたようにミカを見る。ミカはテーブルに肘をつき。置いた資料をトントンと指で叩いた。

 

「先生、直前でゲヘナに寄ってたよね? 作戦、ゲヘナから戦力をとっくに取り付けてるんじゃない? 確かに医療系の支援はトリニティでは断れないし、救護騎士団に取り次げば勝手にミネ団長が物理的に飛んでって医療部隊が慌ててついていくと思うけど」

 

 なんだかとんでもない扱いをされているリーダーがここにもいるらしい。ホシノといいヒナといい、トップが強いのは伝統芸能なんだろうか。

 

「まぁともかく、私が聞きたいのは、私たちより先にゲヘナに行った理由は何?」

「ミカさん!」

 

 ナギサが止めようとするのを僕は手で制して笑いかける。

 

「じゃあオブラートなしで話そうか。……ゲヘナが昨日、アビドス高校の自治区に無断で砲撃したのは知ってると思うけど」

「当然」

「なら想像の通りだと思うよ。僕は戦力を早急に固めたかった。だから確実に兵を搾り取れる方から先に行った。それだけの話だ」

「ふーん」

 

 ものすごくフラットな返答が返ってくる。

 

「先生は今、ゲヘナとトリニティがすごく神経質になってるっていうのはわかってる?」

「わかってるからこそ、両方に話をもってきたつもりだけど。エデン条約の話は簡単にさわりだけ聞いている。ただそれはゲヘナ側からもたらされた情報だ。僕は依頼がない限り、エデン条約にはかかわるつもりはないけれど、それでも、両校に対して中立でありたいと思っている」

 

 おそらくナギサには僕の脅しが伝わっているようだが、ミカはわかったうえで詰まらなさそうな表情をしているように見える。厄介だな。

 

「で、向こうは戦力を出すの?」

「一個小隊を出してくれるそうだよ」

「わかった。じゃあナギちゃん、私はトリニティとして正式に戦力を提供するのには反対」

「……それはパテル分派としての意見でよいですか?」

「うん。そう思って」

 

 先生も、といってミカがもう一度立って僕のところに来る。

 

「今回は残念だけど、私にも立場があるからね。ごめんね? あ! でもゲヘナが絡まないところだったらお茶会も先生なら大歓迎だから! 今度埋め合わせはゆっくりしよ?」

 

 そう言って僕が入ってきた扉とは別の扉に向かうミカ。慌てて控えていた面々がドアを開けていた。

 

「……ミカさんが失礼しました」

「特徴的な人だね。そして頭がいい」

「えぇ……ということで、申し訳ないですが、戦力の派遣はトリニティ学園としては出来かねます。医療については適任者がいますので、紹介状をお渡ししますからそちらと相談してください」

「ありがとう。かなりの無茶をお願いしている自覚はある。先ほどの彼女ではないけれど、埋め合わせは別の機会に相談させてほしい」

「えぇ、それはぜひとも。今紹介状を用意させますので、そのままもう少々お待ちを」

 

 僕とナギサの会話を聞いてシュンとするヒフミ。その様子を見たナギサが口元を引き上げる。

 

「あぁそうそう、ヒフミさん」

「は、はいっ」

「以前相談していた、牽引式りゅう弾砲の警備についてですが」

「えっ? えっと……? 牽引式というと、L118……」

「えぇ、それが20門。近々実習があるということで、処分前の実弾と一緒に西門脇の外部駐車場に置きっぱなしになっている件の話です。そろそろ警備を強化しないといけないのではと()()()()危惧しているとお話したではありませんか」

「えっと……? 私、警備計画なんて……あっ!」

 

 ナギサの言い分に気が付いたのだろう。その顔がぱっと明るくなる。

 

「そ、そうですね! 失念していました! はい! 武装組織に狙われたりしたら物騒ですもんねっ!」

「えぇ。今晩の責任者をヒフミさんにお願いします。細かい部分は私に相談してください」

「はいっ! ありがとうございますっ!」

 

 がばっと90度腰を折る礼をするヒフミ。

 

「そちらの相談もあるでしょうから、僕はこのあたりでお暇しますよ」

「えぇ、ご足労いただきありがとうございました。今後の連絡も、ヒフミさんを通してください」

「では、シャーレの専用端末を彼女に預けておくので、何かあれば彼女に」

 

 TITTYの端末をヒフミに渡す。これで戦力はおおよそ固まった。

 

「では、これで」

「はい。ご武運を」

 

 ナギサが一礼する。遅れてヒフミも一礼してくれた。部屋を出ると、ふぅ、とため息をつく声。

 

「マキもお疲れ様」

「カタカタヘルメット団の時よりも緊張したかも」

「まぁ、上手くいってよかった。さて。あともう一押しかな」

 

 紹介状を受け取る。この紹介状で医療関係の手配をしたらシャーレに戻って補給をし、アビドス砂漠へ。

 

 作戦開始まで、あと14時間だ。




足を舐める(イオリが飛びのいて未遂)

次回 ラーメン屋台での誓い

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