マージナル・アーカイブス - 子供使い、先生になる -   作:オーバードライヴ

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「アラタ、わたしのかたきをとってください」

 

 根回しをある程度終えてジブリールと合流しようとゲーム開発部の部室に向かうと、開口一番ジブリールが日本語――ここは日本ではないので日本語なのかは定かではないが僕にはそう聞こえる――でそういってきた。言語能力の向上甚だしいが状況がつかめない。

 

「なにがあったのか説明してくれ」

「ゲームはむずかしいすぎます。わたしは15かいちょうせんして、15かいブービーでした」

 

 このブービーは最下位の意味だろう。ブービートラップでなじみが深すぎるから多分その言葉選びになったな。

 

 ゲーム開発部の部室は広さがやや間口側が広い8畳ぐらいの間取りだ。ただ、やたらと座面が低いソファとローテーブルが部屋の中央、何枚かカーペットを重ねた上に鎮座し、座椅子なども配置されていることと、壁一面のスチールラックやロッカーが配置されているせいで、かなり窮屈に感じる部屋だ。その中に、ジブリールの他に昨日あったモモイとミドリ、そしてモモイの後ろに隠れようとしている赤っぽい髪の女の子がいる。全部で4人。

 

「あ、先生。こんにちは」

「うん、こんにちはミドリ、モモイも。えっと……君は花岡ユズさんでよかったかな?」

「ひゃぃ……」

「アラタはこわいおとなではありません」

 

 ユウカから展開をもらったゲーム開発部のプロファイルにあった名前を思い出して声を掛けると、なおのこと縮こまってしまった。ジブリールがカバーに入ってくれているあたりとてもありがたい。

 

「ユズはシャイです」

「そうみたいだね。まぁ見ず知らずの大人が入ってきたら当然だよ。それで、ジブリールの敵を取れって言われたけど、なんのゲームをしてたんだい?」

「スマシス! ジブリールちゃんも練習してかなりいいところまでいったんだけどねー」

 

 モモイがそう言いながらごそごそとゲームのカートリッジを取り出していた。パッケージを手渡されたので確認すると、キャラクターを操作して格闘戦をするようなゲームをしていたらしい。

 

「先生もやる? ジブリールちゃんが“アラタがいれば、かてるます!”って断言してたからちょっと期待してるんだけどなぁ……」

 

 ニヤニヤと笑いながら既にゲーム機本体をテレビに接続し直して、起動準備に入っているモモイ。

 

「いいね。昔似たようなゲームをしたことがある。僕の知っているハードと違うみたいだから操作方法のチュートリアルを頼む」

「おっけー。カモがネギを背負ってダシに飛び込んできたかもね……ふふふ」

 

 ジブリールにじっと見上げられている状況なのもあって、断るに断れない状況だ。ゲームなんていつぶりだろう。日本にいたころはオンラインFPSにどっぷりハマっていたが、離れてからは一切触れてこなかったし、いわゆるコンシューマーマシンのゲームは高校時代に実家でやって以来だ。ブランクが長いが大丈夫だろうか。

 

「アラタはカモではありません。イヌワシです」

「あぁうん、そうなんだけどね、そういう慣用句……あー、イディオムがあるんだ」

 

 ジブリールに説明しつつ勧められたソファに座る。右となりにはジブリールが来て反対隣にミドリがどこかそわそわとした様子で腰掛けた。三人掛けのソファで多分普段は三人並んでみたいな使い方をしているのだろう。普段と着席位置が違うからなのか、ミドリがそわそわしている。ずっとそわそわしている。カーペットの上に座椅子を置いてモモイとユズがスタンバイしている状況だ。

 

「今は何をしてたんだい?」

「テイルズ・サガ・クロニクル。ユズが作ったゲームだよ」

「アラタもいつかやってください。わたしはにがてでした」

「まぁゲームは失敗して覚えていくものだからね。何回失敗しても許されるんだから、それでいいんだよ、ジブリール」

 

 そう言って頭を撫でる間にもゲームが起動。……本当に似たようなゲームをしたことがあるぞ。起動画面も大体見覚えがある。

 

「えっと、似たようなゲームということはスマシス……大乱戦スマッシュシスターズはやったことないってことでいいんですよね?」

「そうだね、その認識で構わない」

「わかりました。……どんなプレイスタイルでしたか?」

 

 レクチャーはどうやらミドリの担当らしく声を掛けられる。

 

「リーチよりも速度というか、小回り重視かな。あとはアドリブである程度潰しが効く方がいい。慣れてないから狙ってコンボ出すとかしにくいだろうしね」

「じゃあ……ムーンフェネックのフェネックがいいと思います。復帰が狙われやすいんですけど、攻撃の選択肢が減りにくいので。あと、他のみんなの持ちキャラとも被らないんですけど」

「OK。じゃあそれでいこう」

 

 そうして操作を五分くらい教わって、それで一回ミドリと模擬戦をしてみる。簡単なコンボ技も含めて教えてくれているのでかなりサービスをしてくれているが、その間にどんどんモモイやユズの表情が険しくなっていく。

 

「……ミドリ、それぐらいにしとこう。先生、本当に初めて?」

「正真正銘初めてだ。この『ゲームガールズアドバンスSP』だっけ、このハードそのものも初めてだね」

「嘘ついてないよね?」

「アラタはうそをつきません、モモイ」

 

 ジブリールの援護射撃もあってモモイが静かになった。思ったより日本にいたときの動きを覚えている。ある程度似た操作感で思ったよりなんとかできそうだ。

 

 ステージ設定などを全部ミドリに任せて、キャラクターをそれぞれが選ぶ。僕はそのままチュートリアルで使用したキャラクタを選択。ストック制で残機は3、制限時間も一応ついている。

 

「それじゃあ、4人でゲームスタートしますよ」

 

 ミドリの音頭でゲームが始まった。ゲームの感覚は久しぶりだ。画面の外に注意が行かなくなるのはマズいと思うが、今ぐらいは良いだろう。集中させてもらおう。足場が空中にいくつかある以外はフラットなフィールド、ギミックが少ない場所を選んでくれたらしい。

 

「いきなりこっち!?」

「ユズそこは協力しようよ!? なんで先生の味方!?」

 

 開幕と同時にミドリ対僕、ユズ対モモイのマッチアップになる。教えてもらった恩を仇で返すようで悪いがとりあえず、ミドリが使っているピンク色のお姫様キャラが空中に居るうちに攻撃開始。多分空中なら相手の防御がきかないと思ったけどビンゴらしい、運は悪くない。どうやら双子はアイコンタクトで僕を潰しにかかったらしいけど、青い金髪ボディスーツなキャラクターを使っているユズがモモイが使っている大きな亀みたいなキャラクターをポンポン空中に上げている。ミドリの対応をしている間に亀が画面外に落ちていった。

 

「ユズ!!」

「くっ……コンボ切れる……」

 

 敵の敵は味方理論でとりあえずミドリを押さえ込む。あっという間にモモイが3回吹っ飛んで脱落。ユズがどっちを先に落としに掛かるかは怖かったがとりあえずミドリを相手にしてくれたようだ。2対1で一気にゲージを貯めて吹っ飛ばす。

 

 ……ユズのプレイングを見る限り、さてはジブリール、擁護できない位自爆したな。とりあえず最下位脱出でジブリールが珍しくガッツポーズしている。それを見ている間に僕も吹っ飛んだけど。これで残機は2。崖際に寄らないように意識しつつユズにミドリが吹っ飛ばされていくのを見る。

 

「ユズ本当に強いな……」

 

 ユズとの一騎打ちになったが勝てる気がしない。というより、勝てない、これは。タイムアップを狙うにしても既に残機が減っていて判定負けを喰らう。なんとか1発くらい入れたいところだけど、モモイが空中で瞬殺されていたところを見るにジャンプはリスクだ。少しでも相手に隙を作りたいとか考えている間にどんどん崖に追い込まれて空中に押し出される。

 

「っ!?」

 

 なんとか一回復帰したが、再現しろと言われても無理だ。今度こそもう一度たたき落とされて残機1。そのまま見せ場もなく吹っ飛んで終わる。

 

「いやぁ……本当に強いね、ユズ」

「ユズはUZQueenだしね」

「モモイ、しーっ! しーっ!」

 

 ユズが慌てた様子。何か知られたくないようなものだろうか。おそらくはユーザー名かなにかだろうが、結構名のあるゲーマーなのかもしれない。

 

「素人の付け焼き刃だと立ちゆかないね」

「でもアラタはブービーじゃありませんでした。わたしは2じかんがんばりました」

「経験の差だね。僕がジブリール達に会う前には、結構ゲームをしていたんだよ」

 

 そんなことを言う間、なぜかユズの視線がずっと僕を見ている。その視線に気がついたのか、ジブリールが咳払いをした。

 

「アラタ、アラタはようじをすませるべきです」

「そうだね。じゃあその話をしようか。ジブリール、TITTYをつけて。明日の作戦の説明をする」

「はい」

 

 赤くなっているジブリールに促され、持ってきていたバッグからゲーム開発部の三人にそれぞれTITTYを手渡す。ジブリールが装着したことを確認してシッテムの箱と情報連結を開始。翻訳機能をオン。表示を英語にしてジブリールに流す。

 

「連邦生徒会から第13直轄地での作戦実施許可が下りた。明日『廃墟』への強行偵察作戦を実施する。名目としては現地を徘徊しているロボットの偵察、ということにはなるけどね」

「ほんとっ!?」

 

 モモイが食いついてくる。頷いて答えに代える。

 

「作戦開始は明日11時から。シャーレの所有する自律戦車15台と一緒にみんなで遠足だ。電子戦が発生する可能性に備えてヒマリとコタマが電子的バックアップに入ってくれる」

「戦車15台……って結構な戦力ですよね……」

 

 驚いたのはミドリだ。

 

「事前情報では電力が残っていると思われるのは廃墟中心部にある発電工場近辺に限られ、武装したロボットが徘徊している。G.Bibleがあるとしたらそこだ」

「じゃあそこに向かって一直線だね!」

「そうだ。ただし、負傷者が出たり、想定外の戦力が出てきた場合は無理せず撤退する。これだけの戦力を投射するのは、万が一の撤退に備えてだ。最悪街区ごと吹き飛ばして離脱する」

「豪快……ですね」

 

 ユズがおののいているけれど、ここは僕も譲れない。

 

「君たちの安全の確保にはそれが手っ取り早い。自律戦車はAIで自然言語によるコミュニケーションが可能だ。一人あたり三台はあたるし携行式の対戦車ミサイルぐらいなら防げることも確認済みだ。これだけの戦力があれば最悪力業で脱出することも可能だろう」

それでも脱出が難しい場合は?

 

 ジブリールの質問。いい問いだ。

 

「予備小隊としてチヒロをリーダーにマキとエイミ、あとシャーレ側からの派遣人員としてシロコとノノミが待機する。こちらからの要請、もしくは10分以上通信が途絶した場合、救援に来てくれることになる」

 

 とはいうものの、ロジコマを15台も投入する時点でかなりの過剰戦力だと思うが、そこにいるロボットの戦力が未知数である以上、用心はしておきたい。『ハエを落とすのに核を撃つのはバカ』という戒めがあるが、飛んでくるのがハエなのか核ミサイルなのか分からないのに核を用意しないのは間抜けだ。僕の間抜けで子どもを傷つけるわけにはいかない。

 

ホシノやアヤネは来ないのですね

 

 残念そうな顔をするジブリールに笑いかける。

 

「ホシノはものすごく来たがってたよ。通院があるからセリカとアヤネの二人がかりで病院に連れて行ってもらうことになってる」

「ホシノさん?」

「モモイ達は知らないと思うけど、アビドス高校の生徒で、シャーレの部員だ。今は負傷で療養中だし、いろいろあって勉強が貯まりに貯まってるからそれを消化してもらうように言いつけてある。とはいえ、多分ホシノもアヤネも作戦中はTITTYの電源は入れてくれていると思うから何かあれば声をかけれると思うし、D.U.からミレニアムは鉄道で1本だ」

 

 実は連邦生徒会の説得よりホシノの説得の方が大変だったのは内緒だ。

 

 今回の影のクライアントであるヒマリは僕に可能な限り陣頭指揮を執って欲しいという要望を出している。通信断絶によってロジコマが使えなくなって生徒が単独で取り残される可能性を考えてのことだろう。実際カイザーコーポレーションにはロジコマの通信プロトコルを割られた実績があるし、発電工場周辺で正体不明の通信機器がアクティブになっているのは確かなのだ。そのリスクは低くない。ロジコマの脆弱性は既にハードごとバージョンアップしているということだが何があるか分からない以上生徒のリスクは減らしたいという気持ちはよく理解できた。

 

 一方でその陣頭指揮にホシノが猛反発。脚が折れてなければミレニアムへ直談判に突撃しかねない勢いで反対したので押さえ込むのに苦労した。ジブリールが護衛に付くことを説明しても納得せず、シロコとノノミをバックアップにねじ込んできたのはホシノだった。というより、今もホシノのTITTYはオンラインなんだが、ちゃんと勉強しているのだろうか。

 

……アラタ、あまりホシノをいじめるべきではありません

 

 なんだかすごい刺され方をしたぞ。どういう意味だいジブリール。

 

「とはいえ、彼女に無理はさせられないからね」

 

 ジブリールを厳重に撫でる。

 

「でも、一日ですごく大事になっちゃいましたね……」

 

 苦笑いしているのはミドリだ。確かにモモイやミドリからしたらそういう見方になるんだろうなと思う。

 

「それだけみんな期待してるってことだ。明日は頑張ろう」

 

 とりあえずそれだけいって僕は帰ることにした。ジブリールも連れて戻る。

 

 いったん、明日は気合いを入れなければならない。

 

 

 


 

 

 

「……あり、ジブちゃんの通信が消えた」

「もう、ホシノ先輩。盗み聞きですか?」

 

 だめですよ、と続けてノノミちゃんが咎めてきたけれどTITTYを外す気はなかった。おそらく先生にはバレている。それでも止めてこなかったということは、先生は許してくれたということらしい。シャーレの居住エリアに部屋をもらって実質的にアビドス高校D.U.分校みたいな感じにすることに成功したのもあって、着実に先生の外堀を埋めているつもりなのだが、すでに激戦区がすぎる。

 

「ねぇノノミちゃん」

「なんですかホシノ先輩」

「先生ってさ、ジブちゃんにかなり甘いよね」

「そうですねぇ。でも……」

「でも?」

 

 いつも通りのふわふわとした笑みでノノミちゃんは続ける。

 

「ホシノ先輩にも甘いと思いますよ」

「わーん、ノノミちゃんが塩対応~。ママは寂しいよぉ」

 

 本気での愚痴じゃないことがバレていたのだろう。こっちも軽く返すとノノミちゃんは笑みを深めた。

 

「でもジブリールちゃんは3年以上前から先生と戦ってきたんです。時間の差は大きいですからねぇ」

「わかっちゃいるけどさぁ……歯がゆいなぁ」

 

 机に顎を乗せると向かいのノノミと目が合った。

 

「焦っちゃだめですよ、先輩」

「うん……とはいえ、ねぇ」

 

 ジブちゃんの戦闘能力を疑うつもりはない。というより、キヴォトスでもかなり上位の実力だ。身のこなしが軽いし、全身のバネがしなやかだ。なにより戦い方を知っている。どう動けば相手を制圧下におけるかの判断速度がコレまであった子の中ではトップクラスに速い。あそこまで迷い無く正確に動く相手はゲヘナの風紀委員長ぐらいだろう。もう少し体格がよければ文句のつけようがなかったが、それでもあの小柄さを活かした戦い方を知っている。

 

 それでも、今回のミレニアムの動きは不審だ。でもそれを先生は分かって飲み込んでしまった。

 

 第13直轄地の情報は一通り漁ったし、先生がTITTYにアップロードしてくれた作戦要綱と交戦規定は目を通した。規定を作成したのはミレニアムの特異現象捜査部と先生、それを連邦生徒会の調停室と防衛室に承認をもらって文書化しているものだが、先生の文体とかなり違う。おそらく大枠を作ったのは特異現象捜査部とヴェリタスのトップを兼任している明星ヒマリで、そのヒマリが要望したのが先生の陣頭指揮だ。

 

「……先生を使って天秤を動かそうとしている奴がいる」

「分かってますよ、ホシノ先輩。分かってます」

 

 先生の指揮はバンカーバスターに似ている。どれだけ堅くなっても速度にものを言わせて貫通し、足下から破砕してくるバンカーバスターだ。

 

 私の救出作戦のログを最近見たが、作戦開始前に世界相手に喧嘩を売るような演説に続けて『小鳥遊ホシノを助け出すから力を貸してくれ』と言い放ち、それから15分で作戦がほぼ終了している。開始から5分でカイザーPMCは電子機器を潰され、そこから3分で遠距離戦闘能力を喪失し、応援部隊は足止めされ、本丸への侵入を許した。プロパガンダ用のデータだと思ってチヒロに確認したが事実らしいし、ユウカは先生が『なんで3分も経って撤退を開始しない?』といぶかしんだのを聞いている。カイザーの立場になってできるもんならやってみろと思うが、先生はできるんだから何も言えない。

 

 実際、そんなバンカーバスターを真正面からくらったカイザーコーポレーションは、PMC以外もズタボロだ。通信子会社が公安の立ち入り、追徴課税、株価大暴落というトリプルパンチで一瞬で倒産したし、カイザーローンも組織再編という名目で支店がまるっと吹き飛んだ。そんなこんなで仕事がなくなった社員をグループ内で吸収して再配置したせいで、プログラマや役員が追い出しのために不動産営業に回される阿鼻叫喚の地獄絵図になったという。そんな無茶な一撃を放っておいて『ホシノが無事だったからそれでいいんだ』とか真顔で言ってしまう。正直許されないと思う。

 

 カイザーコーポレーションは生徒を一人拉致っただけでこうなるとは思ってなかっただろう。私だって思ってなかったよこんなの。

 

 そして間違いなく言えるのは、先生は懲りてない。もう一度同じような局面が来たら、悩むことなくバンカーバスターをぶっ放す。それが私じゃなくても、生徒が絡むなら問答無用でぶっ放す。ジブちゃんが絡みそうなら多分可能性の段階でぶっ放す。断言できる。あの人は、そうして更地にしてから困ったみたいに笑うのだ。

 

 そんなパワーを持つシャーレという組織が、派閥を組まずに少人数で浮いている。連邦生徒会長直下の特務権限、潤沢な予算。どの学園も警戒し、どの学園も欲している。

 

 そして、今一番シャーレが依存しているのはミレニアムの技術力であり、ジブちゃんは留学生というかたちでミレニアムに人質に取られている状況なのだ。しかもそれを主導しているのは、生徒会という生徒だ。先生が強く出なかったのはそういうことだろう。根本的に優しすぎるのだ、先生は。

 

「……今、対策委員会顧問の先生を喪うわけにはいかないからさ」

「はい」

 

 ノノミちゃんは素直に返事をしてくれる。ミレニアムがシャーレを占有状態に置こうとしていることぐらい、ノノミちゃんも理解しているはずだ。ヴェリタスもセミナーもシャーレに人員を送り込んで実態を知っているのだから、先生を相手に潰しにかかるほど軽率ではないとは信じたい。それにそんな軽率な相手であればこちらもそれ相応の対応を考えなければならない。……さすがにジブちゃん含めてアビドス高校の6人でミレニアム相手に全面戦争は厳しいが、数日ぐらい生徒会機能をマヒさせるぐらいはできるだろう。きっかけさえ与えてしまえば勝手にゲヘナあたりが援護射撃に入るはずだし、それが無理でも便利屋68の面々に情報を流せば多分暴れてくれる。痛み分けには持ち込める自信はあった。

 

 そのためにも、シャーレの、そしてアビドスの戦力が十分に高いこと、そして先生がセーフティであることをミレニアムにはメッセージとして示すべきだ。こういうときにシロコちゃんの瞬発力は信頼できるし、ノノミちゃんなら必要なタイミングまではシロコちゃんを押さえてくれるだろう。

 

「明日、なにかあったら、頼むね」

「はい」

 

 ノノミちゃんとこういう会話をするのは久しぶりな気がした、シロコちゃんが来てからはこういうピリピリとした会話は自然とお互い避けていたように思う。それでも、必要な手は打たなければならない。

 

 明日は、問答無用でやってくる。




※なお、投降主のスマブラの知識は友人宅でやったゲームキューブ時代のスマブラDXからアップデートされてないクソザコナメクジとします。マジで描写自信ないですがどうかご容赦ください。

次回 ロジコマ大行進

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