マージナル・アーカイブス - 子供使い、先生になる -   作:オーバードライヴ

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アプリ公式のパヴァーヌ編で先生の影がやたら薄いのは、こういうことに足を取られてミレニアム以外の人員使って飛び回ってた説を提唱する作者です。


00110111_サターナイナスは笑う

「ダメだ! みんなやられちまった!」

 

 排水路を使って山側になんとか逃げ延び、月明かりを頼りに回収地点になっている廃屋までたどり着いた。そう告げてもなんの反応もなかった。

 

「おい……だれかいないのか?」

 

 平屋のあばら屋に脚を踏み入れる。板貼りの床が嫌な音を立てる。中には壊れかけの棚や数年前ならアンティーク調の家具として高く売れそうな朽ちかけたテーブルと椅子などが乱雑に置いてある。

 

 クローゼットすらないこの廃屋に隠れられる場所などない。つまり、ここで落ち合うはずの相手は、ここにいない。

 

「くそっ……どいつもこいつも……!」

 

 そう悪態をついたタイミングで、安っぽい着信音が鳴った。テーブルの上で緑色の液晶が光っている。旧式の使い捨て電話(プリペイド)、画面には非通知の文字。

 

 恐る恐る電話を取る。

 

《やぁ、見ていたぞ。ご苦労だった。ラヴィニア》

 

 ラヴィニアとは向こうが勝手につけてきたコードネーム。ボイスチェンジャーで極端に低く変調され聞き取りづらいが、ねぎらう声がする。

 

「見てたって……だったらなんで助けてくれないんだよ!?」

《わかっているだろう。わざわざ私達がブラックマーケットの腕利きスナイパーを雇った理由、説明しないといけないほど貴様は脳天気か?》

「お前らが用意した指示役も捕まってんだぞ!?」

《想定の範囲内だ。いささか早すぎたが》

 

 言われなくてもわかっている。連絡役のタモーラと名乗る相手の本名も、所属も知らない。つまり『明かせない身分』ということだ。そんな相手が高値でブラックマーケットの生徒を()()()

 

 月明かりがあばらやの窓から差し込む。風で窓ガラスがカタカタと鳴った。追っ手がかかったかと思い、壁に隠れながら外を窺うが誰もいない。

 

「くそったれ……タモーラ、約束が違うぞ。どういうつもりだ。ここまで逃げれば脱出の手配は済んでいるんじゃなかったのかよ」

《違うのはそちらの成果だ。私達は既に貴様に対価を支払った。偽の学籍を与えた。住み処を与えた。資金と、武器を与えた。極秘訓練施設だって使わせたじゃないか。鎮痛剤(フェンタニル)の常用は困ったものだがちゃんと用意しただろう?》

 

 捨て駒にされることはわかっていた。だとしても、あいつらを見捨てる必要がどこにあった。学籍、隠れ家、武装、訓練施設、それだけのお金を用意できるタモーラたちは間違い無く、ブラックマーケットを蹂躙できるだけの権限や力を持っている側の人間だ。

 

 また、使い捨てにされるのか、私達は。

 

「くたばれタモーラ、この嘘つきがっ!」

 

 そう叫ぶと携帯電話の向こうから笑い声が漏れた。

 

《……ラヴィニア、貴様はタイタス・アンドロニカスを読んだことがあるか?》

「ふざけるな。お前とのんきにおしゃべりなんてしてる余裕はねぇんだ」

《安心しろ。貴様は今日、そこから生き延びる。矯正局の楽しい薬物依存治療プログラムの合間にでも読んでみるといい。今度差し入れよう》

「何を言ってやがる……そのタイタスなんちゃらがなんだって言うんだ」

 

 タモーラは笑う。

 

《知識は身を助ける。道具として使い潰されたくなければ、学ぶことだ。……将軍タイタスは、濡れ衣で拘束された息子達を解放するため、皇帝に言われるがまま自身の左腕を切り落とした。結果として返ってきたのは息子二人の生首と、対価として差し出したはずの左腕のみだった。用心し、疑うことを忘れては身を滅ぼすことの良い例だ》

 

 そんな話をされて喜ぶと思っているのか相手は。

 

《第二幕第二場の冒頭だ。――――猟が始まる。朝まだき、空は白々と明け初めた。野には甘い香りが漂い、森の樹々は美しい緑に輝いている。さあ、猟犬を解き放ち、その吠声に皇帝と美しき花嫁の眠りを醒させろ。猟師共に命じ、角笛を高らかに鳴り響かせ、宮廷をその木霊で満すのだ》

 

 一方的にそう言われ、通信が切れる。

 

「なんなんだ……なんなんだお前達はっ!」

 

 直後、窓ガラスからナニカが飛び込んでくる。床でそれが跳ねると同時に白い煙が廃屋に充満する。直後、組み伏せられた。腕が背中に回され、押さえつけられる。

 

「くそっ!」

「はい、暴れない。お互い痛いの嫌でしょ。めんどくさいしさ」

 

 くぐもった声。おそらくガスマスク越しの声だ。刺激物の様子はないということはただの煙幕弾だがそれでも煙たいものは煙たい。

 

「くそ、公安か!?」

「残念。生活安全局なんだなぁ、これが。まぁ今は連邦捜査部付だけど。……えっとー、21時32分、暴行と器物損壊の疑いで逮捕、拘束ね。鐘崎港コンテナターミナルの監視カメラを銃撃したのがバッチリ記録されてるのに逃げてもダメだよ。今時は電子決裁も進んで爆速で令状下りるんだしさ。今後についてはちゃんと弁護士と相談してね」

「フブキ! ミランダ警告ぐらいはちゃんと真面目にやって!」

 

 突入してきたのは二人か。この山の中まで追ってくるということはかなり早い段階で尾行さ(ツケら)れていた事になる。もしくは、あのタモーラが裏切って通報していたか。

 

「クソッタレ……」

 

 とはいえもうどうでもいいことだ。逮捕されたことには変わらないのだから。

 

 

 


 

 

 

 ヴァルキューレ警察学校の生徒が協力者を護送車に詰め込んで離脱したのを確認してこちらも撤退する。既にプリペイドのSIMカードはへし折って破棄済みだ。副隊長がふにゃりと笑って声を掛けてくる。

 

「お疲れ様。タモーラ隊長? これでラヴィニアちゃんも無事保護されたね。薬物依存治療、進むといいけどなぁ」

 

 それにはそうだな、と単純に返しておく。利用させてもらった分、せめてブラックマーケットでやさぐれるのではなく、まともな生活に戻って欲しいものだ。そのチャンスが報酬だったと彼女が気がつくことはあるまいが、それでもいいと思っている。

 

「……それにしても、コードネームをタイタス・アンドロニカスから取るのは悪趣味じゃない?」

「悪趣味でもどうでもいい。それを言うなら不知火室長に文句を言うべきだろう」

「それもそっか」

 

 副隊長のニコは相づちを打って山を下りはじめる。スナイプ担当のオトギや、その護衛役を任せたクルミも既に別ルートで撤退を開始したことだろう。

 

「でもこれで、連邦捜査部は明確に敵対する集団が連邦生徒会内部にもあることを認識したことになる。先生の察しの良さには驚くが、いつかは必要だったことだ」

 

 そう。いつかは必要だった事件なのだ。シャーレが謎の外部の人間と取引している実績を押さえることができたことは大きい。第13直轄地の問題で譲歩を求められる事になるだろうが、そもそもが曰く付きの土地だ。整理するきっかけとして考えれば許容できる被害になるはずだ。

 

「不知火室長が自身の符号に“タイタス”を選ぶぐらいだ。伊達ではない。あの人は狂気と道化を演じられる人だ」

 

 戯曲『タイタス・アンドロニカス』は暴虐と復讐の物語であり、弾圧の物語だ。暴力が言葉を封じ、封じられた言葉が次の復讐へと演者を駆り立てる。娘の尊厳が冒され、二人の息子を喪った将軍タイタス・アンドロニカスは狂気を演じることでその復讐心をひた隠し、最後には復讐を遂げることとなる。

 

「でも、わたしは小隊長にタモーラは似合わないと思うけどね」

「買いかぶりだ。……それに、私はこの役を心底気に入っている」

 

 それぐらい残忍であれればと思う。SRTは手段だ。手段に憐憫は必要無い。

 

「……小隊長がそれでいいなら、いいけどさ」

 

 ニコはどこか寂しそう。

 

「この世にどんな洞窟や隠れ家があろうと、果て知れぬ暗闇や霧深い谷があろうと、血生臭い殺人や忌まわしい凌辱がその罪深さに(おのの)いて身を潜め隠れる場所など、どこにもありはしない。必ず私が奴等を見つけ出し、奴等の耳に私の恐ろしい名前を囁いてやる」

「……第五幕第二場、だったっけ、それ。小隊長、もしSRTじゃなかったらトリニティかどこかで文学部とか図書委員とかしてても楽しかったかもよ」

「私にこれ以外の生き方なんてないさ……さぁ、タイタスの演説に期待しよう。全てはキヴォトスの平和のために」

 

 月がきれいに浮かんでいた。もうすぐ満月らしい。

 

 

 


 

 

 

「やぁカヤ」

 

 僕の来訪を不知火カヤは予想していたらしい。カバーを外した無機質な表紙の文庫本を読みながら執務室で待っていてくれた。僕をみて本を閉じる。もうすぐ22時、手早く済ませたいところだ。

 

 護衛は『絶対に手を出すな』と言い含めてシロコに担当してもらった。シロコはこれ見よがしにスポーツグラスタイプのTITTYを装着している。カヤならこれが何かを知っているはずだし、抑止力としても十分だろう。

 

「こんばんは、先生。どうぞお座りください」

「ありがとう。夜も遅いから手短に行こう……第13直轄地について調べ始めてから僕への監視が激しくなった。なぜだろう?」

「第13直轄地について調べ始めたからですよ。あそこへの立ち入り禁止は連邦生徒会長権限に基づく行政執行命令第2502号、通称EO-2502が関わる特殊なものです」

 

 知らない単語が出てきたぞ。日本語の羅列からしてEOはおそらくExecutive Orderかなにかの頭文字だろう。リンもかなりの強権を振るえているし、連邦生徒会長の権限というのは本当に広範囲に及ぶらしい。

 

「それはつまり、連邦生徒会長が直々に立ち入りを禁止した、ということかい? たしか表向き書類は文化室と防衛室の連名で議会への発議がなされていたと思うけど」

 

 モモイ達とあった日、アロナに議事録を調べさせた結果を思い出す。確かに文化室と防衛室と記載されていたはずだ。そして、その理由は機密扱いになっている。

 

「あぁ申し訳ありません。ちょっと乱暴に結論を言いすぎましたね。確かに現状有効な立ち入り禁止は議会を通して、生徒会長承認を得た正式なものです。ただし、それはあくまで議会を後追いで通して、帳尻を合わせたものです。実態は連邦生徒会長の独断を持って区域ごと封鎖されました」

 

 廃墟化して長いので近づこうとする人もあまり居なかったでしょうが、とカヤは感想を述べている。

 

「原因は?」

「過去に連邦生徒会と複数の学校が共同で技術研究をしていました。工場周辺を徘徊しているロボットをなんとかして、有事の際にセーフティの一つして利用できないかという計画があったとされています」

「されている? 推定だね」

「はい。かなり過去のもので資料も散逸しているためなんとも……おそらくは予算か意見の対立から計画が頓挫、凍結されてあの区画ごと放置されていたんでしょう。そしてあの徘徊ロボットのおかげで犯罪者の巣窟になることもなくただ朽ちていき、連邦生徒会としても価値が薄れ、宙ぶらりんのまま放置されていたのが第13直轄地です」

 

 聞いている限り、連邦生徒会は工場とロボットは知っていた。そして、アリスのことは知らなかった、もしくはどこかの段階で情報が抜け落ちたように聞こえる。

 

「だというのに、それを()()()連邦生徒会長の失踪直前に、立ち入り禁止を明文化し、同時に機密指定とする命令書を発行した」

「それがEO-2502?」

「えぇ。そしてその効力が現在も有効である以上、連邦生徒会は機密に対する不当アクセスがないか監視する必要があります。担当部署は防衛室及びその配下組織とされました。ですので先生の監視は防衛室の通常業務の一環として行っています。私個人としては非常に不本意なのですがね」

「なるほど、それが通常業務なら僕が文句を言うのも筋違いだね」

「ご理解いただけたようで何よりです」

 

 カヤはほっとしたように微笑んでいる。

 

「それにしても、なんで連邦生徒会長はわざわざこんな事をしたんだろうね」

「さぁ……私もそこは連邦生徒会長が戻ってきたら詰め寄りたいですよ。なんでこんな仕事を増やしてくれたのか、と」

「それっぽい情報は無いのかい?」

「何らかの信号の送受信を察知したかららしいですけどね。それも真実かどうか」

 

 それが正しいならその通信がG.Bibleのデータ転送の可能性が高い。こうなるとヒマリの自作自演の可能性は薄れたか。連邦生徒会にここまで激烈な対応をさせるほどの劇物を易々と動かすとは思えないし、僕をハメるつもりで糸を引いていたなら、連邦生徒会長の失踪前に状況を整えるのは不可能だ。

 

「もう一つ聞かせてほしい。そのめんどくさい状況でシャーレの第13直轄地の調査を認めたのはなぜだい?」

「防衛室には止める権限がないからです。連邦捜査部は連邦生徒会長直轄組織という扱いで、連邦生徒会長がほぼ自身と同等に近い権限を付与した。……まるで、連邦生徒会長自身が消えることを予期していたかのように」

「……すまない。理解が追い付かなかった。どういう意味か説明してくれ」

 

 カヤの目がすっと細められる。

 

「シャーレ設置の根拠になったのはEO-2()5()0()1()。……第13直轄地の機密指定と同日に連邦生徒会長が署名した命令書です」

「……そういえば連邦生徒会長がシャーレを設置したとは聞いたけど、根拠になる命令とか法律とか、調べたことはなかったな。なるほど。そういうことか、なるほど。確かに無関係とは言いがたいタイミングに見えるね」

 

 つまるところ、カヤは連邦生徒会長が種を蒔き、僕がその種を育てて連邦生徒会に牙を剥く可能性を案じている、といったところだろう。状況は理解したが、何でこうなっているのか本当にわからない。連邦生徒会長は僕に何をさせたかったんだろう。

 

 答えが出そうにないが考えるしかない。そんなことを思っているとカヤが言葉を継いだ。

 

「シャーレの正当性は連邦生徒会長の命令書のみに立脚し、それに署名した連邦生徒会長は行方不明。後を継いだリン代行も先生の扱いを持て余している今、シャーレの正気を担保するのは先生の人間性のみ。……法執行機関としてあまりに不透明で、脆弱です。もちろん私個人としては先生のスタンスは好ましいと思っていますし、先生の実力は折り紙付です。だからこそこの件についてはどうしても慎重にならざるを得ないというのはご理解ください。公権力は官僚によって管理、運用される必要があるんですから」

 

 そして僕はその状況でアビドス周りを色々飛び回り、カイザーグループと睨み合った。セリカの誘拐やホシノの誘拐などの対処の為に連邦生徒会への相談をすっ飛ばして対応していたのも、カヤの警戒を強めさせる原因になったということだろう。カヤの目的がどこにあるのかはわからないけれど、シャーレは相当に警戒されている。

 

「認識のすりあわせはできたと思いますが、先生はいかがでしょう?」

「そうだね。おおよそ背景は理解できたよ。シャーレの監視も人員の送り込みも好きにしてくれていいんだけど、武器を向け合うのは事故しか起きないからやめたいところだね」

「同感です。こちらも体制を引き締めましょう。よく言って聞かせます」

 

 カヤはそう言って笑みを深めた。言って聞かせる、ねぇ……とちょっと辟易する。今夜の狙撃手配置騒ぎはあくまで部下とのコミュニケーションエラーによるインシデント、というところに落としたい、ということだろう。

 

 だが実際は僕に対する宣戦布告と犯行声明だ。まぁ受けて立つ以外手はないし、ホシノたちを助ける都合上、カイザーグループとなんらかのコネクションがあるらしいカヤにとって、僕の方から喧嘩を売ったように見えたに違いない。

 

 そして誰が意図したか、はたまた不幸な事故かは知らないが、問題がくすぶっていた第13直轄地に僕が火をつけた構図になった。短期決戦といきたいが、アリスを保護した都合上もう手を引けない。このタイミングをわかっていてカヤがわざと監視をちらつかせ、僕に仕掛けさせたとしたら、僕はここまで完全にカヤの手のひらの上で踊っていただけ、ということになる。

 

「夜も遅いし今日はここまでにしよう。第13直轄地の捜査などについてはまた改めて明日にでも、カンナにも相談してるから彼女も交えて話したいね」

「あ、先生。その件ですが、連邦生徒会長の意図が不明ですし、実際戦闘になったとなると、それなりの人員を送り込むしかありません。なのでSRT特殊学園から手空きの人員を派遣したいと思っています」

「うん。カンナからもそう聞いているよ」

「では、先生も同意ということでいいですね? ちょっと書面とか含めて準備するんで数日かかりますが、それから調査ということで。派遣予定のチームについては先ほど情報をお送りしたので後で見ておいてください」

「ここに来る前にもらったメールのことだね。わかった。確認しておく」

「ロボットさんにもよろしくお伝えください」

 

 それだけ交わして部屋を出る。シロコがどこか不満そうに聞いてくる。

 

「……いいの、先生?」

「目的は果たしたからね」

 

 ともかく、宣戦布告を受けて立つことは伝わっただろう。シロコはまだ不満そうに僕を見てくる。

 

「防衛室長の言ったロボットさんって、アリスのことだよね?」

「そうだね。すでに情報は漏れてるぞという圧力と、ミレニアムとシャーレでアリスを預かることは黙認するよって合図だ」

 

 僕の情報戦は下手なので、さっさと事実を共有してオープンにことを動かす方がうまくいく。だからアリスの情報が漏れることそのものはあまり気にしていない。それでアリスやゲーム開発部が被害を被るなら対処すればいい。

 

「まぁ、再調査が入るまでは現状維持でいけるだろう。早めにアリスの学籍とかを確保して、裏でこそこそできないようにしちゃうのがいいかもしれないね。こういうのはさっさと既成事実化するに限る」

 

 そう言うとシロコがすごい顔で僕を見てきた。待て、今僕はなにか変なこと言ったかな。

 

「既成事実化……ん、なるほど」

「シロコ、さっきも言ったけど早いうちに面談をしよう。ナチュラルに銀行強盗を提案したり天窓からダイナミックエントリーしたり、ガチガチに監視役を縛ったり、僕は結構君のことを心配しているんだ。あんまり心配させないでくれ」

「……ん」

 

 シロコがその返事を最後に黙り込んだ。少し目を伏せているシロコの頭をポンポンと撫でて話を切り替える。

 

「やれやれ、被害が少ないからなんとか許容できるけど、ここまでは控えめに言って完敗だ」

 

 連邦生徒会の意図はわかった。だが、ピースがどうにもはまらない。

 

 連邦生徒会長は僕になんとか第13直轄地に関わってほしかったのは確かだろう。僕の情報が連邦生徒会長経由で工場に転送されていたとしたら、あの工場での認証のデータの出所も説明がつくからだ。連邦生徒会長から預かったシッテムの箱、それに常駐するアロナは僕を待っていたと言った。少なくとも連邦生徒会長は、僕の情報を持っていたのは間違いない。

 

 だとしたら、連邦生徒会長が僕に預けたかったのは、認証を経て通されたあの空間にいた、アリス、ということになる。ゲマトリアに手を引かせた時も、残念ながら、と言っていた。名もなき神々のオーパーツというのは、それなりに価値があるのだろう。

 

 ここまでは連邦生徒会長の意図、そして、カヤが僕を警戒する理由につながる。問題はミレニアムの動きだ。なんでヒマリは第13直轄地にメスを入れたがったのだろう。おそらくまだ伏せられている情報がある。

 

「まぁなんとかしていこう」

「ん。頑張る」

 

 結局僕は戦争しかできないし、そういう思考しかできないらしい。それでもいつか世界を変えると言ったのだ。自分の言葉の責任ぐらいは取りたいところだ。

 

「まずは第13直轄地の問題をある程度片付けないといけない。共同調査の担当の子達が良い子達だといいんだけど」

 

 そう言ってメールを確認する。人員は4人。カヤの用意した監視役、ということだろう。今後も交渉チャンネルとして機能していくことになるかもしれない以上、優秀だとありがたいけど、どうだろう。一年生だし大丈夫だろうか。

 

「RABBIT小隊、か」

 

 限界・ギリギリ・マージナル。また僕は子どもをつかって賭けをすることになりそうで、今から気が滅入りそうだった。




地球側の古典がバンバン出てくるのは仕様です。アプリ公式でも「ばにたす」とか完全に聖書だし問題ないよね! うん!

あとカヤは「その方が様になるから」で文庫本のカバーと帯を外すタイプ。

次回 ゲーム学習の成果

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