マージナル・アーカイブス - 子供使い、先生になる -   作:オーバードライヴ

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大変お待たせいたしました。
メインストーリーに戻る前に、何話か閑話を挟みます。

今回から数話はあるブルアカ二次創作とのコラボレーション企画となります。
どうぞよろしくお願いいたします。


F2: Re:Aoharu
// Re:Aoharu_Arata_Mod_start=>>>


 春、と呼ぶには遅すぎて、夏、と呼ぶには早すぎるぐらいの季節だと、正義実現委員会の冬服は暑くてたまらない。それでも黒い制服を身につけ、黒いベレー帽を被るのは、わたしにとっては、こだわり。流されてここまで来たわたしが、わたしであるために必要な、譲れないこだわり。

 

 それに最近左腕に巻くことが許された腕章はこの制服以外には似合わないし、同じ腕章を身につけているわたしの先輩と並び立てたような気がして、背中を伸ばしてくれる気がする。

 

 ……その先輩は、横で珍しくへばっているけれど。

 

「なんとかついたっスねー、ミコちゃんは疲れてないっすか」

「全然……って言うと、ちょっと嘘になっちゃいますけど」

「なるほどぉ……私の妹分は優秀なのであーるっ」

「イチカ先輩、らしくないですよ?」

「……ふふん? ミコちゃんも言うようになったっすねぇ」

 

 重すぎない程度に体重を預けてくるのは正義実現委員会の先輩で、私の『お姉さま(シスター)』の仲正イチカ先輩。お姉さまといってもトリニティ総合学園の制度上のもので、先輩が後輩と1対1で面倒を見るというものに過ぎないけれど、それでもイチカ先輩とわたしは、それを超える絆を築けていると思っている。……少なくとも、わたしは。

 

 最近ちょっと『いろいろあって』、なおのこと厳重に前髪を伸ばすようになったけれど、それ以外はトレードマークなんてなにもない、ただの一般トリニティ生だったわたし。学籍番号359番から『ミコ』だとか『ミコっち』だとか呼ばれるぐらいしか個性がなかったけれど、それでもイチカ先輩にもそう呼ばれるようになってから、真っ直ぐ前を向けるようになった気がする。

 

 なんだか遠いところまできちゃったなぁと思っていると、そんな心を知ってか知らずか、イチカ先輩の顔がわたしの方を向く。

 

「ミコちゃんはD.U.外郭って来たことあるっすか?」

「えっと……一応D.U.外郭地区そのものに来たことはあるんですけど、このあたりはないです。お買い物目的だとこのあたりのオフィス街には来ないので……」

「お仕事でもこのあたりはヴァルキューレが機能しているから来ることないっすもんね。実は私もだけど……何かあったら強行突破っすねぇ」

「……シャーレってそんなところなんですか?」

「さぁ。ハスミ先輩はそこまで警戒しなくてもいい、とは言ってくれてるっすけど、視察の指示を出したのがまさかのティーパーティーとなると……まぁ、気も抜けないっすよねぇ」

 

 今回イチカ先輩とわたしが制服に腕章までつけてトリニティの自治区外までやってきたのは、当然訳がある。昨日いきなりハスミ先輩に呼びだされて言いつけられたのは、連邦捜査部シャーレの視察及び現状報告を実施すること。それも日帰りでもない1泊2日だ。外部の視察だからイチカ先輩が呼ばれて、姉妹(シスター)だからわたしも一緒にという流れになったのはわかるけれど、あまり外との関わりがなかったから結構緊張している。

 

「それにしても、なんでこのタイミングなんでしょう」

「自警団の子達とか、えっと……放課後スイーツ部って言ったっすかねぇ、そんな子達がアルバイト感覚で登録している以上はトリニティも無関係で居られないっすから……というのが表向き」

「え? ……裏があるんですか?」

「まぁそのあたりは追々話すっす。そういうことのハンドリングは私の担当っすから、ミコちゃんは先入観に囚われず、相手の様子を窺うように。わざわざ二人で派遣した意味はおそらくそこっすからね」

「は、はい……!」

 

 なんだか緊張するけれど、目の前に現れたシャーレ本部ビルを見上げる。土地一杯に建物が立っているのはビルの低層階だけ、だいたい6階ぐらいまでで、そこから高い高層階がにょっきり生えている。正面入り口に入っていくイチカ先輩から半歩遅れて建物の中に入ると、心地良い涼しい風がふわりと吹いてきた。エントランスの中央にはセキュリティゲート、その向こうには遮熱シートのせいかかなり青っぽい色がついた窓ガラスが全面についている。……これ冷暖房代だけでもすごいことになりそう、なんて思ってしまったのは、多分わたしとわたしの財布が小心者だから。

 

 きょろきょろしていると、ゲートの奥から小走りで女の子が走ってくる。黒い髪に赤い眼鏡、細い耳はテレビでよく見る連邦生徒会長代行によく似ているように見える。前を開けたジャケットの下に覗くのはベージュのサマーニット。水色の腕章にはシャーレの紋章らしいシンプルなヘイローを模したマークが白抜きされている。

 

「正義実現委員会のお二人ですよね? 今日明日視察される予定の……」

「そうっす。もしかしてお迎えに来てもらっちゃった感じっすかね」

「はいっ。連邦捜査部『シャーレ』運用基盤グループ指揮管制セクション、セクションリーダーの奥空アヤネです。本日はお二人の視察の案内をするように先生から仰せつかっています」

「正義実現委員会事務局渉外係係長の仲正イチカっす。こっちは同じ係で私の(シスター)のミコ」

 

 ぽんと背中を押されて慌てて頭を下げる。水飲み鳥ってオモチャがあったなぁとどこか場違いな事を思ってしまった。

 

「アヤネちゃん……って呼んでいいっすか? 一年生っすよね、アビドスの」

 

 いきなり相手の所属と学年をピタリと言い当てたらしいイチカ先輩。驚いていると迎えに来てくれた人、アヤネさんも同じく驚いたみたいで笑顔が硬くなっている。

 

「学生証のカラーバーを見れば学年位わかるっすよ。アビドス高校は元強豪校っすから」

「あ、なるほど」

 

 アヤネさんはそう言うと胸元につけているネームプレートを軽く見て微笑んで続ける。トリニティの調査対象にアビドス高校も入っているということをさらりと流したのは多分わざとで、ビルに入る前に言っていた『そういうことのハンドリング』というのはこういうことだったらしい。

 

 だというのに、アヤネさんはあまり気にはしていない雰囲気。

 

「呼び方はご自由にどうぞ。あとお二人には、このビジターカードを下げておいてください。このカードがないと入れなかったり出られなかったりとかあるので……」

「厳重っすね-」

「まぁ……ゲヘナの皆さんが突撃してきたりといろいろありましたから……」

 

 苦笑いをしつつゲートを操作して通してくれるアヤネさん。 ……というよりアヤネさん、わたしと同じ1年生なんだ。名乗っていた肩書きも「指揮管制セクション セクションリーダー」と言ってたから多分司令部のトップ。正義実現委員会で考えるとハスミ先輩のポジション……そう考えると結構とんでもない人が案内してくれるらしい。

 

「どうかされましたか?」

「な、なんでもないです。……ごめんなさい」

「?」

 

 同じ一年生なのに、と足下に視線がおちて足下までクリアに見える視界にさらに落ち込む。まだ成長期だと信じているがそろそろ怪しくなってきた。

 

「ミコは恥ずかしがり屋なんっす」

 

 イチカ先輩はそう言って肩をぐいと掴んで組んでくる。

 

「ふふっ。仲良しなんですね」

「ミコちゃんはあげないっすからね!」

「ちょっとイチカ先輩っ!」

 

 そんなやりとりのなか、やってきたエレベーターに乗る。アヤネさんが押したボタンは6階。

 

「先生はいま訓練の監督をしているので、ちょっとその様子を覗いてみましょう。先生に挨拶をしてからビルの案内と質疑応答の時間をとる予定です」

 

 音もなく動くエレベーター、このあたりの設備をみるとトリニティにもエレベーターが欲しいと思ってしまう。基本的に低い建物しかないトリニティだから必要無いのはわかっているけれどそれでも欲しくなるのは仕方ないと思う。

 

「指揮管制ユニットの所属ってことは、アヤネちゃんは指揮官なんっすか?」

「えっと……事前集積とか事後処理はメインで持ちますけど、戦闘中は先生が指揮していることが多いのでがっつりとというわけではないですね」

「あれ、そうなんすか?」

「結構センシティブな事件とかが多いのもあって、難しい運用が多いとどうしても先生頼みになっちゃうので、人員不足がひどくて……」

「新進気鋭のシャーレといえども大変なんすね」

 

 そんな会話が飛び交う中でエレベーターは6階に到着。ガラス張りのブースがいくつか並ぶ廊下は結構長い。

 

「綺麗なオフィス……」

正実(うち)の執務室と比べたらそりゃあそうっすよ」

 

 イチカ先輩に相槌を返されて慌てて口元を押さえる。トリニティの校舎は歴史のある校舎……といえば聞こえは良いけれど、それはすなわちいろんな所がいたんでいるということで、やっぱりここやミレニアムみたいな「新しくて綺麗な校舎!」みたいな雰囲気はない。

 

「シャーレの規模もやっと80人を超えたぐらいなので、まだスペースも余ってる状況……って先生は言うんですけど」

「……十分に多くないっすか?」

 

 イチカ先輩の突っ込みにアヤネさんは苦笑い。

 

「私もそう思うんですけど……今の仕事に対してスタッフが少なすぎるって言ってますね」

「あー……『戦線離脱(エバキュエーション)ホットライン』でしたっけ? ヴァルキューレや連邦生徒会と合同で始めたの」

「はい。復学支援プロトコールの一環ですね」

「復学支援プロトコール……ですか?」

 

 完全にはじめましてな言葉が出てきて首をかしげてしまう。アヤネさんは優しく笑ってくれた。

 

「例えば、友達に誘われてとか、たまたま巻き込まれてとか、あとはアルバイトのつもりで自分で脚を踏み込んだとか、いろんな理由で犯罪組織や不良グループに所属してしまう生徒さんが結構います。そのせいで学校を退学になったけれど、もう一度学校に通いたいとか、もう犯罪はしたくない、足を洗いたいと思う人たちが復学できるようにする一連の手続き(プロトコル)のことです。シャーレは相談受付から、身柄の保護までの第一段階を『戦線離脱(エバキュエーション)ホットライン』としてパッケージ化、その対応を実施しています」

 

 いきなり情報を叩き込まれて頭が追いつかないけれど、イチカ先輩は理解できたみたい。

 

「それ結構危ないような……それこそ犯罪組織と真正面から潰し合いになりそうな感じがするっすけど……大丈夫?」

「今のところはなんとか。そろそろ人員募集をかけた1期生の初期訓練が完了して作戦実行グループに配属できるので、そしたら一気に数で押し込めるようになりますし、作戦はだいぶ楽になります。……まぁ、その分、後方支援担当の私たち基盤運用グループが今から激務なんですけど……」

 

 後半で疲れ切った顔色を見せるアヤネさんの肩をぽんと叩くイチカ先輩。わたしも腕章をつけるようになってわかったけれど、正義実現委員会では現場よりも執務室の方が大変だ。緊急時の対応は日常の積み重ねだというのはよくわかっていたつもりだけれど、それは本当に重たいんだと、今ならわかる。

 

「あんまり根詰めちゃだめっすよー」

「あはは、みなさんに言われます……先生に、も……心配掛けさせてしまってますし……」

 

 さっきから飛び出している『先生』っていうのは、多分シャーレの顧問としてやってきた顧問の先生のことだろう。一月ちょっとまえの『第13直轄地の徘徊ロボットの排除』はニュースになっていたので覚えている。

 

「ふーん……なるほどっすねぇ」

「えっと、なにがですか……?」

「いやいや、こっちの話こっちの話」

 

 なにかに気がついたイチカ先輩がニヤニヤしながらアヤネさんを見ている。

 

「と、とりあえず入りましょうか。ここがシャーレの作戦指揮所、私たちはオペラハウスと呼んでいます」

「えっと……Operation Houseでオペラハウスですか?」

「はい、そういうことです。通過する時は必ず、このカードリーダーにカードをかざして、この電気が緑色になってから通ってください。ドアが開いていても必ずです」

 

 言われるがまま壁際のカードリーダーにカードをかざす。電子音がして緑色のランプがともったことを確認して先に進む。

 

「イズナ班、集合ポイントをE14R1に変更、15分後までに到達せよ。ツバキ班は移動を中止、指揮階梯変更、ハルナ班と合流し、ハルナの指示に従ってくれ。ハルナ、ツバキ班の人員と合流して次のアクションに備える。5分以内に態勢を整えよう」

 

 聞こえてきたのは男の人の声、ものすごく速い。最小限の明かりに落とされた作戦指揮所は冷房が効きすぎるぐらい効いていて、これなら確かにアヤネさんが着ているようなサマーニットのようなものが必要なのもわかる。

 

「えっと……これは……」

 

 あんぐりと口を開けているイチカ先輩。わたしたちが通されたのは大講義室みたいな階段状の部屋の一番高いところ、正面には大きなスクリーンが壁一面にあって、いろんな地図や監視カメラの映像が映し出されている。

 

「今は一期生の訓練中です。ヴァルキューレや元SRTの訓練設備を借りての移動訓練ですね」

「あー……一番つらいヤツっすね」

 

 そういわれて大体察しがつく。移動訓練というのは本当につらいのだ。ひたすら動いて移動して、移動した先で1発だけ撃って、また移動したりする訓練で、体力が本当に求められる。正義実現委員会でも同じような訓練をやるが、わたしの成績は落第ギリギリ(スタンダード・マイナス)、誰かのマイクの音がスピーカーから流れているが、本当に息が上がっているらしい。

 

「シロコ、移動速度を落とそう。レイサが落後している。時速10キロまで落とすんだ。……そうだ。その調子、シロコはもう少し言葉にして指示を示していこう。そのほうがよっぽどいい」

 

 正面のモニタを見ながら指揮をしている男の人がこちらに向けて手を上げた。アヤネさんやわたしたちが来ている事に気がついたらしい。

 

「アコ、訓練状況を預けたいが、大丈夫かい?」

「え、えぇ……問題ありません」

 

 その声を聞いた瞬間にんっ!?と喉の奥が鳴るイチカ先輩。先生の声に応えた生徒さんの姿はここからだと見えないけれど……

 

「イチカ先輩、お知り合いですか?」

「……まぁ、うんそうっすね。アヤネちゃん、もしかしてって言うまでもないとは思うんすけど、アコって、あの、ゲヘナの……?」

「はい、天雨アコ行政官です。ゲヘナ風紀委員長の()()()で研修名目で派遣してくださっているのですが……もしかして、まずかったです?」

「いや、まずいってわけじゃないんすけど……まぁゲヘナとトリニティの正規兵力同士だと……いろいろと」

 

 あー……とわかったようなわからないような声を上げているアヤネさん。このあたりの温度感はゲヘナとトリニティの間でしかわからないものなんだろう。わたしも偏見だとわかっているが「ゲヘナの皆さんはなんとなくこわい」というイメージがある。

 

「アコ、ユーハブ」

「アイハブ」

 

 そんな会話があって、その男の人が指揮官席から立ち上がってこちらにやってくる。青白い液晶の光に照らされたスーツは細身で青いネクタイがなおのこと光って見える。左耳にヘッドセットを差したままの男の人はアヤネさんの頭をひと撫でしてわたしたちの前で脚を止めた。

 

「ようこそシャーレへ。連邦捜査部顧問、新田(アラタ)リョータだ。ここでは先生とかアラタとかイヌワシとかトリさんとか、好き放題に呼ばれている。君たちも僕のことは自由に呼んでくれ」

 

 差し出された手をイチカ先輩が取る。

 

「正義実現委員会の仲正イチカっす。こっちは同じく正義実現委員会のミコ。私たちのことも好きに呼んでくれていいっす。あと……ハスミ先輩からよろしく、と」

「ありがとう。ハスミは元気にしてるかい?」

「そりゃあもう。水着シーズンに向けてダイエットで忙しくしてるっす」

「……うん?」

「イチカ先輩……っ!」

 

 人の秘密をそうそうバラすものではない、という意味も込めて袖を引く。

 

「なるほど、今度会いに行くときにケーキを持ち込もうと思ったが、それとなくカロリー低めのものを選ぶとしよう」

「あ、私やミコから聞いたというのは秘密っすよ」

「あの、それを知ってるの正義実現委員会のメンバーだけだと思うのでバレると思うんですけど……」

「……それもそうっすね。ま、それでも秘密にしといてください」

「そうしよう。あー、知ってたらでいいんだけど、ナギサやミカは元気にしてるかい?」

 

 呼び捨て!? ティーパーティーのトップを呼び捨て!?

 

 顎が外れそうになったが本当に口に出る前にイチカ先輩に背中を軽く叩かれた。危なかった。相手は先生で大人。たしかにナギサ様やミカ様を呼び捨てで呼んでもおかしくはない地位の人ではあるけれど、トリニティではあまりに問題な発言だ。

 

「下っ端だとあんまり情報下りてこないっすけど、まぁいつも通りのプレスリリースがでてるんで問題ないと思うっすよー」

「そうか。ありがとう。この後の視察についてはアヤネに任せてもいいかい? 宿泊施設とかの手配はもう済ませているから問題ないとおもうけど」

「はい、このまま午前は施設案内をしてパワーランチ、午後はロジコマとの連携訓練を見学していただく手筈です」

「午後の訓練はジブリールか……まぁ上手くハンドリングしてくれ」

「先生が見学にくるとかなければ上手くやれると思いますよ?」

「なるほど」

 

 何がなるほどなのかわかってない様子のアラタ先生は、困惑したみたいに頭の後ろを掻いている。

 

「ジブリールさん……ってこのあたりだと聞かない名前のような……」

「まぁ、うん。このあたりの出身でないのは確かだね。僕が信頼してる子どもの一人さ」

「ふーん……」

 

 なぜかにやりとしてイチカ先輩は横目でアヤネさんを見ています。

 

「な、なんですか……?」

 

 アヤネさんはそれに気がついてさっとなぜか胸元を隠しながらそんなことを言う。

 

「なんでもないっすよー? ちなみに関係無い質問ですけど、アヤネちゃんのこと、先生はどう思ってるんすか?」

「わっ、わーーーっ!?」

 

 アヤネさんがあわててイチカ先輩を止めようと踏み込んでくる。さらりと避けたイチカ先輩はどこかいたずらっ子のような目で先生を見ている。

 

「もちろん信頼を置く生徒だ。いまシャーレにいる生徒の中で一番オペレーター(O)オペレーター(O)として信頼を置いてるのがアヤネだからね」

「オー・オー……シャーレ独自の役職っすか?」

 

 イチカ先輩の質問にアラタ先生は頷く。

 

「直接的に事態の解決にあたる生徒の事をオペレーターと呼ぶんだけど、そのオペレーターをこの指揮所からオペレートするのがOO、つまり僕やアヤネの役目だ」

「じゃあ、アヤネちゃんは名実ともに先生の後輩というか、教え子ってことっすね」

「そうなるね」

 

 その頃には真っ赤になって頭から煙を出しているアヤネさん。

 

「やめてください先生、それ以上は恥ずかしくて死にそうです……!」

「事実だけどね。多分ホシノも否定しないと思うけど」

「だからもうやめてくださいっ!」

 

 口を封じようと飛び込んでいったアヤネさんを受け止めてから、先生はアヤネさんの頭をなでている。……イチカ先輩が初対面のときからどんどん飛び込んでくるのは知っていたけれど、こういうところでも物怖じしないのは、ほんとうにすごいと思う。

 

「アヤネ、そろそろ案内に戻った方が――――」

 

 先生の言葉が止まる。鳴ったのは電話のベルのようなもの、ワンコールで切れる。そのベルを聞いたアヤネさんは、顔が赤いままだったけれど、すぐに仕事の顔になる。

 

戦線離脱(エバキュエーション)ホットライン……ですね」

 

 先生は表情を変えないままヘッドセットを押さえていた。

 

「通信はユウカが取った。……アヤネ、視察案内は中止してくれ。ヴァルキューレへ最優先(レベルゼロ)で緊急照会を頼む。アコ、準備情報発報、訓練生を呼び戻そう。ちょっとこれは急いだ方がよさそうだ」

 

 急転直下で緊急事態らしい。シャーレに到着して10分も経ってないのだけれど、本当にこの視察、大丈夫なんだろうか。




イチカの登場とあわせて、みょん!先生の『私は正義実現委員会所属の生徒だ。名前はまぁ、無いようなもの。」から正実モブちゃんのミコちゃんが登場です。コラボレーション企画を快諾いただいたみょん!先生、ありがとうございます!

そしてみょん!先生の正実モブ作品をリライトした同人誌が冬コミで出るのですが、武装周りの描写等うっすらお手伝いさせていただいております。背伸びが似合う子犬系少女がクリティカルな方はぜひ……17日までなら通販でも注文できるそうです。詳細はこちらからどうぞ

次回 私はかわいい子の味方なのよね

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