マージナル・アーカイブス - 子供使い、先生になる -   作:オーバードライヴ

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大変お待たせいたしました。
なんというか、ホシノがバカ強いだけの話を書きたかったのですが、とりあえず投下です。


OPR-K007_おじさんとキツネ

「さて、おじさんもあんまりめんどくさいことはしたくないからさ、とりあえず武装解除させてよ。ちょっと話を聞きたいだけだからさ」

「話を聞いてどうする。まさかお茶会で終わりじゃないだろう」

 

 目の前で桃色の髪を揺らす少女のことを私はペーパーでしか知らない。

 

 小鳥遊ホシノ―――アビドス高校の3年生で廃校対策委員会なる組織の委員長。そしてシャーレ顧問、アラタ・リョータが重用する切り込み隊長にして部長。接近戦での戦闘能力の高さは折り紙付きで直接の戦闘は可能な限り避けたいと思う。

 

 それに、オトギが被弾した直後だ。便利屋68を退かせるための安い戦果として渡してやる必要があったとはいえかなりの痛手だ。

 

「お茶で済むならお茶で終わりにしたいねぇ。それとも飼い主には『死闘の上敗退しました』じゃないと恰好がつかない? それならそれでもいいけど、おじさんは楽したいんだけどな」

 

 小鳥遊ホシノはショットガンをくるりと手の中で回して肩に担ぐような姿勢に持っていく。私の上からニコがどいてくれたとはいえ、こちらは手りゅう弾の爆発から逃れるために伏せた姿勢のままだ。立ち上がって飛び出すより先に銃弾が飛んでくる。

 

「それで? おじさんたちをずっと付け狙ってたでしょ? ミレニアムのオーパーツ発見あたりからだよね」

「ほう、眼がいいんだな」

「というより、雑すぎ。FOX小隊は荒事専門。諜報戦は素人同然なんだから気づかれて当たり前。その違いも判らない飼い主に仕えるのは大変じゃない?」

 

 そう言って笑って見せる小鳥遊ホシノ。

 

「だから、飼い主の名前を吐いてくれれば、それで手打ちでいいよ。結構破格の条件じゃなぁい?」

 

 挑発的に笑う小鳥遊ホシノが憎たらしく思えてきたあたり、冷静ではない。冷静にならねば、小隊丸ごと崩壊する。

 

 そんな焦りを感じ取られたのか一気に横を誰かが飛び抜けた。

 

「ば……っ!」

 

 ―――か、止まれ。と制止する余裕もなくクルミがライオットシールドを正面に構えて飛び掛かる。シールドには高輝度のフラッシュライトが装着されており、高速でオンオフを繰り返すことで相手の距離感を奪わせることができる。一瞬でもひるんでくれればそれで十分な時間が稼げるのだが、小鳥遊ホシノはほぼ完全に読み切っていた。

 

「お、その心意気は買うよ?」

 

 小鳥遊ホシノは身体をくるりと回すように動いている。フラッシュライトのストロボが強すぎてコマ送りのように見える。それでも体を回すその動きの最中に腰に提げていた折り畳み式の防弾盾が遠心力で伸張されているのが見える。

 

「でもさ」

 

 その盾がクルミのライオットシールドに迫る。クルミのライオットシールドは取り回しを重視した軽量モデル。おそらく小鳥遊ホシノの盾の方が数倍重たい。まずい。

 

「自分の目までくらませて」

 

 正確にライオットシールドの下段に小鳥遊ホシノの盾が叩きつけられる。ライオットシールドが回転する。手を放さなければ手首から先がハンドルに巻き込まれてねじ切られる。

 

「ぐあっ……!」

「甘いんだよね。詰めがさ」

 

 ハンドルを握り込んで耐えようとする本能を、訓練で鍛えた理性で手放したクルミだったが、がら空きになったその頬に、さらに半回転して踏み込んだ小鳥遊ホシノの肘が叩き込まれる。吹き飛びかけた姿勢で宙を舞うクルミのサブマシンガンのスリングをつかんだ小鳥遊ホシノが、それを振り回す。吹き飛ぶことすら許されず、小鳥遊ホシノの足元にクルミが叩きつけられる。

 

「貴様ああああああああっ!」

 

 跳ね起き銃を構える。逆に小鳥遊ホシノはしゃがみこみ、既に展開済の防弾盾をこちらに向けていた。盾を地面に置くようにしてコンパクトに構えたが、それはクルミのバイタルゾーンを庇うような動きに見えた。

 

―――小隊長が、部下を巻き込むような銃口管理をするのか?

 

 これは聞こえてはいけない囁きだ。一瞬の迷い。その合間に手元に衝撃が走る。銃が弾き飛ばされる。優しく笑った小鳥遊ホシノが盾を持って立ち上がる。

 

「……ナイスショット、ノノミちゃん」

 

 しばらく待ってから銃声。かなりの距離だ。ノノミ……おそらく同じアビドスの十六夜ノノミだ。ガトリング持ちだが、確かに安定した地面に設置したガトリングであれば、長距離の攻撃が可能だ。

 

 ということは、どこかに砂狼シロコや黒見セリカが潜んでいる可能性が高い。

 

「く……そったれ」

「もう一度言うよ。雇い主の名前を教えて。……今のFOX小隊ではシャーレ(わたしたち)に勝てない。FOXの強さもRABBITの強さも、組織化された規律と支援があってこそでしょ? 愚連隊になった今、規律も支援もなくなった」

「それがどうした。規律ならまだここにある。FOXとは、SRTとは、その独立性こそが存在意義だ。私たちはまだ立っているぞ」

 

 それが強がりだと自分自身が一番わかっている。それでも部下が見ている。この迷いは死ぬまで暴かれてはならない。この痛みを背負えることは、隊長としての名誉だ。

 

「FOXは影だ。日向を歩く者たちが立ちすくむような影から目を逸らし続けられるように行動する。それがFOXだ。影は影として日陰で戦い、誰にも感謝されることなく消えていく。それがFOXだ」

「それがあなた達の哲学? まぁブラックマーケットなら何人か共感してくれるんじゃない?」

 

 小鳥遊ホシノはそう言って笑う。

 

「で、それを引き継いだRABBIT小隊は今留置所に入ってる。それがあなたたちの『影に生きる』の答えでしょ。それでもというなら止められないけど、おじさんは嫌だなぁ」

「RABBIT小隊はもっとうまくやるべきだっただろうが、それでも立派に勤めを果たしている。貴様らに同情されるいわれはない」

 

 セカンダリの拳銃を引き抜く。狙撃は飛んでこなかった。長い長いため息が聞こえる。

 

「事情が事情ならRABBIT小隊をそっちの管轄に戻せるように、先生やもっと上に交渉するつもりだったんだけどな……だめだね。全然だめだ。先生に取り次ぐまでもないや」

 

 すっと小鳥遊ホシノの目が冷える。

 

「同情してほしいなら『かわいそうだね』って言ってあげるよ。私もなんだかんだドブみたいな臭い過去のある身だからさ、あとでマリーゴールドやチョコレートを差し入れてあげてもいい」

 

 小鳥遊ホシノの一人称が変わる。ふらふらとした雰囲気が、スイッチを切ったように消える。

 

「でもね、()()()()()()()()()()()()()()。わかるかい、七度ユキノ。あんたはそのリスクをRABBIT小隊に押し付けて笑ってるんだ。あんたは部下含めてたった4人の箱庭しか見ていない」

 

 まるで人格を入れ替えたかのような変わりよう、これは、なんだ?

 

「影になりたいならどーぞ。止めはしない。だけどさ、後輩から戦う以外の選択肢を奪っておいて、戦わせて、捕まったら冷笑して……それがSRTの力の形? SRTの看板に甘えた責任を後輩に押し付けてるだけじゃん」

 

 小鳥遊ホシノはまだ一発も撃っていない。それでも、結果がありありと浮かぶ。クルミのヘイローが消えている。さっきの動きで意識を刈り取られている。オトギも戦闘レンジとしては近すぎるし、前提条件として負傷している。私もメインウェポンを破壊された。五体満足はニコだけだ。

 

 この状況で、周囲のシャーレ部員の支援攻撃を耐えきり、小鳥遊ホシノを撃破して突破できるか。

 

「先輩なら、後輩に責任を持とうよ。……少なくとも、私の大好き(だいきらい)な先輩はそうしたよ。それでその後輩から恨まれると知って、後輩を傷つけると知っても、後輩のためを思ってね」

 

 盾を畳んで腰に吊り直した小鳥遊ホシノは両手でショットガンを握る。

 

「それすら放り投げてギャングごっこに興じるのがあなた達の正義なら、死ぬまでそこで踊ってろ、FOX小隊。RABBIT小隊はシャーレが預かる。文句があるなら撃ってこい。力で道理を通すのがSRTの流儀なら、その清算に付き合ってあげる」

 

 小鳥遊ホシノが散弾銃の銃口を斜め下に向けて――その位置なのは、おそらくクルミに銃口を向けないためだ――構えた。典型的なローレディの姿勢。教範通りの待機の姿勢。

 

 ニコがちらりとアイコンタクト。回数で大体の情報はわかった。……少なくとも、小鳥遊ホシノはちゃんとバックアップを置いている。おそらくは2小隊規模。シャーレが正式に部隊を動かしている。

 

「そこで動けないなら、そこがSRTとやらの正義の限界だ」

「訳知り顔でよく言う」

「手前の教育不足で切り捨てた後輩を笑う木偶の坊にだけはなりたくないだけだよ」

 

 ホシノはそう言ってショットガンにセーフティを掛けた。

 

「どちらにしてももう遅い。RABBIT小隊のハンドリングはシャーレに移管されることになった。不知火カヤ防衛室長判断でね」

 

 ガツンと頭を殴られたような感覚があった。不知火室長がRABBIT小隊をシャーレに引き渡した?

 

「だから安心していいよ……私たちがFOX小隊を追う理由も、警戒する理由もなくなったから、君たちは自由だ」

 

 小鳥遊ホシノが頭上に拳を上げてぐるぐると回した。SRTでも使う撤退命令の合図だ。路地裏から銀髪の少女―――砂狼シロコが出てくる。

 

「あとはお好きにどうぞ。それとも……このおじさん一人殴れば気が済むなら、殴られてあげるけど」

「……ふざけるなよ」

「本気も本気だよ。一応先生から伝言、交渉チャンネルは243.25、必要ならば声をかけて。それじゃ、FOX小隊、また会おうね」

 

 ひらりと手を振って背を向ける小鳥遊ホシノ。その背中を砂狼シロコが守りながら去っていく。

 

 同じ舞台にすら乗せて()()()()()()()。その感情に他責性が混じっていることに気が付いてゾッとする。

 

「ニコ、クルミを回収しろ。オトギは後方警戒……撤退する」

 

 屈辱、という言葉はこういう時のためにあるのだろう。

 

―――それがSRTの力の形? SRTの看板に甘えた責任を後輩に押し付けてるだけじゃん。

 

 小鳥遊ホシノの言葉が、頭にこびりついて離れてくれなかった。

 

 

 


 

 

 

「やりすぎだよ」

「うへぇ……」

 

 シロコちゃんと回収用に回してもらったSUVの後部座席に乗り込むと、運転席の先生が真顔でそんなことを言ってくる。こういうモードに入った先生は本当にテコでも動かない。

 

「ノノミちゃんは?」

「ロジコマで先行して便利屋の皆さんのサポートに入るそうです」

 

 答えてくれたのは助手席に乗っているアヤネちゃん。シャーレ本部のハレさんに通信をかけてロジコマ部隊を撤退させつつ、バックアップの忍術研究部の面々を誘導している。忍術研究部の強い希望で偵察を中心にした訓練をしているが、少しは形になってきているらしい。

 

「ホシノらしくないよ。僕は君たちに感情で引き金を引いてほしくないし、それを伝えてきたと思う。こういうのはあんまりしてほしくない」

「……ごめんなさい」

「うん。次からはうまくやってくれ」

 

 先生に話題をきっちり戻されてしまう。反論の余地もないから素直にごめんなさいだ。

 

「アラタはホシノを虐めるべきではありません」

 

 後部座席のさらに後ろ、トランクスペースでHK416の派生型分隊支援火器、M27IARを構えていたジブリールちゃんが警戒を続けながらそんなことを言っている。普段ジブリールちゃんが使っているHK416Cよりも精度が出ることもあって、私が失敗したらロジコマ大攻勢をしながらSUVごと突撃、私を回収して撤退だったらしい。まったく無茶をすると思う。

 

「虐めるつもりはないよ。戦闘能力がしっかりしている相手に煽り倒すより、もっと命を大切にしてくれと言っているんだ。僕はこんなところで君たちに死なれたくはない」

「アラタが付いているのですからそんなことにはなりません」

「いや、ありえるから言っているんだ。僕がランドクルーザーで爆死しかけただろう? 自分の身も満足に守れない指揮官だ」

「それは敵が卑劣だったからです」

「敵はいつでも卑劣だと思うべきだよ」

 

 先生とジブリールちゃんが言い合いをしている。いつも通りのやり取りにほっとすると同時に、なんだか居心地が悪い。多分それは原因が私のせい。

 

「まーまー、結果として上手くいったからよかったじゃん。これで()()にもプレッシャーがかかったでしょ?」

「それはラッキーだったからだよ。それでも、そうだね。僕のオペレーションのヘマを君たちに埋めてもらった」

 

 そう言いつつ先生はエンジンスタータを回してエンジンを掛けた。先生の自己評価は恐ろしく低い。

 

「先生のヘマって?」

「カスミはビルの5階でキツネを見たと言ったけど、そのビルは3階建てで5階なんて存在しなかった。そしてブラックマーケットの子達が都合よく襲っている状況だった。つまり、トラップだった」

 

 言われてみればそうだ。もっともナチュラルにテロをかます集団のトップの言葉だ。ウソなんて入ってて当然だと思う。

 

「だからこそおじさんたちをバックアップに付けたんでしょ?」

「そうなんだけどね」

 

 先生は車を出しながら大きく回り込む。便利屋68の事務所で話し合いの予定だが、いきなり乗り込んで全員で爆散するわけにもいかない。迂回をしつつ尾行がいないか確認を続ける。

 

「トラップの割にはお金を掛け過ぎている。罠だけでビル1棟、不良集団38人、精鋭の特殊部隊員4人。トラップの発動トリガーを引いたのは温泉開発部だ。温泉開発部も車両を1台撃破され、トップのカスミがつかまった。そこまでして僕たちを追い込みたい意図はなんだ?」

「……私だったら、狩り出して先生を人質にとる、かな」

 

 シロコちゃんがそんなことを言っている。

 

「おじさんも同意見かなぁ。おそらくトップを潰せば瓦解すると思ってるのは確定でいいと思うよ。少なくとも温泉開発部はそういう見解をしている」

 

 カスミと先生の会話は、ジブリールちゃんのTITTYから吸い出して確認している。そして残念なことにカスミの懸念は的中している。先生が撃たれたら瓦解する……少なくとも、私は正気でいられない自信がある。そのリスクに備えるべきなのは確かだし、そうはさせないと思っていても、そうなるリスクはいつでも、どこにでも転がっているのだから、備えるしかないのだ。

 

 もう、私にも、アビドスにも撤退の余地はない。もう失えないのなら、腹をくくって備えるしかない。

 

 車の窓におでこを付けてそんなことを考えていたけれど、ルームミラー越しに先生と目が合う。

 

「やっぱりホシノも内通者がいると思うかい?」

「そりゃあいるでしょ、確定でいる。人を一気に増やしたら当然悪意を持つ人も入ってくる。そこでフィルタリングをしてないんだから当然」

「じゃあどうするの? あぶり出す?」

 

 シロコちゃんがまた質問。こういう時にアグレッシブになるのは、絶対私やノノミちゃんの影響だよなぁと苦笑いを浮かべたくなる。

 

「そういうのは先生は嫌いでしょ?」

「嫌いだね。大嫌いだ」

「だと思った。相手がぼろを出してくるまでは今のままでいいんじゃなあい?」

「情報が抜け続けるのはまずいと思うけど」

「それでいいんだよ、シロコ」

 

 先生が優しく声をかける。

 

「少なくとも僕たちが致命的な誤りをした時のバックアップができるんだ。そのコストをだれかが先取りしてくれるんだからそのままさせておいていい」

「……それで、先生がひどい目に遭うんだったら全然よくない」

 

 おや、シロコちゃんもそういうことをいうようになったか。

 

「僕はそれでいいんだ。君たちが銃以外の解決策を見つけて幸せになってくれれば、それでいいんだよ」

「それで私たちが銃を撃たなくてもよくなったら?」

「先生は廃業だね」

 

 先生はどこか楽しそうにそんなことを言っている。

 

「先生じゃなくなったら、どうなるの?」

「ただの極悪人に戻るだけさ。君たちの知らないところで一人、最低な死に方ができればそれでいいかな」

 

 とりあえずサイドブレーキを無理やり引く。車が急停止。

 

「どうしたんだい?」

「アヤネちゃん、運転変わってあげて」

「わかりました」

「僕の運転じゃ不安かい?」

「知りません」

 

 アヤネちゃんがそうとだけ返して助手席から降りる。うん。アヤネちゃんも同じ考えだったみたい。

 

 ジブリールちゃんの言う通り、イヌワシに乙女心を理解しろというのは無理なんだろう。にしても、先生の自身に対する評価はいくら何でもあんまりだと思う。

 

「まったく、そーゆーことをサラッと言うのよくないからね?」

「あー……うん。そうだね。迂闊だった」

 

 このシチュエーションを『墓穴を掘る』の例文集に乗せるべきだと思う。

 『迂闊だった』ってなんだ『迂闊だった』って。笑顔で崖に向かって全力疾走されたらこっちが困ることを全然わかってない。ジブリールちゃんがハッチバックのドアを内側から開けている。

 

「シロコちゃん、先生を逃がさないでよ」

「ん」

「待ってくれ。怖い怖い怖い」

「怖いこと言ってるの先生だからね?」

 

 ジブリールちゃんとアヤネちゃんの二人掛かりで運転席から引きずり出してシロコちゃんが回収。後部座席に連れ込む。逃げられないように後部座席の真ん中まで押し込んだシロコちゃん。よくわかっている。

 

「ジブちゃん。先生の上に座っとこっか。多分その方が先生暴れないから」

「わかりました」

「わからなくていいから」

「アラタの言うことなんて知りません」

「護衛は」

「ロジコマに手配済です」

「さすがアヤネちゃん。手際いいじゃん?」

「先生は私たちをもっと信用するべき」

「信用してるつもりなんだけどな。……というよりシロコ、少し離れてくれ」

「ん?」

「いや、都合よく何を言ってるかわからないみたいな顔をするんじゃなくてさ」

「あーシロコちゃんずるーい。おじさんも……えいっ」

 

 先生の百面相がすごいことになってきた。まぁ、これぐらい人間らしいほうがいいし、下手に死ねないぐらい愛されているとわかってもらわないと困る。

 

「はぁ……出しますからね」

 

 アヤネちゃんがため息をついて車を再発進させた。今度アヤネちゃんにはどこかで先生をひとりじめさせてあげよう。まぁ、ジブリールちゃんが許してくれたら、だけど。




いびつな危うさが顕在化しつつあるシャーレ、本当に大丈夫か……?

次回 先生の受難

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