俺が彼女と出会ったのは、小さなステージがある公園でのことだった。
「ふん、ふ〜ん、ふ〜ん♪」
「......歌、お姉さんアイドルなのか」
ステージの上で鼻歌を歌う彼女に蝶が花に引き寄せられるように、気づいたら話しかけていた。
「そうだよ、よくわかったね」
「配信で見たことがあって」
彼女、天沢灯は不思議な暖かさと包容力に似た雰囲気を纏っていて、物腰の柔らかさが彼女の性格の良さを感じさせた。
「君はどうしてここに? まだ小学生、でもないよね」
「えっと、映画の撮影の息抜きに来ました? 」
映画監督について来たと言っても幼稚園児が何を言ってるだと思われかねない、どう説明したらいいのか咄嗟に思いつかず、曖昧な回答をしてしまった。
「疑問形? 撮影現場から抜けてきちゃたんだね、君の名前を教えてくれるかな」
「星野アクアといいます、えっと......」
「ん? あー、私の名前は天沢灯、アイドルやってるんだ、よろしくね」
彼女は俺に視線を合わせるようにしゃがむ。そして頭を優しく撫でる。手慣れた動きに普段から同じことしているのではないかと感じた。
「凄いね、しっかり挨拶できて。立派だよ〜」
扱いが完全に小さな子にする褒め方で、精神年齢おじさんの内面に地味にダメージを喰らう。
「でも撮影現場から抜けてきちゃたらスタッフさんたちに心配させちゃうから、戻ろっか。一緒について行ってあげる」
「ううん、大丈夫、ちゃんと自分で戻れるから」
流石に休暇中の彼女を巻き込むのは悪い気して提案を断る。そもそも公園でラフな格好をしている彼女は、どう見ても休暇中なのだろう。
同じくアイドルのアイを身近で見てきたからわかる。なかなか休暇は取れないのがアイドルという職だ。ここは断るのが普通だろう。
「そっか......ちゃんと撮影現場の場所分かるのかな。う〜ん、でも小さな子を一人で行かせるのは不安だなあ」
云々と唸る彼女の隙を見てそっと離れようとする。さすがに小さな子供を一人で向かわすことはそうそうできないだろう。でも彼女の貴重な時間を拘束する訳にはいかない。
「———やっぱり、なんだか心配だから一緒に行こ」
が、簡単に彼女に捕まってしまう。しかも彼女のふわっとした胸に挟まれるように抱っこされる。
「えっ」
「おー、ちょっと軽いかな、ちゃんとご飯食べてる? 」
丁寧にその上、窮屈にならない抱っこ。抵抗するわけにもいかず、なすがまま抱っこされる。いやいや幼稚園児だよ⁉︎ 四歳だからね。確かにアイはよくルビーにせがまれて抱っこすることはあった。けど、えっこの年で抱っこって、うん、おかしくはないのか。
「この近くで、撮影だとあそこかな」
彼女はこの辺りに詳しいのか、目的の撮影現場に確かに向かっている。
「ふん、ふ〜ん、ふ〜ん♪」
道中の彼女は落ち着かせ、安心するような、音色の鼻歌を歌っていた。懐かしくて、久しぶりに聞く優しい歌。アイが子守歌に歌っていた曲だった。
「......その鼻歌は...」
「ん? これはね、昔B小町のアイちゃんと作った鼻歌、私が落ち込んでた時に、アイちゃんと作った二人だけの曲だよ」
天沢灯、彼女がアイと交流があった。確かアイの携帯の連絡先に彼女の名前はなかったはず、つまり彼女は俺たちのことを知らない。
でも彼女はアイと交流があった。もしかしたらアイの携帯にはない交流関係を知っているかも知れない。
「アイのこと、知ってること教えてほしい」
「え、うん......もしかしてファンなのかな」
☆★☆★☆★
私がアイちゃんと出会ったのは、海辺での写真集の撮影が長くなってしまい近場のホテルに泊まった時だった。
アイちゃんはアイドルグループの宣伝用のポスターの撮影にきていて偶然にもお互いが同じホテル泊まることになった。
ホテルのカフェが隣接した展望台あって、寝付けない私は夜風にあたりたくて、たまたまそこに向かった。
「......可愛い笑顔かあ」
その時、先客がいて、それがアイちゃんだった。何か悩んでいて心ここにあらず、なんだか無性に気になって話しかけた。
「あの、隣いいですか? 」
「っ、うん、どうぞ」
展望台には白色の丸テーブルと三つの椅子があって、彼女の対面に座った。彼女の服装は時期的に薄着をしていた。でも海辺の夜は少し肌寒いぐらいで、風邪をひいてしまいかねない。
「......私、アイって言うアイドルなんだけど、知ってる? 」
「うん知ってるよ、私も同じアイドルだから、天沢灯よろしくね。アイちゃん」
「よろしく〜、えっと天沢さん? 灯ちゃんって呼んでいいかな」
「あー、ごめんなさい、確認せずにちゃん付けしちゃて、灯でいいよ」
「ふふ、じゃあ私もアイって呼んでよ、灯」
お互い初対面だったし、普通はすぐに下の名前で呼び合うことはないけど、ただ彼女に距離感を感じさせない何かがあったんだと思う。だから自己紹介していくつか言葉を交わすうちに親しくなっていった。もちろん同じアイドルっていう共通点もある。
「ねぇ、アイはさっき何を悩んでたの? 」
彼女が最初に見たときの悩みを聞いてみたり
「ああね、実はさあカメラマンさんに、可愛い笑顔でお願いしますって言われて普通に笑った顔でやったけど、ダメだしされてね。可愛い笑顔が何かわからなくて、悩んでた」
「可愛い笑顔かあ、うーん......多分だけど、アイの笑顔が、そのカメラマンさんから見た時に、可愛い笑顔じゃなかった、訳じゃないと思う。
笑顔って結局は人によって違う見え方をするし、そのカメラマンさんにとって一番の可愛い笑顔って言うのがあるからね。そうだなあ、普段私の場合は、カメラマンさんの好みとか趣向を事前に調べたりして、実際に撮影時にに、カメラマンさんの好みに近い表情だったり仕草で、カメラマンさんの声に合わせて細かい部分を調整したりする。確か、アイのカメラマンさんの写真集が......」
お互いの趣味や癖とかを話し合ったり
「そうそう、だから白色が好きになってね、ポーチや普段着は殆ど白を基調にしたものなんだ」
「わー、ないわ~あっでも私もセールしてるとついつい買っちゃうなあ」
「ふふ、アイちゃんって時々貧乏くさいよね」
「えへへ、そうかなあ」
私はもうその時には最初の目的なんか忘れてただアイちゃんとの会話に夢中になっていた。
それからは連絡先を交換して、遊園地とか動物園に行ったり、撮影現場がお互いに近かった時には東京の甘い物巡りしたり、アイちゃんと会う日はとっても楽しかった。
でも所属事務所はお互いに別で、得意とする方向性は違うけれども、一応商売敵で同じアイドル。私の所属事務所とアイちゃんの所属事務所で仕事のダブルブッキングが起きてしまって、理由は分からないけれどその時に何かがあったみたいで、関係が一気に悪くなった。以降アイちゃんと会うことも難しくなっていった。
そしてアイちゃんと最後にあったときに起きた
★☆★☆★☆
「それからはずっと会う機会にも恵まれなくて......あっえーとこんな話は聞いても面白くないよね」
「そんなことないよ、その事件って何があったの」
もしかしたらアイのケータイに目的の人物の連絡先が乗ってないかもしれない、その時の関係者の可能性だってある。少しでも可能性の芽は消すべきだ。
「うーん、どうしようかな」
「おい、坊主、何処行ってたんだ。あんま目が届かんとこには行くなと、ってあんたは」
「あっ、えっとこの子が一人でいたので」
「おお、そうか、それはすまん、うちで預かってる坊主が手間掛けさせたな」
惜しくも目的地に着いてしまったらしい。天沢灯の腕から降ろされると、監督に捕まってしまった。
「それじゃ、私はこれで」
「ああ、ありがとう、助かったよ」
いませっかくの機会を逃してしまえば、二度と彼女から話を聞けないかもしれない。そう直感で感じ、去ろうとする天沢灯に話しかけた。
「あの、さっきの続きを...」
「おい坊主」
「......また今度合ったときに続きを話そっか......それじゃまたね」
天沢灯は、手帳から一枚引き抜くとぼくに渡してきた。その紙には次の週の休日と待ち合わせ場所が書かれていた。
それから一週間後、書かれた待ち合わせ場所で時間通り待っていたが、彼女天沢灯が来ることはなかった。
その日彼女は、
――――――ここに向かう道中で交通事故にあって亡くなったからだ
書いてる途中で一回全部消えたり、あやふやな記憶頼りで復元したので一部省略してたり、まあ、うん、てへぺろっ
追記:次回はピーマン体操を見て鼻血だらだら、腹筋崩壊から回復したら書くかもです。...早く主人公の容姿とか、アクア視点から見た主人公とか、長瀬麻奈の回想編とか、ネタや材料はしっかりあるし書きたい。
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