優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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 あらすじにも書きましたが、この作品は過去に小説家になろう様の方に投稿した拙作を加筆修正したものです。話の大まかな流れ等は大きく変わらない(多分)ので、過度な期待はしないで頂けると助かります。

 その上で、ゆるく楽しく、暇潰しに読んで頂けたなら幸いです。


エピローグ・優輝の日記

 久しぶりに何の予定も入っていない日がまとまって数日出来たので、暇潰しがてら倉庫部屋の荷物を整理していた時の事。

 

「あ、これは……ふふっ懐かしいなぁ」

 

 ダンボール箱を漁っていたら、古い日記が出てきた。パラパラとページをめくって軽く確認……うん、やっぱりこれ、僕の学生時代の日記だ。

 

(……ほんとに懐かしい……ふむ。んー……よし、暇潰しはこれに変更しよう)

 

 別に倉庫整理といっても、倉庫が手狭になってきたから不要そうなものを処分しようとしていたとかじゃない。あくまで暇潰し目的だったのだから、日記を見て昔を懐かしむ事に変更しても何も問題はない。

 

 日記が出てきた箱と周辺の箱内を徹底的に漁り、今まで自身が書いてきた日記をすべて見つけ出してから手早く箱を整頓し、日記を抱えてリビングに向かった。

 

 

 

 

優輝(ゆうき)様、お早う御座います」

 

 リビングに入るなり、台所から挨拶された。そこにいるのは、黒髪ロングにクラシックタイプのメイド服のに身を包んだ、クール無表情の女性。料理の仕込み中のようだけど……数日姉さんと一緒に外出していて、僕が朝起きた時点ではまだ帰ってきていなかったはずだけど。いつの間に帰って来てたのやら。

 

静海(しずか)おはよう。姉さんの食事?」

「その通りで御座います」

 

 周りを見回しても姉さんの姿はない。静海は姉さんが主人(僕も半分そうだけど)だから、一緒に帰宅してるはずだけど……どうせ姉さんだし数日寝てないのだろうから、今は自室のベッドの上かな。

 

 ちなみに、今は朝とも昼とも言えない微妙な時間、ブランチタイムだ。作り終えればちょうど昼時かな。

 

「優輝様も召し上がりますか?」

「うーんそうだね、食べよっかな。ちなみにメニューは? 手伝って良い?」

「マスターのご要望は、クリームシチューハンバーグというものです」

「む、何気に僕があんまり作った覚えがない料理……手伝わせて?」

 

 料理好きとして、最愛の姉が好きそうなクリームソース系のメニューは是非とも手を加えたい。

 

「はい、了解しました」

 

 それに対して静海は間を置かず、無表情のまま小さく頷いて了承してくれた。

 

 

 

 

 もう少しで完成、というところで背後に微かな気配。するりと滑るように僕に近付き、

 

 ちゅっ

 

と頬に小さく音を立ててキスされる。こんな事をしでかす知り合いは、我が最愛の姉であり僕を宇宙一溺愛している双子の姉、水城(みずき) 瑞希(みずき)を置いて他にいない。

 

「おはよう優輝。今日も最高に可愛いな」

 

 うん、やっぱり案の定。ま、割と良くある行動だし……けど。

 

「おはよう姉さん。と言っても、もうお昼の12時近くだけど……というか何度も言ってるけど、料理中に音もなく密着接近しないでって。危ないよ?」

「優輝なら私の気配に気付かないはずがないだろう? ゆえに何の問題もない。それよりもうすぐ完成だろう? 良い匂いだな、料理も優輝も」

「はいはい。予想通りもうちょっとで出来上がるから、席に着いて大人しくしてて」

「うむ」

 

 適当にあしらったのに満足そうな笑顔で大きく頷き、台所を出て行く姉さん、と入れ替わりで静海がお皿を持って入ってくる。

 

「煮込み終了時間まで後約1分です」

「そだね」

「優輝様はお先に席へ。後はお任せ下さい」

「ん、わかった。ありがとね」

 

 短くそう言って、エプロンを外しながら姉さんがいるであろうダイニングテーブルへと向かった。

 

 

 

 

「うむ、最高に美味い! さすが優輝だな!」

「ふふっ、お粗末様です」

 

 少しオーバー気味にそう絶賛してくれる。何度も言われてはいるけど、やっぱり声に出して伝えられると毎回嬉しくなる。

 

「でも、静海にも言ってあげてね。姉さんの注文を受けて作り始めたのは静海なんだから」

「うむ、そうだな。美味な料理だ、流石は私の静海」

「有難きお言葉……感謝の極みです」

 

 いつも通り、顔も声も感情があまり感じられないけど、どことなく嬉しそうな声色でそう返す静海。可愛い。

 

「ところで優輝。リビングに、昔優輝が書いていた日記があるが、朗読しても良いか?」

「なんで朗読……恥ずかしいからやめてね?」

「じゃあ朗読は優輝がしてくれ」

「えぇ……朗読は決定事項なの?」

「ああそうだ」

 

 一方的にそう言って食事を再開する姉さん。有無を言わさぬ態度からして、これは避けられないパターンだなあ。んもう、相変わらずワガママなんだから。

 

「はぁ……ま、いいけどね」

 

 でもまあ、うん。それで姉さんが喜んでくれるなら仕方ないね。相変わらず、僕は姉に甘い。

 

 

 

 

 ということで。僕が学生時代に書いていた日記を読み上げて、当時を振り返りつつの思い出話をする事になった。

 

「1ページ目の内容からして、入学式当日の……確か、家を出る直前に書いたんだったかな?」

「ああ、そうなのか……ん? 出かける前ということは、実家を出る前の朝書いたのか」

「うん、そうだよ?」

「ふむ……通常日記というのは――」

「――その台詞の続きは、その当時別の人にもされんだよね。じゃ、その辺りから話始めようか」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

「んー……日記って、こんな感じかな?」

 

 今日から僕は、高校一年生だ。その記念として、初めて日記を書いてみる事にしたのだけど……せっかくだから、家を出る前に最初の1ページ目を試しに書いてみた。

 

「……普通日記というのは、1日の終わりに書くものじゃあないか?」

「っ!?」

 

 突然の声に思わず小さくビクつきつつ、声と気配で誰だか判明しているので後ろを振り返らずに返す。

 

「初めての日記だから、練習も兼ねて書いたんだよ。勿論、今日の終わりにも書くつもりだよ……そ・れ・よ・り!」

 

 そこまで言い切ってから一拍置いて振り返り、いつの間にか気配なく背後にいたその人を軽く睨む。

 

「我が子のとはいえ、日記を許可なく読むのはプライバシーの侵害だと思うなー、父さん? それも、わざわざ気配まで消して……父さんは変質者だったのかな?」

「う、それは――」

「それは、なに?」

 

 言い訳を始めそうな父親に、ニッコリ笑顔(威圧付き)を贈呈。

 

「すいませんそんな顔しないで死にたくなります」

「……ぷっ、ふふっ。大げさだなぁ。ん、許します」

 

 綺麗な45度の謝罪のお辞儀に苦笑しつつ、日記を鞄にしまって椅子から立ち上がる。

 

「もうすぐ出発の時間だから呼びに来てくれたんでしょ? ほら、頭上げて。行こ?」

「ああ、そうだな」

 

 短くそう言って、父さんが先に部屋を出る。父さんが完全に退室したのを確認してから、僕も続いて出る……の前に、さっと姿見で服装の乱れとかないか最終確認をする。

 

「んー……ふむふむ……」

 

 鏡に映ったのは、セーラータイプの制服に身を包んだ、美少女と言って過言ではない茶髪ストレートロングに翡翠の瞳の姿。

 

 ついでにクルリと軽く一回転して見る。それに合わせて、僕の長い後ろ髪とロングスカートがフワリと舞う……うん、我ながら可愛い。

 

「よし、問題なし。今日も僕は可愛い! 可愛い……可愛い、なんだよねぇ……はぁ」

 

 最後につい、小さくため息を吐いてしまう。慣れたとはいえ、自分のアイデンティティに疑問を抱き、軽い頭痛を覚え頭を抱えたくなった……けど、流石にあまり時間もない。早く父さんを追おう。

 

 

 

 

 車で運ばれる事、約4時間。途中休憩を挟んだとはいえ少しお尻が痛くなってきたところで、ようやく到着した。

 

「姉さん起きてー、着いたよー」

 

 隣で熟睡していた姉さんを揺さぶる。せっかくの入学式という人生の門出の日だというのに、我が姉は今日もいつもの睡眠不足らしい。

 

「む……ふあ……んむ、そうか……」

 

 あくびを噛み殺しながら車の扉を開ける姉さんに続いて、僕も反対側のドアから出る。

 

『んん〜っ』

 

 長時間同じ姿勢だった身体をほぐすように伸びをする……姉さんも全く同じ動作をする。

 

 姉さんとは、たまにこんな風に同時に同じ動きを無意識にしてしまうことがある。やっぱり姉さんとは一卵性の双子なんだなぁと思う瞬間だ。姉さんに直接言った事はないけど、ちょっと嬉しいポイントだったりする。

 

「……ふふっ。なんだか懐かしいな。ま、十数年程度ではそう変わらないか」

「そういえば私達が出会ったのは、美奈(ミナ)の卒業式の帰りだったな。うむ、あの日出会った時の美奈も今の美奈も、変わらず愛らしいな」

「ふふっ、嬉しい事を言ってくれるじゃないの」

 

 父さんと母さんが校舎を眺めながら昔話に花を咲かせ始めたのを眺めながら、僕も辺りを見回す。

 

(入試の時に来た時も思ったけど。やっぱり無駄に広い気がするなぁ)

 

 僕達家族が到着したのは、姉さんと僕が今日から通う事になる学び舎。世界的に見れば極東にある比較的小さな島国、精霊国(せいれいこく)。この国最大の都市、学園都市栄陽(えいよう)の中心にある、国立栄陽学園本校だ。




登場人物紹介
 
水城 優輝(みずき ゆうき)
 
容姿:茶髪ストレートロング、超絶可愛い
瞳の色:翡翠のような緑
身長:160cm
性質:善
好きな食べ物:トマト
嫌いな食べ物:特になし
趣味:自分磨き、料理
精霊属性:雷・光
 
 この物語の主人公的位置のキャラ。一人称は僕。双子の姉曰く「宇宙一可愛い」。実際超可愛い。

 結構なお人好し。困っていそうな人を見かけるとつい目で追ってしまう程。超可愛いゆえに下手に手伝うと厄介事にハッテンしかねないので、一応自重している(襲われ未遂何度かあり)。

 生まれ持った血筋や育った環境のおかげもあるが、勉強も運動も平均以上にこなせる天才。それでも上には上がいるのを身をもって知っているので、驕らず日々の努力を怠らない謙虚さを持つ。そのため、男女共に親しまれやすい。

 双子の姉の瑞希の事は「最愛の姉」と思っており、基本的に甘い。けれど、瑞希が時々起こす突拍子もない言動には頭を悩ませたりもする。
 とはいえ、大惨事になるような事は今までほぼした事はなく、そこだけは信頼しているので、たまの奇行だからと半ば諦めている。姉が周囲に迷惑をかけた時、真っ先にフォローするように常日頃気構えている気苦労人気質。


水城 瑞希(みずき みずき)

容姿:茶髪セミロング、優輝と一卵性の双子、超絶美少女
瞳の色:サファイアのような青
身長:160cm
性質:悪
好きな食べ物:優輝の料理
嫌いな食べ物:強いアルコール臭のするモノ
趣味:優輝、精霊の研究
精霊属性:水・闇
 
 優輝の姉。一人称は私。一応、この物語のもう1人の主人公的キャラ。

 優輝とは一卵性の双子なので、髪の長さと瞳の色以外顔はほぼ同じ。つまりは超絶美少女。
 ただし、基本優輝以外にはぶっきらぼうな上、いつも何故か寝不足で目の下にクマがあるため、優輝と同じく超絶美少女だが優輝程には注目されない……一部M気質な人にはその下等生物を見るかのような半ば死んだ目つきで密かに人気があったりするのだが、本人は気にしていない。

 優輝と同じく文武両道の天才。ただし、謙虚な優輝とは違い、自ら天才を自称する自分超大好きで超自信家なナルシスト。ただし、優輝に遅れを取らないために、見えない所での努力は怠らない。

 基本的に自分は天才で格上、大多数の人を格下に見ているが、他人を貶めるような言動は優輝がバカにされるなどの特定の状況でなければあまりしない。それをすると、双子の優輝にも厄介事が降りかかる恐れがあるため。自分の全ては優輝のために。

 優輝の事が超好き、大大大好き、宇宙一好き。自分と全く同等に好き。つまり、双子の片割れが誰よりも好きという、捻くれたナルシストである。
 
 
静海(せいかい)
 
容姿:黒髪ロング 美人、瑞希・優輝を大人にしたような印象
身長:160cm
瞳の色:灰色
性質:?
好きな食べ物:何でも食べる
嫌い:無し
趣味:瑞希・優輝に奉仕する
精霊属性:?
 
 瑞希のメイド。それ以外の何物でもない。静海にとって瑞希がすべて。名前の正確な読み方は「静海(せいかい)」だが、人間っぽくないと優輝に言われ、静海(しずか)と呼ばれている。

 優輝を瑞希の分裂体のように認識しており、優輝の事も瑞希と同様に仕えるべき主人として崇めている。ただし、瑞希が先に主人になったので、便宜上瑞希は主(マスター)、優輝は様付けで呼び分けている。
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