優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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ちょっとしたトラブル(瀕死1名)

「……咲様いらっしゃってたんですか。それは確かに驚きますわね」

「でもまあ、僕ら的には知り合いだからね。どちらかと言うと、アキヒロにとっての衝撃的出来事って感じだったかな」

「あら、優輝さん的にはそれ程ではなかったんですか?」

「驚きはしたけど、咲さんは家族みたいなものだからね。嬉しい気持ちの方が強かったかな」

「ふむ……一応驚いていたようで何よりだ」

 

 いつの間にか姉さんがお風呂から上がっていて会話に参加していた……んー?

 

「……もしかして姉さん、咲さん来てるの知ってた? というより」

「うむ。私が計画したサプライズだ」

「あ〜……」

 

 そういやあの時、中の様子を確認せずに、アキヒロに「良いモノが見れる」って言ってた気がする。

 

「んもー……姉さんのいじわる」

「ありがとう!」

 

 ジト目でそう言うと、何故か感謝された。ヘンタイさんだー。

 

「さて。思い出話が時間を忘れる程に楽しいのはわかるが、もう夜中だ。話の内容的に区切りが良い、今日はここまでにしないか?」

 

 そう言い、若干眠そうな眼でそう提案する姉さん。まあ確かに、もうすぐ22時だ。

 

「じゃあ蒼月さん、先にお風呂どうぞ。僕は最後で良いから」

「そうですか? ではお言葉に甘えて」

「私はもう寝る……おやすみだ、優輝」

 

 姉さん、昨日の昼に帰って来て食事もせずにすぐ眠たみたいだし、また数日寝てなかったんだろうなぁ。

 

 さて。蒼月さんが増えた事だし、明日以降の献立を考え直すとしよう。まずは明日の朝食から……

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 ……翌朝。日課の朝鍛錬をこなしてシャワーを浴び、朝食の準備を静海に任せてからちょっと外出。隣町の朝早くから開いているお気に入りのパン屋さんで、朝食用のクロワッサンを人数分買って手早く家に戻ると、2人共起きていた。

 

「お帰りなさいませ、優輝様」

「ん、ただいま〜」

「おはよう優輝、今日も可愛いな」

「おはようございます」

「おはよ〜」

 

 焼けたベーコンの良い匂いがする……静海には、2人が起きたら調理始めちゃって良いと言ってあったけど、ほぼ作り終わったみたいだ。手伝えなくて残念。

 

「すぐに完成致します。優輝様はリビングでお待ちください」

「ん、了解。これパンね」

「承りました」

 

 静海にクロワッサンを渡して、リビングに行く。

 

「パン屋に行っていたか。隣町のエレモフィラか?」

「そうだよ。人が増えたから足りなかったしね」

「わざわざありがとうございます」

「気にしないで、僕が出来立て焼き立ての美味しいパンが食べたくなっただけだし」

「確かに、エレモフィラのパンはどれも美味しいですよね」

 

 軽く雑談して椅子に座ると、静海がモーニングプレートを運んで来た。

 

「はー……今朝も美味しそうですねー」

 

 蒼月さんが若干うっとりな感じの声色で料理の感想を呟く。

 

 今朝のメニューは、オニオンコンソメスープ、プレートにスクランブルエッグと軽く焼いたベーコン、昨夜仕込んでおいたラタトゥイユ風浅漬け。それとさっき買って来た焼き立てクロワッサン。

 

 どれも美味しそうだし、良い匂い……お腹すいたー。

 

「さて。それじゃあ、いただきます」

「「いただきます」」

 

 

 

 

「昨日の思い出話の続きだが」

「んむ?」

「入寮した翌朝、私がいなかった時間に何があった? ほんのり肉が焼けたようなコゲ臭がしたはずだが。まあ、嫌ならば話さなくとも良いが」

 

 あー……そういえばあの朝の事、姉さんにははぐらかしてたなぁ。多分日記に「朝にトラブルがあった」とだけ書いたから、それ見て思い出して聴きたくなったんだろう。

 

 姉さんが殺……問題行動起こさないように、当時は話さないでいたけど。ま、今は昔の話だし、話しちゃおう。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

「……しら……」

 

 起きた。見慣れぬ部屋に、「知らない天井」がどうたら言うなんかの漫画の台詞が思い浮かんだけど、ベタすぎるので途中で口に出すのはやめた。

 

(時間は……ん、大体いつも通りか)

 

 普段は5時位に起きていて、今は5時10分。10分なら誤差の範囲だろう。

 

「んん〜〜ッ」

 

 軽く伸びをして、ベッドから出る……と、普段ならこの後すぐ姉さんに声をかけるのだけど……今朝はいないので、冷蔵庫に向かい、冷やしておいた水をコップに注いで飲む。

 

「んく……ふぅ」

 

 やっぱり寝起きの目覚ましには冷たい水だね……ふむ。んー……

 

(昔からたまに、朝にいない事はあったけど……新しい環境になって翌朝姉さんがいないのは、寂しいというかなんというか)

 

 誰もいない見慣れぬ部屋をさっと見回して、そんな感想を抱く。

 

 姉さんは昔から天才肌で、何をやっても平均以上に出来る人だった。そんな姉さんは、時折父さんと共に首都の東庵(あずまあん)へ行き、精霊研究に関して何やら手伝いをしているらしい。

 

 そう。していた、ではなく、している。昨日も父さん母さんと共について行ってしまった。ので、今現在姉さんは寮に、というか学園内にいない。

 

 精霊研究所で何をしているのか。何度か尋ねた事はあるけど、その都度「流石に優輝でも、国家機密なので答えられない」と言われ、教えてはくれない。

 ……でもまあ多分、姉さんの声の感じから推察するに。国家機密だからというのもあるだろうけど、どちらかと言うと、成果が形になるまで秘密にして驚かせたいのだと思う。

 

(さて……とりあえず、日課の朝鍛錬をしよう)

 

 パジャマを脱ぎ、上は黒のTシャツに深緑のパーカー、下は黒のレギンスに深緑のショートパンツへと着替える。僕の普段の運動着だ。最後に髪を梳かして、身嗜みは準備完了。

 ちなみに、髪は纏めない。姉さんがストレートロングが好きだからと言うのが一番の理由だけど、運動してても特に邪魔には感じないからだ。

 詳しい原理はよくわかってないのだけど、僕の精霊属性が雷属性で、電気を操る力で無意識に髪の動きを邪魔に感じないように操っているらしい。

 姉さん曰く、「無意識でそれが出来るのは天才レベルなのでつまり優輝は天才」らしい……守護者を目指して鍛錬は欠かした事はないけど、本当に天才レベルに至っているのかは不明。

 雷属性の人は少ないらしいし、身近な人だと父さんしか比較対象がいないしなぁ。感覚派な父さんの言はあんまり当てにならないし……

 

 

 

 

 考え事をしながら移動していたら目的地に着いていた。

 

 ちなみに、起床ベルが鳴るのは6時だけど、寮案内パンフによると、学園内施設の電気錠の開錠自体は、管理の人が毎日5時半に行っているらしい。

 

(ふむ……思ったより人、少ないかな)

 

 日課の朝鍛錬として、広い場所――つまりはグラウンドに来たのだけど。僕と同じく起床ベル前に朝鍛錬しに来ている人は、あまりいないらしい……と、知り合い発見。

 

「おはよー。みんな早いね」

 

 サチさんにパフィンさん、それと雅が一緒にいた。

 

「おはよう優輝さん。やっぱり来たわね」

「やっぱりって?」

「優輝さん、自己紹介の時に趣味が自分磨きって言ってただろ? だから来るんじゃないかって話してたんだよ」

「あー、なるほど」

「自分磨きが鍛錬を含むのなら、だけどね。当たっていたわね、くすっ」

 

 何故か妙に嬉しそうに笑うサチさんに、ちょっとだけドキッとする。美少女スマイル可愛い。

 

 ちなみに、鍛錬に来ているのだから当然だけど、サチさんも雅もジャージ姿だった。サチさんはラベンダー色で、雅は黒だ。

 

「ユキさんも真面目だぁね〜……ふぁ………」

 

 そう言い、可愛らしい小さなアクビをするパフィンさん。

 

「そう言うパフィンさんだって、スポーティーな格好で来てるじゃない」

 

 パフィンさんの今の格好は、白のタンクトップにピンクのパーカー、黒のレギンスにピンクのショートパンツ、と、僕と色違いな感じの組み合わせだ。

 

「う〜……いちお〜約束しちゃったかんね〜……」

 

 確かに、サチさんとそんな口約束をしていた気がするけど。それでも、ものぐさなパフィンさんが早朝鍛錬に付き合うのは、やっぱり意外だ。

 

「昨日、寮の部屋に向かう時に判明したんだけどね。私とパフィンさん、相部屋だったのよ」

「そんでまぁ……逃げようがなかったとゆ〜か……」

「……なるほど」

「でもよ、軽い口約束だろ? それに、相部屋だからって付き合わないといけないって訳じゃないし。パフィンさんいいヤツだな!」

「んまぁ、なんての? せっかく友達んなれて、しかも偶然だけど相部屋にもなれたし? その〜……仲良くしたいじゃん……んあ〜もぅ恥ずいコト言わせんなよマミヤ〜」

「別に、恥ずかしがる必要なんてないと思うけどなぁ」

 

 テレテレな顔でそう言うパフィンさん。恥ずかしさを誤魔化すためか、雅に猫手でパンチをペチペチ食らわせ始めた。可愛い。

 

「さっさて! せっかく早起きしたのに雑談ばかりしてたら意味がないわ。鍛錬しましょ?」

 

 そう促すサチさんだけど、顔がちょっとにやけている。パフィンさんの台詞が相当嬉しかったようだ。そんな顔も可愛い。

 

 さて、確かにサチさんの言う事は最もだ。時間は予定通りに使わないとね。

 

 

 

 約50分程一緒に鍛錬をし、時刻は6時半。サチさん達と食堂で会う約束をしてから別れ、自室に戻る。朝の食堂開放時間は過ぎてるけど、やっぱり汗を流してサッパリしてから食事したい。

 

 玄関の扉を閉め、お風呂に直行する。着替えは……まぁ後で良いか、誰もいないし。

 

 ……ここで油断したのがいけなかった。

 

 

 10分程だろうか。ゆっくりシャワーを浴び、良い気持ちでお風呂場を出る。身にはバスタオルを巻いているだけ。

 

「む、出たか」

「へ?」

 

 ……誰かいる。そういえば玄関に鍵、掛けてなかった……何にしても、無断で勝手に入って来た事に変わりはない。

 

 姉さんは昼まで帰ってこないから違うし、そもそも声的に男だし。キッチン辺りにいるのか姿は見えないけど、こんな事をする男は1人しか思いつかない。

 

 こちらにズカズカ歩いて来る気配、そして姿が見え

 

「ギニャアーーーーーーーーーー!!!!」

 

「ヌワアアアアバババババババババ!?!?」

 

 こちらのバスタオル一枚というあられもない姿を認識される前に男――飯屋峰君に電撃を放っていた。無意識だから加減出来なかった。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

「でまあ……結局加減出来てなくて、彼はちょっと生命の危機な状態だったんだけど……」

「何も問題はない」

「どう考えても正当防衛の範囲です」

「即答されると反応に困るなぁ」

 

 不法侵入されてるし、法律的にも正当防衛認定されるだろうけど。それでも、人を殺しかけた事に変わりはないし……うーん……今更ではあるけど、やっぱり複雑。

 

「ふ、優輝は優しいな。あまり気にするな、どうせすぐ治癒術で応急処置したのだろう? 次の日に普通に登校していた気がするしな」

「まあ、そうだけど」

「だから優輝さん好きですわ」

「……ありがと」

 

 2人の言葉に、ちょっとだけ気が楽になる。

 

「それよりもだ。朝のトラブルの続きを聞かせてくれ。まだあるだろう?」

「……むう」

 

 ……さすが姉さん、全部は話してないと気付いてたか。恥ずかしいけど、ここまで話したし。

 

「えっと……僕的には、こっちの方がショック度は大きかったんだけどね」

「ふむ?」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 僕はまだ15歳だけど、少なからず悲しかったりショックを受けたりした経験はある。その中でも、今回の状況は上位に来るくらいのショック度だった。

 

「優輝ちゃん、先生物凄く怒ってます」

 

 建物に雷が直撃したかのような……まあ大差ない事をしちゃった訳だけど、その轟音を僕の精霊術だと気付いたネイ先生が真っ先に駆けつけてくれた。

 

 飯屋峰君は、最初は僕が治癒術で治してたけど、僕は精霊属性的に治癒術があまり得意ではないので応急手当て程度しか出来ず、ネイ先生が来た時の飯屋峰君は生死の境を彷徨っている状態だった。

 

 でまあ。ネイ先生は高レベルの治癒術が使えるので、交代したんだけど……治癒の最中、先程の一言を貰った。

 

(ちゃん付けされた……)

 

 ネイ先生は、おネイちゃんモードの時しか僕をちゃん付けで呼ばない……つまり、普段は意識して呼ばないようにしてくれている。

 そんな寧さんに、先生モードの時にちゃん付けされるのは初めてだった。多分、本当の本気で怒っている……それがショックだった。

 

 僕は昔から、怒られるのが極端に嫌いだった。まあ怒られたい人の方が珍しいだろうけど……僕は、どんな人とも極力仲良くしたかったからだ。一応、八方美人にならない様に気は使っているつもりだけれど。

 

 だから、誰かの嫌な部分が見えたとしても考えすぎないようにしてきたし、逆にその人の良い部分に注目するようにして、極力人を嫌いにならないように努めてきた。

 

 とはいえ、どう頑張っても相手を完全に理解する事は出来ない。どうしても怒ってしまう事はあるし、怒らせてしまう事もある。

 それでもやっぱり、親しい人や尊敬する人を怒らせたくないと思うのはおかしな事ではない、よね。

 

 そして僕の中で、寧さんは「怒られたくない人」筆頭だった。もう1人の姉さんみたいで大好きだから。

 

「……とりあえず、着替えて下さい。目のやり場に困りますので」

「……はい」

 

 ションボリした気持ちで自室に行く……

 

「――ご馳走様で〜す」

 

……部屋に入る直前、寧さんの意味不明な呟きが聞こえたけど、どういう意味だろ?

 

 

 

 

 数分後。私服に着替えて現場に戻ると、飯屋峰君はまた縛られていた。不法侵入者だし当然か。

 ちなみにまだ気は失ったままだ。顔色は悪くないので治癒は完了しているのだろう……一安心。

 

「さて優輝ちゃん。正座です」

「はい」

 

 指図通り即座にその場に正座する……うん、やっぱりまだ怒ってるよね。正当防衛の範囲かもだけど、咄嗟にとは言え人を殺しかけちゃったんだし、怒って当然だよね……憂鬱。

 

「…………」

 

 気落ちしつつ、じっと見つめて来る寧さんを見つめ返す。

 

「……はぁ〜」

 

 数秒見つめた後、ため息を吐かれた……あれ? 怒ってるっていうか、呆れられた?

 

「優輝ちゃん、私が何に対して怒っているか理解していませんね」

「それは……」

 

 すぐに答えようとしてとどめる。寧さんがそう言うなら、僕が今出している答えは違うものだろう。

 

 なら、寧さんは何に対して怒っているのか。少なくとも、僕に対して怒っているのは間違いないけど……

 

 とりあえず、今回の僕の失敗を確認しよう。

 

 飯屋峰君を攻撃してしまったのは、裸を見られまいとして咄嗟に、だけど……そもそも、彼が許可なく入室しなければ……いや。

 彼の性格的に、ピッキングしてまで入っては来ないだろう。つまり、僕が姉さんに言われていた通り油断せず、キチンと鍵をかけておけば……ふむ。

 

 ……答え合わせをしよう。

 

「彼が僕に好意を寄せていて、彼がこういう行動に出るのを予測出来たのに、油断して鍵をかけなかったから、です」

「ん〜……20点です」

 

 赤点だった。厳しい。

 

「そもそも、飯屋峰君が優輝ちゃんを好きになったのは、優輝ちゃんがとっても魅力的だったからです」

「はぁ。そう……なんですかね」

「それです、その曖昧な返事。ダメです」

「え?」

「優輝ちゃんは魅力的なんですっとっても魅力的なんですっ魅力に溢れまくってるんですっ」

「えっあっはい。ありがとうございます?」

 

 3回も繰り返し一所懸命な感じで褒められて、ちょっと困惑する。

 

 うーん。まあ確かに……不本意ながら、見た目が完璧に美少女だ。自身でも可愛いのだと理解してるつもりだけど、逆に言えばそれだけだし――

 

「優輝ちゃん。今、「自分の見た目は確かに可愛いけど、それ以外は特徴ない」とか思ったでしょう」

「うっ」

 

 考え事をズバリ当てられた。さすが寧さん。

 

「私が怒っているのは、そんな事考えちゃう優輝ちゃんの「自分の魅力への無自覚さ」に対してです」

「…………」

 

 ちょっと呆然とする。そ、そうなんだろうか。寧さんの身内補正が高いだけなんじゃ……うーん。

 

「今まで守護者目指して色々頑張り続けたつもりですから、ある程度自分に自信はありますけど。それでも僕は、寧さんが何度も強調するような魅力溢れる人じゃないです」

「自分の力に自信を持ちながら自惚れない所も魅力ですね〜」

 

 また褒められた。ちょっとむず痒い。

 

「優輝ちゃんの魅力、挙げようと思えばいくらでもありますよ〜? まあそれは置いといて……こほん」

 

 小さく咳払いっぽい事をしてから、言われた。

 

「自分の魅力を否定する事は罪です。それは時に他人を傷付けたり、間違った行動を引き起こさせることもあります」

 

 チラッと飯屋峰君を見る寧さん。

 

「まぁ彼の場合は、自意識過剰の結果ではありますが。というか優輝ちゃんの貴重な全……半裸を勝手に見るなんて、万死に値します」

 

 ……ん? なんか変な方向に話が……

 

「正直、瀕死状態の彼を見てスカッとしました。優輝ちゃんグッジョブです」

 

 おい教師。その発言はあなたのような立場の人が1番言っちゃダメな台詞でしょうが。思わずジト目を向けてしまった。

 

「ま、まぁ未遂みたいなので治しちゃいましたけど。とにかくっ」

 

 一瞬目を逸らしてから、ビシッと僕に指を突きつけて、最後に教訓。

 

「これは、優輝さんが自分の魅力を全然理解できていなかったために起きた、不幸な事故です〜。これを機に、自分は容姿以外にどんな魅力があるのかを、じっくり考えてみる事をオススメします〜」

「……わかりました」

 

 普段のゆるふわ先生モードに戻ってそう言われると、なんだか安心する。自分の魅力、か。

 

「自分の魅力を知れば、それは武器にも防具にもなり得ます。自分磨きが趣味というなら、今後はその点も留意して下さいね〜?」

「はい、ネイ先生」

「ふふふ〜、良い笑顔です。優輝さんの笑顔は魅力的で、大好きですよ〜」

「あ、ありがとうございます」

 

 いつも通り、優しい声でそう言うネイ先生。機嫌は完全に直ったようだ……良かった。

 

「あらら、思ったより時間経っちゃいましたね。私は飯屋峰君を彼の自室まで運ぶので、優輝さんは食堂へどうぞです〜」

「え? うわ」

 

 ケータイで時刻を確認すると、7時を回っていた。

 

「待たせちゃったかな、急がないと! 早速行きます!」

 

 駆け出そうとして、いったん止まり、ネイ先生に振り返る。

 

「貴重な朝の時間をありがとうございました。ご指導ご鞭撻、いつも感謝しています。それじゃっ!」

「はいはい〜、お気をつけて〜」

 

 感謝は大事だ。言うべき事を言って、今度こそ駆け出した。

 

 

 

 

「ごめんみんな、遅れちゃった!」

「ちょいと優輝〜遅いよ〜!」

「もぐもぐ……」

 

 少し遅れて食堂に着くと、ヒロが1食分食べ終えていたけど、他のみんなは食べずに待っていてくれた。

 

 申し訳ない気持ちと共に、なんだか少し嬉しかった。やっぱり同年代の友達っていいなぁ。

 

 ちょっとしたトラブルで遅れたと短く言い、改めて謝罪してから、みんなと一緒に朝食の時間を楽しんだ。

 

 ちなみに今日に朝食メニューは、白米、お味噌汁、焼き鮭、味付き海苔、納豆とオクラの和え物だった。シンプルながらご機嫌な朝食だ。うん、当然美味しい。

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