優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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キングのファンにからまれた

「当時あのように言っていましたが。瑞希さんは優輝さんの恋人について、今現在どうお想いですか?」

「ちょ」

 

 蒼月さんに、唐突にイジられ始めた。

 

「私の考えは何も変わっていない。予想通り、優輝が選んだ恋人は素晴らしかったさ」

「ですか。ふふっ、ですわよね!」

「ちょちょ、ストップストップ!」

 

 顔が真っ赤になっているのが、鏡を見なくてもわかる。うぅ……なんでこんな会話に……

 

「それにしても、優輝さんはいつまでたってもウブですわねー。捗ります」

「うむ、最高に可愛いぞ」

「もうっ! この話題はここまで! やめないと、今日のおやつは作ってあげないから!」

「む、それは悲しい。仕方ないな」

「仕方ないですねー。ふふへへっ」

「むー……」

 

 どうしてこう、2人は僕をイジりたがるんだろう? 昔に比べれば逞しくなった自負はあるんだけどなあ……まだまだ2人には、精神的に敵わない。

 

「では話題を変えよう。その日の話は区切りがついた訳だが。静海が来るまで、何か面白い事はあっただろうか?」

「えっと、そうだね……んー……」

 

 日記をペラペラとめくる。

 

「うーん。しばらくは、特に印象に残ってる日はないかなあ」

「ふむ。要約すると?」

「何が美味しかったとか、誰かの反応が可愛かったとか、飯屋峰君が鬱陶しかったとか……あー」

 

 飯屋峰君の事で、ある事を思い出した。直接彼が関わっている出来事じゃないけど……

 

 

 

 

      ――――――――――

 

 

 

 

 学園生活にも慣れはじめた、とある日の事。

 

(なんで女の子って、連れ立ってお花摘み行きたがるんだろ?)

 

 とか考えながら、休み時間に1人お手洗いに来た僕。いつもは何故か誰かと一緒に来ていたので、学園での1人用足しは、実質初めてかもしれない。

 

 というか、たまたまだろうけど、僕以外に誰もお手洗いにいないのも珍しいような。

 

「……。小便器、かあ」

 

 この学園は、更衣室やトイレやシャワー等は、基本男女分けられてはいない。通常時に男女どちらが使うかは生徒が自主的に分けたけど、本来は分けられてはいないのだ。

 

 つまり。すべてのレストルームに、男性用の小便器が設置されている。

 

 まあどっちにしろ僕は、個室しか使えないけど……けど。今は、誰もいない。

 

(使った事、ないんだよねー……い、今なら大丈夫、かな?)

 

 興味津々、小便器近付い

 

「……居たわ。やっぱり1人よ!」

「っっ!!」

 

たところで誰か入って来たので驚きで体がビクゥン!と震えた。

 

 慌てて小便器から離れる。ついでに尿意も離れていた。

 

 あー、ビックリした……やっぱり冒険してみようなんて思うものじゃないね、リスクが大きすぎる。

 

「あなた、クラスDの水城とかいう娘よね」

「えっあっはい。そうですけど……」

 

 なんか、不穏な感じ……しまった、ドキドキしてて思わず即答してしまった。こういう見ず知らずの人に名指しで呼ばれた場合、すぐに本人と認めないよう姉さんに言われてたのに。

 

「……な、なるほど確かに、悔しいけど物凄く可愛いわね……」

 

 唐突に容姿を褒められた。えっなに、そういう趣味の人?

 

「っと、そんなことより!」

 

 ああ、思わず感想を呟いてしまっただけらしい。

 

「あなたね? キングのご寵愛を賜ったのに、恐れ多くも退けているのは!」

 

 1人でトイレに来たら、突然女の子が突っかかって来たけど……キングイズダレ? この国は今は王国制ではないし、僕に海外の王族と親交があるわけでもないし……咲さんや父さんにはあるかもだけど。

 

 と考えていたら、後からもう2人来ていて、3人の女の子に囲まれていた。

 

最戸(さいと)さーん、キングじゃわからないかも?」

 

 ひとりは僕と同じくらいの身長の、能天気そうな雰囲気の娘。

 

「キングはキングなんだからキングでしょ!」

 

 それに対し、最初に突っかかって来た、背が低めの娘(巻さんよりは高い)が反論する。

 

「王様、の方が伝わる、多分ね」

 

 最後に、背が高めの少し気弱そうな猫背気味の娘が、補足するようにそう告げる。

 

 ふむ……王様、「王」様か。なるほど。

 

(飯屋峰 「王」者だから、キングね。様付けって事は、漫画でよくある取り巻き的なヤツか、熱狂的なファンかな)

 

 要するに彼女達は、飯屋峰君の求愛を断り続ける僕に文句があって、僕が1人になったのを見かけたので突撃したのだろう。

 

(僕に圧力をかけて求婚に応じさせても、飯屋峰君は喜ばないと思……いや、喜ぶか。はあ……)

 

 とにかく。彼女達が何を言おうと何をしてこようと、僕が彼とお付き合いする事はない。嫌いなくらいだしね。

 

 言うべき事が纏まったので、話そうと口を開……こうとして、一旦閉じる。

 

 雰囲気と表情から察するに、彼女達は、僕がただ単に断ろうものなら、さらに突っかかって来るだろう。特に、最戸さんと呼ばれてた娘は。

 

 けど僕は、出来るだけ誰とも波風立てずに穏便に学園生活を過ごしたい。だから、友達にはなれなくとも険悪な関係になるのは避けたい。

 

 友達になれたら、もっと素敵だけどね。

 

 というわけで……うん、おだててよう。

 

「もしかして、飯屋峰君の恋人さん達ですか?」

『えっ!?』

 

 ……今の反応からして、違うのだろう。てことは、やっぱり熱狂的なファンか。

 

「いやー、そうだといいなとは思うけど?」

「理想と現実は、だいたい違う、多分」

 

 2人は苦笑い気味な顔でそう答えたけど、最戸さんだけ反応がちょっと違った。

 

「そ、そうみえる? やっぱりそう見える? いやーあなたなかなか見る目あるじゃないってんな訳あるかアンタの方がキングにお似合いよバカー!!」

 

 ……これ照れてるのか怒ってるのかどっちだろ?

 

 まあそれはそれとして。今の彼女の反応を見て、僕は素直にこう思った。

 

「最戸さん可愛い。……あ」

「えっ?」

 

 内心をついこぼしていた。

 

 あー……この癖で、ついこの間もサチさんに、

 

「優輝さんは普通以上に可愛いんだから、もう少し言動に気をつけた方が良いわよ……たまに反応に困るわ」

 

って言われたんだったなあ。

 

 この癖について姉さんに尋ねてみたところ、

 

「優輝は喜怒哀楽の「喜」や「楽」の感情を、無意識に口にしてしまう癖があるぞ。やはり気付いていなかったか」

 

と言われた。はい、気付いてませんでした。まあ「怒」や「哀」じゃないだけ良いけど。

 

 なんにしても、姉さんの言からして昔からの癖だろうから、すぐには治せそうにない。とはいえもっと気を付けないとなあ。

 

「ほ、ほんとに? 嘘じゃない?」

 

 とりあえず、さっきは怒られた?けど、今回は満更でもない反応だから良かった、のかな?

 

「えーと……気を付けてはいるんだけど。僕、たまに思った事がつい口に出ちゃう事があるみたいで。今のは本心だよ」

 

 秘密がバレないようにするための嘘やはぐらかしは、たまにするけども。でも基本僕は嘘が嫌いだし、出来るだけ本音で語りたい性分だ。

 

「あー、うー……あ、ありがと」

「ふふっ、どういたしまして」

 

 顔を赤らめ視線をそらし、悩ましげに呻く最戸さん、可愛い。もしかしてこれが、ツンデレキャラに萌える人の感情なのかな?

 

「ってそうじゃなくて!」

 

 突然我に返ったかのようなハッとした顔になり、後ろの2人に振り返る。

 

「ど、どうする? 予想と違うどころか普通以上に良い娘で反応に困るんだけど!?」

「王様が本妻にする宣言したから、意識高い系かと思ったのにね? 私も、文句のひとつくらいは言おうと思ってたけど、完全に毒気抜かれちゃったし?」

「私、最初から乗り気じゃなかったけど、うん」

「でもキングの求愛を袖にしてるのは事実でしょ? ここで引き下がったら、本校に入学出来なかったキングファンクラブの会員達に申し訳が立たないわ!」

「まぁ、それは同意かな?」

「そう言われると、仕方ない、気もする」

 

(内緒話してるつもりなのかな。普通に声大きくて全部聞こえてるけど)

 

 一応ツッコまないでしばし待つ。ていうか、彼のファンクラブなんてものがあるのか。漫画やラノベにもオレ様系キャラっていなくならないけど、やっぱり一定の需要があるんだろうね。

 

「とりあえず、一発ガツンといってみるわ!」

「おーガンバってねー?」

「気を付けて、やり過ぎは、禁物」

「ふふんっ任せなさい!」

 

 むう、まだ突っかかって来るんだ。どうしたものかな。

 

「あなた、水城……水城 ミユキだっけ?」

 

 なんか姉さんと混ざってる。のはともかく。何か仕掛けて来そうだから、ちょっと意識を逸らそう。

 

「僕の名前は水城 優輝です。姉さんと名前混ざっちゃってます」

 

 とりあえず、今後の信用問題として嘘はつかない。

 

「あ、ごめんなさい。それで、」

「それで、髪が短い方が姉さんで、水城 瑞希です」

「あっそうなのね。で、」

「ちなみに双子です」

「へぇーそうなのね。あー、確かに似てたわ」

「一卵性なので、瓜二つですよ」

「へぇー!」

「髪の長さを同じくらいにすると、多分見分けつかないくらいだと思います。一卵性なのに何故か瞳の色は違うので、目をじっと見れば、髪の長さを揃えても一応判別は出来ます。まあ、パッと見では気づかれないですけど」

「ほぇー。ああ! じゃあすぐ見分けつくように、意図的に髪の長さ変えてるのね!」

「はい、そうです」

「一卵性って言うと、やっぱり性格とかも瓜二つだったりするの?」

「うーん、自分としては、真逆かなと思ってますね。でも他の人から見たらーー」

 

 ……意識逸らし成功。うん、会話が弾んできて思ったけど、やっぱり悪い娘ではないね。割と好き。

 

 このまま良い雰囲気で雑談し続けられれば仲良くなれるかも、とは思うけどーー

 

「最戸さーん、ガツンとってなんだっけ?」

「ーーはっ」

「水城さんの方が、精神的にうわて、多分」

「くっ、私としたことが!」

 

ーー予想通り、後ろの2人に止められた。まあでも、敵意はない旨は伝わったと思うし、全くの無駄ではないはず。

 

「あーもう面倒だわ! 水城 優輝!」

「あっはいなんでしょう、顔近いです」

 

 今度はずいっと顔を急接近させて来た。何をするつもりかな?

 

「一発ひっぱたかせて!」

 

 直球も直球、豪速球で来た。

 

「え、イヤだけど」

「よねー」

 

 はなから無理だと思ってたのか、即答する最戸さん……けど、表情も声もまだ諦めてない。

 

「あなた、気に食わないわ。今はなんかその、仕方なく引くけど、そのうちガツンと一発食らわすから。覚悟しときなさい」

「うーん。僕としては、出来れば仲良くしたいんだけど」

「……ふんっ良い子ちゃんぶっちゃって。とにかく、覚えときなさい」

 

 そう捨て台詞を言ってから、少し離れる最戸さん……ふむ。

 

「2人とも、日を改めるわよー」

 

 くるっと回転し後ろの2人に告げ

 

「ーと見せかけて!」

 

ながら回転は止めず振り向きざまに平手を振りかざして来た最戸さん――

 

 ガシッ

 

――の手首を頬にぶつかる直前で掴んで止める。

 

「えっ嘘!?」

「ごめんだけど。理不尽に叩かれるのを黙って享受するほど、僕は聖人君子じゃないから」

 

 声の感じに強気度が妙に足りなくなっていた気がしたけど、やっぱり日を改める気はなかったらしい。

 

「おぉ、今のビンタを後から動いた感じなのに止めちゃいましたね?」

「うん、素直に、すごい」

 

 ……後ろの2人、マイペースだなあ。まあ最戸さんに加わって3対1になられても面倒だけど。

 

「ぐぅぅ〜〜う・ご・か・な・い〜っっあなた意外と力強いわねっ!?」

「鍛えてますから」

 

 まあ理由はそれだけじゃないけど。とはいえ、ずっと掴んだままは流石に疲れるから、早く諦めて欲しいとこだけど。どうだろ?

 

「往生際の悪いっ潔くぶたせなさいっ!」

「痛いのイヤだから、お断りします」

 

 往生際が悪い方に言われてちょっと反論したくなったけど、あくまで波風を立てないスタイルを曲げない。

 

「往生際悪いのは最戸さんの方じゃ?」

 

 ていうか、仲間の方からツッコまれてる。

 

「王様に見染められるだけの実力、十分以上にある、みたい。素直に引いた方が、良い、かも」

「うー! う〜…………そう、ね」

 

 意気消沈した感じの声で呟き、力を抜く最戸さん。

 

「今度こそ引いてくれる? 手を離した途端ぶとうとしない?」

「その手があったか!」

「……その諦めない精神には敬意を評するよ」

「さっきも不意打ちな感じだったけど? また防がれる未来しか見えないよ?」

「うん、そうなる、多分」

「言ってみただけっやらないわよっ! ……うーこんなはずじゃあ〜……」

 

 とりあえず、今度こそ本当に引いてくれそうなので、手を離してあげる。あ、そだ。

 

「最戸さん、手首結構強く掴んじゃってたんだけど、大丈夫? 痛かったり痣になってたりしてない?」

「えっ? ……あーまあ、ちょっと赤くなってるけど。たいして痛くはないから大丈夫よ」

「そっか、よかった。一応治癒術かけるね、あんまり得意じゃないけどやらないより良いし」

「あ、ありがと」

 

 許可を得られたと判断して、治癒術するため近付

 

「ってウガーーーー!!!!」

「え、どうしたの?」

 

こうとしたら、突然雄叫びを上げた。なんだろ?

 

「最戸さん、完全敗北って感じだね?」

「水城さん、全てにおいて、格上ね」

「うーーっっ!!」

 

 なんか傷に塩を擦り込むように味方のはずの2人が最戸さんを煽る……実は仲悪いんだろうか?

 

「まあまあ、とりあえず落ち着いて。そしたら話し合お?」

「うー……さっきからなんなのよあんたっ! キングに愛されてるんだからもっと上から目線で来なさいよっ! でないとその……きっ嫌いになれないじゃない!!」

「えっと、今はそれで良いんじゃないかな」

 

 僕としては敵対したい訳じゃないし、飯屋峰君に愛されてる以外はなんの問題も感じない。

 

 というか、その台詞で思い出したけど、最戸さん達は彼と僕を無理矢理くっつけたかったんじゃないのかな?

 

「そうじゃなくてっ! う、うーー! あんたなんか……あんたなんかっ! キングに渡さないんだからーー!! バカヤローー!!」

 

 ちょっと意味がわからない捨て台詞を叫びながら、1人トイレを飛び出す最戸さん。忙しない人だなあ。

 

「最戸さーん、なんか言ってる事ブレブレだよー? ……聞こえてないかな?」

「王様を想う気持ちと、水城さんを嫌いになれない気持ちが混ざっての発言、多分」

「……なんか、さっきから2人は冷静だね」

「うーん、最戸さんの突飛な行動には慣れてるから?」

「まあ、よくある、うん」

 

 ふむ。もしかしたら仲悪いのかなとさっきは思ったけど、なんだかんだ3人は仲良しみたい。

 

「最戸さん行っちゃったので、私達も行きますね? あ、私、遠木(とおき)です。また会いましょ?」

「私、大城(おおき)。お邪魔した」

「あ、ご丁寧にどうも」

 

 そう言い残し、最戸さんを追って行った。

 

(楽しい人達だったなあ……飯屋峰君関係でなければ、普通に仲良くなれそうだけど)

 

キーンコーン……

 

 休み時間終了を告げるチャイムが鳴った……会話してると時間の感覚が鈍るね。急いで教室戻らないと。

 

 教室に小走りで向かい――半ばで思い出した。

 

(僕おトイレしてないじゃん!)

 

 ビックリしておさまってたし、元々漏れそうな程ではなかったけど。授業中、持つかな……

 

 

 

 

 案の定、授業終了10分くらい前という微妙な時間にさっきより強い尿意が襲って来て、しばらくモジモジする事になった……ちょっとだけ、最戸さんを恨めしく思った。ちょっとだけだけど。

 

 

 

 

      ――――――――――

 

 

 

 

「ふむ。凡人ファンの面白トリオとの最初の接触は、そんな感じか」

 

 ちなみに、姉さんの言った「凡人」は、飯屋峰君の事だ。

 

「えー、その覚え方はあんまりじゃない? 3人とも個性的で可愛いのに」

「と言いますか瑞希さん、優輝さん以外の方に基本興味を示さないですが。その3人の事、よく覚えていましたわね」

「優輝に危害を加えるために近付いて来た連中を、私が忘れるとでも?」

「……なるほど」

「そこで納得されると困るんだけど。そもそも、最戸さんが明確に悪感情を抱いて迫って来たの、今話した最初の時だけだったし」

「うむ、そうだと思ったからな。その後優輝にちょっかいかけてきた時は、私はイジりに徹していた」

「……優輝さんに半端な気持ちで悪戯は出来ませんわね。瑞希さんと親友になれて良かったです、本当に」

「ふむ。蒼月とも、出会いの仕方が違えばここまでの同士にはなっていなかったかも知れないな」

「それはどうでしょうか? 私、優輝さんには遅かれ早かれ惚れていたと思いますわよ? ええ、間違いなく」

「ふむ、そうか。では今の関係は必然か」

「ええ、必然です!」

 

 ……美しい友情だとは思うけど。着せ替え人間()の前でそういう会話を嬉々としてしないで欲しいなあ。

 

「それで、その3人組とはその後どういった関係に?」

「うーん。友達未満、な感じだったかな。一応僕1人……1人に見えるとき限定で、たまにからまれてたよ」

「1人に見える? ……ああ、瑞希さんが影にいたんですね」

「うむ、2回目以降の接触には気付いていたからな。傍観したり妨害したりイジったり論破したり、色々と楽しませてもらっていた」

「……えーと……」

 

 すぐに言葉が見つからないのか、呆け顔で斜め上を見ながら繋ぎの声を発する蒼月さん。まあ、リアクションに困る台詞だったしね。

 

「今更ですが。優輝さん、ご苦労様でした」

「察してくれてありがと。出来れば今も昔も僕を着せ替え人形扱いしてる件についても察ーー」

「ところで瑞希さん、そのような接し方をしていたのなら、特に最戸さんという方からは良く思われていなかったのではないでしょうか?」

 

 露骨に話題を変えられた。まあ、僕も言ってみただけだけど。

 

「ふむ。そういえば、こんなやり取りをした気がするな」

 

 

 

 

      ――――――――――

 

 

 

 

「斉藤だったか?」

「最戸よ!」

「うむ、最戸か。貴様、優輝の事大好きだろう」

「なぁっ!? そそっ、そぉんな事ある訳ないじゃない! とっ友達になりたいなんて、こここれっぽっちも思ってないんだからね!?」

「そうか。ちなみに私の事はどう思う?」

「大嫌い」

「ははは、そうか」

「何が可笑しいのよ!!」

 

 

 

 

      ――――――――――

 

 

 

 

「ツンデレですわね……優輝さんに、ですが」

「うむ」

「そっかー……飯屋峰君のファンじゃなければ、やっぱり友達になれたかもしれないなあ」

「……前から思っていたんですが。優輝さんは友達100人でも目指していたんですか?」

「そこまでではないよ。ただまあ、友達は多いに越したことはないでしょ?」

「優輝はお人好しで誰にでも優しいが、休日を共に過ごす程の親友はそれ程作らなかったな。学生時代では、いつもの7人だけだったか」

「確かに、学生時代の親友と言えるのは、7人だけだね」

 

 そう言いつつ、蒼月さんにウィンクしてみる。

 

「あー……め、面と向かって言われると、なんだか気恥ずかしいですわね」

 

 いつもは僕をイジる側の蒼月さんが、照れて赤面した。可愛い。

 

「ふふっ」

「ふっ」

「ふふふっ」

 

 なんだか嬉しくなって、3人で微笑み合う。

 

 ……こうして友達がどうとかの思い出話をしていたら、ふと思った。

 

 学生時代だけでも、実に様々な人との出会いがあった。

 

 親友になれた人でも、もう会えなくなった人がいる。親友と言える程仲良くなれた訳ではない人でも、時折連絡を取り合う人がいる。

 

「ん?」

「優輝さん、どうかしましたか?」

 

 そして今、すぐ側で雑談する事の出来ている親友の1人、蒼月さん。生まれる前から共にあり続けてくれた、大好きな姉さん。

 

「唐突だけど。今のこの幸せな時間に感謝したくなったから、言うね。姉さん、蒼月さん。これからも末永く、僕と仲良くしてね」

「ふふふっ。はい、こちらこそ、よろしくお願い致します」

「うむ、当然だ」

 

 大好きな人達がいるこの世界を、いつまでも守れますように。

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