優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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BBQ

 学園生になってはじめての魔獣討伐の完了後、少し休憩して村に戻ったわけだけど。村に到着したのは、お昼を少し回ったくらいの時間だった。

 

(今から昼食を作り始めるのは……別に苦じゃないけど。仕込みをしていないから、少し時間がかかるなぁ)

 

 さてどうしようか。僕と姉さんは、お腹の減り具合的に少し遅くなっても我慢出来るけど……

 

「なんかあたし、始めての魔獣討伐でまだ興奮してるからか、あんまお腹すいてないわ……」

「あー……そうだな、俺もだ」

「うん、僕も最初の頃はそうだったから気持ちはよくわかるよ。姉さんはまあ、いつも通りだったけど」

「ふむ、よく覚えていないな。まあ優輝がそう言うのならそうだったのだろう」

 

 アキと雅は予想通り、あんまりお腹すいてないようだ。魔獣とはいえ動き回る動物を無惨な殺し方した訳だし、当然だよね。

 

「うーペコペコですー……」

「……さすがヒロだね」

「んふふー、でしょー?」

「何故お前が得意げなんだ」

 

 ヒロはいつも通りのぺこちゃん状態だった。男性相手でなければほんと精神強靭だなあ。

 

 まあそんなわけだから、出来るだけ早くヒロに何か食べさせてあげたい。のだけど、うーん。

 

「くすっ、こんなこともあろうかと」

 

 僕が少し悩んでいると、咲さんが会話に加わってきた。

 

「咲さん、何か良い案が?」

「大したことではないのだけれどね。魔獣退治に出る前、鷲王さんと美奈さんにね、私達が帰ったらすぐ調理を始められるように準備を頼んで置いたの」

「母さんはともかく、料理のセンスが壊滅的に無い父さんにもですか……」

「はい。彼も、一から十まで目を離さなければ、普通の味付けはなんとか出来るでしょう?」

「それはまあ、母さんが監視してるなら、大丈夫……かな……」

「……水城ズのお父さんヒドイ言われようねん」

「親父殿に料理センスが皆無なのは事実故、仕方ないな」

「大丈夫よ。それに彼に頼んだのは、お外での組み立てなどですからね」

「ああ……」

 

 父さんに頼んだということは力仕事が必要ということで、そして組み立て。要するにあれだ。

 

「いつも通り、咲さんのお宅の庭ですか?」

「はい、そうですよ。時間的に、いつでも始められるはずよ」

「わかりました」

「……なるほど、親父殿が唯一関われる料理だな」

 

 姉さんも、咲さんが何を頼んだのか気付いたようだ。ふふっ楽しみー。いっぱい食べちゃお。

 

「何をするつもりなんだ?」

「なんだろねぇ。ヒロの予想は?」

「うーん……なんでしょう? 咲様の家の方からは、特に料理の匂いはしないんですよね」

 

 さすがのヒロもわからないらしい。何かしら焼き始めていたら、この距離でも気付いただろうけど。

 

「行けばわかるよ。アキと雅も、調理が始まればきっとお腹も空いてくるよ」

 

 

 

 

「おおっ優輝に瑞希、帰ったか! うむうむ、予想通りの時間だ、さすが我が子達よ!」

「おかえりなさい、みんな。んー……誰の服も、破れてたりとかはないようだね。じゃあ、大きな怪我なしでの初討伐記念おめでとうと、魔獣討伐お疲れ様記念、かな?」

「あっはい! ありがとうございます!」

「ありがとうこざいますっす。咲様に無様晒してないのでおめでとうはマジでありがたいっす」

 

 父さんはいつも通り僕らの勝利を褒めてくれて、母さんは僕らの全員の無事を祝い、労ってくれる。

 

 いつものやり取りだけど、褒められるのはやっぱり嬉しい。両親に愛されてるって実感出来るから。

 

「バーベキュー!! わ〜〜〜〜い!!」

 

 ……ヒロだけは、レンガを積んで作られたバーベキューコンロと、すでに炭を火おこしされて網を置けばいつでも焼き始められる状態なのを見て、大はしゃぎしていた。ほんとヒロは、食が関わると性格が変わるなあ。可愛い。

 

 そう、父さんが唯一関われる料理は、さっきヒロが答え言っちゃったけどバーベキューだ。と言っても、父さんに味付けや焼きは任せられないから、力仕事――レンガでバーベキューコンロを急造するのと炭の火おこしまでだけど。

 

「ジュルリ」

 

 いつでも焼き始められる状態にしてあるだけで食材すらまだ出されていないのに、ヒロはヨダレダクダクだ。頭の中では、すでに食べる直前なのだろう。

 

 それにしても、バーベキューか。確かにこれなら、あまり食欲がなくても、食べられる量だけ焼いて食べればいい。咲さんの細やかな配慮に、いつもながら嬉しくなる。

 

「バーベキューなんて久しぶりだな……あれ、なんか腹減ってきたような気がする」

「……そだね。あはっついさっきまで確かに食欲なかったのにね!」

 

 どうやら雅とアキも、ヒロの溢れ出す食い気に刺激されて、空腹を思い出したらしい。そこまで計算してた……わけないね、咲さんだもの。

 

「後は仕込んだ食材を持って来て焼くだけ。瑞希と優輝、手を洗ったら咲さんの家の台所にある食材、運んでね」

「はーい」

「了解しました」

「あっ私も手伝うよーん」

「今回はアキ達の初討伐の祝勝の意味合いが強いから、みんなは手を洗ったらここで待っててよ」

「アキちゃんお言葉に甘えよー、というかお腹ペコペコ過ぎてあんまり動きたくない!」

「んもーヒロったら。でもそだね、今日は甘えよっかな」

「よーし、肉食いまくるぜ!」

「ふふっ、野菜も食べなよー?」

 

 ということで、今日のお昼はBBQパーティーになった。

 

 

 

 

 食材を姉さんと静海と一緒に運んでいる途中、母さんに話しかけられた。

 

「あ、そうだ。バーベキューの仕込み、静海ちゃんに手伝ってもらったんだけど」

 

 確か姉さんが家を出る前、母さんに「静海の事は自由にこき使って構いません」と言って静海を預けてたけど。静海は留守番していただけじゃなく、母さんの手伝いをしてくれたようだ。

 

「ああ、そうでしたか。問題はありませんでしたか?」

「最初の数分は不慣れな感じだったけどね。でもすぐにテキパキ動いてくれたから、ビックリしたよ。アレだね、やっぱり瑞希が母親なんだねって思ったよ」

「ふむ……母殿の動きをトレースして自分なりにアレンジした、という事でしょうか」

「うん、そんな感じだったね。多分もう少し教えれば、一人で料理作れるようになるね」

「ほう、そうですか……」

「……姉さん、僕に静海の料理指導させようかとか考えてるでしょ」

「うむ」

「ふふっ、任せてよ!」

「一瞬の迷いもなしに即答は、さすがに予想外だわ。優輝はほんと料理が好きだね。可愛い!」

 

 そう言って母さんが頭を撫でてくれる。

 

「ん、ありがと母さん」

 

 ちょっと恥ずいけど、咲さんの様に骨抜きになるまで撫でようとはしないので、やめるまでの数秒間されるがままになる。

 

「優輝様、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致します」

「うん、こちらこそよろしくね」

 

 静海にそう言い終えると同時、撫でていた手を離す母さん……ちょっと物足りない。

 

「手を止めさせちゃったね。ヒロさんが待ってるし、私は焼き始めてるよ」

 

 そう言い残して、母さんは一人小走りで庭に向かった。

 

 さて。僕らは残りを運ぼう。

 

 

 

 

「んまーーい!! やっぱ炭火焼のお肉は一味違いますよぉっ!」

「ハグハグモグモグ、んめぇ!」

 

 食欲復活した雅とアキが、美味しさに喜びの声を上げる。

 

「モッモッモッモッモッモッモッモッおはんおははひふあふぁい」

「ご飯おかわり下さい、かな? ちょっと待ってねー」

「んもぅヒロったら、食べ続けたい気持ちはわかるけどお口カラにしてから喋りなさい! それと優輝、なんか今日はヒロに甘くない?」

「んー、そうかなぁ? はいヒロご飯」

「ん、ごくんっ。いいじゃないアキちゃ〜んきょーはぶれ〜こ〜だよ〜ふふふふふ〜」

「……ヒロ、お酒飲んでないよね? ここまでテンションオカシイヒロ、こないだの豚の角煮以外で見たことないんだけど」

「父さんと咲さん以外飲んでないよ……多分」

 

 アキですら、今日の状態のヒロは滅多に見たことないらしい。

 

 まあ今日のヒロは、咲さんに低評価されたり高評価されたり、魔獣へトドメ刺したのもヒロだったりで、色々あって精神的負担が多かったから、その反動かな。

 

「くすっ、若い子が夢中で食事をするのを見るのは、やっぱり癒されますね」

「そうですな。おっと咲殿、コップが空ですな。お注ぎします」

「ありがとう、鷲王さん」

「……咲殿は守護者ゆえお強いでしょうが、親父殿は咲殿のペースに合わせて飲み過ぎないように。酒は毒ですので」

「相変わらず、瑞希は酒嫌いだな。うむ、まぁ気にしておこう」

 

 咲さんと父さんは、昼間からお肉を肴に清酒を飲んでいた。咲さんは超越者の肉体のおかげか元からなのか、どれだけお酒を飲んでも普段とまったく変わらないけど、父さんは多分ちょっと強い程度なので、ほんと気を付けもらいたい。

 

「うーん、食材の消費ペースが予想より早いね。優輝、私は静海ちゃんと追加で仕込みするから、しばらく焼きお願い」

「はーい!」

 

 で。僕と母さん、静海が調理担当で、さっから肉や野菜を焼きまくって合間に食べて、を繰り返していた。忙しいけど、みんな美味しそうに食べてくれているから楽しくて仕方ない。ふふふっ。

 

「ああ……可愛い……」

 

 姉さんはマイペースに、僕を眺めながらちょっと食べたり、網の交換と火力の調整を時々していた。

 

 そんな感じで、各々の楽しみ方でBBQを堪能し続けた。

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