優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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連休明けは雑談が加速するもの

 連休の時の話をしてたらなんか止まらなくなり、結局豚の角煮が完成して、夕飯を食べ終える頃まで話してしまった。

 

「はふぅ、食べた食べた〜……やっぱ優輝さんの豚角はサイコーだねぇ。けぷ」

「ふふっ、お粗末様。にしても、ほんとによく食べたねー」

「いつもの事ながらだが、そのボディの胃によくそれだけ詰め込めるものだな」

「まだもうちょいイケるよ?」

 

 一応、エリスが来る予感がなんとなくしてたから、豚バラブロックは2kg、ご飯も2升炊いておいたんだけど……ご飯の残りが茶碗に軽く3杯分くらいしかない。

 ちなみに、豚角煮の残りは3分の1位だ。ご飯がススムとはいえ、エリス食べ過ぎ。まあ嬉しいんだけどね。

 

 とりあえず、まだ食べられるとか言ってるし、目を離したら食べ尽くしちゃうかもしれない。今のうちに静海に、部屋に篭って出てこない蒼月さんの所へ持って行ってもらおう。

 

「さてっどこまでお話ししたっけ?」

 

 満足げな顔と声で、思い出話の続きを促すエリス。最初は興味なさげ(というより豚角煮にしか気が向いてなかった感じだけど)だったけど、何だかんだ僕らの話は楽しんで聞いていたらしい。

 

「えーと、グリーンウィーク終了まで話したから、日記的に……次は、連休明けの登校初日の話をしようか」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 連休明けの闇曜日。HR前恒例の雑談が始まった。

 

「パフィンちゃん一週間ぶり〜」

「ヒロっちおひさ〜、なんかスイーツ情報ある〜?」

 

 ヒロとパフィンさんが仲良さそうに手を握って、上下にブンブンしている。可愛い。

 

 雅は、男子の友人グループと話をしている。聞こえてくる内容は……

 

「生咲様に会えて、しかも稽古つけてもらえたぜ!」

「へぇ、念願叶って良かったな。というか結構羨ましいな。珠州野守様美人だし。というか、実物はどうだった?」

「優しいお姉さんって感じの美人さんだったよ」

「そういや、珠州野守様の住んでる村って、水城さんズの故郷でもあるんだよな……な、なあマミヤ、お前どこに泊まってたんだ?」

「え? 水城ツインズと一緒に行ったんだから、水城さんちに決まってるじゃん」

「決まってねぇよ! う、羨ましすぎる!」

「そうなのか? あーまぁそうか、優輝の料理美味いからな。それを朝昼晩食えたし、羨みもするか」

「そうでもあるがぁ!! あーチクショウこれだから天然はよー!!」

 

 ……うんまあ、概ね予想通りの内容かな。というか、下心があっても変に隠さない天然な雅だから、友達になれたんだけど。他の男子は、そのあたりがわからないらしい。

 

「一週間ぶりね。連休中、水城ツインズは実家帰っていたのよね。何か変わった事とかあったかしら」

 

 僕と姉さん、アキのグループは、サチさんと会話を始めていた。

 

「アキヒロ雅、それと静海がいた以外は、僕としては特にないかな」

「むぅ、ないんだ」

 

 ちょっと拗ねた様子のアキ。言いたいことはなんとなくわかるけど、別にイジワルしたい訳じゃない。

 

「だって、ウチくる前から、僕とアキは親友でしょ?」

「優輝大好き〜!!」

 

 アキがガバッと抱きついてきた。流石に慣れてきた。油断は出来ないけど。

 

「はいはい。僕もアキの事、大好きだよ」

「んふふ〜」

 

 頬を頬にスリスリしてくるアキの髪を優しく撫でると、気持ち良さそうに鼻息を漏らす。なんか犬耳を幻視した。可愛い。

 

「尊い」

「わかる」

 

 誰かの変な呟きが聞こえたけど気にしない。

 

「……なんか、さらに仲良くなってるわね。なにがあったの?」

「うーん……プライバシーに関わることだから、僕からはちょっと」

「んまぁ、さっちゃんやパフィンにもその内話すよん」

「とまあ、そういうことだから」

「今はまだ、お泊りメンバーだけの秘密って事かしら。なんか妬けるわね」

「にゅ……そゆこと言われると、ちょい恥ずい」

「はは……」

 

 アキの呟きに、僕もちょっと気恥ずかしくなってきた。

 

「えっと……まあ、アキヒロ雅にとっては、それ意外にも忘れられない体験をしたんじゃないかな」

 

 その話題をはぐらかすように、ちょっと無理矢理別の話題を切り出す。

 

『忘れられない体験……?』

 

 ……なんか、聞き耳を立てていた男子達の雰囲気が変わった。別に色事じゃないよ?

 

「……どういう意味?」

「にゅふふー。実はなんとっ! 魔獣討伐に体験参加しましたぁー!」

「ああ、そういう……」

「あー、でも、それはそれで……」

 

 男子達が安心したように呟く。でも、魔獣討伐参加した事に、羨ましさも感じてるようだ。

 

「……よく参加させてもらえたわね」

「ネイ先生にお問い合わせして、許可もらったからね」

「それに、咲様が監督してくれたからねぇ。実戦前はさすがにかなり緊張したけど、座学通りスリーマンセルでやったら割とあっさりだったよん」

「むぅ。そんなこと聞いたら、さらに妬けてきたわ!」

 

 嫉妬していると言いながら、どこか嬉しそうな目と声でそう言うサチさん。魔獣と対峙することの不安や恐怖より、交戦欲の方が強いらしい。

 

「優輝に瑞希。今回は私に先約あったから行けなかったけど。夏休みには、是非お邪魔させてね?」

「うん、それ自体は良いけど。一週間くらいウチの村にいれば、一回くらいは魔獣来るだろうし……ただ、タイミングよく咲さんがいたから今回は参加出来たけど、次はいるかわからないから。許可が得られるかは運になるよ?」

「あー、そうよね……」

「どちらにしても、学園の方の討伐体験の方が先にあるがな」

 

 学園では、梅雨明けくらいに魔獣発生確率が比較的高い地域のうち、比較的安全な所での「魔獣討伐体験」という名の、遠足的なものがある。

 

「……鷺巣村で討伐したいのよ、私は」

 

 鷺巣村は魔神封印地に最も近い。なので、危険な魔獣が発生しやすい(猪型と熊型が同列で最も危険とされている)から、一年生はでは行かないしね。残念がるのもわかる。

 

 けど、サチさんの声色的に……

 

「もしかして。サチさん、ウチにお泊りしたいの?」

「う……まぁ、その……そ、そうよ。アキ達だけ先にお泊り出来てズルいわ。だって私、友達の家にお泊りとか、その、したことないし……今回も、本当は帰郷より、優輝さんの家にお泊まりしたかったのよっ」

 

 顔を赤らめ視線を逸らしながら肯定するサチさん。凄い可愛い。

 

「あたしもミズキーズのウチ行きた〜い。ミズキママさんの焼き菓子、めちゃウマらしいじゃん?」

 

 ヒロから今聞いたのだろう。パフィンさんがいつものぽやっとした笑顔と声で、こちらの会話に参加してきた。

 

「とっても美味しかったよ〜」

「母殿は、優輝の料理の師匠だからな」

「というか、パフィンはいつも1にスイーツよね。あまり甘いのばかり食べてると、精霊術士でもそれ系の病気になりかねないんだから! 気をつけなさいよ?」

「あ〜んまたさっちゃんのお小言だよ〜、なんとかしてよユキえも〜ん」

 

 冗談めかした口調で、アキとは反対側に張り付いてくるパフィンさん。それを見たサチさんの雰囲気が、少し不機嫌になった。

 

「まあまあ、サチさんもパフィンさんの事が好きで、友達として心配して言ってるんだから。ね?」

「う〜、裏切りモノ〜」

 

 そう言いつつ、表情も口調も相変わらずぽやっとしており、僕から離れる気配はない。右のアキが犬なら、パフィンさんは猫かな。

 

「もう、優輝さんが優しいからって、あまり調子にのらないのっ」

 

 半ば諦めてるのか、苦笑いで言うサチさん。でも、んー……やっぱりどことなく、機嫌悪い?

 

「でもまあ、パフィンさんも、食事の代わりにお菓子を食べたりはしてないでしょ?」

「んぅ? おー、んー……モチだよ〜」

 

 あー……その反応で理解した。たまにお菓子で済ませてるね、この娘。

 ふむ。それを知っているサチさんが、パフィンさんが僕に媚びるのを見て不機嫌になるのは当然か。

 

 んーと。とりあえず、諭そう。

 

「パフィンさん。時間がなかったり、どうしてもお菓子しか喉を通りそうになかったりとかじゃない限り、キチンと食事しないとだよ?」

「んふ〜、そこでスイーツごはんを否定しないから、ユキさん好き〜」

 

 諭したつもりなのに、なんかさらにすり寄ってこられた、というかアキのマネなのかパフィンさんも頬ずりし出した。

 

「おっパフィンも擦りラー? ヨシ! 優輝にスリスリサンドしよう!」

「ヨシおっけ〜」

 

 スリラーってなにさ、そもそもなにがヨシなのさ。

 

「すりすりすり〜」

「スリスリスリ〜」

「あ〜れ〜」

 

 ちょっと暑苦しくはあるけど、一応ソフトタッチだから、しばらくされるがままになってみた。

 

「……うー」

 

 なんか、サチさんの機嫌が目に見えて悪くなった。少し厳しめに諭した方が良かったのかな。

 

「ほら二人ともっ! もうすぐ予鈴鳴るから、優輝さんから離れなさい!」

 

 ……もしかしてサチさん、パフィンさんが僕にくっついてるのが気に入らいのかな。アキだけの時は、ここまで不機嫌そうじゃなかったし……一番の友達を取られちゃったみたいに感じた、とか?

 

 うーん、これは実に、

 

「サチさん、可愛い」

「かわっ!? だっだだだから優輝さんはその癖治しなさいって言ってるのにー!」

「あ、ごめんつい」

「だがしかし、口ではそう言ってはいるが、顔は満更でもなさそうだな?」

「瑞希ウルサイ!」

「お前はやかましい」

「もーあー言えばこー言う!!」

「にゅふふ、さっちゃんわかりやすくて可愛いですなぁ、スリスリ〜」

「よね〜、すりすり〜」

 

 ああ。このスリスリサンド、サチさんを煽るためなのね。姉さんも煽ってたけど……サチさん可愛いからね、仕方ないね。

 

 でもまあ。流石にちょっと、サチさんが可哀想になってきた。

 

「あはは……サチさん生真面目さんなんだから、からかうのは程々に! ね? というかいい加減くすぐったいから、そろそろやめてね」

「えーもーちょいいーじゃん」

「予鈴鳴るまでやる〜」

「えー」

 

 まあ、予鈴まで後1分程だし、甘んじて受けようか。でも、サチさんは今すぐ離れて欲しそうだ。うーん、なやめる。

 

「あっそうだ、サンドで引っかかってたんだよ。パフィンちゃん、山度逸(サンドイツ)っていうお店のチーズケーキが、とっても美味しかったよー」

「なにそれ知らないお店だよ〜!?」

 

 さっきから何やら考え込んで黙っていたヒロのセリフを聞いて、パフィンさんが離れる。ヒロ、意図してないとはいえ、グッジョブ。

 

「パフィンのスイーツジャンキーぶりは、流石の一言よね。半分諦めてるわ」

「あはっだねぇ」

 

 サチさんのセリフに同意しながら、アキも僕から離れた。

 

「優輝、ちょいやり過ぎちゃったよね、ごめんね!」

「ふふっ気にしてないよ……若干暑苦しかったけど」

「最後のは言わないで欲しかったなぁ!」

 

 冗談めかしてそう返すアキ。彼女は今日も元気可愛い。

 

「そいでヒロっち、サンドイッチーズケーキってどこにあるお店〜?」

「なんか名前混ざってるよ? あのお店はねー」

 

キーンコーン……

 

 パフィンさんが詳しく聞こうとしたところで、HR前の予鈴がなる。

 

「ほら、予鈴鳴ったんだから、席に着きなさいな」

「む〜。ヒロっち後で聞かしてね〜」

「はーいだよ」

「みんなも、席に着いてー!」

 

 サチさんの一声で、まだ雑談し足りなさそうながらも席に向かうクラスのみんな。サチさん、やっぱり委員長気質だね。

 

「あっ……優輝さん。その、一言だけ良いかしら?」

 

 と、サチさんが自分の席に行く前に、僕に近付いてきた。

 

「ん、どうかした?」

「えっと、その……頬に頬をスリスリするのって、友達同士なら普通の事、なのかしら……?」

 

 ……こんな時に、なかなか答え辛い質問をされた。んー、手短に一言で答えるなら。

 

「親友って言える程仲良しならアリ、かな?」

「そ、そう……参考になったわ、ありがとう」

 

 ほんのり頬を赤らめて、ボソっと感謝を告げられたけど……なんの参考だろう?

 

「は〜い、みなさんおはようございます〜。一週間ぶりですね〜」

 

 詳しく聞きたかったけど、ネイ先生が来てしまったし、サチさんも素早く席に行ってしまった。き、気になる……なんとなく、後で聞いても答えてくれない気がするし、だから余計気になる……

 

「ふっ。あまり気にするな」

「……よくわかんないけど、わかった」

 

 姉さんにそう言われたので、今は考えるのをやめた。

 

 とまあ。そんな感じで、連休明けの学園生活が再開した。

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